オランダ靴の謎 (創元推理文庫 104-7)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488104078

感想・レビュー・書評

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  • オランダ記念病院を訪れたエラリーは、財界の大物アビゲイル・ドールンが殺されている現場に居合わせてしまう。ドールンは旧知の外科医ジャニーの執刀で緊急手術を受ける直前だった。院内で発見された一足の靴からヒントを得たエラリーだが、犯人を一人に絞れないでいるうちに第二の殺人が起きてしまう。


    『エジプト十字架の謎』では冒頭にしか登場しなかったパパが大活躍。解説の法月綸太郎が言うように、エンタメ寄りで派手な『エジプト~』とは全然違う硬派なつくり。各章タイトルを「-tion」で揃えたり、エピグラフの作り込みからも気合を感じる、ミステリーの論理ゲーム的な側面に真っ向から向かい合った作品。解決篇のエラリーの語り方はウィトゲンシュタインの影響を受けているんだろうか。靴ひもに貼られたばんそうこうの謎から犯人像を導きだす論理が美しい。
    クリスティーが会話劇の推進力として謎を配置するような作風なのに対して、クイーンは謎を成立させるジオラマの構成要素のひとつとして人間がいるにすぎない。この作品は『エジプト~』以上にその気が強くて、前半の延々続く事情聴取パートの情報しかない感じが若干読んでて辛かった。

  • 理想的なフェアプレイだった。論理的にピースが嵌められていった。話の展開も面白かった。エラリーの推理も美しくてすごく面白かった、んだけど。

    いや難癖をつけるのはいかんと思うんだけど、
    そして知らない自分が悪いとは思うんだけど
    サイズ6ってなんだよ訳注でいいからセンチで明記してくれよ訳者さん…orzそれと女性の足が小さいというのを推理の根拠にするのはホームズの「頭が大きい奴は頭がいい」説と同じくらい無いと思うんだ…。
    あと絆創膏ってロールなんだね、持ち歩けないんだね…完全に現代のあのピッと剥がして貼るタイプのあれだと思ってた…
    ずるいと思ったのは白衣調達の方法。まさかの後出し!ここに引っ掛かって結局犯人特定できなかった\(^0^)/二人まで絞れてたのに…!

    こういう細かいところ、というか難癖を除けばすごく面白かった。
    国名シリーズいいね。

  • 国名シリーズ三作目。
    昔途中で読むのをやめてしまったんだけど、今読んでみるとなぜ!?と思う。こんなに面白かったのか〜!!

    フェアプレイの権化、論理で犯人を絞り込んでいく面白さを存分に味わえる。しかも小難しさがなく明快でわかりわすい。
    現代の病院事情とはまた違っているので一部「???」というところもあるけれど、小さな問題。楽しかった!

  • アメリカの作家「エラリー・クイーン」のミステリ長篇『オランダ靴の謎(原題:The Dutch Shoe Mystery)』を読みました。

    『エジプト十字架の謎』に続き「エラリー・クイーン」作品です、、、

    1985年版の『東西ミステリーベスト100』の海外篇90位として紹介されていた作品… 最新の2012年版では残念ながら100位圏外の123位でしたけどね。

    -----story-------------
    〈オランダ記念病院〉の創設者である大富豪「ドールン老婦人」が、緊急手術の直前に針金で絞殺された。
    たまたま病院に居合わせた作家「エラリー」の指図で事件現場はただちに保存されるが、検証を進め関係者の証言を総合しても、手術着姿の犯人の正体は皆目つかめない。
    やがて再び病院内で殺人が発生する……! 
    犯人当てミステリの最高峰として歴史に名を刻む〈国名シリーズ〉第三弾。
    解説=「法月綸太郎」
    -----------------------

    1931年(昭和6年)に刊行された「エラリー・クイーン」のミステリ長篇で国名シリーズの第3作にあたる作品です。

     ■はしがき

     ■Ⅰ 二つの靴の物語
      1 手術 Operation
      2 興奮 Agitation
      3 訪問 Visitation
      4 啓示 Revelation
      5 絞殺 Strangulation
      6 尋問 Examination
      7 偽装 Impersonation
      8 確認 Corroboration
      9 含意 Implication
      10 表示 Manifestation
      11 質問 Interrogation
      12 実験 Experimentation
      13 管理 Administration
      14 慕情 Adoration
      15 紛糾 Complication
      16 疎外 Alienation
      17 瞞着(まんちゃく) Mystification
      18 圧縮 Condensation

       中入り――ではクイーン父子が品定めすること

     ■Ⅱ 整理戸棚の消失
      19 行先 Destination
      20 降伏 Capitulation
      21 再度 Duplication
      22 列挙 Enumeration
      23 三度??? Triplication???
      24 再審 Re-Examination
      25 簡捷(かんしょう) Simplification
      26 均分 Equation

       読者への挑戦

     ■Ⅲ 文書の発見
      27 解明 Clarification
      28 討議 Argumentation
      29 結末 Termination
      30 説明 Explanation

     ■犯人当てロジック小説の理想形 法月綸太郎

    舞台となるのは、ニューヨークの近代的なオランダ記念病院… 友人の「ジョン・ミンチェン博士」をオランダ記念病院に訪ねた「エラリー・クイーン」は、「ミンチェン博士」に勧められて階段式の立会人席を持つ大手術室で手術を見学することになった、、、

    患者はオランダ記念病院の創設者にして億万長者、慈善家としても名高い「アビゲイル・ドールン」で、「アビゲイル」はこの朝、病院内を歩いていて階段から落ち胆嚢が破裂する重症を負い、緊急手術することになった… 「アビゲイル」は糖尿病を患っていたが、連絡の不手際があって昨夜からインシュリンの注射が行われておらず、その状態で朝食をたっぷり摂ったために、糖尿病からくる目まいを起こして階段から落ちてしまったのだ。

    「アビゲイル」はこん睡状態となっており、一刻も早い手術が必要だった… 執刀するのは外科主任「フランシス・ジャニー博士」で、「ジャニー博士」は「アビゲイル」を母親のように思っていた、、、

    大手術室に「ジャニー博士」たち医師が揃い、やがて「アビゲイル」が運搬車に乗せられて手術室に入ってきた… ところが運搬車のシーツをめくると「アビゲイル」の首には針金が巻きつき、何者かによって絞殺されていた。

    死体が発見されたときに「アビゲイル」は死後20分とは経っておらず、その時間帯に「アビゲイル」は手術を前に控室におり、付き添っていた「ジャニー博士」は面会人があり自分の部屋に戻っていたと証言するが、別な病院関係者からは、「ジャニー博士」が控室から出た数分後に、再び隣の麻酔室から入ってきて控室に戻ったと証言… ただし、「ジャニー博士」は手術着を着用しマスクと帽子も使用していたため誰も顔を確認していないうえに、声も聞いておらず、背格好と「ジャニー博士」がびっこであるという身体的な特徴から判断しただけだった、、、

    そして、電話室から犯人が身に付けていたと思われる、病院内専用の靴と手術着が発見され、靴は靴紐が切れたらしく絆創膏で補修してあり、敷皮がつま先にまくれこんでいた… 靴のサイズが男物にしては小さく、「ジャニー博士」のサイズよりも当然に小さかったことと、かかとが均等にすり減っており、このことはびっこの「ジャニー博士」の靴ではないことをあらわしていた。

    これらの事実から「ジャニー博士」自身が偽者に化けて「アビゲイル」を殺害したか、誰かが「ジャニー博士」に変装して控室で「アビゲイル」を絞殺したものと考えられた… 「クイーン警視」は「ジャニー博士」を疑うが、「エラリー」は犯人は「ジャニー博士」ではないと考えて捜査を進める、、、

    しかし、「ジャニー博士」は自分のアリバイを主張できるにも関わらず、この朝の面会人の名前も目的も絶対に明かそうとはしなかった… また、事件後に二人で密談をしていた「アビゲイル」の世話係「サラ・フラー」と「ルシアス・ダニング博士」が、その内容を黙秘したり、「アビゲイル」の弁護士「フィリップ・モアハウス」が「アビゲイル」の書類の一部を処分したことも判明し、捜査は混乱していく。

    そしてオランダ記念病院で第二の殺人が発生… 第二の殺人の被害者は「ジャニー博士」で、第一の殺人と同様に針金が首に巻かれていた、、、

    「エラリー」は、第一の殺人で残されていた靴のサイズや絆創膏で靴紐が補修してあったこと、敷皮がつま先にまくれこんでいたことから、犯人を病院関係者の女性と絞り込み… 第二の殺人で「ジャニー博士」が書類棚しかない机の背後から殴られていたこと等から、犯人を特定していく。

    いやぁ… 真犯人は身近なところにいましたね、、、

    私も第二の殺人で「ジャニー博士」が信頼を寄せている人物しか犯行をし得ないことには気付きましたが、動機は全くわかりませんでしたね。

    緻密な推理を駆使して、フーダニット(犯人は誰:Whodunit = Who (had) done it)、ハウダニット (どのように犯罪を成し遂げたのか:Howdunit = How (had) done it)、ホワイダニット(なぜ犯行に至ったのか:Whydunit = Why (had) done it)が愉しめる作品で、論理的な構成は完璧なので犯人捜しを主目的とした本格推理ファンには堪らない作品なんだと思いますが… 理詰めなだけに、ちょっと読み疲れするんですよね、、、

    仕事で疲れているときには、もう少し軽めの作品の方がイイかもな。



    以下、主な登場人物です。

    「アビゲイル・ドールン」
     百万長者の女性。被害者。オランダ記念病院の創立者。
     自分の病院を視察、巡回中に階段から転げ落ち入院している

    「ハルダ・ドールン」
     アビゲイルのあととりの娘

    「ヘンドリック・ドールン」
     ドールン一家のやっかいもの

    「サラ・フラー」
     アビゲイルの世話係

    「フランシス・ジャニー博士」
     外科主任。ドールン夫人を母親のように思っており、執刀医を務める

    「ルシアス・ダニング博士」
     内科主任。

    「エディス・ダニング」
     ルシアスの娘。社会学者

    「フローレンス・ペンニーニ博士」
     外科主任。ドールン夫人を母親のように思っており、執刀医を務める

    「ジョン・ミンチェン博士」
     医務監督。オランダ記念病院の役員。エラリーの友人

    「ロバート・ゴールド医師」
     実習生

    「エドワード・バイヤース医師」
     麻酔係

    「ルシール・プライス」
     正規看護婦。ジャニー医師の助手

    「グレース・オバーマン」
     正規看護婦

    「モリッツ・ニーゼル」
     《天才》科学者。新合金の開発研究をしている

    「ジェームズ・パラダイス」
     庶務主任

    「フィリップ・モアハウス」
     弁護士

    「マイケル・カダヒー」
     ギャング

    「ちびのウィリー」
     カタビーの用心棒

    「ジョー・ゲッコ」
     カタビーの用心棒

    「スナッパー」
     カタビーの用心棒

    「トマス・スワンソン」
     謎の男

    「ハリー・ブリストル」
     執事

    「ピート・ハーパー」
     新聞記者

    「ヘンリ・サンプスン」
     地方検事。クイーン父子とは昵懇

    「ティモシー・クローニン」
     地方検事補

    「サムエル・プラウティー」
     ニューヨーク市警の医務検査官補

    「トマス・ヴェリー」
     ニューヨーク市警の部長刑事。リチャード・クイーン警視の部下。
     現場の陣頭指揮を執る。

    「リッチー警部補」
     地区刑事

    「フリント」
     刑事

    「リッター」
     刑事

    「ピゴット」
     刑事

    「ジョンスン」
     刑事

    「ヘッス」
     刑事

    「リチャード・クイーン」
     エラリーの父親。警視

    「エラリー・クイーン」
     推理作家。本作の主人公で名探偵

    「ジューナ」
     クイーン家の召使だが、家族のような存在

  • クイーンの国名シリーズ第三弾。最終章の説明の前章の最後に犯人が明かされますが、その章のなんとも言えない緊張感と間の持たせ方が実にお見事!そして犯行現場に残されていた一つの靴から導き出される推理。ただ今作では、靴と戸棚というかなりシンプルな謎だけで犯人を特定できるため、イマイチ説明部分で、犯人に迫っていく迫力にやや欠ける気がしました。でも納得感は高いです。

  • 2020/10/19

  • 意外な人物に犯人を持ってくるのが本当に巧い。今だと驚きは少ないけれど、当時だったら衝撃的だっただろう内容。

  • 物凄くロジックが手堅い。こんなにフェアなミステリがあったのか!

  • 順調にクイーン国名シリーズを読破中。
    こいつは3作目。

    ――よかった!
    『エジプト十字架』と甲乙付け難い出来栄え。
    『アクロイド殺し』や『皇帝のかぎ煙草入れ』なんかと同じく、現代でも色褪せない名作だと思う。

    オランダ記念病院で殺人が起きて、エラリイやクイーン警視が捜査するといういつも通りの構成。
    もちろん「読者への挑戦」もある。今回はロジックが比較的容易で、犯人が指摘できた。満足。

    クイーン(作者の方)の筆が上手いのか、訳者がいいのか、毎回思うがクイーン(作者の方)の文章は他の古典に比べると非常に読みやすい。
    登下校の時間を中心に苦もなく読み終えられた。

    5をつけるか迷ったが、多少論理に甘い部分も見られるので(古典だし仕方がないとは思うが)、微妙なところで評価4。

    次は『ギリシア棺』かな。

  • エラリー・クイーン・シリーズ
     百万長者アビゲール・ドルーン夫人殺害事件。手術前に絞殺された被害者。容疑者であるジャニーはアリバイを主張するが証人の正体を明かさない。ジャニーのアリバイ証人スワンソンの登場。同時刻に起こったジャニー殺害事件。靴紐の修理に使われた絆創膏の謎。ジャニーに化けた犯人が残した手術着に隠された秘密。

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著者プロフィール

エラリー・クイーン。フレデリック・ダネイとマンフレッド・B・リーの合作ペンネーム。従兄弟同士で、ともにニューヨーク、ブルックリン生まれ。1929年『ローマ帽子の謎』で作家としてデビュー。ラジオドラマの脚本家やアンソロジストとしても活躍。主な代表作に『ギリシア館の謎(32)、『エジプト十字架の謎』(32)の〈国名シリーズ〉や、『Xの悲劇』(32)に始まる〈レーン四部作〉などがある。また編集者として「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」を編集、刊行した。

「2021年 『消える魔術師の冒険 聴取者への挑戦Ⅳ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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