妖魔の森の家 (創元推理文庫―カー短編全集 2 (118‐2))

  • 東京創元社
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118020

感想・レビュー・書評

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  • この前読んだ『密室大図鑑』で『妖魔の森の家』を見てもう一度読んでみたくて。トリックが無茶で笑いそうなのもあったが、HM卿以外にもなかなか愛嬌ある探偵達が揃っていて意外に楽しかった。

  • 本作は短編集で、フィル博士やH M卿が登場します。
    表題作の妖魔の森がどうやらすごいらしいと噂を耳にしていたのですが、なるほど、確かにすごい!
    正直、読み終わった後は、そのぞっとするラストに衝撃を受けていたのですが、解説を読むと、読者に気付かせないようにさりげなく配置された伏線たちの存在を知り、ミステリとしても一級品だったのだなと感心しました。

    また、中編の第三の銃弾、これもまた見事でした。カーお得意の密室を扱った事件。1人しかいないはずの密室で、3丁の拳銃が発砲されたという不可思議な状況に、マーキス大佐が挑みます。よくこんなトリックを思いつけますね(羨望)…
    しかし、この中編のすごいところは、ハウダニットだけではありません。
    読者の先入観を逆手に取ったフーダニットが見事。ミスリードがうまく、すっかり騙されました。

    カーにハマりつつあります…。


  • 初カー。有栖川先生の『密室大図鑑』を読んで、手に取った本作。いやはや、本当に凄いっ!謎の提示の仕方、事件が起きるまでの過程の描き方が魅力的過ぎた。特に良かったのは「妖魔」と「第三」だ。星四つ半。

  • 「妖魔の森の家」神隠し事件、ヴィッキーの小悪魔的人柄、犯罪者の死体処理の手際良さから断トツに面白い。
    内容:20年前、森の別荘で神隠しにあったヴィッキーが、密室から忽然と姿を消す。周囲はまた神隠しだと考えるが、H・M卿は殺人事件だと気付く。最後の一言が怖い。

  • カーの短編4つと中編1つを日本独自に編集した中短編集。

    「妖魔の森の家」
    表題作だけあってクオリティはお墨付き。
    最初読んだ時は気付かなかったけど、解説を読んだ後に改めて読み返すと、記述が綿密に計算されていることが分かる。
    怪奇的な雰囲気も良いと思った。
    ただなんかトリックが回りくどいし、途中でバレる確率の方が高いような...

    「軽率だった野盗」
    一見謎な状況だけど、シンプルな解決で綺麗に収まるのが良い。

    「ある密室」
    バカミスは好きだけど、これはちょっとインチキ臭くてあんまり...

    「赤いカツラの手がかり」
    奇妙な状況の死体はそれだけでミステリファンは心踊るものなんですよね、これもそのひとつ。
    赤いカツラというユニークな手がかりから、謎が解けていくのも面白い。

    「第三の銃弾」
    複雑な状況での謎を解くパズラー的作品。
    表題作よりもこっちの方が面白かった。

  •  1943年から1948年にかけて書かれた作品を収めた短編集。ヘンリー・メルヴェール卿やフェル博士も出てくる。
     これが、なかなか優れた本格推理小説集だったのである。結末が意外で、ビシッと来る終わり方。爽快感のある作品が幾つも入っている。
     とりわけ巻頭の「妖魔の森の家」が凄かった。意外性が強烈で、アタマをガーンとやられるような感じ。これは傑作だ。
     ディクスン・カーの短編集、予想外に面白くて楽しいのだが、創元推理文庫の全5巻の内、3巻以降は絶版になっているらしく、古書以外では手に入らない。これは復刊してほしいなあ、と思う。

  • まず、ほんとは★4とかつけたかったけど、海外の古典ミステリーは読むと疲れちゃうので……
    私の力不足のせいだけど……
    日本の話の倍以上に時代や情景、話の流れなんかを想像力を高めていかないと、よく分からなくなってくるのです。

    で、そんな私のヒットは、
    【妖魔の森の家】【第3の銃弾】
    前者は、ラストのびっくりの余韻がずっと続いて心地良い。
    後者は、これからどうなる?のわくわく感がたまらない。

  • 海外古典ミステリに分類されるものは、実は少し苦手意識があるのですが、カーは読めばいつも面白い。すごく、私のわくわくのツボを刺激してくる。

    表題作、人物の造形がとても素晴らしくて印象に残りました。犯行はけっこうゾッとする。

    「第三の銃弾」真相はずいぶん入り組んでいるなあと悩ましかったけれど、読んでいる最中のわくわくレベルがとても高かった。

  • ミステリ。中短編集。
    短編4作、中編1作。
    良かったのは、表題作、「赤いカツラの手がかり」、「第三の銃弾」。
    特に「第三の銃弾」が、不可解な状況をこれでもかと詰め込んだ魅力的な謎と、鮮やかな解決で美しい。
    やはり不可能犯罪といえばカー。良作。

  • 東京創元社によるカーの第2短編集。日本独自に編まれた短編集だが、本書は各編メリハリがあって好きな方である。
    なんと云っても本書は表題作に尽きる。カーの中でも傑作の部類に入る短編だ。20年前神隠しにあったかのように一週間少女が失踪した事件の元となった妖魔の森の家と云われるバンガローに再びその少女がその家に入るといつの間にか姿を消していた。しかも家には鍵がかかっており、周囲はHM卿も含め、ずっと見張られていたのだ。しかも誰も出て行ったものもいないという、扱われるモチーフはカーが得意とする密室物。しかも妖魔の家なる怪奇色も施してぬかりがない。そしてそれを実にすっきりと解き明かす論理はカーにしては(?)非常に整然としており、カーの作品の最たる特徴が出た作品だ。だからこれに比べるともう1つの密室物である「ある密室」がやや強引さが目立ち、やや劣る。

    その他収録されている作品のうち、「軽率だった夜盗」は数年後読むことになる『仮面荘の怪事件』の原版となる短編だし、「第三の銃弾」は逆に長編であった原版を省略したカット版で、数年後早川書房から完全版が出版された。
    残りの1編「赤いカツラの手がかり」は着想が面白く、あまりのバカバカしさに苦笑を禁じえないが、後の『帽子収集狂事件』に繋がるユーモアがあり、結構好きな方である。

    以上、不完全版が2編収録されているが、読んだ当時はそんなことは知らないので気にならず、むしろヴァラエティに富んだ短編集だという印象が残った。しかし本を手にとって浮かぶのはやはり表題作が醸し出す雰囲気。本書はこの1編を読むだけでも価値がある作品集と云えるだろう。

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著者プロフィール

別名にロジャー・フェアベーン、カー・ディクスン、カーター・ディクスン。1906年、アメリカ生まれ。新聞や学生雑誌への寄稿を経て、30年に「夜歩く」で作家デビュー。長年の作家活動の業績から、63年にアメリカ探偵作家クラブ賞巨匠賞、70年には同特別賞を受賞した。1977年死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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