シャム双子の謎 (創元推理文庫 104-11)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488104115

感想・レビュー・書評

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  • 残念ながらここからは新訳が出ていないので旧訳で。やはり古臭さがあり、少し読みにくくはあるが、それもまた一興。

    刑事なし指紋係なし検屍官なし挑戦状なしとシリーズ中異色の作品。
    火の手が迫るタイムリミット型のクローズドサークルものであり、終盤になってそれが活かされていく。

    そして挑戦状はないものの、もちろん美しいロジックは健在。
    ダイイングメッセージを巡る二転三転する推理が本当に面白く、
    ・破って捨てた後残ってるはずの手
    ・指の跡から分かる破った手
    ・死後硬直から分かる被害者が握っていたはずの手
    ・犯人はなぜ警視を気絶させた時に鍵を奪わなかったのか?
    などなど、幾度と頭を殴られた。
    最終的な犯人特定法はロジックとは無縁ではあるが、特にそこに不満はない。

    個人的に好きだったのはこのシーン。

    “エラリーは、この瞬間、いま一同の注意力が完全に奪われているとき、ほんのつかの間、一同が死から目をそむけているこの瞬間、彼らの上に天井がぐらぐらと、煙とともに崩れ落ちることによって死がもたらされ、なんらの警告も、苦痛もなく、生命が一挙に抹殺されることを、どんなにか熱烈に希求した。"

    死が迫る極限の状況で推理をする必要性、虚しさ、そして死への恐怖。エラリーの人間味がひしひしと伝わってくる。

    エラリーが自分に課したはずの掟を堂々と破っていたりなど、探せば粗はあるのだろうが、自分はかなり好み。
    初期の国名シリーズから順に思い返すとなんか感慨深いなぁ...

  • クイーン親子が車で移動中に山火事に遭遇し、逃げ込んだ山上の一軒家。山火事で道が閉鎖されたクローズドサークルで起きた殺人事件。クイーン警視は地元警察から捜索を委任されるが、混迷を深めていき、さらに一人が殺される。
    正直、二人目はクイーン親子の度重なるミスによって殺されたようなものだ。
    国名シリーズでお約束の「読者への挑戦状」はなく、犯人特定の決め手となったものもロジックではなく、犯人の性情による致命的ミス。
    国名シリーズでは異色の内容だが、様々な工夫が盛り込まれているところは評価できる。トランプのカードを使ったダイイングメッセージ、偽の手掛かり、探偵役が何度も間違いをして謎を深めていること、皮肉な真犯人等。
    「トランプのカードを保管していたキャビネットをいじくった人物」に関するロジックは秀逸。
    また、作者は別の作品でも利き腕のことを犯人特定のロジックに使っているが、本作品でも利き腕をロジックに使っている。確率的には高くても必然性はないので、利き腕をロジックに使うのはいかがなものだろうか。

  • エラリ・クイーンなので期待して読んだが残念。

  • スリル満点すぎ!
    ミステリだけど冒険小説としての一面も面白い。シャム双子の扱いも、もっとおどろおどろしく陰気で得体の知れない感じにしてもおかしくないところを、ガラリと爽やかで賢い愛らしい子どもたちと描いてるところがものすごく好きだった。クイーンらしく理知的というか。

    状況のせいか終始狼狽気味のクイーン父子、謎のカニにビビりまくる警視など、読みどころいっぱい。

    エラリーが落ち着きない感じなのも、九尾の猫的なやつとは別で彼の人間らしさを見せてくれてるようで、大変楽しめた。よかった!

  • 2022/08/08

  • 原書名:The Siamese twin mystery

    著者:エラリー・クイーン(Queen, Ellery、アメリカ、小説家)
    訳者:井上勇(1901-1985、広島県、翻訳家)
    解説:中島河太郎(1917-1999、鹿児島市、文芸評論家)

  • Yの悲劇以来、何十年ぶりかのエラリークイーンだが、ちょっと期待が大き過ぎた。

  • 事件そのものよりも、彼らの置かれた環境が緊迫してたり、二転三転したりして、ハラハラしました。クイーン親子も大概だな!という感想。
    あとは犯人の残虐さ。精神的に。

  • ストーリーとしては上手いとは思うけれど推理物として見た場合はどうなのだろう?

    そりゃ、昨今の推理物とは違うかもしれないけど、やっぱりどうなんだろうかね。と思ってしまった。

  • オカルトっ気満載なホラーを入口に
    ひりつくパニックサバイバルを出口にした異色の殺人事件。
    引き裂かれたトランプに引っかかる違和感。
    周到な罠。
    火の手迫る極限状況の中でもエラリーは推理を止めない。
    ミステリにおける謎解きは生き抜く意志の証明である。

    誉れ高きエラリー・クイーンの国名シリーズ7作目。

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著者プロフィール

エラリー・クイーン。フレデリック・ダネイとマンフレッド・B・リーの合作ペンネーム。従兄弟同士で、ともにニューヨーク、ブルックリン生まれ。1929年『ローマ帽子の謎』で作家としてデビュー。ラジオドラマの脚本家やアンソロジストとしても活躍。主な代表作に『ギリシア館の謎(32)、『エジプト十字架の謎』(32)の〈国名シリーズ〉や、『Xの悲劇』(32)に始まる〈レーン四部作〉などがある。また編集者として「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」を編集、刊行した。

「2021年 『消える魔術師の冒険 聴取者への挑戦Ⅳ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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