皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

制作 : 井上 一夫 
  • 東京創元社
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本棚登録 : 430
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118112

感想・レビュー・書評

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  • クリスティも絶賛したと言われるトリックが用いられた作品です。
    主人公格(探偵役ではない)であるイヴ・ニールが犯人でないことは、読者には分かるのだが、状況的証拠から容疑者の扱いを受けてしまいます。
    登場人物数も少なく舞台も狭いため、比較的犯人候補は絞りやすかったのですが、私には見抜くことができませんでした。
    あまり詳細には触れませんが、ストーリーに若干の偶然性が盛り込まれており、またトリックに関しては、人によってはアンフェアと捉える人もいるだろうなと感じましたが、私は十分楽しめるものだと思います。
    犯人、トリックを理解した上で、再読したい作品でした。

  • 今の時代に読んでも面白い上に騙されるって結構凄い事だと思う。

  • The Emperor's Snuff-Box(1942年、米)。
    ノン・シリーズ。カー中期の作品で心理トリックがメインの異色作。

    2度目の結婚を控えたイヴは、向かいの家で婚約者の父親が殺されたのを寝室の窓から目撃する。運の悪い偶然が重なり、彼女自身が容疑者にされてしまうが、目撃した時には前夫が寝室に忍びこんでいたために、潔白を証明することができなかった…。

    スピーディで意外な展開の連続で、読んでいて飽きない。ちょっとユルいけどチャーミングなヒロインと、彼女の騎士役を務める切れ者の探偵というベタな設定も、また良し。犯人の意外性もさることながら、偶然が重なった結果、当初の計画以上にトリッキーな事件になってしまったというところが面白い。

  • とても読みやすい翻訳モノ。登場人物が絞られているので名前が覚えやすく、人物のイメージもつきやすいのでは。

    トリックがもてはやされる本作。でも一番の面白味はイヴがいかに事件に巻き込まれ窮地に追い込まれるかというサスペンス要素にあると思う。女の私から見て、こういう危なっかしい女性というのはわりと身近に思い当たり、その人達を重ねてハラハラヤキモキ。彼女の心理の描かれ方もアガサ・クリスティーあたりの女性作家が書いたように違和感はない。
    トリックそのものは私は鮮やかだと思うし、謎解きをしようと思って読むわけではないので真相がわかった時の驚きを味わうこともできた。ミステリー初心者でも楽しめる作品。

  • 『曲がった蝶番』の感想においてカーの作品の私的ベスト5に入ると書いたが、本作も同じく私的ベスト5に入る作品である。フェル博士物でもHM卿物でも、はたまたバンコラン物でもないノンシリーズのこの作品は実に整然とした美しさを持っている。それが故にケレン味がないということでカー信奉者からはカーらしくないというほとんど言い掛かりのような批判を受けている作品でもある。

    再婚を控えた女性の許にある夜前夫が訪れる。彼女イヴの家は婚約者トビーの家の通りを隔てた真向かいにあり、その目を気にして明かりを消した。しかし前夫ネッドはわざと窓際に立って離れようとしなかった。そのうちネッドはトビーの家で誰かがトビーの父親モーリスの部屋から出て行こうとしていると告げる。イヴが覗くとなんとモーリスが殺されているように見えた。驚いたイヴはネッドと共にモーリス宅へ行こうとするが、色んなごたごたに巻込まれるうちに、イヴ自身が加害者の如き、状況を呈していく。

    本書は『死者はよみがえる』で見られた巻込まれ型が非常に上手く事件に溶け込みあっており、それが主人公イヴをどんどん窮地に陥れていく。思わぬアクシデントでネッドの鼻血が付くことで血痕が出来ることを皮切りに、どんどん運命の歯車がイヴにとって最悪の方向に転がり、殺害者の容疑がどんどん濃くなっていくところは見事なストーリー展開だ。
    さらに本作では人間の思い込みを巧みに利用することで、ありえないと思われた犯人が実に説得力を持って納得させられる。しかもそれが作者のご都合主義ではなく人間って確かにこんな間違いをするよなと納得させられる類いのものであるから、アンフェア感が全くない。逆に同じ過ちを読者も思い知らされることだろう。『連続殺人事件』の時にも書いたが、登場人物を一つの駒と見ず、意思を持った人間として扱うカーの長所がいかんなく発揮された紛れもない傑作である。

    そして本書にはミスディレクションが数多く盛り込まれていることも見逃してはならない。最も大きなミスディレクションはここに記すことは出来ない。なぜならこれは真相に大いに関わってくるからだ。敢えて云うならば全編に散りばめられた「会話」そのものがミスディレクションになっている。そしてそれが絶妙に読者にある錯覚を引き起こさせているのだ。
    しかし実はよく見落としがちなのだが、実は最も巧妙なミスディレクションは本書の題名であろう。この題名こそが読者に抗えない先入観を与え、サプライズに大きく寄与している。いやあ、ここまで来ると単なるミステリ作家の枠を超え、策士とまで云いたくなるほどだ(もちろんいい意味で)。あまりカーの作品を読んで好感触を得られず、読むのを止めてしまった読者に、カーの最盛期とはこれほどまでにすごかったのだと教える意味でもぜひとも読んで欲しい作品だ。

  • 言わずと知れた名作ミステリ。事件は一つだし、メインの謎自体もたった一つなのだけれど。まったく物足りない気はしませんでした。
    イヴを巡るサスペンスフルな展開も読みどころ。彼女がいったいどうなってしまうのかが気になって、ぐいぐい読み進みました。彼女を巡る周りの人々のねじれた人間関係の方が複雑といえば複雑、かも。事件の真相が実はとんでもなくシンプルだったことも驚愕。もちろん、いくらシンプルだと言ってもおいそれと気づけるものではありませんでした……。

  • 読み進めながら進むにつれて犯罪の不可能さが増していって「どうすんだこれ、、、」と思っていたぐらい。
    いやーーーー、やられた。笑
    なるほどと思ったしたしかに私たちにも材料は提示されているよ、、
    先にこの手のトリックを受け入れる下地はあったからなるほどですんだけれど、当時は驚天動地だっただろうなあ、、。

  • トリックにはやや無理があると感じたが,それなりのレベルの推理小説であろう.

  • ミステリーの古典の中の古典という印象で今まで手をつけなかったけど、カーの作品では王道じゃないらしい。
    主人公の女性、そして探偵役の精神科医のそれぞれの心情が、背負っている役割と奥底の心情が揺れているので心理劇としての感じが強かった。

  • ディクスン・カーの作品でも一、二を争うほど有名な一作。アガサ・クリスティもトリックを絶賛していたらしい。カーの中では異色の作品らしいが、カー作品をほとんど読んでいない自分には詳しいところは分からない。

    薄幸美人のイヴ・ニールは再婚を間近に控えていたが、ある夜、二階の寝室に居た所に前夫がやってくる。前夫と言い争っている最中、彼女は向かいの家に住んでいる婚約者の父親が殺されているのを目撃。しかもアリバイを言い出せないでいるうちに、殺人犯の濡れ衣を着せられてしまい、前夫は意識不明の重体に。絶体絶命の彼女の前に現れたのは、心理学の権威であるターモット・キンロス博士だった。

    キンロス博士が出てくるだけあって(他の作品に出てくるのかは知らないが)、本作には心理トリックが使用されている。心理トリックは、うまく使えば完全犯罪を容易に演出することができるが、使い所が難しい諸刃の剣。とはいえ、不可能犯罪の大家であるカー先生の手腕は流石のもので、自分も登場人物と一緒に見事に引っかかってしまった。

    イヴ・ニールみたいに超美人なのに男運が悪すぎる人ってのは現実にもいそうな感じがして、何とも言えない気持ちになる。以上。

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