僧正殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集) (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ウ 1-4 S・S・ヴァン・ダイン全集)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488103149

作品紹介・あらすじ

だあれが殺したコック・ロビン?「それは私」とスズメが言った-。四月のニューヨーク、この有名な童謡の一節を模した不気味な殺人事件が勃発した。マザー・グース見立て殺人を示唆する手紙を送りつけてくる"僧正"の正体とは?史上類を見ない陰惨で冷酷な連続殺人に、心理学的手法で挑むファイロ・ヴァンス。江戸川乱歩が称讃し、後世に多大な影響を与えた至高の一品。

感想・レビュー・書評

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  • ニューヨーク、著名な物理学者宅の近辺で、マザーグースの歌に見立てた殺人が立て続けに起きる。ロビンと言う名の若者は、「だあれが、殺したコック・ロビン? それは私とスズメが言った。私の弓と矢でもって、コック・ロビンを殺したの」・・ 心臓を矢で射抜かれていた。犯人は「僧正」と名乗り示唆する手紙を送りつける。

    世にも陰惨な殺人事件だ、とアマチュア探偵、ファイロ・ヴァンスが謎解きする。が、昨今のミステリードラマを見ている目には、そう陰惨にも感じなくなっている。

    作者、ヴァン・ダイン。古典的作家だが、初めて読んでみた。たたみかけるように、犯人の可能性を追求するのだが、ちょっと合わなかったかなあ。


    謎を解くのはファイロ・ヴァンス。ニューヨークの地方検事マーカムの法廷助言者である。語り手の私は父の経営するヴァン・ダイン、デイヴィス&ヴァン・ダイン法律事務所を辞めてヴァンスの法律顧問となっている、とあり、名は名乗っていないが、そういう経歴なので、ヴァン・ダイン、著者と同じ名、著者自身か。


    1929発表
    2010.4.16初版 2019.10.11第8版 図書館

  • ヴァン・ダインの代表作と呼ばれる作品。
    これから読まれる方はグリーン家殺人事件を先に読んでからの方がいいかも。
    見立て殺人はどちらかというと猟奇的な部分のみが目立ちがちだが、
    ヴァンスの心理的観点からの推理や、特徴的なキャラクター達も相まってよかった。

  • アマチュア探偵ヴァンスの無限に湧き出る泉のような知識、教養のオンパレードで最初は圧倒されました。
    友人である語り手のヴァンが徹底した黒子役で全くといっていいほど存在感がなかったのが逆に新鮮でした。

    事件はヴァンスと検事のマーカムが、なんだかんだしてるうちに次々に起こってしまいます。
    なんてこった!このマーカムが融通が利かないというか、職務に忠実というかカッチカッチな頭なのでちょっとイライラ。その悶々とした行き詰まった感じが、ページ数が残り少なくなってから、うわぁーと盛り上がってそのままラストまでいっちゃいます。
    部長刑事のヒースが最後にカッコいいところを見せてくれました。そしてそしてまさかの犯人に対するヴァンスがとった行動にラスト驚愕しました。

  • やっぱフリークとしてはこの辺も押さえとくべきよね!(今更…)というわけで、新訳刊行に合わせて手に取りました、初・ヴァン・ダイン。ノックスの十戒と合わせて有名な二十則をまとめた作家としても有名ですね( ^ω^ )…何か、この辺の王道を押さえてないのにフリークって言うのも恥ずかしいな…ま、いっか←


    探偵役のファイロ・ヴァンスの迂遠な言い回しや、マザーグースに見たてて次々と死んでいく容疑者達、そしてこれでもかと言わんばかりの見取り図とタイムテーブルのオンパレード!そして、二転三転する真相追求!
    これぞ本格推理小説の真髄です。ちょーっとペダントリーが過ぎる気もしますが、そこはそれ、お約束ですよね(笑)。

    犯行を重ねるにつれ容疑者を限定していく犯人の行動に若干の違和感を感じつつ、「そんなん言ってたら孤島ものとか山荘ものは違和感ありまくりよね…」と言うわけで、様式美の前にあってはリアリティなんて何の意味も無いのよね!寧ろ邪魔!!←と改めてミステリの非日常に酔いしれました。

    …読み終わって結構経つせいか、あまり書けないな…



    【だあれが殺したコック・ロビン?
    「それは私」とスズメが言った
    「私の弓と矢でもって
    コック・ロビンを殺したの」】

    マザーグースの有名な童謡と酷似した状況で死体が発見された。新聞社に送り付けられた犯行声明文は「僧正(ビショップ)」を名乗っており、世間はあまりにセンセーショナルな犯行に騒然となる。そして、第二・第三の童謡に見たてた死体が発見された!

  • ある雑誌で見かけた「別名S・Sヴァン・ダイン ファイロ・ヴァンスを創造した男」と言う本が堪らなく読みたくなって、
    でも一冊もヴァン・ダインの本を読んだことが無いと言うのは失礼か?
    と思い、ご挨拶代わりに読んだ。

    母から借りっぱなし(そして返す気の無い)ミステリーを読む際の参考書
    「東西のミステリーベスト100」では第9位!

    四月のニューヨーク、
    舞台は物理学の大教授の大きなお屋敷、
    マザー・グースに見立てた連続殺人に
    アマチュア探偵ファイロ・ヴァンスが挑む…

    登場人物は、大教授の姪の美しき令嬢、
    教授の養子で数学の天才学者、
    体の不自由な天才学者、その母親、
    チェスの名人、いわくありげな執事、料理人…

    いかにもな、いかにもなミステリーだ!

    今回は「誰が殺した…」ときこえてきて「パタリロ」のことを
    考えてニヤニヤしてはいけない。

    謎ときには「ハッ」あ、そうか!となったけど、

    ただ謎ときまでに時間がかかり過ぎる、
    上手い具合に色々あり過ぎる、と思うが、
    たまにはこう言った「実際には全くありえない話」を読むのも
    気分転換になってよかった。

    しゅっとした見た目、芸術方面その他の知識も豊富で…、
    と言うとどうしてもホームズと比べてしまってね。

    「ホームズに勝る探偵なし」と、ホームズに心酔している
    私の様なシャーロッキアン(のはしくれ)は
    「ホームズ先生ならもっと早く解決したよ」なんて思ってしまった。
    (時代も国は違うけど~)

    陳腐な、いかにもな、よくある…と思ってしまうけれど、
    これは後の人たちがこれに影響を受けて真似っ子しているから、
    ですかね。

  • 見立て殺人の元祖、ということでかなり期待して読んだのだが、殺人の動機があまりピンと来ず、そんなには楽しめなかった。

    ラストのグラスの入替も、「そんなんあり?」というのが素直な感想。

  •  古典的名作である。恥ずかしながら初読。なんだか悔しい。ヴァン・ダインは「ベンスン」「カナリア」「グリーン」と読んで、なぜか「グレイシー・アレン」や「ウインター」に飛んでしまった(ケンネルとカブトムシは読んだかな?)。で、その後期のつまらなさにあきれてしまって、時代遅れの作品群として脇に追いやってしまった印象がある。なぜ、シリーズの中でもっとも評価の高い作品の一つである「僧正」を抜かしているんだろう?

     きれいにまとまった古典的傑作である。マザーグースの歌のとおりに連続殺人が起きていく。もっと時代があとになるとそういう見立てそのものにひねりが利かせてあったりするのだけど、びっくりするほどストレートである。見立てをトリックとして使うのではないのが逆に新しく感じられる。端正な構成をしているだけに、見立てが醸し出すゆがんだ美意識のようなものが、次第に登場人物の心理を追いつめていくのが鮮やかで、作品世界そのものに緊張感があって楽しい。

     名探偵ファイロ・ヴァンスは、まさに古典的な雰囲気のアマチュア探偵である。物語の進行を無視してまでうんちくを語りたがる癖があるイメージがあるが、この作品ではそれが不快でなかった。数学やチェスの話がきちんと殺人事件と結びついていて、特にチェスについてはなかなかお見事。そのほか、博識であることをうまく利用した物語の展開が効果的で、特に最後の方は鮮やかである。雑談の部分にしても、ちょうど相対性理論が構築された頃なので、僕にとってはとても興味深かった。乃木将軍にちらりと言及されるあたりも、思わずニヤリとするところだった。

     とにかく、今まで読まないでいたことが悔やまれる傑作。新しいものを追い求めるよりも、定評ある古典を引っ張り出してみようかな、限りある命なのだから、と思うことしきりである。

  •  小学生の頃から知っていたのにようやく読んだ見立て殺人の元祖。登場人物を覚えるまで読みにくかったが、事件が次々と起こるうちにのめり込んでいった。結末のヴァンスの行動は、コナン君で育った私にとって度肝を抜く展開。それアリなの?当時のアメリカ人の感覚ってこんなもの?と疑問符がいっぱい飛び交う。動機が理解できなかったり、現代の感覚ではあり得ない展開だったり色々とツッコミ所はあるものの、全体的には面白かった。古典ミステリの名作を読めた達成感が大きい。

  • 僧正という耳慣れない単語は、ビショップのこと。原題は"The Bishop Murder Case"。1929年発表。

    パタリロの歌「だれが殺したクックロビン」を思い出した。そっかー、あれマザーグース由来か。

    マザーグースに見立てて殺人が進む。容疑者は絞りこまれている。さて誰が犯人か!?
    探偵ヴァイスの能弁な長セリフに、ウッと苦悶しながらも、先を知りたくてページをどんどんめくってしまう。構造の美しさみたいなものに惹きこまれるミステリー。

  • エラリー•クイーンの作品から続いてヴァン・ダインの作品へ。100年ほど前の推理小説でも古さはそんなに感じない。この作品から読んでしまったので登場人物の今までの関係性は深く理解していなかったかも。犯人逮捕までなかなか進展せずに、ほぼ全ての人が犯人になり得る可能性を秘めたまま、ラストのラストで大どんでん返し!

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