幽霊射手 (創元推理文庫―カー短編全集 4 (118‐20))

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118204

感想・レビュー・書評

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  • 『B13号室』を読んでみたくて図書館で借りた。それのみ読んで返却。他はまたチャンスがあれば…。

    ■B13号室(一九四四)
    ラジオドラマ脚本。EQMM(エラリー・クイーン・ミステリー・マガジン)にも載ったものらしい。私は最近読んだ子ども向けのミステリー名作ガイド(『きっかけ大図鑑』)で知り、からくりが知りたかったので読んだ。主人公アンが「最近読んだ小説では…」というかたちでトリック仮説を提示しているところがニクい。

  • 短編集。「奇跡を創り出した男─ジョン・ディクスン・カーについて─)」「死者を飲むかのように……」「山羊の影」「第四の容疑者」「正義の果て」「四号室車の殺人」「B13号船室」「絞首人は待ってくれない」「幽霊射手」「花嫁消失」が収録。「山羊の影」から「四号室車の殺人」はバンコランもの。「B13号船室」からはラジオドラマ形式。

     バンコランもので、四つの兇器以外をすべて読んだので(ハヤカワのポケミスでしかないのでしばらく読む機会はないかもですが)、短編を読んでみようとおもった次第で、本作品――カーの短編集を読んでみました。
     バンコランものに関して言えば、いろいろびっくりしましたね。「死者を飲むかのように……」は、バンコランが登場しない代わりに、髑髏城で登場するアルンハイム男爵が登場したのにはにやりとしてしまいました。おそらく当人ですよね? それと同じで、バンコランものの短編に、絞首台の謎に登場したランダーヴォーン卿も登場し、長編読んでからだととてもおもしろかったです。むしろ、短編から入って長編行くともっとにやりとするのかもしれませんが。
     作品としては、いろいろあったのですが、ほぼ不可能犯罪ものでカーの作風がよくわかる作品ばかり。怪奇趣味だったり、不可能犯罪だったりで惹きつけは強くとても楽しく読めました。ただ、ラストがいまいち納得行かない作品も幾つかあってその辺はうーんと思ったりも。特にラジオドラマはその傾向が強かったような。もっとも、ラジオドラマは時間が決まってるんでしょうし、そのあたり難しいのかもしれませんが。
     あ、あと、「正義の果て」のバンコランと、ラジオドラマですが「絞首人は待ってくれない」のフェル博士の対比は、その探偵像を表しているようで、少しゾクッとしました。
     カーがよくわかる、面白い作品でした。

  • カーの死後の調査と研究に依って発掘された若かりし日の作品群やラジオドラマを集大成した待望のコレクションです。
    処女短編「死者を飲むかのように……」を筆頭にアンリ・バンコランの活躍する推理譚と名作「B13号船室」等の傑作脚本が掲載されています。

  • 東京創元社によるカーの第4短編集。本書から通常の短編に加え、ラジオドラマの脚本も併載され、ますますマニアのコレクション・アイテム度が増している。

    短編は今までの3作で盛り込まれることの無かった、アンリ・バンコラン物がほとんどを占め、それに他の短編集にも収録されていたノンシリーズの歴史ミステリが1編収録されている。私は本書で初めて脚本調の作品を読んだが、これが意外に読みやすく、すんなりと頭に入ったため、案外この短編集は好きな方である。恐らくこれは装飾過多な演出と持って回った文体がシナリオという形であるため、簡略され、一切の無駄がそぎ落とされたせいだからだろう。当時の私はまだカーの訳文に難儀しており、逆にこの簡潔な文章が読書の手助けになった覚えがある。

    したがって本書でも記憶に残っているのはバンコラン物を筆頭に収録された短編ではなく、ラジオドラマの方である。ラジオドラマのシナリオでありながら、古くよりカーの良作と云われ、現在でもモチーフにした作品が日本ミステリ作家の間で書かれている「B13号船室」と表題作の2編がそれだ。前者は小さい頃に読んだ本当にあった怖い話とシチュエーションが酷似しており、それが故に鮮明に記憶に残っている。後者は単純に面白かった。こういう先入観を利用したトリックは他にもあったが、これについてはすんなりと嵌ってしまった感があった。これもシナリオ調の文章が一助になったのだろう。

    実は最初ラジオドラマの脚本まで収録して短編集を編むことに出版社の卑しき商売根性とマニアの香りを感じたので、嫌悪感を示していたが、結果は上に述べたように存外面白かった。逆に云えば作者のルーツを辿る意味でもこのような作品集も読むべきだと考えを改める契機になった短編集だったと云えよう。

  • バンコラン他

  • 『奇跡を作り出した男 ジョン・ディクスン・カーについて』
    ダグラス・G・グリーンのカーの伝記。

    『死者を飲むかのように・・・』
    ボルジア家に伝わる呪われた杯。チェザーレ・ボルジアを毒殺した杯。杯からワインを飲んでも死なない人間と死んだ人間の行動の違い。アルンハイム卿の推理。

    『山羊の影』
    アンリ・バンコラン・シリーズ

    密室から脱出すると宣言したマートン。ランダーボーン卿の見守る中密室から消えたマートン。賭けに参加したビリー・ギャリックとの対立、アメリカ人商人ジュリアン・アーバン氏に対する借金。密室から脱出しビリーの伯父で富豪のフラニョオ氏を殺害したマートン。坊主頭という彼の特徴に隠された秘密。目撃者はバンコラン。

    『第四の容疑者』
    アンリ・バンコラン・シリーズ

    頭を撃ち抜かれたスパイ・ラ・ガルド。彼と恋愛関係になったサン・マリー。彼女の夫でイギリス側の諜報員オライアダンと使用人で狂信的なセレスト・グラタン。ラ・ガルドの館に出て行ったサン・マリー。彼女を連れ戻しに行ったオライアダン。密室で射殺されたラ・ガルド。

    『正義の果てに』
    アンリ・バンコラン・シリーズ

    従兄弟であるジョン・ダーワーズを殺害した罪で死刑宣告を受けたトム・フェローズ。恋人をめぐり対立していた二人。事件当夜、何者かに誘い出されたトム。ダーワースの残された命の秘密と神父の罪。

    『四号車室の殺人』
    アンリ・バンコラン・シリーズ

    特急「青い矢」の車室の中で殺害された宝石密売人メルシエ。改札した車掌の証言に隠された秘密。

    『B13号船室』
    新婚旅行中消えた新郎。新婦たちが入った「B13」の船室は存在しない・・・。見えない男。

    『絞首人は待ってくれない』
    フェル博士シリーズ

    手を上げている男を撃ち殺したとして死刑判決を受けた女。フェル博士の推理。目撃者の証言。スーツとシャツの穴に隠された秘密。

    『幽霊射手』
    何者かが矢を打ち込む回廊。そこでついに殺人事件が・・・。

    『花嫁消失』
    かつて消えた花嫁。その花嫁にそっくりな女性が体験する恐怖。

     2002年2月23日読了

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著者プロフィール

別名にロジャー・フェアベーン、カー・ディクスン、カーター・ディクスン。1906年、アメリカ生まれ。新聞や学生雑誌への寄稿を経て、30年に「夜歩く」で作家デビュー。長年の作家活動の業績から、63年にアメリカ探偵作家クラブ賞巨匠賞、70年には同特別賞を受賞した。1977年死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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