曲がった蝶番【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118341

感想・レビュー・書評

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  • フェル博士もの。前に読んだのが『帽子収集狂事件』だったけど、あの作品の相棒的存在のハドリー警部は今回登場せず。視点人物は若い作家で、博士は途中からの登場。

    アメリカから帰国し、爵位と土地を相続したファーンリー卿について、偽物であり自分が正当な相続人であるという人物が現れ、屋敷で話し合いの場が持たれる。そこで殺人が起こり…

    出だし、なんとなくクリスティっぽいなーと思いながら読み始めたけど、殺人が起こった後くらいから怪奇趣味が物語をじわじわと覆っていく感じがすごかった。ペイジが自動人形が窓際にあるのを発見した時の恐怖ときたら!

    トリックと幕切れは、ものすごい驚きをもたらすとともに「エッ」て感じでもある。どっちかというとバカミスの系譜のような…怪奇バカミス。でもめちゃくちゃ面白い。

  • 勝手に動く自動人形、というカー特有の怪奇雰囲気が満点の一作。途中までは結構怖かった。
    ファーンリー卿のもとへ現れた、自分こそが真のファーンリーだと名乗る人物。相続権争いの最中、殺人が起こり…読ませるプロットでおもしろかった。犯人も意外性がありよかったが、重要な証言をした人物が、犯人を庇うため全くの嘘を言っていたというのはちょっとずるいかも?

    悪魔崇拝や、脚のない人物が歩き回るという中々ショッキングな事件だったが、最後の犯人による独白がとてもよかった。自分たちは決して異常なのではなく、好きなことを好きなようにしていただけの普通の人間なのだという独白によって、おどろおどろしい物語から現実に引き戻された感じがした。

  • フェル博士シリーズ9冊目、ギミック満載で興味津々の読ませる傑作▲爵位と地所を継いだジョン・ファーンリー卿は偽者だと主張する男が現れた。渡米の際にタイタニック号の船上で入れ替わったのだと▼もったいぶるのは探偵だけではない「いったいどちらが本物なのか」そして「あまりにも与えられた情報が少なすぎる」と言いつつ、すべてをさらうフェル博士。登場人物みな腹に一物あるようで、主張に思惑が感じられる。そのせいか二転三転、ペイジ君はスリリングな羽目に合いつつも、やはりロマンス展開、ラストはスッキリどっきり蝶番(1938年)

  • 「ジョン・ディクスン・カー」のミステリー作品『曲がった蝶番(原題:The Crooked Hinge)』を読みました。

    「ジョン・ディクスン・カー」作品は『火刑法廷』以来なので6年振りですね。

    -----story-------------
    1年前、25年ぶりにアメリカから帰国し、爵位と地所を継いだ「ジョン・ファーンリー卿」は偽者であり、自分こそが正当な相続人であると主張する男が現れた。
    渡米の際にタイタニック号の船上で入れ替わったのだと言う。
    あの沈没の夜に―。
    やがて、決定的な証拠によって事が決しようとした矢先に、不可解極まりない事件が発生した!
    巨匠「カー」による「フェル博士」登場の逸品、新訳版。
    -----------------------

    1938年に発表された「ギディオン・フェル博士」シリーズの長編第9作目です。

     ■第一部 七月二十九日(水曜日)
     ■第二部 七月三十日(木曜日)
     ■第三部 七月三十一日(金曜日)
     ■第四部 八月八日(土曜日)
     ■解説 福井健太


    タイタニック号沈没の際に二人の人物が入れ違い、25年後に本人だと主張する男「パトリック・ゴア」が現れ、本当の当主であると主張するという物語… どちらが本物の「ジョン・ファーンリー卿」なのかを調べるため、双方の弁護士立会いの下、「ファーンリー」の少年時代の家庭教師「ケニット・マリー」が呼ばれて試験が行われる。

    「マリー」が当時の指紋帳と二人の指紋を照合する作業をしている最中、庭に立っていた「ファーンリー」が突然池に向かって倒れた、、、

    池には血が広がり、「ファーンリー」は喉を切られて死んでいた… 倒れたのを見た者はいたが、喉が切られる瞬間を見た者は一人もいなかった。

    「ファーンリー」は偽物だったので自殺したのか、それとも本物だったので殺されたのか… 騒ぎのあいだに指紋帳が盗まれ、やがて恐怖のために失神したメイドの手から指紋帳が発見される、、、

    屋根裏部屋に隠されていた魔術書や自動人形、そして1年前に殺された「ヴィクトリア・デーリー」が参加していたと思われる魔女集会… 怪奇的要素も加わり状況は混沌としますが、「ギディオン・フェル博士」が真相を見破ります。


    久しぶりに本格モノの長篇ミステリーを読みたくなって選んだ作品、、、

    序盤から物語にどっぷり浸かれる展開と、怪奇色で物語を彩りながら、1年前に起きた殺人と結びつけて明かされる真相は圧巻でしたね。





    ≪ちょっとネタバレ!≫

    「モリー」は魔術に興味があり魔女集会を開いていたという秘密があり、「ファーンリー」はタイタニック号沈没の際に記憶を失い、自分でも本物かどうかわからなかないという秘密があった… お互いの秘密を知ったこと等から、元々、夫婦の折り合いが悪かったことが終盤になって明らかになります。

    これは序盤の展開からは想定できませんでしたねぇ… 実は「マデライン・エルスペス・デイン」を疑っていました。

    そして、圧巻なのは「パトリック・ゴア」がタイタニック号沈没の際に両足を失い、義足を付けて身長を自在に変えるという特技を会得していたこと、、、

    義足なしで手と胴体だけで、義足よりも素早く歩いたり、自動人形の座る箱に忍び込んで人形を操っていたとは想像できませんでしたねぇ… ちょっと騙された感じはありますが、17世紀には実際にそんな人物が居て、自動人形を操っていたらしいので、納得せざるを得ないですね。






    以下、主な登場人物です。

    「ジョン・ニューナム・ファーンリー」
     准男爵

    「モリー・ファーンリー(旧姓:ビショップ)」
     ジョン卿の妻

    「ナサニエル・バローズ」
     ジョン卿の事務弁護士

    「ブライアン・ペイジ」
     作家・ジョン郷とバローズの友人

    「パトリック・ゴア」
     相続権主張者
     本物のジョン・ニューナム・ファーンリーを名乗る人物

    「ケニット・マリー」
     ジョン卿の子ども時代の家庭教師

    「マデライン・エルスペス・デイン」
     ジョン卿の幼友だち

    「アーネスト・ウィルバートンソン・ノールズ」
     ファーンリー家の執事

    「ベティ・ハーボトル」
     ファーンリー家の女中

    「ヴィクトリア・デーリー」
     1年前に殺害された女

    「ギディオン・フェル博士」
     名探偵

    「アンドルー・マッカンドルー・エリオット警部」
     ロンドン警視庁警部

  • 不可能犯罪に対する回答として「証言者が嘘をついていた」はかなり力技だと思うが、それを凌駕するほとの素晴らしいストーリー構成だった。二人のどちらが本物なのかという謎、それが確定してからもつきまとう疑念、そしてその入れ替わりゆえに発生した動機! どこをとっても最高の傑作だ。
    フェル博士の頭の良さも素晴らしい。小手先のテクニックに頼るのではなく、事件全体を俯瞰する目。名探偵だ。

  • 2020/04/21読了

  • 4+

  • 読者を巧みにミスリードへと誘い、まんまとだまされた。
    犯人があの人だなんて…だれも思わないよね。
    とりあえず、誰が本物なのか? そしで誰が犯人なのか?

  • 久々にカーを読んでみた。んー、面白い。

    英国ケント州の准男爵家の当主が突然死し、ごくつぶしの弟が米国から戻ってきた。土地と爵位を相続し一年がすぎたころ「本物の相続人は私だ」と名乗る男が現れる。はたしてどちらが本物なのか?

    この謎がまずキャッチーで引きつけられる。そして、とうとう決着がつく!と思ったところで殺人事件が起こる。
    この状況が、密室ではないけれども何人も証人がいる中庭で、実質的に密室。どうやって犯人は誰にも見られずに被害者を殺せたのか?おおお、これぞカーって感じ。

    タイタニック号沈没事件をからめるメロドラマ性、呪いのからくり人形なんていういかにもカー好みの小道具(新訳創元推理文庫の表紙はこれ)が出てくるのにもにんまり。

    クリスチアナ・ブランド『ジェゼベルの死』の解説で山口雅也が書いていたように、本格ミステリで大事なのは議論。本作では、フェル博士たちがああでもないこうでもないと議論して、ちゃんと可能性をつぶしていってくれるから話の流れがスムーズ。

    で、肝心のトリックですが……いや、こりゃないっしょ~。反則ですよ。ズッコケちゃいました。でも本を叩きつけたくはならず、苦笑いして「ま、いっか」とつぶやく。カーには稚気があるから、どうも憎めない。巻末にはフェル博士シリーズ一覧表が載っていて便利。

  • 1年前、25年ぶりにアメリカから帰国し、爵位と地所を継いだジョン・ファーンリー卿は偽物であり、自分こそが正当な相続人であると主張する男が現れた。
    渡米の際にタイタニック号の船上で入れ替わったのだと言う。
    やがて、決定的な証拠によって事件が決しようとした矢先、不可解極まりない事件が発生した!(あらすじより)

    なんとか読み通した…

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著者プロフィール

別名にロジャー・フェアベーン、カー・ディクスン、カーター・ディクスン。1906年、アメリカ生まれ。新聞や学生雑誌への寄稿を経て、30年に「夜歩く」で作家デビュー。長年の作家活動の業績から、63年にアメリカ探偵作家クラブ賞巨匠賞、70年には同特別賞を受賞した。1977年死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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