世界短編傑作集 2 (創元推理文庫 100-2)

制作 : 江戸川 乱歩 
  • 東京創元社
3.45
  • (5)
  • (8)
  • (24)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 121
感想 : 18
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488100025

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 江戸川乱歩編集の第二弾は、1907年~1923年までの推理ものを収録しており、前巻のバラエティ豊かな面白さと比較すると、全体的に、何かすっきりしない印象が残りました。

    モーリス・ルブランの、「赤い絹の肩かけ」は、あのリュパンが思わぬ形で登場するものの、当時の社会事情に精通していないと分からないような内容に、置いてけぼり感が残り、F・W・クロフツの、「急行列車の謎」は、真相が判明するまでは非常にワクワクする展開だったのが、それを知ると、「…まあ、そうだよね」という気持ちになり、当時としては、画期的だったのかもしれませんがね。

    そして、一番の注目であろう、M・D・ポーストの、「ズームドルフ事件」も今になって読むと、新鮮味は感じられず、これはこれで有り得ると思いましたが、人の運命を、他の何者かが握っているような、その暗示的なメッセージには、目を見張るものがありました。

    逆に、私が好きだったのは、R・オースチン・フリーマンの、「オスカー・ブロズキー事件」と、G・D・H & M・I・コール夫妻の、「窓のふくろう」で、前者は、当時の科学捜査の面白さを、その上品な物腰が、また印象的な探偵、「ソーンダイク博士」が教えてくれて、後者は、ウィルスン警視と、その友人のプレンダガスト医師の、たった一つの矛盾点を解明する過程が、やはりこと細かく丁寧に描かれていて、二人のやり取りを含め、読み応え満点でした。

    また、物語としては、V・L・ホワイトチャーチの、「ギルバート・マレル卿の絵」の終わり方の不可解さに、人間の奥深さを感じられたのが印象的でした。

    それから、本書におけるトリックには、列車を含めた、機械的トリックが多いのですが、それと私のモヤモヤ感も含めて、中島河太郎さんの解説に納得できるものがあったので、最後にそれを掲載いたします。

    『人情の機微をついたものより、科学的な犯罪工作に工夫をこらしたものが多かった。意外性が重視されればされるほど、作者は難解な謎を用意し、それを合理的に説明するために、専門知識をもちこまねばならぬようになって、読者の敗北感はすっきりしなくなって来た。そのため本格的な謎解き短編はだんだん袋小路にはいってしまうのである』

    • たださん
      111108さん、返事のお返事ありがとうございます♪

      変な間が空いて、すいません。
      返事を書こうとしたら、そのまま寝てしまったようで・・(...
      111108さん、返事のお返事ありがとうございます♪

      変な間が空いて、すいません。
      返事を書こうとしたら、そのまま寝てしまったようで・・(^^;)

      なんだか、乱歩の趣味が濃厚だと微妙というのも、却って興味深いなと思いまして。これって、乱歩の作品にも、何かしらの形で反映されているのでしょうかね。乱歩の作品も、また読みたくなりました。

      3巻は、特に奇妙な味が多いこと、気になります。どっちに転ぶんだろう。まあ、2巻もつまらなかったというよりは・・好きな話もありましたし、私の☆2は☆3みたいなものなので(言い訳がましく見えますが、本当ですよ^^;)。
      2022/12/17
    • 111108さん
      たださん、お返事の返事のお返事ありがとうございます♪

      私も近頃寝落ちどころか本にも触れず寝る毎日でしたので(^_^;)

      乱歩の奇妙な味好...
      たださん、お返事の返事のお返事ありがとうございます♪

      私も近頃寝落ちどころか本にも触れず寝る毎日でしたので(^_^;)

      乱歩の奇妙な味好み、たださんの読まれた『明智小五郎事件簿』にも反映されてるのでしょうか?私も読む読む詐欺になってるこの本にそろそろ取り掛かろうかなと思います。
      2022/12/17
    • たださん
      111108さん、こんにちは♪

      まあ、そういう時もありますよね。でも、体を気遣ってあげた方が、その後の読書に良い影響を与えそうな気もします...
      111108さん、こんにちは♪

      まあ、そういう時もありますよね。でも、体を気遣ってあげた方が、その後の読書に良い影響を与えそうな気もしますし。
      12月は色々忙しいこともあって、ついバタバタしちゃいますね(^^;)

      う~ん、『明智小五郎事件簿』に反映されているのか、正直分かりません。奇妙というよりは、人間の個性や趣味嗜好の幅広さを、知っている感じがしまして、それは多くの作品を読まれてきたからなのかなという、印象は抱きました。

      どのような展開になっても、そこはやはり、探偵明智小五郎のキャラクターが確立されているので、面白いですね(^_^)
      2022/12/18
  • 第二巻の目玉は「ギルバート・マレル卿の絵画」大掛かりなトリックが炸裂する。これを面白いと感じるか、バカバカしいと思うかでミステリーの指向性が分かる。リトマス紙のような一作だ。

  • 翻訳のせいかな、ちょっと読みづらい。

  • 短編ミステリーアンソロジーの第二巻。本巻では1920年代前半までの作品が収録されている。

    「赤い絹の肩かけ」 モーリス・ルブラン

    アルセーヌ・リュパンが何故かガニマール警部に事件とその手掛かりを提供する話。実質謎解きは全てリュパンがやっていた。ホームズのレストレード刑事に比べて、どうもガニマール警部は貧乏くじばかり引かされているイメージがある。社会的には成功しているのかもしれないが……

    「奇妙な跡」 バルドゥイン・グロルラー

    探偵ダゴベルトが古城の管理人殺人事件を捜査する話。彼は多忙なので、あっという間に事件を解決して帰っていった。大抵の読者も中盤まで読んだ時点で後の展開は分かると思う。

    「ズームドルフ事件」 M・D・ポースト

    アメリカ開拓時代にアブナー伯父が活躍するシリーズの一つ。メイントリックである「天の火」も凄いのだが、ランドルフの「このヴァージニアでは、そんなことでは罪にはならないんだ。たかがけだもの一匹撃ち殺したくらいのことではな……」という台詞が非常に格好良い。

    「オスカー・ブロズキー事件」 R・オースチン・フリーマン

    科学捜査で有名なソーンダイク博士の短編にして倒叙もの。犯人の隠蔽工作が博士の科学捜査であっという間に崩されていく様子が堪能できる。しかし、前話のズームドルフ事件もそうだが、「被害者の名前+事件」というネーミングの話はアクロイドクラスでもないと印象に残りにくい。といって「犯人+事件」とする訳にもいかないのだが……本作なら倒叙なのでいけるな。ヒクラー事件。

    「ギルバート・マレル卿の絵」 V・L・ホワイトチャーチ

    走行中の列車の中の一両だけを盗み出すという、奇抜な発想の作品。正直トリックはあまり奇抜ではないのだが、こういうアイデアを考えた時点で勝ちである。

    「好打」 E・C・ベントリー

    早朝にゴルフコースで練習していた男が雷に打たれたような状態で発見される話。ゴルフコースは広いので、誰も見ていなければ屋外でも密室殺人になり得る所に目を付けたのが面白い。それから、最後にトレントと大尉が犯人について話すシーンがとてもいい。

    「ブルックベンド荘の悲劇」 アーネスト・ブラマ

    盲人探偵のマックス・カラドスが雷雨の日に妻を暗殺しようとする男の計画を阻止しようとする話。カラドスは盲人なのに現地調査で現場の間取りや風景を頭に入れているのだが、どうやっているんだろうか。

    「急行列車内の謎」 F・W・クロフツ

    世界初の社会派ミステリー「樽」で有名なクロフツの短編で、社会派らしく列車もの。走行中の寝台急行内部で起こった殺人事件の話。最初に列車編成図や内部の図が載っているのだが、これがまた古めかしくて味がある。

    「窓のふくろう」 G・D・H&M・I・コール

    ウィルスン警視が、電話室で射殺された男の事件を調査する話。現場は密室な上に凶器も行方不明となっていたが、手掛かりになるのは最初に目撃したふくろうだった。一見事件と関係なさそうなタイトルを終盤で回収してくれたのは嬉しい。

    二巻は「オスカー〜」に「ギルバート〜」、「急行列車〜」など、列車系のミステリーが多かったのが印象に残った。一番好きなのは「ギルバート〜」で、次点で「好打」と「ズームドルフ事件」。

  • 3+

    『有栖川有栖の密室大図鑑』でクロフツの「急行列車の謎」が紹介されていて、面白そうと思い、前々から読んでみたかった。全体的に期待度高めで読み始めたのだが、少しハードルを上げ過ぎたようだ。好きなタイプの作品ばかりだし、それなりに面白いが、理由は様々なれどモヤッとした読後感を抱くものも多い。目当てのクロフツは肝心のトリックの細部がわかり難かった。

  • 世界短編傑作集の2巻です。
    編者の愛読する珠玉の名作を厳選して収録しており、19世紀後半から第二次大戦後の現在に至るまでの短編推理小説の歴史的展望が見れます。 

  • 【出版社/著者からの内容紹介】
    短編は推理小説の粋である。その中から珠玉の傑作を年代順に集成したアンソロジー。2には、ルブラン「赤い絹の肩かけ」、グロルラー「奇妙な跡」、ポースト「ズームドルフ事件」、フリーマン「オスカー・ブロズキー事件」、ホワイトチャーチ「ギルバート・マレル卿の絵」、ベントリー「好打」、ブラマ「ブルックベンド荘の悲劇」、クロフツ「急行列車内の謎」、コール夫妻「窓のふくろう」の全九編。全編に江戸川乱歩の解説、全巻末には中島河太郎の短編推理小説史を付した。

    ルブラン「赤い絹の肩かけ」
    グロルラー「奇妙な跡」
    ポースト「ズームドルフ事件」
    フリーマン「オスカー・ブロズキー事件」
    ホワイトチャーチ「ギルバート・マレル卿の絵」
    ベントリー「好打」
    ブラマ「ブルックベンド荘の悲劇」
    クロフツ「急行列車内の謎」
    コール夫妻「窓のふくろう」

    「世界短編傑作集1」と同じく、有栖川有栖の密室大図鑑に触発されて読んでみました。
    一応お目当ては、クロフツの「急行列車内の謎」
    時代がかなり前になるので、読んでいてもピントこないところがあるのは仕方ないですね。
    ブラマの「ブルックベンド荘の悲劇」はまさに悲劇、あまりに悲しい結末でした。

  • 第1巻が粒よりで期待が高まっていたせいか、この2巻は少々物足りなく感じた。

    特にこれと言って印象に残るものがなかったが、ルパンものはやはり上手いなぁと感じた。
    私はルパンよりも断然ホームズ派で、ルパンは一冊読んだのみでやめてしまっていたのだが、これを読んで「こんなに面白かったっけ」とびっくりしてしまった。ルパンがあまりにも天才的な頭脳を持っているがゆえに、彼を憎むガニマール警部のキャラクターがよいと思った。幼い頃は、この感覚がわからなかったのかも。

  • 前巻にあったほどの傑作は見当たらず。でも相変わらず粒揃い。

  • ベントリーの「好打」目当てに購入。これがあの有名なアレですね。とワクワクして読んだ。
    他の収録作も黄金期の佳作揃いでどれも面白かった。(クロフツの短編は、車両の構造が良くわからないので、文章読んでも「?」でしたがw)
    この時代の作品が持つ雰囲気が大好きなので☆5つ。

全18件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

本名モーリス・マリー・エミール・ルブラン。1864年、フランス、ノルマンディー地方ルーアン生まれ。 1890年頃から小説を発表していたが、1905年に編集者からの 依頼で書いた「アルセーヌ・ルパンの逮捕」が好評を博し、 強盗紳士アルセーヌ・ルパン冒険譚の作者として有名になる。 41年死去。

「2018年 『名探偵ルパン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

モーリス・ルブランの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
エラリー クイー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×