樽【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 242
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488106331

作品紹介・あらすじ

荷下ろし中に破損した樽の中身は女性の絞殺死体。次々に判明する事実は謎に満ち、事件はめまぐるしい展開を見せつつ混迷の度を増していく。クロフツ渾身の処女作、新訳決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに面白いミステリ読んだ!切り口というのか話の運び方というのか、新鮮だったなあ!
    ボックビール。飲んでみたい。

  • リハビリ?用の読書。
    芥川賞の予想を盛大に外したことにより、いじけてしまい、読書なんて当分するものかと思っていた。
    だが、かと言ってゲームや映像作品に時間を使おうとしても、早々に飽きてしまう。何とか本を読む楽しさを思い出そうと、純文学作品ではなく、しばらくは力を抜いて読めるミステリや時代小説に癒しを求めようと思い、積読になっていた本書を読んだ。(純文学復活の暁にはとりあえず福永武彦氏あたりだろうか。)
    古典的名作とされているだけあり、丁寧に作り込まれた、読み応えのある本だった。ただ、ミステリを久しぶりに読んだので、それゆえにミステリを読むことそのものに対しての期待感と、それが満たされた充実感が否応なく増していた、そのことを差し引いて考えなければならないかもしれない。でも、一方で期待が大きかっただけにもし魅力の乏しい内容であれば読後の失望もそれだけ大きくなるはず。そうはならなかったのだから、やはり心からこの読書に満足したのである、私は。発想の奇抜さや天才的な探偵は確かに登場しないが、証拠を一つ一つ地道に積み重ねていく過程はスリリングだし、作者の真剣さや真摯さも伝わってくるほど。
    また、本書の内容自体はもちろんだが、巻末の解説2本が素晴らしく面白かった。特に有栖川有栖の解説は読後感を何倍にも良くしてくれる素晴らしいものだ。ぜひ、鮎川哲也「黒いトランク」も読んでみたい。

  • 1920年代のロンドンとパリが舞台。スコットランドヤードと
    シュルテ両警視庁が犯人にまんまと裏をかかれ、私立探偵登場。
    人間の憎しみ、恨みの心理描写が素晴らしい。
    最初のページはロンドンの船会社で働く人たちの息づかいが聞こえてきた。
    また、読みたくなる。新訳版で文字が大きく読みやすい。
    おすすめです。まだ読んでない方は是非

  • 1920年に書かれた作品
    名探偵でなく警察もののように
    状況を緻密に組み立て穴一か所から解決に及ぶ話
    警視総監が一事件を監督したりするようなところはあるが
    現在に通じる古典
    犯人の樽を使った謎を
    とても上手く意図してそうした様でなく難解に描いているのが大きな得点だが
    むしろ終盤がやや冗長かもしれない
    分けた視点を収束させるため止むを得なかったのかもしれないが

  • 最初は樽の行方を追っかけていたのだが、中身が判明した後は、その謎を追いかけることに。アリバイを追跡していく作業は、やや単調だし、樽の動きが複雑でわからなくなってしまう。
    しかし、ラストで分かりやすく、謎は判明する。ミステリの名作。これが100年も前の作品だとは。

  • 以前amazonの試し読みで冒頭を読んだ。続きが気になって仕方がなかったが値段が高くて買う気がしなかった。図書館に置いてあるのを発見して読了した。
    古いミステリを読んでいると解説にクロフツの樽がよく出てくる。試し読みした冒頭も面白かった。そんなわけで期待値は高まる一方であった。

    読み終えてみて、たしかに面白い小説で合ったと思うが、地道な捜査の部分が多い上にイギリスとフランスをまたぐアリバイ崩しのトリックが分かり難く、設定が込み入っていて理解しにくかった。

    終わり方もとってつけたようで、先によんだクロイドン発12時30分のほうが読みやすさと分かりやすさと登場人物に共感できた。荷馬車で樽を運ぶ、という1920年代の交通手段に馴染みがないし、前半登場した警部が後半全く出てこないのがあまりに共感できなかった原因かもしれない。

    いろいろ不満点を上げたが、十分楽しめた小説である。
    でも現代でわざわざ読む価値があるのか? と問われればYESとは言い難い。魅力的なキャラクターがおらず地道な描写が続くのでストーリーの魅力も多少落ちる。緻密なプロットが楽しむ本かな。

  • 地道な捜査とアリバイ崩しというイメージのあるクロフツですが、本作もフレンチこそ出てこないものの刑事達が地道に頑張る話です。
    が、途中でこの刑事達が出てこなくなって、謎の解明は私立探偵が引き受けるというか、容疑者以外に最初から最後まで一貫して登場し続ける人がいないという、斬新? な展開でした。バーンリーもルファルジュもいいキャラだと思うんだけどなあ。
    結局一番知恵が回ったのは犯人ですが、それも含めて出てくるのは個性の強くない、いい人。長い物語ですが、そのせいかあまりストレスなく読めますね。
    人物達に匹敵する活躍をするのが、タイトル通り、樽。もちろん人の思惑が絡んでのことですが、複雑な動きをします。後で言われてみればなるほど、なのですが。
    解説にある○○は気づいていたんですが、深く考えなかったですね。結びつけられなかった。残念。
    話、人物とも派手さのない物語ですが、その分じっくり読める。やっぱりクロフツは好きですね。

  • 古典的名作として誉れの高い作品。

    海外の古典ミステリーは
    カバーしきれていないので
    ふと手に取ってみた。

    だが、読み進めるのがけっこう骨だった
    というのが正直な感想。

    つまらなくはないのだが、
    現代の小説に慣れている身には
    必要性を感じない細かい描写が多く
    展開が遅いし、地名の馴染みがないので
    位置関係をつかみにくいし、
    なかなか読んでいて面白いと感じない。

    ミステリー黎明期に作られ、
    後の作品に影響を与えたという時代性、
    歴史的意義は大きなものがあると思うが
    作品単体としての評価としては
    決して面白い作品ではないと思う。

  • 船便で港に届いた樽。
    荷降ろしの途中に隙間から金貨がこぼれおちてきた。
    不審に思い少し中を探ってみるとなんと女性の腕が。
    警察に届け出ている間に樽は行方をくらましてしまう。
    樽を奪った男は中身について知っているのか、樽を探し事件を解決せよ。

    「樽」って聞くと和風ですが、原題は「The Cask」。
    なんだかかっこいい!

    さて内容。
    まずは樽をじっくり検分するまでに時間がかかる!
    しばらく行方不明になるんですから。
    見つけてからやっと捜索。
    まずは警察の手に委ねられます。
    ロンドンのバーンリーとパリのルファルジュは仲良しデカ。
    捜査の合間に飯を食い、クラブに行き、エンジョイしまくり。
    警察は懸賞広告出しまくり~!
    なんだかのどかだな!

    基本的に出てくる人が皆上品でよい人です。その点ではイライラしなくて済んでよいです。

    江戸川乱歩が絶賛したことで日本では一躍古典名作に名を連ねたこの作品。
    なんと、重大な欠陥があるとのこと。
    それを見つけるのは読者です。
    種明かしは解説の有栖川センセイなので、最後までとっていてくださいね!
    ちなみにわたしは気づきませんでしたが、言われたら「でしょ?おかしいと思ったのよ」と思いました。

  • ヴィクトリア朝の香り残る、1910年代のロンドン。
    波止場に荷揚げされた樽が、たまたまぶつかって、ちょっと破損してしまった。
    係員が気にして調べると、破損の隙間から、金貨がじゃらじゃらと...そして、謎の美女の死体が入っていた...

    捜査が始まった途端に、謎の男が樽を持ち去る。
    追跡。樽を運搬した荷車が、ペンキを塗り直されていた。
    ロンドン警視庁の執念の捜査でたどり着いた荷受人は、何も事情を知らなかった。その上、問題の樽がまたしても奪われて行方不明...

    七転八倒の末、確保した樽。とうとう、開封される樽。中の死体は、やはり妙齢の女性。
    樽の発送元は、パリ。
    舞台は花の都パリへ...。
    死体の女性は裕福な商人の夫人。
    容疑者は、その夫と、愛人の男。
    状況証拠は、全て、「愛人の男の犯行」を指している。逮捕。追及。このままでは有罪になる。
    だが、捜査員の心象では、怪しいのは夫。
    夫の完璧なアリバイを崩せるのか?

    20世紀初頭のロンドン、パリ、ブリュッセルを舞台に、当時最先端の鉄道や貨物船の輸送網のダイヤをにらみながらの、ノンストップのミステリーが疾走する...

    ########

    海外ミステリーの古典です。
    書かれたのが1920年だそうで。
    ホームズ物の最終短編集、「シャーロック・ホームズの事件簿」が1927年ですから、大まかに言うと同時代。
    そして、ホームズ物に比べれば、なんというか、松本清張さんのノリに近い、そういう意味で実に現代的なミステリー。
    謎めいた樽を追いかける序盤戦。
    パリに舞台を移して、死体の身元と事情が判明する中盤戦。
    そして、「間違えられた男」が逮捕され、無罪を証明するための終盤戦。

    ロンドンの刑事→パリの刑事→ロンドンの弁護士→ロンドンの私立探偵、と、捜査主体=主人公、が移り変わっていくのも、変化球で魅力的。
    なにより、特に前半のテンポの良さ。謎から謎の高速駅伝リレーみたいな気持ちよさ。
    その辺が、いちばんの魅力でした。

    その一方で、犯罪の背景に必ずある、犯人側の切羽詰まった心情表現みたいなものとか、
    大ラスのアリバイ崩しの鮮やかさみたいなもの、
    そのあたりには若干の不満は残ります。
    あと、全てが分かった後で考えると、「えと、あそこのトリックって、どういう意味があったの?」みたいものが若干(笑)。

    それも含めて、まあ、1920年、この手のミステリの先駆けですから、そこはご愛嬌。
    ただ、そこを差し引いても魅力あるミステリでした。
    海外ミステリー好きな方は、是非。

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著者プロフィール

フリーマン・ウィルス・クロフツ(Freeman Wills Crofts)
1879年6月1日 - 1957年4月11日
アイルランド生まれ、イギリスの推理作家。アルスター地方で育ち鉄道技師となったが、40歳で病を患い入院。療養しながら記した『樽』を出版社に送ったところ採用、1920年刊行。名声を博し、推理作家デビューとなる。50歳まで本業の技師を続けながら兼業作家を続けていたが、体調悪化で退職して作家専業に。その後、英国芸術学士院の会員にまで上り詰める。
本格推理作家として、S・S・ヴァン・ダイン、アガサ・クリスティー、エラリー・クイーン、ディクスン・カーと並んで極めて高い評価を受けている一人。代表作に前述の『樽』『ポンスン事件』、フレンチ警部シリーズ『フレンチ警部最大の事件』『スターヴェルの悲劇』『マギル卿最後の旅』『クロイドン発12時30分』 など。

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