帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118303

感想・レビュー・書評

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  • 帽子が奪われ、奇妙な場所に飾られる事件が街で横行する中、ある老人のシルクハットが盗まれる。
    そしてその帽子は、老人の甥の死体が身につけていた!!

    発端の謎は魅力的だし、それに対する解答も見事。「帽子はなぜピッタリだったのか」という訳わからんヒントはこういう意味だったのか、と納得。
    解説にも書かれていた伏線も面白い。

    だが、正直それ以外は少し物足りない。中盤の事情聴取のあたりや、帽子収集狂の謎が解決された後はどうものめり込めなかった。
    謎を解いていくなかで、不可能犯罪であることが明らかになってくる、という構成は悪くないが、だとしたらトリックが少し弱い。

    乱歩がカーのベストに挙げた作品だそうだが、自分にはイマイチ面白さが分からなかった。

  • とっても面白かった。もっとカーの作品を読もうと思った! 

    とにかくキャラに茶目っ気があって、遊び心が感じられて満足である。
    特にフェル博士の愉快かつ朗らかな、大げさな探偵ぶりが微笑ましい。その他のキャラもどこか人間臭く、愛嬌があって一人一人が好ましかった。

    そして、ここが凄いところだと思ったのだが、そのキャラクター造形がきちんと事件の鍵になっているところが読み応えがあり、面白い。
    ドリスコル(被害者)の生きている場面は作中には登場しないが、生前の彼の性格、およびその話し方や身振りといったものまでが、ばっちり「どうして彼がそのような行動を取ったのか」という動機づけになっており、説得力を感じた。
    中でも彼が「もっとも恐れていたこと」は何か、と指摘する場面には「なるほど~」と膝を打ちたくなった。

    実際のところ、ミステリーとしては筋が込み入っており、やや読みにくさを感じる。また個人的には、最後の最後でのどんでんがえしは果たして必要だったのか? と思う気もなきにしもあらずだった。
    しかし、それ以外の部分で十分読ませ、かつ楽しませてもらったので☆5つで。いやはや、愉快な読書でした。

  • 前半は事件の検証に終始して退屈。後半からは、探偵役フェル博士のキャラが全開で面白かった。

  • 連続帽子盗難事件、ポオの未発表原稿盗難事件、ロンドン塔での殺人事件の3つの事件が絡み合います。
    タイトルにもある帽子盗難事件がメインかと思いきや殺人事件に焦点が絞られるので、不気味な「いかれ帽子屋」に期待していたわたしはちょっと残念でした。

    食い違う証言によって複雑さを増す殺人事件が、ひとつの筋の通った解決の道筋を示すのは爽快で、ばら撒かれた伏線も楽しい。

    そしてなによりもフェル博士がとにかく愉快で可愛らしく、ほのぼのしながら読みました。


    ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・








    閉ざされた現場でのフーダニットかと思っていたらアリバイトリックだったというのがおもしろいです。
    しかもそのトリックもいきあたりばったり。
    わたしは天才犯罪者の綿密な完全犯罪より、焦ってドタバタした結果意図せず完全犯罪になってしまった、という展開がおもしろくて好きです。
    フェル博士が作中で言うとおり、遊びのつもりが深刻な事態になってしまうのが滑稽であり悲しくもあります。

  • 霧やら暗い照明やらがやたら強調されてるせいか、事件の骨子どころか雰囲気も見えにくいミステリィ。
    「多分」「断言は出来ないが」「よく見えなかった」等のボカシセリフが頻出。さすがイギリス…灰色の街…。何を信じて推理すればいいやら…。

    ロンドン塔が舞台という魅力的すぎる舞台設定と、フェル博士に踊らされるハドリー警部のおかげで、安楽椅子探偵ものはあまり好まない私も最後まで興味深く読めました。警部いいよ警部(*^^*)未解決っ←

    謎自体はそれほど派手じゃないのに(死体の置かれた場所は派手か…)、帽子盗難と未発表原稿盗難という被害者近辺で起こった事件が、殺人事件と何らかの関わりがあったと浮き彫りになる経緯や、新しい人間関係が見えることで新たに浮上する謎など、息もつかせません。

    解明部分は犯人がまさかの自白をしてフェル博士がフォローするというものでしたが、登場人物達の既出のセリフや行動全てが端整な答え合わせに収束していく部分は、非常〜に心地良いです。
    単純なフーダニットかと思いきや、謎の主眼が××××に置き換わる手際も鮮やか。う〜ん、すごい…。


    ただ、ロンドン塔の平面図がいまいち分かりにくいので、ページを割いて色々な方向から立体図で示すとかすれば、もっと良いんだけどな…(我が儘)。

    あと、シルクハットの内部構造とか知らない日本人には、なかなかのアンフェア臭は漂います。

  • 帽子を盗んでは飾り付ける謎の事件が起こっているロンドン。記事を書いていた男が、服装とはチグハグな帽子をかぶせられた死体となって見つかった。一方、ポオの未発表原稿が盗まれたウィリアムは調査をハドリー警部に依頼して……→

    フェル博士シリーズ2作目らしい本作品。帽子と未発表原稿という、なんとも現代の日本では題材にしにくいアイテムを使ってのフーダニットミステリ。でも面白い!帽子がああで原稿がこう!みたいな(?)なるほどなーと唸る。殺人の道具がクロスボウの矢やし、かなり派手なんだけど事件は地味かも?→

    なんとも切ない流れになるので、後半はぐいぐい引き込まれるし、ラストは呆然となる。江戸川乱歩がカーの作品では一番好きだと公言していたみたいなんやけど、なんかわかる気もする。乱歩先生、私も好きです。しんみりしちゃうんだよね。うん。まぁ、フェル博士はまぁまぁ暴れて?るけど(笑)

  • 以前読んだことがあるはずなのだが、ぴんとこなかったのか記憶にほとんどなく、ほぼ初読である。

    カーの作品というのは趣向がすごいというイメージがあるのだが、実際にはわかりやすい派手な演出が多いわけではない。この作品も、どちらかというと地味に始まり地味に展開するんだけど、読んでいるうちに不可能状態であることが次第に沁みてくる感じである。

    だから、本当にすごいなあと思うのは後半も押し迫ってからで、特に真相が明らかになってから、ここまでの展開にこめられた名人芸がわかってくるような感じ。そういう意味では確かに名作で、読後にしみじみと「すごいなあ」と振り返ってしまった。

    ただ、逆に言えば読んでいる最中は、名探偵のキャラクターがなければやや退屈をしてしまったかもしれない。登場人物も整理されているし、小道具もよくできているのだけど、もうちょっとだけ展開が早いと、現代の読者にも受け入れられやすいような気がする。それでも、大昔にこんな作品が出版されているのだから、同時代に生まれてあっけにとられてみたいものだ。

  • ジョン・ディクスン・カーの『帽子収集狂事件』を読了。

    ロンドン塔の逆賊門で発見された一人の死体。その頭にはシルクハットが被せられていた。“いかれ帽子屋”と呼ばれる人物の帽子盗難被害が相次いでいた中での殺人事件。

    それだけならば大してストーリー的に惹かれるものはないが、本作はポーの未発表原稿も関係していると見られる事件で、古典ミステリファンには堪らない要素が含まれている。言うまでもなく未発表原稿というのはフィクションだが、作品には一層のめり込めることだろう。

    カーのベストミステリと言えば、しばしば『三つの棺』や『火刑法廷』が挙げられるが、かの江戸川乱歩は『帽子収集狂事件』をカーのベストミステリに選んでいる。何でも、密室以上の不可能性がその理由の一つらしい。

    密室と比べどちらがより不可能性が高いかはそのトリックにもよるだろうが、本作で使われているトリックは十分に不可能性はある。乱歩にとってはこちらが優ったということだろう。ただ、驚天動地というのは些か過ぎた表現ともとれる。

    余談だが、来年にはカーの孫娘シェリー・ディクスン・カーの作品が発売される。何でも切り裂きジャックが題材とした時間遡行もので、アメリカでも好評だという。彼女の場合、その肩書きも味方しているかもしれないが、それは実際に読んでから判断したい。かなり楽しみだ。

  • フェル博士シリーズの2作品目。

    霧の立ち込めるロンドンで帽子収集狂が話題となり、そんな中で起こるポーの未発表原稿の盗難やロンドン塔での殺人。

    アリバイものだが犯人が分からず最後に驚かされた。
    読みにくいが雰囲気を楽しむことが出来た。

  • ギデオン・フェル博士物。
    もうずいぶん前に一度読んだことがあって、その時はピンとこなかった「ポオの未発表原稿」の価値が、今ならわかる!
    もっとそのことを嘆き悲しみなよー!!
    殺人事件より誰が犯人かよりそっちがショックだ!という後半の展開。

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著者プロフィール

別名にロジャー・フェアベーン、カー・ディクスン、カーター・ディクスン。1906年、アメリカ生まれ。新聞や学生雑誌への寄稿を経て、30年に「夜歩く」で作家デビュー。長年の作家活動の業績から、63年にアメリカ探偵作家クラブ賞巨匠賞、70年には同特別賞を受賞した。1977年死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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