Yの悲劇 新訳版 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2022年8月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784488104450

作品紹介・あらすじ

ニューヨーク湾に浮かんだ死体は、行方不明だった大富豪ハッター家の当主ヨークのものだった。警察は自殺と結論づけるが、二ヶ月後、ハッター邸で毒物混入事件が発生。解決を要請された名優にして名探偵のドルリー・レーンも手をつかねるうち、ついには屋敷で殺人が……。一族を相次ぎ襲う惨劇の恐るべき真相とは? 巨匠クイーンのレーン四部作屈指の傑作であり、オールタイムベスト常連の古典名作ミステリが21世紀によみがえる!

感想・レビュー・書評

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  • エラリー・クイーン2冊目。
    ニューヨークの名門ハッター一族に奇怪な殺人事件が起きる…

    ヴァン・ダインの『グリーン家殺人事件』に似てる。シチュエーションなど色々なことが似ていた。

    ヴァン・ダインの方が4年前の出版。
    この作品の方が後出しなだけに、更に深さを増してる。
    でも結末は当然違っていて、それぞれに一族の悲劇があった。

    『Xの悲劇』よりも名探偵のドリル・レーンの苦悩や人間味を感じた。
    読んだ後にずっと考えてしまう…。
    忘れられないくらいの衝撃を受けたので『Yの悲劇』も読んで本当に良かった。

    次のエラリー・クイーンは違うシリーズを読みたい。

  • レーンもの二作目。Xの次にZ読んでしまって今回Yに戻る。昔々子供向け雑誌でネタバレされて犯人を知っていたので残念ながら驚きは少なかったが、今回きちんと読んでどういう経緯で犯行に及んだかの推論は納得いった。それにしても辛すぎる結末。

    • まーちゃんさん
      111108さん、「方舟」へのコメント、ありがとうございました。

      僕もこれ、大好きです!クイーンの中で、ベスト5に入るかなあ。

      かなり以...
      111108さん、「方舟」へのコメント、ありがとうございました。

      僕もこれ、大好きです!クイーンの中で、ベスト5に入るかなあ。

      かなり以前にハヤカワ文庫版で読みましたが…こちらの創元新訳版に、興味があります!
      2022/11/10
    • 111108さん
      まーちゃんさん、こちらにもコメントありがとうございます♪

      これ、ネタバレ無しで読んでたらもっと圧倒されたと思います。でも、やっぱり結末が‥...
      まーちゃんさん、こちらにもコメントありがとうございます♪

      これ、ネタバレ無しで読んでたらもっと圧倒されたと思います。でも、やっぱり結末が‥まさに「悲劇」ですよね。「方舟」も結末が真っ黒とありましたが、これもかなりダークですね。
      新訳はたぶんとても読みやすいですよ。違和感なく読めました!
      2022/11/10
    • まーちゃんさん
      111108さん、ありがとうございます。

      「Y」は、有名な結末ですから…ミステリ好きには、ある程度ネタバレしちゃってますよね。クリスティの...
      111108さん、ありがとうございます。

      「Y」は、有名な結末ですから…ミステリ好きには、ある程度ネタバレしちゃってますよね。クリスティの「あれ」も含めて。

      新訳、期待します!
      2022/11/10
  • 2025/4/7読了(再読)
    『Xの悲劇』同様、説明不要レベルの名作である。1932年、B.ロス名義で『X』『Y』を、E.クイーン名義で『ギリシャ棺』『エジプト十字架』を発表するという名作傑作大量生産体制に入っていたクイーン。“日本のクイーン”有栖川有栖で例えれば、〈火村英生〉と〈江神二郎〉シリーズを2作ずつ出した様なもの(昔と今と日米での出版業界事情の違いや、何より本家は2人組だったという事実は意図的に無視)?
    ストーリーについては、語り尽くされていると思うので、旧訳版(S33年発行の〈新潮文庫〉版 大久保康雄訳)との違い他、雑感をあれこれ(……長くなりますよ)。

    ・作中のハッター家の異常性は女主人エミリーが端緒で原因は梅毒とされている。但し旧訳版では“病毒”とされてダイレクトに病名は出ていない(ハッター家のカルテ記載にワッセルマン反応云々とあるので判るにはわかるのだが)。旧版でボカして訳したのか、新訳版で何のことだか判らないからハッキリ病名を出したのか? 原書ではどうなっていたのか気になる。いずれにせよ、梅毒の神経症状が遺伝して皆んなオカシくなったと言うのは、今日の視点では、差別・偏見でしかない。尤も、当時は有効な治療法も無かっただろうから、余計にそんな見方が通用したのかも知れないが。
    ・「去年のサバより確実に死んでます」(89頁)というサム警視がエミリーの死体を指して言った台詞。こんな言い回しあったっけ? と調べた旧訳版では「去年の土左衛門」となっていた。旧訳版を読んだ当時はヨーク・ハッターの死体と比べて言ったと思ったのだろうが、改めて考えると、ヨークの死体が発見されたのが2月で殺人事件は6月と同年内で、実際に死亡したのが前年12月と思われるので「去年の」は間違いではないと言えばそうだが、なんか違和感。「土左衛門」も、水に浸かっていたとはいえヨークの死因は服毒自殺なので、これにも違和感。新訳の「サバ」は、傷みやすい魚だから(鯖読みの語源ですからね)去年のものなど言うに及ばず、という意味での英語流の死体(もしくは水死体)の隠語かと思って調べても、どうも違うよう。
    ……以上、詳しい方、教えて頂けると有り難いです。

    ・作中のメインの事件は先述した通り6月。しかし、夜には冷え込み、室内で暖炉まで焚くハムレット荘。1920-30年代のNYの気候は、そんなだったのか?
    ・そして、21世紀の超高齢化社会の日本に生きる自分には、高々60歳のレーンが、老優、老人と書かれていることに激しく違和感を覚えるのであった。
    ・あと、カバー絵の「Y」の意匠が、少し判りにくいよね。

  • 名作をようやく。
    富豪家族の邸宅で起きる数々の事件、その犯人を元俳優ドルリー・レーン、サム警視とともに解くという流れ。
    次はいつ何が起きるのかとドキドキした。
    ドルリー・レーンの説明がすごく論理的だなぁと思った。

    マンドリンを凶器に選んだ理由などは、私は「うーん…そっかぁ…」となってしまいちょっと納得感が薄かった。日本語と英語の違いもあるかもしれない。もし原語版で読めるなら納得するのかな。

    4部作とのことなので、他の3作品も読んでみたい。

  • 富豪ハッター家の殺人劇。マンドリンで当主エミリ撲殺。遺言書は盲聾ルイザを守る内容。筋書通りの殺人。犯人を警察に引渡せば簡単だが,探偵レーンの決断は…。作者との倫理観の違いに戸惑う。

  • Xの悲劇でお馴染みとなった、レーン、サム警視、ブルーノ検事のやりとりが、とてもワクワクする。
    また、今回のYの悲劇は登場人物皆が変わっており、魅力的と言えば魅力的である。

    ただ、犯人探し、推理という観点からいうと、いくらなんでも、無理がありすぎだと思わざるを得ない。

    エミリ殺害の際の、ルイザの証言で、やわらかい頰に触れたとあるのに、この点はあっさり流したのは変だと思った。ルイザの感覚は、視覚、聴覚が欠けている分、嗅覚、触覚が発達しており一般人より優れているのに、バニラ=嗅覚にはこだわったが、犯人の顔に触ったことは、あまり重視しないのが怪しいなとは思った。極端な話、せっかく犯人の顔を触った感覚を残しているルイザに、時間を置かずに関係者全員の頬を触らせるくらいしても良いだろう。
    これだけでも、犯人はジャッキーかなとは感じたが、やはり難問は動機と、こんな難しい手順の仕事はこんな子供では無理。そんなわけないかと別の方向で頭を悩ませたが。

    ヨークの書き残した小説のあらすじ「梗概」の内容をなぞった殺人事件だったわけだが、13歳の子供がこの内容を実践するのはやはり納得しずらい。
    もっとも、ハッター家の人間は全員とびきりの変人揃いなのだから、一般の子供に対する常識が通用しないのは、当たり前か。

    最後は、レーンはかわいそうなジャッキーへの温情からか、サムたちに、捜査からの離脱を告げる。「舞台裏」の章でレーンからサム、ブルーノに事件の顛末について真相が明かされるが、やはり、真相を明らかにするのは、関係者全員が揃った席でやって欲しかったと思った。
    もっと、ジャッキーの悲惨な体験、家族への想いなどがあれば、事件をうやむやに終わらせるという幕引きも納得感があるのだが、描かれていたジャッキーの傍若無人ぶりを考えると、レーンがそこまで考える必要も無いと感じてしまうのだ。
    ところで、最後にジャッキーが、毒入りのミルクを飲んだのは、自殺を図ったということか。

    なんとも、すっきりしない結末と感じるのは自分だけなのだろうか?

  • 森先生の「ψの悲劇」と読み比べたくて。大まかな流れというか、ラインは大体「Y」に沿った感じ。ここまで同じだったか〜とビックリ。前に旧訳で読んでたけど、内容ほとんど忘れてた…。
    それぞれ読後感は全く違うけれど、どちらも名作。「Y」の最後はレーンが毒薬を飲ませたってことでおK?

  • 面白いが好きにはなれない作品だった。どちらかといえば「Xの悲劇」の方が面白いし、展開も好きだった。

  • 狂っているのは、誰だ。

    ニューヨークでゴシップの的となっているハッター一族の女傑エミリー・ハッターの死。その事件には三重苦の娘ルイザ・キャンピオンの暗殺未遂が伴っていた。サム警視に依頼された往年の名優ドルリー・レーン氏がハッター家に乗り込むが、彼の様子まで落ち着かなくなってきて——。

    解説にあるように、確かにこの小説を小中学生くらいで読んだら、熱に浮かされたようにのめり込むだろう。ドルリー・レーン氏が何度も導き出した真実が示す犯人に抵抗し、人としての倫理観に苛まれ、ギリギリのところで託した希望が裏切られたシーン。『Xの悲劇』でこの老優は老いを感じさせないと何度も描写されていたが、『Yの悲劇』の彼はこの事件だけで何十年分も老け込んでいそうである。推理の流れはさすがクイーンと言いたい美しさで示されるが、ラストシーンでのドルリー・レーン氏の疲労ほど心に響くものはない。

    『Yの悲劇』というタイトルから、途中のメリアム医師との対話シーンで染色体がポイントになるのかと思ったがそういうことではなかった。これが書かれたときに染色体見つかっていただろうか。むしろ梅毒が動機になりうる時代なのか、というちょっと隔世の感があった。言い方が難しいけど、電話線での閉ざされた山荘とは別の意味で、この時代だから成立するミステリではある。

    それはさておき、推理小説の真相が全然推理できずに探偵の解決を待つタイプの自分は、「舞台裏にて」のラストにサム警視が投げた謎「なぜ犯人は毒入り牛乳を自分で飲んだのか」に対する自分の読みがとても不安になり、ちょっとレビューとか読んでこようと思う。自分のドルリー・レーン氏像を結ぶのに支障が出ている。自分にとっての名探偵は、犯人を死に追い込まず罪を償わせるのが基本であるが、解決に当たっては犯人を明らかにするのではなくすべての人が幸せになるように導く、なので、大変重要な問題なのである。ドルリー・レーン氏が、踏み込んでしまって暴いた真実について、探偵と人とふたつの倫理の狭間で悩み続ける名探偵の1人であることは間違いないけれど。

    つまり、ヒントを散りばめて推理を構築する本格のすごさは飲み込めたけれど、一方で手放しですごいと今の自分は褒め称えられないのも本当の気持ち。10代の推理小説を読み出した頃に読めば違っただろうけど。

  • エラリー・クイーンの人気作。しっかり読み進めていけばトリックや犯人はわかってくる。
    この作品のポイントはホワイダニットで、長年人気なのもわかる。
    ただ個人的な好みとしては普通。面白かったけどね。

  • 疑わしい人はたくさん出てくるのだけれど、最後に明かされる犯人は意外な人物だった。
    けれど論理の展開も無理やり感がなく納得の帰結で、結末の迎え方も含めて良く出来ていた。
    紳士的で品があるドルリーレーンも素敵で魅力的なキャラクターだった。シリーズの他の作品も読んでみたくなる。

  •  海外本格ミステリーの代表作の一つ。物語の展開と、論理の構築はさすがの一言。ただ、個人的にはハードルを大きく上回ることは無かった。

  • ニューヨークの名門ハッター家。当主の自殺した遺体が発見された2ヶ月後、屋敷で毒殺未遂が起き、ついには殺人事件が…。

    レーン4部作の中でも評価が1番高い作品かな。
    新訳になったせいか読みやすくなった気がする。真相も分かって読んでいるけど、真相に繋がる部分を意識して読んだりするのが楽しい。

  • Xよりもさらに悲劇感の強い話だった。真相に辿り着いてからのレーンが弱っているのがさらに暗くなる。
    犯人については途中からもしかしてと思ったが、色々な説明のつかないように思える要素も最後は納得できる形になっていた。
    視覚と聴覚のないルイザという存在も印象的だった。
    一家全体に漂う恨みというかなんか禍々しいものがあり、雰囲気が好みだった。
    殺人の計画者と実行者が別だけど共犯ではなく、実行者が未熟であるがためにおかしな行動になってしまうという構造が面白かった。

  • ドルリー・レーン四部作の2作目!
    今回は舞台が家の中。犯人はイカれた家族の中の誰か。ここまで絞れてるのにあと一歩が足りない!今回も予想しながら読み進めていきましたが、後半「もしかして…」と思ったのも束の間。やっぱり当てられませんでした笑
    作中の警視と同じく翻弄され、レーン氏の葛藤を味わい、なんとも後味の悪い終わり方でした。まさかまさかのまさかですねこれ…。
    前回同様この作品の凄さは言われてみれば「は…!?」となる仕掛けで確かにと頷いてしまう推理。レーン氏が「実に簡単なこと」と話し始めると本当に簡単なことでビックリ。逆になんで見逃してた!?ってなります。
    残る2作も絶対読みます!

  • 2025年3月読了。

     エラリー・クイーンのドルリー・レーン四部作の2作目であり、シリーズ最高傑作の呼び声高い本作。世間からマッド・ハッターと呼ばれる変人揃いのハッター家で起きた毒殺未遂事件とそれに続く殺人事件に名優レーンが挑む。
     今作は1932年に発表されているのだが、読んでみると古さを感じなかった。次々に起こる不可解な謎に翻弄され、探偵とともに推理をめぐらせ、最後には予想外の真相に迫る。目まぐるしく起こる展開に、時の隔たりを忘れいつの間にかのめり込んでいた。やはり王道はいつの時代にも面白い。

  • 古今のミステリの中でも、最高傑作に位置するとされる有名作品。これまで読む機会はきっとあったのだろうけど、敬遠していた。今回新訳版ということで読んだけど、とても楽しめた。内容としてはほんと素晴らしいと思う。ただXの悲劇と比較して2点気になることがあり、未だにピンとこず、手放しでこの時代におススメできてない。コアな部分なので、具体的に書けないが、対象となる家系の因果の問題の前提が今の時代では倫理も科学上も受け容れられない考えだということと、犯人への処理の仕方である。特に前者には時代性を感じてしまった。サム警部の人格デザインもやや気になる。若い時に読みたかったかな。

  • 首尾一貫性がなく不可解な犯行の理由は子供が大人の書いた殺人計画に乗っ取っていたからだった。子どもが犯人な訳ないという心理的盲点。

    レーンが犯人に直接手を下すのはちょっと違和感もあり

  •  ハッター家の当主の遺体発見で、最初は自殺とみられたが、その後ハッター家で起きた毒殺未遂から、他殺ではないかと浮上する。名探偵ドルリー・レーンはこの事件の謎を解き明かす。特徴的な点として、犯人が仕組んだミスリードとその犯人そのものの正体であろう。事件現場に残った証拠品から、一見するとエミリー・ハッターの殺害は偶然だと思いがちだが、実は意図してエミリーの殺害を実行したこと、また子供が犯人であったことは本作における印象的なところである。

  • クイーンはまだ2冊目だが、乱歩が大好きだったのもうなずける。いわくいいがたい格調と俗っぽさの融合に惹かれる。

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著者プロフィール

エラリー・クイーン。フレデリック・ダネイとマンフレッド・B・リーの合作ペンネーム。従兄弟同士で、ともにニューヨーク、ブルックリン生まれ。1929年『ローマ帽子の謎』で作家としてデビュー。ラジオドラマの脚本家やアンソロジストとしても活躍。主な代表作に『ギリシア館の謎(32)、『エジプト十字架の謎』(32)の〈国名シリーズ〉や、『Xの悲劇』(32)に始まる〈レーン四部作〉などがある。また編集者として「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」を編集、刊行した。

「2021年 『消える魔術師の冒険 聴取者への挑戦Ⅳ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

エラリー・クイーンの作品

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