蝋人形館の殺人 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118310

作品紹介・あらすじ

行方不明の元閣僚令嬢が、他殺死体となってセーヌ河で発見された。予審判事バンコランは、彼女が最後に目撃された蝋人形館の館主を尋問したのち、その館へ赴き展示を見て回るが、そこで半人半獣の怪物像に抱かれた女の死体を発見する。頽廃の都を震撼させる異様な殺人事件の真相とは。優雅な装いの下に悪魔の冷徹さと知性を秘めたバンコランの名推理。新訳にして初の文庫版。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリ。アンリ・バンコラン・シリーズ。
    バンコランのシリーズを読むのは、『絞首台の謎』を読んで以来2冊目。
    覚えていなかったが、ジェフ・マールというワトソン役が語り手を務める。
    蝋人形館という舞台が、カーの怪奇趣味に良く合っているように思う。
    ミステリで人形が出てきたら、だいたい怖いイメージ。
    ジェフも身体を張った活躍をしていてスリリング。
    ミステリ的には、フーダニット。トリックには拘りがなさそうに見え、作者へのイメージとは少し違った感じ。
    カーの作品の中ではエンターテインメント要素が強めの作品か。

  • ディクスン・カーの予審判事アンリ・バンコラン物です。カー特有の怪奇趣味と古き良き探偵小説が絶妙にミックスされていて面白かったです。1章1章の最後に驚くべき内容が記述されているのと、後半にはドキドキの冒険譚も組み込まれていて、飽きさせずに劇的な最終章まで辿りつきことができました。こうした構成は何か連続ドラマ物をみているような感覚ですね。
    出だしのサロン(?)での会話から明らかになる殺人事件、そして、その直後に蠟人形館のサティロス像に抱えられたもう1つの死体を発見する、というぞくぞくするような雰囲気がなかなか良いですね~。パリの歓楽街や名所をこと細かく描写しているのもこうした雰囲気を盛り上げるのに、大きな役割を果たしていたと思います。
    探偵役のバンコランは、メフィストフェレスの知性と冷酷さを持つという触れ込みですが、相手をねちねちとドSさながら小突きまわすように尋問する様子がまた面白かったです。(笑)そして、相棒ジェフの活躍にも、そこまで放置するかな~。(笑)
    まあ犯人は率直にいって、それはないだろうという思いもあるのですが、経緯の描写が良かったせいかそこまでの不満はありませんでした。(笑)ただ、最後の事件の時間経緯が変に思うことや、あそこの2階のレイアウトがいまひとつわからないことなど、細部の整合性に疑問があり、とりあえずこの点数です。
    ラストはメフィストフェレスさながらの勧誘ですが(笑)、これはこれで面白かったのではないかな。

  • 行方不明の令嬢が他殺体となってセーヌ川で発見される。令嬢が最後に目撃された蝋人形館を訪れたバンコランはそこで新たな死体を発見する。

    ミステリ、雰囲気共にカーの世界を堪能。
    怖いけど先を読んでしまう。そして絶妙に張られていた伏線に気がついて愕然。下手なトリックがないので読後の脱力感もないしw
    最初から最後の犯人とのやりとりまでギャンブルでまとめてるのもいい。
    そこに挑むバンコランも、対峙する犯人も怖かっこいい。

  • 舞台はパリ。
    薄気味悪い蝋人形館での殺人、そして事件と密接に関わる秘密仮面クラブと怪しい雰囲気が満載の中、予審判事アンリ・バンコランがジェフ・マールとともに活躍します。

    ちょうどいいところでドラマが終わってしまうような上手い落とし方が各章で見られ、ページを繰る手が止まりませんでした。
    退廃的なパリ、暗く恐ろしい蝋人形館、きらびやかで背徳的な仮面クラブの描写が全編を通して素晴らしいです。
    バンコランと宿敵ギャランの対決や、ジェフの危険な潜入捜査など派手な場面も多く、謎解きだけでなくエンターテイメントの要素もふんだんでした。

    事件の方はバンコランの推理、ギャランの推理、マリーの推理とその度に驚かされましたが、やはり意外な真犯人が用意されています。
    しかしこの犯人に驚いたというよりは犯人の行動の方にびっくりです。
    ラストの緊迫感に満ちた犯人との対決はなんとも印象的で余韻を残します。

    雰囲気の良いホラー要素と謎解きに冒険譚も加わった非常に楽しい1冊でした。

  • アメリカの作家ジョン・ディクスン・カーの長篇ミステリ作品『蝋人形館の殺人(原題:The Corpse in the Waxworks 、英題:The Waxwork Murders)』を読みました。
    アンソロジー作品『贈る物語 Mystery 九つの謎宮』に収録されていた『妖魔の森の家』を読んで、ジョン・ディクスン・カーの長篇作品を読みたくなったんですよね。

    -----story-------------
    *第10位『IN★POCKET』2012年文庫翻訳ミステリー・ベスト10/作家部門

    行方不明の元閣僚令嬢が、他殺死体となってセーヌ河で発見された。
    予審判事バンコランは、彼女が最後に目撃された蝋人形館の館主を尋問したのち、その館へ赴き展示を見て回るが、そこで半人半獣の怪物像に抱かれた女の死体を発見する。
    頽廃の都を震撼させる異様な殺人事件の真相とは。
    優雅な装いの下に悪魔(メフィストフェレス)の冷徹さと知性を秘めたバンコランの名推理。
    新訳にして初の文庫版。
    解説=鳥飼否宇
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    1932年(昭和7年)に刊行されたアンリ・バンコラン・シリーズの第4作にあたる作品です。

    オーギュスト陳列館には数々の蝋人形たちが並び、薄暗い照明の中で異様な雰囲気をかもし出していた… ギロチンの下でのけぞるルイ16世、臨終のナポレオン、、、

    中でも傑作中の傑作『人殺しのルシャール夫人』の出来栄えは見事だった… その蝋人形がある娘の後を追って暗い階段を降りてゆき、そのあと、その娘が、屍体となってセーヌ河に浮かぶという事件がおきる!

    予審判事にして名探偵バンコランは、彼女が最後に目撃された蝋人形館の館主を尋問したのち、その館へ赴き展示を見て回るが、そこで半人半獣の怪物像に抱かれた女の死体を発見する… 被害者は上流階級の娘たち、、、

    果たして秘密クラブとは? パリの都を震撼させる異様な殺人事件の真相は? 瀟洒な装いにメフィストフェレスの冷徹さと知性を隠すバンコランの名推理… カーならではの怪奇趣味の横溢した初期の代表作。

    久しぶりに本格モノの長篇ミステリーを読みたくなって選んだ作品… 不気味な印象のする蝋人形を舞台にすることで怪奇色で物語を彩りながら、本格ミステリとして愉しめるエピソードが随所に散りばめられていて期待通り愉しめました、、、

    助手役であるジェフ・マールが秘密社交クラブに潜入して重大な証言を盗み聞きして逃走する展開や、兇器のナイフを持っていた腕と腕時計をはめている腕が同じ腕だったことから意外な犯人を推理する展開、真犯人を電話で追い詰めたバンコランが裁きを犯人に委ねる際の緊迫感… 等々、見所が満載で飽きずに一気に読めました。

    次もジョン・ディクスン・カーの作品を読んでみようと思います。

  • 蠟人形館というおどろおどろしい舞台で、殺人が起こる。何と心揺さぶる設定だろう。ワトソン役のジェフ・マールの活躍も見どころ。犯人は意外すぎる人物。予想できなかった。

  • アンリ・バンコランの第四作です。舞台は頽廃した爛熟期のパリに戻りました。良家の令嬢が死体となってセーヌ川に浮かんだ、最後に目撃されたのは「蠟人形の館」その〈恐怖回廊〉で魔王様一行は第二の死体を発見する。語り手ジェフ・マールが主役張りに暴れ回り、艶やかな展開でラブロマンスが身を救います。魔王様は今回あまり揮わないのですが、ラストであっと驚く解決をします、予審判事の職は金で買ったらしいですが、趣味なのがよくよく察せられます。闇夜や土砂降りのパリを描写する新訳は素晴らしい。プロット良しの作品です。(1932年)

  • 05.02.2014 読了

  • 仮面クラブを軸に、物語全体から醸し出される退廃的な空気感が素晴らしい。
    舞台で見たくなる作品。

  • 蝋人形館に仮面クラブ。この妖しい雰囲気に、江戸川乱歩などが相当影響を受けたんだろうな。
    最後の犯人の追い詰め方にびっくり。

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著者プロフィール

別名にロジャー・フェアベーン、カー・ディクスン、カーター・ディクスン。1906年、アメリカ生まれ。新聞や学生雑誌への寄稿を経て、30年に「夜歩く」で作家デビュー。長年の作家活動の業績から、63年にアメリカ探偵作家クラブ賞巨匠賞、70年には同特別賞を受賞した。1977年死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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