ブラウン神父の秘密 (創元推理文庫 110-4)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488110048

感想・レビュー・書評

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  •  短編集。「ブラウン神父の秘密」「大法律家の鏡」「顎ひげの二つある男」「飛び魚の歌」「俳優とアリバイ」「ヴォードリーの失踪」「世の中で一番重い罪」「メルーの赤い月」「マーン城の喪主」「フランボウの秘密」の十編を収録。

     実はブラウン神父もの苦手だったのです。というよりか、チェスタトンの文章が苦手というか、そういう印象がこれまでの作品を読んでいてあったのですが、今回読んでみてそんなことないと思いました。むしろ、シーンがはっきりしていて読みやすかったです。もっとも、わからない部分も多々ありましたが……。
     特に各最後の神父の発言は、宗教上のものだからなのだと思うのですが、少々理解できない箇所があって、余韻がいまいちでした。もっと煎じ詰めればいいのかもしれませんが。
     作品の内容としても、ブラウン神父らしい作品ばかりでした。そのあたり解説に書いてあったのですが、ああなるほどと思いました。早業だったり、その人間の行動だったり、着眼点が鋭い。
     ブラウン神父が好きになる作品集でした。

  • チェスタトンのブラウン神父もの、第4編。なぜか第3編をすっ飛ばしてしまいました。

    前に『ブラウン神父の童心』や『ブラウン神父の知恵』の書評でも書いたかもしれないけど、ブラウン神父ものは「注意深く読んでりゃトリックが分かる」といったジャンルではありません。もちろん解けるトリックもあるんだけど、原典が出版された1900年代初頭のイギリス文化や、その当時に常識とされていた風俗が理解できないと、そもそもヒントさえ掴めないような作品も多くあります。

    ということで、チェスタトンの頭脳に挑戦しようと考えるより、推理小説の古典の一つとして娯楽として読む、というのが正解かと個人的には思います。

  • 本作はまず「ブラウン神父の秘密」という短編で幕を開け、最後に「フランボウの秘密」という短編で閉幕する。内容的には神父が自身の推理方法について語り、その実施例として神父が解決した9つの事件が語られるという構成になっている。アルバムでいうところのコンセプト・アルバムのような内容になっている。神父の推理方法については後で述べることにしよう。

    さて本作は第4短編集ということもあり、寛容に捉えてもネタ切れの感があると当時は思っていた。例えば、「大法律家の鏡」はもろ「通路の人影」の別ヴァージョンと云える作品だ。作者が得意とする思い込みを利用した逆説を用いた作品(「顎ひげが二つある男」、「マーン城の喪主」)もあり、連続して読んだ身としては小粒感は否めなかった。強いて挙げるとすれば「世の中で一番重い罪」と「マーン城の喪主」が一つ抜きん出いるだろうかというくらいで、それも『~童心』に入っていれば普通くらいの出来だと感じていた。

    しかし今回諸作について内容を調べてみると、学生当時に読んだ印象とはまた違った印象を持つ作品もあった。特に「メルーの赤い月」で開陳される山岳導師なる隠者の特殊な心理は、海外で暮らすようになった今では理解できるが、当時はまだ海外はまだしも社会人にもなっていない頃だったので、何なんだこれは!と激昂したに違いない。
    また本作には後の黄金期のミステリ作家、特にカーに影響を与えたと思しき作品も見られる。中でも「顎ひげの二つある男」のシチュエーションはあの作品を、「マーン城の喪主」のトリックはあの作品と思い当たる物がある。

    しかし本書の注目すべき点は冒頭にも述べたブラウン神父の推理方法だ。彼は自分こそが犯人だという。それは彼が推理する時は自分も犯人になって考えるからだ。彼が犯人だったらこうするだろうと犯人の心理と同化することで事件の真相を見抜くと告げる。
    なんとこれは現代の犯罪捜査でいうところのプロファイリングに他ならないではないか。本作が出版された1926年の時点で既にチェスタトンはこの特殊な犯罪捜査方法について言及していることが驚きである。勘繰れば、このチェスタトンの推理方法からプロファイリングが生まれたようにも考えられる。

    小学校の時、児童版の名探偵シリーズでお目見えした時は、単に人物が神父というだけで、ホームズやミス・マープルその他と変らないという印象でしかなかったが、本作で神父の推理方法が明かされるに至り、その印象はガラリと変ってブラウン神父という探偵の特異性が見えた。神父ゆえの宗教的観点からの謎解きだけでなく、犯罪者の心理と同化するブラウン神父の推理は全く以って他の探偵とは一線を画するものだ。

    確かに各編のクオリティは落ちている(それでも水準はクリアしているが、こっちの期待値が大きいばかりについついこのような云い方になってしまう)が、本作はこの、正に“ブラウン神父の秘密”が判るだけでも意義が高い。

  • 特に際立ったトリックはなかったな。

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