曲がった蝶番【新訳版】 (創元推理文庫)

制作 : 三角 和代 
  • 東京創元社
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本棚登録 : 134
レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118341

感想・レビュー・書評

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  • ギディオン・フェル博士物の長編です。
    イギリスはケント州マリンフォード村の地主であるジョン・ファーンリー准男爵は、25年前にその乱暴ぶりに手を焼いた父によってアメリカに追いやられた人物であった。父と兄の亡き今、ファーンリー家の家督を継いだジョンであったが、我こそは本物のジョンであると名乗り出た人物が館を訪れて、その真偽の対決が始まった。そして起こるべくして起きたと思った事件であったのだが・・・。
    カー特有の怪奇趣味と不可能犯罪が全面に彩られたミステリーで、サスペンスな雰囲気とともに事件の推理も楽しめるという、まずは極上の推理小説といえるでしょう。タイタニック号沈没での出来事や、本事件の1年前にあった殺人事件、悪魔崇拝に、不気味な自動人形、そして発生した殺人なら不可能とも思える事件などと、ネタがてんこ盛りで読者を飽きさせません。そして、例によって章ごとの最後に記される驚きべき話によって、次から次へと夢中になってページをめくらざるを得ないような展開が読者を魅了します。ただ少し理屈っぽいのはいいとしても、会話が意図的にこれでもかと脱線するのがイライラさせられたのと(解説によればわざとみたいです(笑))、ネタがてんこ盛りのせいと思いますが、ところどころ話の展開や論理にあれ?と思うようなところがあり、この辺りはもう少しコンパクトにみせても良かったのではないかと・・・。まあ、ネタを広げ過ぎてしまっているので、全てが論理的に収束させるのもなかなか難しいですよね。(笑)ただ、ラストの読者を翻弄するやり方は少々度を越していたのではないかと・・・。(笑)
    ドラマ展開として、最初のどっちが本物?論争や、フェル博士やエリオット警部を交えての事件の考察、検死審問、そして最終局面など、ぞくぞくするような場面が多く、カーの物語構成力は流石というしかありません。自分としては美人設定(?)のマデライン・デインにもっと最初から活動して欲しかった。(笑)
    最終的に犯人は、目星をつけた人物からは見事に外してしまいましたが、これ、外しても仕方ないですよね!?

  • ほんとにもう、カーってば、「雰囲気の魔術師」とでも言おうか、「世界観を創り上げる天才」とでも言おうか、とにかくひとつの「ワールド」をそこに出現させてしまうことにかけては右に出る者がいない。

    登場人物然り、彼らの来歴然り、ひとつひとつの小道具然り、建物然り…そこここに、怪奇と懐古と浪漫の香りが立ち昇る。そしてそれがまた、とてつもなく魅力的で妖しい魔力に満ち溢れているのだ。ひとつひとつの要素は古典的でありながらも使い古された感はなく、むしろ一周回って新鮮な印象すら受ける。「壊れかけの自動人形」なんて、それこそオールドファッションの筆頭のような気がするのだけど(日本で言えば乱歩的とでも言おうか)、それが、屋根裏部屋やその他あちこちの場所で出現したときのあの新鮮な驚きは、我ながらハッとするところがあった。「改めてそのカードを出されるとは思っていなかった!」感というか、古典として愛されてきたアイテムにはやはりそれなりの魅力があったから使われてきたのだなぁとしみじみ感慨深く感動したというか…。

    タイタニック号の沈没が物語の背景に絡んでくる点も、直接の内容には関係がなくとも妙に心に浪漫の灯をともされるし、「私こそがこの家の相続人だ」と主張する男2人が、どちらも個性的な魅力とどこかしら影をたずさえたイイオトコ、である点も物語に華を添えている。

    推理の流れとかトリックとか、そのあたりを厳密に論じるなら「…ん?それは強引では?」と小首をかしげるような場面があることも確かなのだけれど、全体像として、ひとつのエンターテイメント作品として、そういった細かいつじつまの合わなさを補って余りある魅力があると断言したい。

  • ネタが分かると、なんだ、そんなカンタンなこと?とだまされた気分になるのだけれど、そこまでぐいぐい引っ張ってくれる快感の方が強い。だからカーは好きだ。

    トリックなどはそうたいしたことはないが、読書の楽しみは十分味わえるかと。

  • ディクスン・カーのフェル博士モノ。
    続けざまに、バンコラン、HM卿、フェル博士とディクスン・カーを読んできたけれど、これが一番面白かった。
    1932年に書かれたとのことだけれど、古さは感じられない。
    創元推理社にもっと古典と呼ばれるモノの新訳本を出版していただきたい。

  • 久々にカーを読んでみた。んー、面白い。

    英国ケント州の准男爵家の当主が突然死し、ごくつぶしの弟が米国から戻ってきた。土地と爵位を相続し一年がすぎたころ「本物の相続人は私だ」と名乗る男が現れる。はたしてどちらが本物なのか?

    この謎がまずキャッチーで引きつけられる。そして、とうとう決着がつく!と思ったところで殺人事件が起こる。
    この状況が、密室ではないけれども何人も証人がいる中庭で、実質的に密室。どうやって犯人は誰にも見られずに被害者を殺せたのか?おおお、これぞカーって感じ。

    タイタニック号沈没事件をからめるメロドラマ性、呪いのからくり人形なんていういかにもカー好みの小道具(新訳創元推理文庫の表紙はこれ)が出てくるのにもにんまり。

    クリスチアナ・ブランド『ジェゼベルの死』の解説で山口雅也が書いていたように、本格ミステリで大事なのは議論。本作では、フェル博士たちがああでもないこうでもないと議論して、ちゃんと可能性をつぶしていってくれるから話の流れがスムーズ。

    で、肝心のトリックですが……いや、こりゃないっしょ~。反則ですよ。ズッコケちゃいました。でも本を叩きつけたくはならず、苦笑いして「ま、いっか」とつぶやく。カーには稚気があるから、どうも憎めない。巻末にはフェル博士シリーズ一覧表が載っていて便利。

  • 凄い。最後まで騙された、というか小説だから出来るようなトリック。奇術愛好家の間でも謎のままの自動人形の意味、真相と犯人像との結びつきは唸らされました。ディクスン・カーの評価が高いのも分かります。
    後で似たようなシチュエーションの話はホームズにもあったことを思い出しましたが後書きで実話でもあったらしいことを知りました。

    カーだけではなくヴァン・ダイン、クイーン、江戸川乱歩、島田荘司などミステリーには素敵な作品が多いです。単なる謎解きではない、一般的な小説の枠を超えたものです。

  • 面白い!

    25年ぶりに故郷に帰国し、爵位と地所を継いだジョン・ファーンリー卿は偽物で、自分が本物のファーンリー卿であると主張する男が現れた。
    タイタニック号の沈没の際に入れ替わったと主張し、決定的な証拠によってどちらが本物か判明しそうな矢先、事件が起こる。

    事件の被害者は、普通に考えるならこの人だろうと思われる人と別の人が被害にあい、別の1年前の事件が絡み、さらに関係ないと思うものが絡み、さっぱり推理できない。
    これだと思ったものがことごとく覆され、どんでん返しが何度もあり、全然掴めない。
    最後まで掴めなかった。
    不可解も不可解。
    とにかく面白い。

  • 友人からの「これバカミスだよ 」との触れ込みで読んでみました。
    確かにこれは想像つきませんわ…
    ネガティブな伏線を張りまくって、なんとかフェアなミステリになっている……のか……?
    ある人物の証言で不可能殺人が成り立っていたようなものなので、それが偽証だというのはなんとも落ち着かない。
    とはいえ、前半の入れ替わり騒動、中盤の怪奇的な展開、楽しめる部分はかなりあったので全体としては満足です。
    自動人形とか出てきた時点で僕の好きなやつですね!

  • 早い段階でパトリックが犯人である事はなんとなくわかってはいたが、どうしても犯行の手口がつかめなかった。まさかパトリック自身が義足でその身体的特徴を利用し犯行に及んだのは驚いた。

  • フィンランド人のペンパル様に薦められて読んだ本。
    最後までドキドキ。イギリス貴族モノ。オチはイマイチだけど、それでも全体的な構成がよいので最後までドキドキ。終わり方もスマート。

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著者プロフィール

John Dickson Carr

「2006年 『幻を追う男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョン・ディクスン・カーの作品

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