だれがコマドリを殺したのか? (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488111052

作品紹介・あらすじ

医師のノートンは、海岸の遊歩道で見かけた美貌の娘に、一瞬にして心を奪われた。その名はダイアナ、あだ名は“コマドリ”。ノートンは、踏みだしかけていた成功への道から外れることを決意し、燃えあがる恋の炎に身を投じる。それが数奇な物語の始まりとは知るよしもなく。『赤毛のレドメイン家』と並び、著者の代表作と称されるも、長らく入手困難だった傑作が新訳でよみがえる!

感想・レビュー・書評

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  • 開業医のノートンと、神学博士の父から"コマドリ"と呼ばれるダイアナ。偶然出会った美男美女の二人はお互いに一目で恋に落ちる。ノートンに父親はなく、恩人である伯父は独身の大富豪だが、遺産相続の条件は偏屈な伯父が人間性に惚れこんでいる彼の秘書ネリーとノートンとの結婚だった。相続権喪失の可能性から、迷いながらもダイアナとの結婚に踏み切るノートン。詳しい事情を知らずにノートンが遺産を相続するものと期待して疑わないダイアナ。そんな認識の食い違いから、二人の結婚生活には次第に暗雲が垂れ込める。

    1924年に刊行された本作はイギリスとフランスを舞台にしたミステリ作品です。主要登場人物は先述の五人に加え、ネリーの兄、ダイアナの姉、姉妹と親しいベンジャミン卿、看護師、医師、そしてノートンの友人である探偵の11人となっており、ミステリ作品の登場人物としては多くはないでしょう。そのうえ事件自体も物語の半ばを過ぎるまで発生しません。そのため間がもたず退屈するのかというと、けっしてそうではなく、多くはない登場人物たちの人物像と心理が巧みに描かれており、仮に事件がなく恋愛や家庭をテーマとしたドラマとして完結してもおそらく不満を感じないであろうと思わせられました。事件のトリックとしては、実質的な容疑者が少ないこともあって真相の予測はやさしいほうだと思いますが、展開に沿った無理のない形に落ち着いていると感じます。

    総じて、ミステリでありながら人間を描くことを重視した作品として楽しむことができました。トリックの面では物足りない読者もおられるかもしれませんが、個人的には推理をあくまで一要素として扱う本作の方針にはむしろ好印象でした。ちなみに著者フィルポッツは、創作を始めたばかりのアガサ・クリスティに助言をしたこともあるそうです。

  • 解説を読むまで古典のミステリーとは思わなかった。
    医師のノートンはダイアナに一目惚れをする。それまでは伯父の元、順風満帆とも思える人生を歩んでいたノートンであったが、その恋に身を投じることにより、数奇な運命に導かれることとなる。
    最初はノートンとダイアナの恋愛パート。結婚する際にノートンがダイアナについた嘘「伯父の財産を相続できるだろう」というところから歯車が狂っていく。
    中盤はその嘘をめぐってノートンとダイアナの夫婦生活がうまく回らなくなることが描かれる。
    そして、ダイアナの謎の死。と、それの謎を解く名探偵が登場する本格的なミステリーに。最後の名探偵の推理までトリックが見破れなかったのが悔しかった。

    死体の摺り替えトリックには完全に騙された。ノートンが殺したとしても疑念がないくらいの心理描写があったように読めた。また、押さえきれなかったダイアナのノートンへの復讐心は死とともに完成するものだとも読めてしまい作者のミスリードにしてやられた感じがして、とても面白かった。

  • これ、今でいうロマサスなんですかね?
    事件が起こった時点で犯人も動機も分かるんだけど、きちんとそこまで導いてくれて面白かった。
    こういう古き良きミステリの復刊は嬉しいなぁ。
    突っ込みどころが多いのはお約束として、新訳の文章が雰囲気を残しつつ読みやすさも併せ持っていて良かった。
    それにしてもコマドリムカつくw

  • 人生を謳歌する女性と盲目的な恋に落ちた医師。彼女と結婚するために手放したものが、やがて自分自身を苦しめていく物語です。
    前半は恋愛、中盤は夫婦関係、後半はミステリと、変わっていく見処それぞれに読み応えがあります。展開と真相はある程度予測がつく分、登場人物たちの絡み合った心理や、どうやって真相に辿り着くか、どう証明するかを楽しむ余裕がありました。ちょっとした会話の中に興味を惹かれる表現や当時の観念が出てくるのも面白く、特にスポーツに関する医師の私見がなかなか印象的です。後に起こることを思えば、ある種の皮肉を含んでいるような。
    愛情と憎悪は表裏一体。我が身を振り返り、意図的な誤魔化しをするのはうしろめたさがあるからだと自覚したいと思います。

  • 「赤毛のレドメイン家」「闇からの声」と読んで、「誰がコマドリを殺したのか」にたどり着きました。イーデン・フィルポッツのミステリースタイルはここでも濃厚に出ています。緻密な心理描写を中心に展開しながら、いつの間にか作者の術中に嵌まるような体験です。ヴァンダインが賞賛したのも納得。名作。

  • 長らく入手困難だった作品が新訳で復刊。
    『赤毛のレドメイン家』のような、古き良き探偵小説かと思いきや、こちらは探偵小説の枠組みを利用してはいるものの、趣のあるサスペンス小説。前半1/3の情熱的なロマンスが徐々にサスペンスに変貌する。
    『赤毛のレドメイン家』に引き続き、ヒロインの造形が見事だった。トリック部分についてはカンの良い読者なら大体予想がつくのだが、主要な登場人物の造形が上手いので、ついついページをめくる手が止まらなくなってしまう。

  • 2021年ゴールデンウィークに読んだ本。
    作者名も知らなかったが、アガサクリスティを指導した方とは。世の中には知らないことが沢山ある。
    名作なのに長らく入手困難だったのは何故?本なのだから刷り直せばいいのでは?と思ったが、評価は良くても売れなければ刷れないよな…
    話の展開が早い。
    ミステリーは読みなれていないので、結末は予想できなかった。

  • Who killed Cock Robin?マザーグースの歌に合わせて人が殺されていく話と思って読み始めたら恋が生まれ消えていくまでの儚いラヴストーリーだった!「一瞬に燃え上がる恋もあれば生涯続く恋もある。その後何があろうとその記憶は消えるものではない」若き医師ノートンは海岸で出会った美貌の娘ダイアナに一目惚れした。彼女のあだ名はコックロビン。ノートンは手に入れかけていた成功を投げうち燃え上がる恋の炎に身を投じる。しかし2人の運命は目まぐるしく変わっていく。ミステリの形を取るが事件と謎解きは最後の100ページに集約されている。これは2人の宿命的な恋と破滅の物語であり文学者、劇作家であるフィルポッツは2人の、そして家族や友人達の心の内を丁寧に描く。そしてそれが事件の核心を解く鍵になっている。「恋愛期間の長さに関係なく、恋という得難い経験は人の性格に影響を及ぼす。その後の幸福感のために、あるいは苦悩のために」恋は苦しい。

  • トリックは予想通りやったけど書かれた時代考えたらかなり前衛的なんかもね、堪能堪能。

  • いやー、途中怖くて読み進めるのが躊躇われた。。。語り口も描写も好きです。やっぱりイギリスの推理小説は好きだなあ。
    後書きを読んだら、フィルポッツとはあのクリスティに書きかた教えてたって人がこの作家だったのですね。他の本も読みたいけど、書店には見かけないのが残念。

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