レディに捧げる殺人物語 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488124021

作品紹介・あらすじ

三つ子の魂百までという。リナは自分の性格を変えることができなかった。決定を先送りすること、思い込みで糊塗(こと)すること。崩壊の足音は遠く近く響いていたのに。八年に及ぶ結婚生活の果て、夫ジョニーの真実に気づいたそのとき……。人間の不可解な性(さが)と、その内心の葛藤。ヒッチコック『断崖』の原作としても知られる、アイルズ=バークリーの傑作犯罪心理小説。(別題『犯行以前』)

感想・レビュー・書評

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  • フランシス・アイルズ名義。
    バークリー作品と合わせても、この作品は自分の1番好きなタイプの作品だった。
    ヒッチコックの映画『断崖』の原作。

    万人受けではないけど、人間の心理的なものが好きな人にはハマると思う。

    裏表紙あらすじ
    【リナは8年近くも夫と暮らしてから、やっと自分が殺人者と結婚したことをさとった…】

    よくある定型的なサイコパスな夫に苦しめられる妻の話ではない。
    そんな単純な話をアイルズが書くわけない。
    最初の1行から最後の1行まで全く飽きず、物語にのめり込んでしまった。

    夫のジョニーは働かないし、借金して賭けはするし、どうしようもないダメな奴。
    でも人たらし的な才能はすごい。

    自分はこんな男性とは絶対に結婚したくない。
    なんだけど!!
    妻リナの詳細な心情を読むと、こういう男性に引っかかってしまう人の心理状態がわかる。

    『殺意』では「殺人を犯す人ってこういう考え方をするんだ」という驚きだったけど、この作品は「ダメな男性に惹かれていく女性の心理ってこういう感じなんだ!」というのが体験できる。

    ダメな男とわかってるのになぜ別れられないのか?ということが最初は謎だったけど、リナの心理描写が詳細に描かれているので「なるほどこういう風に考えてるからそうなるのか…」と、とても興味深かった。

    この作品の1番驚きを感じたのは、夫ジョニーの恐ろしさ!!

    サディスティックな感じもないし、虐待や暴力性も全くない。
    よくありがちな裏の顔が怖いとかでもない。
    妻とも近所の人ともめちゃくちゃ仲が良い。

    では、どうして怖いのかというと…、

    ここからはネタバレ含みます。
    ここから先はご注意ください。



     











    夫ジョニーは、心理的に自然と被害者にそっち側に誘導していく。洗脳ともまた違う。
    被害者は自分では気が付かないうちに〈自分の意志で〉そっちへと導かれてしまう。。。

    リナは自分が夫に殺されるとわかっている。
    いつでも逃げられるから決めるのは自分次第。

    でもそんな生活なのにリナは幸福だと感じている。それが何でなのか?は、読んで体験してください。

    〈三大倒叙は誰が決めたのか?〉と以前疑問に感じたが、この作品の解説に答えが載っていた。

    三大倒叙を選んだのは、江戸川乱歩だった。

    この作品は被害者側から見た倒叙?のような珍しいタイプ。
    乱歩はこの作品を高く評価していたけど、三大倒叙にはきちんとした倒叙形式である『殺意』の方を選んだという。

    あ〜これでフランシス・アイルズも読み終わってしまった(TдT)
    アイルズ名義は3作品とも没入感がものすごく高いので、読むとすぐにその世界に入り込める。
    バークリーよりもアイルズ名義の方がより好きだったし、読んだ後にもずっと残ってる。
    もっともっともーっと作品を読みたかったな。。。
    ★10

  • アイルズ名義の作品としては、『殺意』のほうが有名だが、作品として優れているのはむしろこちらだと思う。なんという傑作。

  • 某死ねばりに、いやそれ以上のクソ野郎と、なんだかんだそいつから離れられない駄目女。派手なトリックがあるわけじゃない。美しいロジックがあるわけじゃない。というかそういうのはない。心理描写によって描き出される恐怖が素晴らしい。

  • 本書の著者はバークリー名義で「毒入りチョコレート事件」等のミステリも書いています。
    バークリー名義の本は読んだ事があるのですが、アイルズ名義は本書が初めてです。
    とても嫌な気持ちになる小説です。
    ジョニーには腹が立ちますし、リナには苛立ちます。
    ジョニーは最低です。
    ですが、私はリナみたいな人間の事も理解出来ません。
    最低な人間であるジョニーから離れられないリナに終始、イライラさせられました。
    リナを可哀想だとは思えない程にリナは鈍感で愚かです。
    ジョニーという人間に囚われてしまったリナは盲目的なのでしょう。
    作者は読んでいる人間にこういった気持ちを起こさせようと試みながら物語を書いたのではないかと思えてきます。

  • バークリーがアイルズ名義で発表した犯罪心理小説の第二作。「殺意」よりページ数も増量しており読み応えはありますが、内容が推理小説と分類できるほど推理小説っぽくない。中盤までは殺人とか犯罪的なにおいのするようなものもほとんどでず、犯罪心理という面では中盤までぐだぐだしますが、後半からいろいろと真理が見えてきます。ただ、その心理の前にリナのおろかさばかりが鼻について、犯罪心理という面ではちょっと見れなかったり……。

  • 読んでる間中ずっと不快感が。ジョニーの生き方生き様性格何もかもが嫌。まあそういう目的なんだろうけど。そしてリナの何も分からなさ具合もまたイライラしてくる。心理小説としては一級品だと思う。妻の気持ちの揺れ具合とかは見事。でもなんだかなぁ。もう読まなくていいかな。

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