- Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488104078
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アメリカの作家「エラリー・クイーン」のミステリ長篇『オランダ靴の謎(原題:The Dutch Shoe Mystery)』を読みました。
『エジプト十字架の謎』に続き「エラリー・クイーン」作品です、、、
1985年版の『東西ミステリーベスト100』の海外篇90位として紹介されていた作品… 最新の2012年版では残念ながら100位圏外の123位でしたけどね。
-----story-------------
〈オランダ記念病院〉の創設者である大富豪「ドールン老婦人」が、緊急手術の直前に針金で絞殺された。
たまたま病院に居合わせた作家「エラリー」の指図で事件現場はただちに保存されるが、検証を進め関係者の証言を総合しても、手術着姿の犯人の正体は皆目つかめない。
やがて再び病院内で殺人が発生する……!
犯人当てミステリの最高峰として歴史に名を刻む〈国名シリーズ〉第三弾。
解説=「法月綸太郎」
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1931年(昭和6年)に刊行された「エラリー・クイーン」のミステリ長篇で国名シリーズの第3作にあたる作品です。
■はしがき
■Ⅰ 二つの靴の物語
1 手術 Operation
2 興奮 Agitation
3 訪問 Visitation
4 啓示 Revelation
5 絞殺 Strangulation
6 尋問 Examination
7 偽装 Impersonation
8 確認 Corroboration
9 含意 Implication
10 表示 Manifestation
11 質問 Interrogation
12 実験 Experimentation
13 管理 Administration
14 慕情 Adoration
15 紛糾 Complication
16 疎外 Alienation
17 瞞着(まんちゃく) Mystification
18 圧縮 Condensation
中入り――ではクイーン父子が品定めすること
■Ⅱ 整理戸棚の消失
19 行先 Destination
20 降伏 Capitulation
21 再度 Duplication
22 列挙 Enumeration
23 三度??? Triplication???
24 再審 Re-Examination
25 簡捷(かんしょう) Simplification
26 均分 Equation
読者への挑戦
■Ⅲ 文書の発見
27 解明 Clarification
28 討議 Argumentation
29 結末 Termination
30 説明 Explanation
■犯人当てロジック小説の理想形 法月綸太郎
舞台となるのは、ニューヨークの近代的なオランダ記念病院… 友人の「ジョン・ミンチェン博士」をオランダ記念病院に訪ねた「エラリー・クイーン」は、「ミンチェン博士」に勧められて階段式の立会人席を持つ大手術室で手術を見学することになった、、、
患者はオランダ記念病院の創設者にして億万長者、慈善家としても名高い「アビゲイル・ドールン」で、「アビゲイル」はこの朝、病院内を歩いていて階段から落ち胆嚢が破裂する重症を負い、緊急手術することになった… 「アビゲイル」は糖尿病を患っていたが、連絡の不手際があって昨夜からインシュリンの注射が行われておらず、その状態で朝食をたっぷり摂ったために、糖尿病からくる目まいを起こして階段から落ちてしまったのだ。
「アビゲイル」はこん睡状態となっており、一刻も早い手術が必要だった… 執刀するのは外科主任「フランシス・ジャニー博士」で、「ジャニー博士」は「アビゲイル」を母親のように思っていた、、、
大手術室に「ジャニー博士」たち医師が揃い、やがて「アビゲイル」が運搬車に乗せられて手術室に入ってきた… ところが運搬車のシーツをめくると「アビゲイル」の首には針金が巻きつき、何者かによって絞殺されていた。
死体が発見されたときに「アビゲイル」は死後20分とは経っておらず、その時間帯に「アビゲイル」は手術を前に控室におり、付き添っていた「ジャニー博士」は面会人があり自分の部屋に戻っていたと証言するが、別な病院関係者からは、「ジャニー博士」が控室から出た数分後に、再び隣の麻酔室から入ってきて控室に戻ったと証言… ただし、「ジャニー博士」は手術着を着用しマスクと帽子も使用していたため誰も顔を確認していないうえに、声も聞いておらず、背格好と「ジャニー博士」がびっこであるという身体的な特徴から判断しただけだった、、、
そして、電話室から犯人が身に付けていたと思われる、病院内専用の靴と手術着が発見され、靴は靴紐が切れたらしく絆創膏で補修してあり、敷皮がつま先にまくれこんでいた… 靴のサイズが男物にしては小さく、「ジャニー博士」のサイズよりも当然に小さかったことと、かかとが均等にすり減っており、このことはびっこの「ジャニー博士」の靴ではないことをあらわしていた。
これらの事実から「ジャニー博士」自身が偽者に化けて「アビゲイル」を殺害したか、誰かが「ジャニー博士」に変装して控室で「アビゲイル」を絞殺したものと考えられた… 「クイーン警視」は「ジャニー博士」を疑うが、「エラリー」は犯人は「ジャニー博士」ではないと考えて捜査を進める、、、
しかし、「ジャニー博士」は自分のアリバイを主張できるにも関わらず、この朝の面会人の名前も目的も絶対に明かそうとはしなかった… また、事件後に二人で密談をしていた「アビゲイル」の世話係「サラ・フラー」と「ルシアス・ダニング博士」が、その内容を黙秘したり、「アビゲイル」の弁護士「フィリップ・モアハウス」が「アビゲイル」の書類の一部を処分したことも判明し、捜査は混乱していく。
そしてオランダ記念病院で第二の殺人が発生… 第二の殺人の被害者は「ジャニー博士」で、第一の殺人と同様に針金が首に巻かれていた、、、
「エラリー」は、第一の殺人で残されていた靴のサイズや絆創膏で靴紐が補修してあったこと、敷皮がつま先にまくれこんでいたことから、犯人を病院関係者の女性と絞り込み… 第二の殺人で「ジャニー博士」が書類棚しかない机の背後から殴られていたこと等から、犯人を特定していく。
いやぁ… 真犯人は身近なところにいましたね、、、
私も第二の殺人で「ジャニー博士」が信頼を寄せている人物しか犯行をし得ないことには気付きましたが、動機は全くわかりませんでしたね。
緻密な推理を駆使して、フーダニット(犯人は誰:Whodunit = Who (had) done it)、ハウダニット (どのように犯罪を成し遂げたのか:Howdunit = How (had) done it)、ホワイダニット(なぜ犯行に至ったのか:Whydunit = Why (had) done it)が愉しめる作品で、論理的な構成は完璧なので犯人捜しを主目的とした本格推理ファンには堪らない作品なんだと思いますが… 理詰めなだけに、ちょっと読み疲れするんですよね、、、
仕事で疲れているときには、もう少し軽めの作品の方がイイかもな。
以下、主な登場人物です。
「アビゲイル・ドールン」
百万長者の女性。被害者。オランダ記念病院の創立者。
自分の病院を視察、巡回中に階段から転げ落ち入院している
「ハルダ・ドールン」
アビゲイルのあととりの娘
「ヘンドリック・ドールン」
ドールン一家のやっかいもの
「サラ・フラー」
アビゲイルの世話係
「フランシス・ジャニー博士」
外科主任。ドールン夫人を母親のように思っており、執刀医を務める
「ルシアス・ダニング博士」
内科主任。
「エディス・ダニング」
ルシアスの娘。社会学者
「フローレンス・ペンニーニ博士」
外科主任。ドールン夫人を母親のように思っており、執刀医を務める
「ジョン・ミンチェン博士」
医務監督。オランダ記念病院の役員。エラリーの友人
「ロバート・ゴールド医師」
実習生
「エドワード・バイヤース医師」
麻酔係
「ルシール・プライス」
正規看護婦。ジャニー医師の助手
「グレース・オバーマン」
正規看護婦
「モリッツ・ニーゼル」
《天才》科学者。新合金の開発研究をしている
「ジェームズ・パラダイス」
庶務主任
「フィリップ・モアハウス」
弁護士
「マイケル・カダヒー」
ギャング
「ちびのウィリー」
カタビーの用心棒
「ジョー・ゲッコ」
カタビーの用心棒
「スナッパー」
カタビーの用心棒
「トマス・スワンソン」
謎の男
「ハリー・ブリストル」
執事
「ピート・ハーパー」
新聞記者
「ヘンリ・サンプスン」
地方検事。クイーン父子とは昵懇
「ティモシー・クローニン」
地方検事補
「サムエル・プラウティー」
ニューヨーク市警の医務検査官補
「トマス・ヴェリー」
ニューヨーク市警の部長刑事。リチャード・クイーン警視の部下。
現場の陣頭指揮を執る。
「リッチー警部補」
地区刑事
「フリント」
刑事
「リッター」
刑事
「ピゴット」
刑事
「ジョンスン」
刑事
「ヘッス」
刑事
「リチャード・クイーン」
エラリーの父親。警視
「エラリー・クイーン」
推理作家。本作の主人公で名探偵
「ジューナ」
クイーン家の召使だが、家族のような存在 -
クイーンの国名シリーズ第三弾。最終章の説明の前章の最後に犯人が明かされますが、その章のなんとも言えない緊張感と間の持たせ方が実にお見事!そして犯行現場に残されていた一つの靴から導き出される推理。ただ今作では、靴と戸棚というかなりシンプルな謎だけで犯人を特定できるため、イマイチ説明部分で、犯人に迫っていく迫力にやや欠ける気がしました。でも納得感は高いです。
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2020/10/19
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意外な人物に犯人を持ってくるのが本当に巧い。今だと驚きは少ないけれど、当時だったら衝撃的だっただろう内容。
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物凄くロジックが手堅い。こんなにフェアなミステリがあったのか!
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順調にクイーン国名シリーズを読破中。
こいつは3作目。
――よかった!
『エジプト十字架』と甲乙付け難い出来栄え。
『アクロイド殺し』や『皇帝のかぎ煙草入れ』なんかと同じく、現代でも色褪せない名作だと思う。
オランダ記念病院で殺人が起きて、エラリイやクイーン警視が捜査するといういつも通りの構成。
もちろん「読者への挑戦」もある。今回はロジックが比較的容易で、犯人が指摘できた。満足。
クイーン(作者の方)の筆が上手いのか、訳者がいいのか、毎回思うがクイーン(作者の方)の文章は他の古典に比べると非常に読みやすい。
登下校の時間を中心に苦もなく読み終えられた。
5をつけるか迷ったが、多少論理に甘い部分も見られるので(古典だし仕方がないとは思うが)、微妙なところで評価4。
次は『ギリシア棺』かな。 -
エラリー・クイーン・シリーズ
百万長者アビゲール・ドルーン夫人殺害事件。手術前に絞殺された被害者。容疑者であるジャニーはアリバイを主張するが証人の正体を明かさない。ジャニーのアリバイ証人スワンソンの登場。同時刻に起こったジャニー殺害事件。靴紐の修理に使われた絆創膏の謎。ジャニーに化けた犯人が残した手術着に隠された秘密。