- Amazon.co.jp ・本 (474ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488104092
感想・レビュー・書評
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片田舎の小学校長が頭を切り落とされ、道しるべにT字型にはりつけにされて殺される。死体の姿がエジプト十字架のようだと言ったエラリーの元に、恩師のヤードリー教授から手紙が届く。教授の家の近所に住む富豪が、小学校長と同じT字型のはりつけ姿で殺されたというのだ。残忍な手口の連続殺人事件にエラリー・クイーンが挑む。
『Xの悲劇』と『Yの悲劇』しか読んだことがないので、エラリーが語り手のシリーズは初めて。エラリーは若くて生意気だが、ドルリーおじいちゃんほど変ではない。しかしこれだけの長いのに、エラリーとヤードリー教授以外印象に残る人がいない。クイーンが書くキャラクターって、はっきり事件のための書き割りという感じ。なんでドルリーおじいちゃんだけあんなに変なの。
ストーリーは中央ヨーロッパへの偏見がすごいのだが、発表された30年代の世情がわかるので結構面白い。ブラッドとメガラは移民で富豪という設定だから、エラリーたちが彼らを語る言葉は当時のアメリカ人が彼らのような人びとに向けたまなざしを反映しているだろう。ヌーディストたちのカルトもすごい使われ方してるけど。
ミステリーとしては真犯人は最後までわからなかったし、明かされてからも納得があった。財産をもらうために”生き返る”ところが効いてるので、動機に恋愛を絡ませたのは余計な気がするけど。最後の逃走劇もいらないと思うんだよなぁ(笑)。でもこの頃はアクション要素のあるミステリーが流行ってきてたんだよね。それも含めてサービスたっぷりな作品で面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
エラリーがこの作品でも大苦戦。こんだけ殺されてたら名探偵ではないわなというくらい、皆目犯人の見当がつかない。そして最後の殺人が行われると言う展開。犯人自体に意外性はあったものの、最後の謎解きは、全て犯行が終わってからのものということや、トリックにちょっとそれは無理じゃない?と感じられる部分もあって、長かった割には迫力不足に感じました。昔読んだ時には面白く感じたのですが。
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訳の言い回しが古いと思いながらも楽しく読めました。
細かい点は2点程除いて犯人もトリックも大体推理の通りでした。
クイーンのキレを存分に味合わせていただきました。
最初にも書きましたが、個人的な感想として訳の言い回しが令和の読者を遠ざけている感じがしました。
コナン・ドイルやアガサ・クリスティの様に若い訳者による今の読者に合った訳があればクイーンを楽しむ読者が増えるのにと少し残念に思いました。
(訳者 井上勇さんは1901年生まれ、作品も1932年です。)
でもハヤカワでは徐々に新訳が出ていますね。
総じて作品は絶品です。今でも日本や海外の作品やドラマで同様のトリックが使われています。
謎解きでのエラリーの説明もキレキレでミステリーの王道を味わい楽しむ事ができます。
ミステリーファンなら是非一度読んでみてください。
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ブックガイドのオールタイム、ベストミステリーの上位に紹介されていたので読んだが、イマイチ肌に合わず。謎解きも鮮やかだし、事件の衝撃や道具立ても面白いのだが・・・主人公に魅力がないのか、時代の古臭さが、そう感じさせるのか。
個人的には、やっばり現代の作家のものの方が面白く感じる。 -
世間の評価は高いけど、あまり馴染めなかった作品。
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続けてエラリー・クイーンが主人公の国名シリーズ。殺されて頭を斬られて磔にされた死体。最初はウェストバージニア州。そしてニューヨークのロングアイランドで。事件に隠された繋がりは何か。そして犯人は?たぶんクイーン作品の中でも有名なもので、最後の謎解きも見事。
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アメリカの作家「エラリー・クイーン」のミステリ長篇『エジプト十字架の謎(原題:The Egyptian Cross Mystery)』を読みました。
『東西ミステリーベスト100』で海外篇の42位として紹介されていた作品です、、、
「エラリー・クイーン」は、従兄弟同士である「フレデリック・ダネイ」と「マンフレッド・ベニントン・リー」が探偵小説を書くために用いた筆名のひとつで、物語に登場する名探偵の名前でももあります… 「エラリー・クイーン」作品は、多分、30年くらい前に悲劇四部作のどれか(XかYのどちらかだと思う…)を読んだのが最後だと思うので、本当に久しぶりです。
-----story-------------
クリスマスの寒村で起きた、丁字路にあるT字形の道標に、首を切断されたT字型の死体がはりつけにされる酸鼻な殺人。
半年後、遠く離れた土地で第二の首なし殺人が発生したのを知った「エラリー」は、ただちに駆けつけ捜査に当たる。
〈国名シリーズ〉第五弾は、残酷な連続殺人に秘められた驚天動地の真相を、名探偵が入神の推理で解き明かす、本格ミステリの金字塔。
解説=「山口雅也」
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1932年(昭和7年)に刊行された「エラリー・クイーン」のミステリ長篇で国名シリーズの第5作にあたる作品です。
■まえがき
■Ⅰ 小学校長のはりつけ
1 アロヨのクリスマス
2 ウェアトンの新年
■Ⅱ 百万長者のはりつけ
3 ヤードリー教授
4 ブラッドウッド
5 家庭の事情
6 チェッカーとパイプ
7 フォックスと英国人
8 オイスター島
9 百ドルの手付金
10 テンプル医師の冒険
11 そら来た!
12 教授は語る
■Ⅲ 紳士のはりつけ
13 ネプチューンの秘密
14 象牙の鍵盤
15 ラザロ
16 特使
17 山の老人
18 フォックスは語る
19 T
20 二つの三角関係
21 痴話喧嘩
22 外国便り
23 作戦会議
■Ⅳ 死者のはりつけ
24 またもや T
25 足の不自由な男
26 エラリーは語る
27 つまずき
28 再度の死
読者への挑戦
29 地理の問題
30 エラリーふたたび語る
■一九三二年の軌跡 山口雅也
ウエスト・ヴァージニアの片田舎でクリスマスの朝、T字路のT字型の道標に、首を切られT字型に吊るされたアロヨ町の小学校校長「アンドルー・ヴァン」の死体が発見された、、、
ドアにはTの血文字… 「エラリー・クイーン」は、T字型がエジプト十字架やタウ十字架 (Cross of Tau) の形であることを説明し、裸体主義者の預言者に疑いの目を向けるが、決定的な証拠が得られないまま事件は迷宮入りになる。
半年後、ニューヨークに近いロングアイランド州の海に面した小さな町ブラッドウッドにて第2の殺人が発生する… 被害者は敷物輸入商の「トマス・ブラッド」で、第1の殺人同じく首を切られT字型に吊るされていた。
警察と「エラリー」は捜査に乗り出し、「トマス・ブラッド」と、「トマス・ブラッド」の共同経営者「スティーヴン・メガラ」、第1の殺人の被害者「アンドルー・ヴァン」の三人は兄弟であり、本名は「ツヴァール」といい、出身のモンテネグロでは「クロサック家」との間に長年にわたる確執があり、20年程前に「ツヴァール三兄弟」は、待ち伏せをして「クロサック」の父親と叔父を殺害していこと、「クロサック家」の生き残りである「ヴェリヤ・クロサック」が「ツヴァール三兄弟」の復讐を企てていたことが判明… さらに、第1の殺人の被害者は「アンドルー・ヴァン」ではなく、「アンドルー・ヴァン」は「ヴェリヤ・クロサック」からの追及から目を眩ませるため山の中に住む変わり者の「ピート老人」として生活していたことが判明、、、
警察は警備を強化するが、「ヴェリヤ・クロサック」を罠にかけるため、警備を緩めた隙に第3の殺人が発生し、「スティーヴン・メガラ」が、これまでの殺人同じく首を切られT字型に吊るされていた… そして、「ピート老人」としてウェストヴァージニアの山の中で生活していた「アンドルー・ヴァン」が第4の殺人の餌食となる、、、
しかし、この第4の殺人において、現場に残された手がかりから、「エラリー」はヨードチンキの瓶というごく小さな手がかりから、一気に犯人を追いこむ… そして、車や飛行機を駆使した追跡劇の末、シカゴで犯人を追い詰めていく。
首なし死体の連続で誰が本当に殺されたか分からないところが謎を解く鍵でしたね… 首を切りT字型に吊るすという犯行に、何かの暗示や犯人のヒントがあると勘ぐってしまうと、誤った方向に推理を進めてしまうことになりますね、、、
首を切る必然があったのは第1と第4の殺人だけで、第2、第3の殺人は、首を切ったり、T字型に吊るす行為は必要なかったんですよね… 国名シリーズの最高傑作で「エラリー・クイーン」作品の中でも一、二を争う傑作で人気の高い作品と言われるだけあり、緻密な伏線や巧妙にちりばめられた手がかり、論理的な手順さえ踏めば解決に至る展開等が愉しめる作品でした。
「エラリー・クイーン」が、捜査に係った多額な経費を回収するために、この事件を執筆することを決意する… というオチも洒落が効いていて良かったですね。
以下、主な登場人物です。
「アンドルー・ヴァン」
アロヨ町の小学校校長
「クリング」
アンドルーの召使い
「ピート老人」
山小屋に住む変人
「ルーデン」
アロヨ町の巡査
「ハラーフト」
太陽教教祖
「ヴェリヤ・クロサック」
復讐者、ハラーフトの弟子
「トマス・ブラッド」
敷物輸入業者
「マーガレト・ブラッド」
トマスの妻
「ヘレーネ・ブラッド」
トマスの義理の娘
「スティーヴン・メガラ」
トマスの共同経営者、海洋旅行家
「スウィフト」
ヨットの船長、メガラの航海長
「フォックス」
ブラッド家の園丁兼運転手
「ヨナ・リンカーン」
ブラッド&メガラ商会総支配人
「ヘスター・リンカーン」
ヨナの妹、裸体主義者
「ヴィクター・テンプル」
医師、ブラッド家の隣人
「パーシー・リン」
ブラッド家の隣人
「エリザベス・リン」
パーシーの妻
「ポール・ロメーン」
裸体主義者
「アイシャム」
ナッソー郡地方検事
「ヴォーン」
ナッソー郡警察刑事局警視
「ヤードリー」
古代史の教授
「エラリー・クイーン」
探偵
「リチャード・クイーン」
ニューヨーク市警警視 -
推理の緻密さ、意外な犯人が非常に織り込まれた傑作。