- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488111045
作品紹介・あらすじ
ダレハムの海岸で男の溺死体が発見された。その六週間前、自殺すると言って姿を消した一人の旅芸人がいた。当然、人生に絶望したその青年の死体と思われたが、死因に疑問を抱いた医師メレディスが、友人の警察署長フォーブズの許しを得て独自の捜査に乗り出す。単なる自殺と思われていた事件に隠された真相とは?『赤毛のレドメイン家』のフィルポッツが贈る傑作長編推理小説。
感想・レビュー・書評
-
メレディスとフォーブスとの間の、「捜査は俺に任せろ」論争の理屈のこね具合が半端ないです。顔を合わせるたびに来る広げられる、本筋とは関係ない二人の論争もすごいです。フィルポッツの教養の深さというか思想の幅広さというか、そういうものがうかがえます。ただその辺を面白がれないと、冗長な部分がきつく感じるかもしれません。
洞窟で見つかった死体。最初は行方不明だったジョンのものだと思われたが…という展開。メレディスがジョンの死体ではないと考え、そこからジョンの居所を探っていくところや、そこから真相に一つ一つ近づいて行く流れは、足で探る努力型の探偵小説を見ているようで面白かったです。
ただオチとしてはもう一歩かな、と感じました。そこにつながるなら、もうひとひねりしてほしかった思いもあります。ですが、それを踏まえたうえで、あえてそうしたのかとも思ったりもします。
メレディスとフォーブスだけではなく、フォーダム卿やジョンとのやりとりも面白く、言葉の格闘技の雰囲気を感じる作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2014年東京創元社の復刊フェア書目。
『闇からの声』などで知られるフィルポッツ故に、本格ものかと思っていたら、松本清張ばりの社会派ミステリで吃驚した。松本清張ほど泥臭くはないが……。
作品傾向は思っていたものとは違ったが、ひとつひとつのエピソードの描き出し方が丁寧で、心に残るシーンが多かった。
それにしても、フィルポッツは風景描写が上手い作家だ。