世界推理短編傑作集1【新版】 (創元推理文庫)

制作 : 江戸川 乱歩 
  • 東京創元社
3.82
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本棚登録 : 184
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488100070

作品紹介・あらすじ

珠玉の推理短編を年代順に集成し、1960年初版で以来版を重ね現在に至る傑作アンソロジー『世界短編傑作集』を完全リニューアル! 第一巻は巻頭に編者江戸川乱歩の「序」を配し、1844年のポオ「盗まれた手紙」に始まり、コリンズ「人を呪わば」、ドイル「赤毛組合」、フットレル「十三号独房の問題」などを収録。オルツィ「ダブリン事件」は新訳、チェーホフ「安全マッチ」はロシア語からの翻訳に変更。新カバー、新解説。

感想・レビュー・書評

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  • 海外の名作古典ミステリ短編をまとめた短編集。5冊あるが1巻から古い順で収録されているので、あまり古いものはちょっと…と思う人は5巻から読んだ方がいいかもしれない。

  • 2019.10.1(火)¥350(-20%)+税。
    2019.11.8(金)。

  • 〇 全体に対するメモ
     「有栖川有栖の密室大図鑑」を読んで「十三独房の問題」の存在を知り,読んでみたいと思ったため購入した作品。いわゆる「古典」と呼ばれる海外ミステリは,「小説」としてそれほど面白みを感じないことが多い。有名なトリックは「推理クイズ」の本などで知っているものもあるため,さほど期待せずに読み進めた。
     個別の作品の評価は以下のとおり

    〇 盗まれた手紙 エドガー・アラン・ポー
     ミステリの始祖,ポーによる短編ミステリの一篇。「木の葉を隠すなら森」というあまりにも有名で古典的なトリックの作品。わずか30ページに満たない分量。旧知の警視総監であるG**氏が,デュパンのところに謎を持ち込むところから物語が始まる。王宮から極めて重要な書類=手紙が盗まれ,盗んだ犯人はD**大臣。パリ警察が総動員でD**の大臣邸宅を捜索したが,手紙は見つからない。1か月後,再びデュパンの家を訪れたときに,デュパンは自身が見つけ出した手紙をG**氏に渡す。デュパンの推理は,犯人であるD**はパリ警察がどういう捜査をするかを予測し,その裏をかいたのではないかというもの。G**は手紙を隠すために,全然隠さないという手段をとったのだというもの。デュパンはD**の家を訪れ,きたない水色のリボンで吊るされているボール紙製の,透し細工をした安物の名刺刺しに差してある多くの手紙の中に紛れて「全く隠されていない」ところにあった例の手紙を見付けた。その手紙は
    手袋みたいに裏返しにされ,宛名を書き直し,封緘を押し直されていたのだ。骨格となるトリックはあまりにも有名で古典的なもの。きちんと読んだのは初めてだったが,文章は海外ミステリの古典らしく,文章の中で示されているジョークや最後のオチの意味がよく分からず,そこまで楽しめなかった。古典として,教養の意味で読むべき作品と言えるだろう。敬意を表して★3で。

    〇 人を呪わば ウィルキー・コリンズ
     この作品は,存在やトリックすら知らなかった作品。マシュウ・シャービンという鼻もちならない人物が,窃盗事件の捜査をする。報告書の提出という形で話が進むが,被害者であるヤットマン宅に下宿しているジェイ氏を犯人として疑うが,真相はヤットマンの妻が犯人というもの。マシュウ・シャービンはジェイ氏が犯人であるという前提で捜査・報告書を提出するが,その報告書を読むだけで別の人物=ヤットマンの妻が犯人だと分かるう構成がこの作品のプロットといえる。
     このプロットは,もはやミステリのテンプレートの一つになっているような気がする。その元祖ともいえる作品。文章も,それほど当時の通俗的なものの記載がないので,あまり古臭くなく,読みさを感じた。なかなかに優れた短編だと思う。★4。

    〇 安全マッチ アントン・チェーホフ
     ロシア人作家によるミステリ。ロシアの作品なので,人名が分かりにくく,登場人物が把握しにくいのが難点。プロットは,殺人事件だと思って捜査を始め,安全マッチなど,数々の残された証拠から容疑者を逮捕するが,実際は殺人事件ではなく,別の場所=分署長夫人の家に住んでいるところを発見されるというもの。証拠から犯人を導き出すが,真犯人が別にいる・・・どころかそもそも殺人事件ですらなかったというオチの作品。ミステリのパロディになっている。
     構成・プロットは面白いのだが,文章が読みにくい。登場人物が把握しにくいということもあるが,ロシアのジョークの言い回しが分かりにくいことが読みにくい原因だろう。

    〇 赤毛組合 アーサー・コナン・ドイル
     昔は「赤毛連盟」と訳されていたと思うが,まさに古典中の古典。数あるホームズ物の短編でベストと呼ばれることも多い作品。さすがにこれは読んだことがあるので再読。ウィルスンという赤毛の人物が,赤毛組合で辞書を写す作業をすることで報酬を得ていたが,急にその組合が存在しなくなってしまう。その謎をホームズに相談にくる。ホームズは赤毛組合の存在の裏に,ウィルスンの質屋で従業員として働いていた犯罪者,ジョンクレイの犯罪=ウィルスン宅の地下からトンネルを掘り,銀行の金貨を奪おうとする犯罪を見抜くというもの。
     ホームズ作品の読みやすさは格別。古臭さを全く感じさせない。分かりにくいユーモアがないわけではないが,全体的に見ると読みやすい。この作品はホームズ作品らしいユーモアに長けており,まさに傑作と言えるデキ。今さら,この作品の評価をする必要性は乏しいが,★5とする。

    〇 レントン館盗難事件 アーサー・モリスン
     これも「古典」として,特にトリックが有名な作品。
    「推理クイズ」的な本で,このトリックは聞いたことがあった。そのトリックとは,よく調教した鳥(オウム)を使って窓からマッチを加えて侵入させ,アクセサリを盗むというもの。マーチン・ヒューイットという探偵あ捜査を行う。全体的に読みやすい作品。トリックのアイデア一本勝負の作品と言える。評価は難しいが…仮にこのトリックの存在を知らなくても,驚愕できるような内容ではなく,ユーモアのあるしゃれた作品という印象。★3で。

    〇 医師とその妻と時計 安奈・キャサリン・グリーン ハスブルック夫妻という老夫婦の夫が射殺される。犯人は隣人の盲目の医師だった。この短編集の中では,少し長めの作品である。トリックとしては見るべきものはない。犯人である盲目の医師,サブリスキ―医師とその妻ヘレンの存在,二人の関係などが見どころ。暗闇で一発で射殺できたのは,そもそも盲目だったからという逆説的な言い分や,動機となるザブリスキー医師の嫉妬。そもそもハスブルック氏が殺害されたのは人違い。ザブリスキー医師は自分の妻の不倫相手を殺害しようとしていた。そもそもその不倫が誤解だった。トリックより物語として読ませようとしている作品だが,さすがに古臭い。この短編集の中では,評価は低い。★2で。

    〇 ダブリン事件 バロネス・オルツィ
     いわゆる「隅の老人」が探偵役となる一品。「隅の老人」は非常に有名な探偵で,その存在は知っていたが,作品を読むのは初めて。遺言状偽造事件という面白い定。二人の相続にがいるが,被相続にである父から寵愛を受けていた次男マレー。これに対し,長男パーシヴァルは素性の怪しい女性と交際しているため,被相続人である父からは疎まれていた。そんな中,顧問弁護士が殺害される。そのころ検認された遺言状の内容は,兄にほとんどの財産を譲るというもの。弟はその遺言状偽であるというもの。弟,マレーは遺言状が偽造文書であるとして訴訟を起こす。
     隅の老人が見抜いた真相は,犯人はマレーというもの。マレーは父を騙していたが,そのことがバレ,相続ができなくなると察知すると,明らかに偽物と分かる偽の遺言状を用意した。その遺言状は兄であるパーシヴァルにとって有利なものだった。偽造とばれないような遺言状を作ることはできない。それなら明らかに偽造と分かる遺言状を作ろう。そしてそれが偽造であることを法廷勝ち取ろうとしたのだ。
     オチはマレーが急死し,パーシヴァルは無罪になり(もともと犯人でないから当然),最終的にはパーシヴァルが遺産を相続したというオチ
     これは面白い。逆説的なトリックと読みやすい文体。これぞ短編ミステリの傑作というデキ。★5で。

    〇 十三独房の問題 ジャック・フレットル
     そもそも,「世界推理短編傑作集」を読もうと思ったきっかけは,「有栖川有栖の密室大図鑑」を読んで「十三独房の問題」を読みたいと思ったから。「短編ミステリ語る際にははずせない古典的名作」,最大限の期待を持って読み始めた。設定は見事。「思考機械」と称される探偵役のヴァン・ドゥーゼン博士が,「この世に不可能はない」と豪語し,「だったら監獄から脱出してみろ」と挑戦され,この挑戦を受けるという話
     結果的に,ヴァン・ドゥーゼン博士は監獄からの脱出に成功するのだが…その方法がなんともすごい。物理トリックと偶然の組合せである。
     ヴァン・ドゥーゼンが刑務所に持ち込みたいと言ったものは「歯磨き粉」と「5ドル紙幣1枚」と「10ドル紙幣2枚」。そして靴を磨いておいてほしいという。
     ヴァン・ドゥーゼンは壁に1ドル銀貨大の大きさの穴を見付ける。看守から川までの距離を聞いた後,せっせとネズミを捕まえる。監獄の窓から5ドル紙幣を投げ捨てる。1000ドルで看守の買収を図る。十三独房の前上階にいる囚人のところに謎のすすり泣くような声が聞こえる。看守から電気技師をどこから雇うかを聞く。さらに上の階の囚人は「酸」という声と「8号サイズの帽子」という声を聞く。アーク灯が故障し,電気技師を呼ぶ。すると…ヴァン・ドゥーゼンは脱獄に成功し所長のもとにやってくる。
     ヴァン・ドゥーゼンは靴墨を溶かしてインキにして文字を書き,ネズミと穴を利用して外部に通信をする。ハッチソン・ハッチという記者に連絡を取る。排水官を利用して通信を行い「酸」を手に入れる。ハッチの父は配電会社の支配人だった。酸を使って窓の鉄枠を焼き切り,酸の流出は歯磨き粉で防いだ。到着した配電会社の従業員に交じり,ハッチから帽子などを受け取って所長室に来た。
     外部につながる穴が開いていたり,ネズミは入ってきていたり,そのネズミを使って配電会社の支配人の息子の記者と通信ができたり,送電線が監獄のすぐそばにあったり…脱獄のための好条件が偶然そろっていたのはやや興ざめ。所長が「排水設備が残っていなかったらどうするつもりだった」と聞くと「ほかにまだ方法を二つも残してあるんだ」と答えているが…怪しいものである。
     心理トリックではなく,物理トリックと,御都合主義の偶然に支えられているが,監獄からの脱出に成功したのは確か。設定は面白い。ユーモアがあって読みやすい文体も高評価。総じて,レベルが高い短編といえる。ご都合主義の部分だけ割引の★4で。

     というわけで,短編集として見たときの総合評価は…★3にしておく。古典ばかりでトリックなどを知っている作品も多い。文章が古くさかったり,翻訳モノっぽい書きっぷりで,意味が分かりにくい部分もある。1つの短編集として見る限りだと,最新の日本人作家が書いている短編集より面白いとまで言えないような気がする。よって★3。教養というか,ミステリ好きとして読んでおきたい作品を押さえていくという印象だろう。

  • そのタイトルの通り、有名な作品ばかりが集められた(であろう)短編ミステリのアンソロジー。とはいえ、読んだことのあるものは少なかったです。しかし読んでいないはずなのにネタだけ知っていた作品が二、三あったのはこれはどういうことだろう(苦笑)。
    お気に入りはジャック・フットレル「十三号独房の問題」。これ、読んでいないにもかかわらずなぜかネタだけは知っていたのですが。それでも面白さはそがれませんでした。いったい何をどうするのか、不可解な行動のわけは何なのか、ってなあたりを読んでいるだけでわくわくするなあ。
    アンナ・キャサリン・グリーン「医師とその妻と時計」も好きな作品。なんともいえない悲劇的な物語なのだけれど、印象に残りました。

  • 盗まれた手紙 B +
    人を呪わば B+
    安全マッチ B
    赤毛連盟 A +
    レントン館盗難事件 B
    医師とその妻と時計 A
    ダブリン事件 B +
    十三号独房の問題 S

    不朽の名作の玉手箱やーー

    古典の名作にやはりハズレはない。 整合性や後出しなんか気にならず(いやなるけども)この安心感たるや。 某アニメにもあったトリックはこの作品からだったんですね。 『十三号独房の問題』この訳はじめてだったのですが、何度読んでもいい。ノリノリなヴァンドゥーゼン教授最高。

  • 旧版を読んだのは小学生の時だったろうか?中学生のときだったろうか??と懐かしく楽しんじゃった。

  • 推理小説は、米国のエドガー・アラン・ポーを始祖とし、以後、数多くの作品が発表されてきました。
    本書は、日本の推理小説の泰斗、江戸川乱歩(ペンネームはもちろん始祖に由来したもの)が、19世紀半ば以降100年間に発表された作品から選んだアンソロジー。このたび、新版の刊行が始まったのを機に手にとりました。第1巻は、ポーから20世紀初頭までの作品を収めています。

    推理小説が成立するのは、と丸谷才一さんがどこかで書いていたように、近代都市が形成されたからだそうです。人の流動性が大きい都市でなければ、テーマとなる謎が成立しないということらしい。ポーが名探偵デュパンを構想した際、祖国ではなくパリを舞台としたのもその故だったとか。
    意外だったのはチェーホフが収められていること。ポーの仏訳を読んで心酔したチェーホフが推理小説に手を染めたらしく、推理小説の歴史の一端をうかがわせて興味深いです(このあたり巻末の戸川安宣さんによる解説が参考になります)。

    本書に登場する探偵は多種多様。自らは現場にいかず、聞いた話だけで謎解きする「安楽椅子探偵」の代表格、「隅の老人」が登場する『ダブリン事件』(オルツィ)も面白かったですが、白眉は何と言っても、『盗まれた手紙』(ポー・丸谷才一訳)と『赤毛組合』(コナン・ドイル)でしょう。
    特に、シャーロック・ホームズが登場する『赤毛~』は、子どものころから何度も愛読してきたけれど、情景描写の鮮やかさやホームズと相棒ワトスンの掛け合い、読者を楽しませる伏線の数々など、今読み返しても素晴らしい。名探偵=ホームズとされるゆえんです。長らく、延原謙さんの名訳でヴィクトリア朝の香りとともに楽しんできましたが、今回は深町眞理子さんのスタイリッシュな訳で、こちらもキレキレです。

    順次5巻まで刊行される予定です。秋の夜長、名探偵たちの活躍にワクワクしながら頁をめくりたいと思います。

  • 2018/08/14読了

  • 60年読み継がれてきた「名作アンソロジー」をさらに次の60年も読み継がれるようなモノを目指して全面リニューアル(短編の追加や、作家によっては収録作の入れ替えアリ)。
    巻末にある、戸川さんの書く解説「短編推理小説の流れ1」が、本シリーズに対する熱い想いが溢れていて大変良いです。

    もちろん乱歩の選ぶ名作集ということで、収録作はどれも面白いことは折り紙付き。
    推理小説の書かれた年代順に収録ということで、ポオ「盗まれた手紙」(1844年)~フットレル「十三号独房の問題」(1905年)までを収録した1巻。「赤毛連盟(ホームズ)」「ダブリン事件(隅の老人)」といった有名どころは勿論手堅く面白いのですが、コリンズ「人を呪わば」の書簡形式コメディ短編や、チェーホフ「安全マッチ」に描かれたようなガボリオからロシアに輸入された推理小説趣味的作品など、8篇堪能しました。

  • 新装版。旧版とは微妙に収録作や訳が変わったということで、こっちも買わなければ……。名作ということで内容は折り紙付き。ミステリ読者には幅広く楽しめると思う。こういうものを編纂した乱歩ってやっぱり凄い。

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