グリーン家殺人事件 (創元推理文庫 103-3)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488103033

作品紹介・あらすじ

ニューヨークのどまんなかにとり残された前世紀の古邸グリーン家で、2人の娘が射たれるという惨劇がもちあがった。この事件を皮切りに、一家の皆殺しを企てる、姿なき殺人者が跳梁する。神のごとき名探偵ファイロ・ヴァンスにも、さすがに焦慮の色が加わった……。1ダースにのぼる著者の作品中でも、1、2を争うといわれる超A級の名作。

感想・レビュー・書評

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  • 焦らし過ぎてている。
    もともと、古典ミステリーは得意な方ではないです。

    目次を見るとわかるので、ネタバレではないですが、探偵さんは結果的に最後まで犯行を見届けた後に推理を披露する。「探偵のジレンマ」だけど、もうちょっと一進一退があってもいいような…犯人がわかってしまうので、そこからが長く感じてしまった。

    絵画と写真に見立てて犯行を説明するなど、面白いけど警察も含めちょっと何度も根本的な解決の手を打たな過ぎてつらかった。

    陰湿なグリーン家の空気感だけは伝わってきました。

  • ヴァン・ダインの古典ミステリーの傑作。
    その独特な知的で暗い雰囲気が別世界へと誘ってくれる。そう、古典傑作ミステリーの良いところは雰囲気を味わえることなのだ。
    相変わらず名探偵のはずのファイロ・ヴァンスを前に、連続殺人でもう大変です。
    大学時代、英語の講義中にひそかに?読みふけった思い出があります。私はこれで英語の単位を落としました。(笑)

  • 著者、ヴァン・ダインさん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    S・S・ヴァン・ダイン(S. S. Van Dine, 1888年10月15日 - 1939年4月11日)は、アメリカ合衆国の推理作家・美術評論家。本名はウィラード・ハンティントン・ライト (Willard Huntington Wright)。名探偵ファイロ・ヴァンス (Philo Vance) を生み出した。

    で、本作の内容は、次のとおり。(コピペです)

    ニューヨークのどまんなかにとり残された前世紀の古邸グリーン家で、2人の娘が射たれるという惨劇がもちあがった。この事件を皮切りに、一家の皆殺しを企てる、姿なき殺人者が跳梁する。神のごとき名探偵ファイロ・ヴァンスにも、さすがに焦慮の色が加わった……。1ダースにのぼる著者の作品中でも、1、2を争うといわれる超A級の名作。

  • 今さらながら読んでみました。
    原著は1928年刊行、クリスティの「アクロイド殺し」(1926年)の2年後、クイーンの「Xの悲劇」(1932年)の4年前という時代の作品。

    さぞ読みづらいのだろうな…と思って手にしていなかったのですが、さにあらず。
    もちろん古いのですが、決して古臭くはなく(翻訳も良いのでしょうが)、何とも「これぞミステリー」という雰囲気に引き込まれてしまいました。
    舞台がニューヨークでよく知った地名が出てくるのも、今から100年近く前の様子がしのばれて興味深かった点。

    「犯人当て」の面でも今読んでも秀逸。間違いなく色あせない名作です。

  • 本格ミステリ黄金期にあたる1928年発表作。「僧正殺人事件」と並ぶヴァン・ダインの代表作として、日本では今も読み継がれている。しっかりとした骨格を持ち、謎解きの過程も分かりやすいため、入門書としては最適だろう。

    堕落した有閑階級グリーン家を舞台とする連続殺人。検事の知人であるファイロ・ヴァンスは今回も捜査に協力すべく、犯行直後の現場を観察し、証言を聞き取り、血塗られた一族の現在と過去を掘り起こす。閉ざされた家の中で、家長の遺産を巡りいがみ合う者どもの狂態。腹に一物抱える使用人やかかりつけの医者らがそこに絡み、陰鬱な愛憎劇を繰り広げる。雪の降り積もる冬という季節を〝利用〟し、捜査陣の目を欺くために仕掛けられたトリック。ヴァンスは殺人者が残した小さな綻びを集めつつ、大胆極まりない犯罪の全体像に迫る。

    エラリイ・クイーンが本作を下敷きにして「Yの悲劇」を書いたことはよく知られている。ミステリとしての基本フォーマットが完成されていることもあり、後続者の挑戦意欲を大いに掻き立てたのだろう。設定や全体的なムードなど、「Y」との類似性は明らかで、プロットの暗流にある優性思想が抱える問題点を内包していることも興味深い。
    後発の「Y」の完成度が上がるのは当然なのだが、評価や人気の点で劣るとはいえ、スタンダードなミステリである本作の価値が薄れることはないだろう。ただ、フェアプレイに徹するあまり伏線が明瞭で、ある程度本格物を読み慣れた読者ならば、中盤辺りでおおよそのトリックと真犯人が分かってしまう弱さがある。主要人物が順々に殺されていく中、不自然にも生き残っているのは誰か。さらに、特定の人物への執拗な言及や過去のエピソードなどを読み解けば、自ずと真犯人に辿り着く。要は、サービス精神旺盛なヴァン・ダインの仕掛けが無骨すぎる訳だが、憎悪渦巻く富裕層の没落ぶりを茶化した物語は、それなりに読ませるため、飽きることはない。
    また、よく欠点として俎上に載る探偵の〝教養のひけらかし〟も、それほど邪魔になるものではなく、作者自身の投影として微笑ましく受け流せばいいレベルだ。より過剰にデフォルメを施した名探偵なら他にいくらでもおり、初期のエラリイ・クイーンの方が嫌みたらしい高慢さでは上回る。

    いずれにしても、娯楽小説としての工夫を凝らした「グリーン家殺人事件」は、ヴァン・ダインの魅力と〝限界〟が表れているのだが、純粋に推理が楽しめるミステリとして、今後も不動の地位を占めることだろう。

  • 『僧正〜』に引き続いて再読。これは薄っすら犯人の記憶があったが、思いのほか人死に多くてびっくり。嵐の孤島でも雪山の山荘でもないのに奇妙な遺言のせいでそれに準じる環境が整った異質な舞台設定。フィクションだから言えるけれど、テンポ良く事件が起こるお陰で『僧正〜』に比べて最後まで飽きないし、おかしな一族の問題は(他人事なので)面白い。ただ、終盤まで為すすべないヴァンスも警察も能力が甚だ疑わしい。否が応でも消去法で犯人の目星がつきそうなものだが。

    『僧正』にしても『グリーン家』にしても現代では差別的と言われるような表現が多様されていることに驚く。今は色々問題視されるだろうな。

  • ニューヨークのど真ん中に取り残された前世紀の古邸。それだけで鬱屈したイメージが湧いてきます。
    屋敷の住人たちが次々に殺されていきます。これがまた一癖もふた癖もある人物たち。犯人はなんとなーく分かっちゃいましたが、ヴァンスが語るその犯人の生い立ちや動機にその犯人の裏の顔を見せつけられました。
    それにしてもヴァンスの知識の深さには圧倒されます・・・けど、やっぱり推理ショーはラスト犯人が解ってからになっちゃいます。
    『僧正殺人事件』のときにも思ってしまいましたが、ヴァンスやマーカム、ヒースたちがあーでもない、こーでもないとウンウン唸ってるうちに次々と殺人が起こってしまいましたよぉ。

  • 言わずと知れた有名作品、今頃読了。
    とにかく事件起こりっぱなしです。被害者の人数はそこそこ多いよね。くせのあるグリーン家の人々も特徴的だし、だけどあまり派手じゃないなあ、という印象が。個人的には、もうちょっと外連味が欲しいかなって思いました。
    犯人が誰なのかは、勘で当てました(苦笑)。でも推理としては、わけのわからない要素が多いので解くのは難解かな。読者としては敗北です。

  •  流石はヴァン・ダインというべきだろう。細かく描写された犯人の心理、徹底的にヴァンスの裏を突いてくる犯人。探偵対殺人鬼という構図を綺麗に作り出している。

     狂った家の中で超然的に起きる連続殺人にはぞくぞくとする。しかし、被害者があまりに多く出てしまった為に犯人予想が簡単になってしまったこと、推理小説に慣れ親しんだ人によっては第一の惨劇の時点で犯人の予想が簡単についてしまう構成は少し気になった。それに、ヴァンスが事件の概要を掴むまで時間が掛かりすぎているような気もする。

     だが、それでも名作であることには間違いないので、その内もう一度読んでみたい作品である。

  • ヴァン・ダイン(以下ヴァン)の『グリーン家殺人事件』を読了。

    ヴァンの作品を読んだのは、一、二を争うと言われている『僧正殺人事件』と併せてこれで二作目。

    惜しむらくは翻訳が自分に合わなかったこと。元々自分は翻訳ものが苦手だが、本作は相当長い期間かけて少しずつ読んだ。最後の半分くらいは気合いを入れて5日間ほどで読んだが、前半は半年近くかけているかもしれない。前半の内容は、解決編での探偵の説明で思い出すことができた。ちなみに前に読んだ『僧正殺人事件』は新訳が出ているので、読むのに苦労した記憶はなかった。

    おそらく一筋縄ではいかないと思い、心して読みはじめた。しかし序盤からかなり怪しい人物が目に止まった。ただしほとんどの場合、序盤で怪しい人物は犯人ではない。それに証拠や判断材料もまだない。

    最終的に犯人は当たっていた。しかし、ハウダニットの説明ができず…。被害者が多ければ多いだけ、そのトリックを説明するのは難しくなる。だがそれが出来る人もいるのだろう。素直にすごい。考えるのはもっと難しいのだろうが。

    本作はまさにどろどろの愛憎劇だった。読後感は…まぁ、この時代の推理小説に読後感を求めるのも無粋な気がするが、強いて言うならスッキリした。とにかく、面白い作品なのは間違いないだろう。

    ちなみに『グリーン家殺人事件』と『僧正殺人事件』、どちらが好みかと訊かれれば、見立て殺人などが使われている点から考慮して『僧正殺人事件』と答える。

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