容疑者 (創元推理文庫)

制作 : 高橋 恭美子 
  • 東京創元社
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本棚登録 : 193
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488115050

作品紹介・あらすじ

銃撃戦で相棒を失い自らも重傷を負った刑事スコット。心の傷を抱えた彼が出会った新たな相棒はシェパードのマギー。アメリカ私立探偵作家クラブの巨匠賞受賞の著者の渾身の大作。

感想・レビュー・書評

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  • 刑事スコットと軍用犬マギー。
    お互いに相棒を失った者同士が新たな絆を築いていく。

    事件そのものはさほど込み入ったものではないのだけど、スコットとマギーがとにかくいい。
    努力・友情・勝利の王道物語は読んでいて気持ちがいい。
    作中のマギーのパートがこれまた堪らないんだ。

  •  犬が登場する小説は多分にあれど、犬の心を描く小説というのはそう多くはない。西村寿行や稲見一良、日本のシートンと言われた戸川幸夫の名作『牙王物語』などなど。アメリカ探偵小説では、ロバート・B・パーカーやアンドリュー・ヴァクスのどちらも家から一歩も出ない巨犬がいるが、犬の心は描写されない。

     心や感情の描写をしないのがハードボイルド、であるけれど、本書は犬の感覚での喜怒哀楽まで含めた描写が最初から際立っている。犬と日頃ともに生活しているわけではないぼくのような人間でも、愛着を覚えたくなるような、それは優しく、かつ特殊能力を備えた危険な犬でもある。

     さて、本作はLAを舞台にした警察ミステリ。私立探偵エルビス・コールのシリーズでお馴染みの作家ロバート・クレイスは、2010年にアメリカ探偵作家クラブの生涯功労賞を受賞。巨匠の仲間入りを果たしたこの作家、ぼくは恥ずかしながら全くノーマークだったのだが、本作品はシリーズ外の比較的新しい作品ということもあり、これを機会にと手に取ってみた次第。

     物語は、いきなりアフガンの戦場で幕を開ける。哨戒および爆発探知チーム所属のミリタリー・ワーク・ドッグであるジャーマン・シェパードのマギーが、自殺的なゲリラ攻撃によってパートナーである兵士ピートを失うシーンが痛々しい。自らも彼を庇いつつ被弾する。パートナーを守るために。

     舞台は移り、深夜のパトロール中に、銃撃事件に巻き込まれた警察官スコットは、相棒のステファニーを失い、自ら被弾し意識を失う。

     訓練され被弾し主を失った犬と、負傷しパートナーを失った警察官との、運命的な出会いにより、銃撃事件を探り始めるという内容の、至ってわかりやすく、かつ胸の熱くなるような再生のドラマが展開されるのだ。

     素晴らしいのは、やはりストーリーテリングである。前述の通り勲章を受けた作家は、それに値する言葉と文章を駆使し、読者を惹きつける。決して急ぐことなく、一人と一匹が、徐々にPTSDから互いを救い出し合って、チームとして再起してゆく痛みさえ伝わるような日々を、事件以上に殊更丹念に描くからこそ、ことの真相や、悪党たちの正体を暴き出してゆく過程に、無償のエールを送りたくなってくるのだ。

     そして敵どもが決してやわな存在ではなく、一筋縄ではゆかない危うい気配を漂わせるからこそ、展開はスリリングで、ラストに待ち受ける対決もまたタフ極まりないものとなる。

     次作『約束』で、この一人と一匹コンビは再登場するらしいが、続編と言うより、本来のエルビス・コール・シリーズでのゲスト出演といった役割になるようだ。ゲストというばかりでなく、再びこの傷だらけの名コンビが復活して元気な笑顔を見せてくれる日を期待してやまない。

  • 海外小説の刑事小説は日本のような陰湿な内容と違い颯爽としている。銃社会がそうさせているのは否定しない。
    銃で傷ついた警官と、銃で傷ついた軍用犬のコンビドラマはずーっと高テンションを維持したままラストまで迎える事が出来た。よくあるオチではあるが、忠誠をつくしまくりの犬の気持ちを犬主観から書いているのが面白い。
    このブクログで誰かが読んだ感想をきっかけに古い書物から掘り出した作品、なんとか賞とか本屋のおすすめ、とかもいいけれど、"誰かが読んだ本”や、図書館での"返却棚"というのはお勧めの宝だね。

  • 字ぃちっちゃいのよ、創元推理文庫。同程度の厚さでも、講談社文庫と比べたら文字数は倍くらいちゃうか。というのは言い過ぎか。老眼が来るとついつい創元推理に及び腰になってしまいます。この文字の小ささで400頁超やけど、読むのに何日かかるやろと思ったら。こんなん反則、プロローグから涙がこぼれる。

    パトロール中に事件に巻き込まれ、相棒女性を亡くしたロス市警の刑事スコット。アフガニスタンで狙撃され、ハンドラー(指導手)を亡くした雌のジャーマンシェパードの軍用犬マギー。心身ともに深い傷を負った一人と一匹が出会うとき。事件から9カ月経つも挙げられない犯人を見つけようと、スコットはマギーと組み、捜査を開始する。

    私は犬よりも猫派ですが、このマギーはたまらん。しばしばマギー目線で綴られる部分は、有川浩の『旅猫レポート』を思わせます。大切な人を失って、悲しみのどん底にいたマギーがスコットと心をかよわせる過程が良い。また、ミステリーとしても非常に面白く、一言多いけれど人情味のある上司や、そのほか警察関係者も個性豊か。犯人との対峙のシーンは「お願い、スコットもマギーも死なないで」と思わず祈りました。

    猫派の私でもやられましたから、犬派の人はもっとたまらんことでしょう。人間を喜ばせるか救うかのためにしか動かない犬たち。べっぴんマギーに私も惚れ込みました。海外ミステリーはなんだか読みづらくて手が伸びないとお思いの方にもお薦めです。

  • ロス市警の刑事スコットは相棒とパトロール中、銃撃事件に遭遇する。銃弾はふたりを襲い、相棒は死亡、スコットも重傷を負った。事件から九カ月半、犯人はいまだに捕まっていない。警備中隊へ配属となったスコットはそこで新たな相棒―スコットと同様に、大切な相棒を失ったシェパード、マギー―に出会った。アメリカ探偵作家クラブの生涯功労賞を受賞した著者の大作登場。

    ロバート・クレイスの作品を読むのは、「天使の護衛」以来だと思う。私立探偵エルヴィス・コールのシリーズは何冊か読んだし、「破壊天使」というノンシリーズものも読んだな。それはともかく、これはなかなかよい。私は犬好きでもなんでもないが、それでも読ませます。

  • お互いに相棒を失った警察官と軍用犬のストーリー。
    軍用犬の場合はアフガニスタンなのでどうしようもないが、警察官の方には犯人がいる。
    軍用犬のパートもあり犬の心理を描いてるのが面白い。訓練してリハビリしていく様はなかなか感動モノである。協力し合い犯人を追い詰めていくのがスリルがある。まだ続編があるようなので読んでみようと思う。

  • 父が面白かったと貸してくれた本。
    お互いにトラウマがある警察官と相棒の犬が頑張るお話。犬がとても可愛い。そして犬ってこんなこと考えてるのかな~とか思える犬視点が面白い。

    作中で一番好ましいのはK9部隊の長官?かな。コワイ見た目でどなるけど犬には優しい。いいなぁ。
    話のオチ的には又組織腐敗のお話かぁと言う感じですが、それ以前の情報が少ない辺りは不気味で面白かった。話が動きだすとそうなるよねって感じでしたが。

    帯には号泣必至みたいに書いてあったけど… 泣く場面ってあったかなぁ?

  • 奇をてらうこともなくストレートに面白い”相棒もの”の娯楽小説。 主人公スコットの、失った相棒への思いが、せつな過ぎるやないかーい! 俺的に一番、響いたのはシェパードのマギーが”仲間”に馳せる想い。 俺に、ピークでは体重50kgオーヴァーの超大型犬がパートナーだったときのことをいろいろと思い出させてくれて、激しく感情が揺さぶられちゃいました。電車で読み終わったときには、涙を流し嗚咽をこらている不審者モード全開状態に。。 犬好きには、たまらないんじゃないでしょうか。

  • 戦場で相棒を亡くし、自身も傷ついたシェパードのマギーと、事件に巻き込まれて負傷した刑事スコットの出会いと、事件を解決するまで。後半はいまいちでしたが、マギーとスコットが少しずつ絆を深めていって、マギーがスコットでこころをいっぱいにしていくのがたまらないっす。犬はこの盲信さがなんとも魅力だと思います。解説の犬ものも読んでみよう。

  • この作家はよく知らなかったが、デビュー30年の手練れらしく、互いに手負いの過去を追う人間と犬の繋がりが深まる様子を実にうまく描く。

    足元の事件を追っていたら警察内部の腐敗にぶつかったというのは割とありふれた設定だが、過去の事件とも絡め、緊迫感を高める手法はさすが。
    結末のカタルシスも十分。

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