償いの雪が降る (創元推理文庫)

  • 東京創元社
4.02
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本棚登録 : 256
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488136086

作品紹介・あらすじ

大学生のジョーは、授業で身の回りの誰かの伝記を書くことになった。適当な身内がいないため訪れた介護施設で、末期がん患者のカールを紹介される。カールは30年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、仮出所し施設で最後の時を過ごしていた。カールは「臨終の供述」をしたいとジョーのインタビューに応じる。話を聞くうちにジョーは事件に疑問を抱き、真相を探り始めるが……。バリー賞など三冠獲得、衝撃のデビュー・ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 若者が大学の課題で、過去ある老人の話を聞きに行ったところ、次第に冤罪を疑い…?
    人間関係が丁寧に描かれ、心温まります。

    大学生になったばかりのジョーは、身近な老人の話を聞いて伝記を書くという課題に、途方にくれます。
    母は酒浸り、時々変わる相手の男は身勝手で、ジョーのバイト代を使い果たすような大人ばかり。
    自閉症の弟のことが気になりつつも、家出同然にやっと大学生になったのです。
    近くの老人ホームを訪ね、殺人罪で服役していたカールに話を聞くことにします。
    話してみると30数年前に少女を殺したとはとても思えない人物。ヴェトナムでの戦友も、カールの人柄を保証します。

    過去の事実も調べ始めたジョー。
    弟を見捨てた苦しみも乗り越えて引き取り、隣室のライラとも次第に親しくなってゆきます。
    刑事のルパート、冤罪に詳しい教授とも知り合い、真相に近づくにつれ、今度はジョーの身に危険が…!?
    親に頼れず、努力してきたジョーがとても良い子なのが何より好印象で、バイトで鍛えて体力もあったりするのが頼もしい。
    ヒューマンな出来事と、冒険のスリルと盛り上がり、どちらもあって、満足の読み応えでした☆

  • 本書はフォロワーさんのレビューで気になっていた本。末期癌であるレイプ殺人犯の伝記を書く大学生という設定に惹かれて読んでみました。
    ミステリーサスペンスとして非常に面白かった。一気読みでしたね。

    登場するキャラクターがそれぞれ非常に個性的で良い味を出してるんですよ。特に主人公のジョー・タルバートの造形は秀逸です。
    彼は刑事でも、探偵でもなく、もちろんミス研にも入っていない(笑)、ただのミネソタ大学の学生です。しかも母子家庭育ちで、母親は飲んだくれのアル中、何度も飲酒運転をしては警察に逮捕されています。ジョーは週に数回バーでセキュリティとして働き、学費と母親の為の保釈金を稼ぐ、さらに18歳の弟が自閉症を患っていて、こちらもジョーが面倒を見てやらねばならないという絵に描いたような苦学生。

    そんなジョーは大学の英語の授業の課題で誰かの伝記を書かなければならなくなりました。身内に適当な対象がいなかったため、たまたま訪れた介護施設で末期癌のカールを紹介されます。カールは30年前に14歳の女の子をレイプして殺し、死体に火を付けたという罪で長期間服役していていましたが、余命わずかということで仮出所し、介護施設に収容されていました。

    ジョーはカールへのインタビューの許可を取り付け、カールから当時の話を聞くことができます。
    カールのことを調べてみると、ジョーの予想に反して憎むべき少女レイプ殺人鬼であるはずのカールは自らの危険を顧みず身体をはって戦友の命を救いシルバースター勲章(戦闘時における功績に対して授与される勲章としては上から3番目の高級勲章)を受けているヴェトナム戦争の英雄だったのです。

    ジョーはカールの話を聞くたびカールへの印象が変わっていきます。
    少女殺人事件の犯人はもしかしたらカールではないのではないか?
    ジョーの頭の中にそんな疑問が生じてきたさなか、ヴェトナム戦争当時の出来事については口を閉ざしていたカールでしたが、意を決して彼が語ったのはヴェトナム戦争で地獄を見た若き兵士達の狂気に満ちた世界、そして戦争に翻弄された若きアメリカ兵・カールが体験した驚愕すべき事実でした。

    本書ではカールの回想でかなりヴェトナム戦争の描写が描かれています。
    カールが従軍していたのは1968年のことなのでヴェトナム戦争が最も激烈に戦われていた時期です。ヴェトナム戦争・米軍最大の汚点とされている米軍が数百人の無抵抗の村人を無差別に虐殺した『ソンミ村虐殺事件』が発生したのも1968年ですが、このような事件は当時のヴェトナム戦争においてはたぶん氷山の一角なのでしょう。

    もしこのあたりの知識が薄いと思われる読者人の方がいるならヴェトナム戦争を描いた傑作戦争映画・オリバー・ストーン監督、チャーリー・シーン主演の『プラトーン』をご覧になると良いと思います。この映画を見ればカールの回想シーンをかなりビビットに思い描くことができるでしょう。カールの心情描写は当時のヴェトナム戦争の過酷な兵士達の状況を理解していないとちょっとピンとこないかなという感じです。

    ちなみにヴェトナム戦争を描いた傑作映画というとマイケル・チミノ監督の『ディア・ハンター』、フランシス・コッポラ監督の『地獄の黙示録』やスタンリー・キューブリック監督の『フルメタル・ジャケット』などもありますが、この3つは内容が抽象的でヴェトナム戦争を戦った一兵士の視点からはかけ離れすぎているので「本書を理解する」という点からするとおすすめできないです。ただ『フルメタル・ジャケット』で登場する兵士がヘリから村人に向かって機関銃を乱射しながら叫ぶ有名なセリフ
      『逃げる奴は皆ベトコンだ、逃げない奴はよく訓練されたベトコンだ』
    はヴェトナム戦争を戦ったアメリカ兵の象徴的なセリフではありますね。

    本書に登場するキャラクター達は、主人公のジョーもカールもジョーを助けることになるジョーの隣人のライラ・ナッシュもそれぞれ過去に傷を負った人達です。その彼らが忘れようとしている過去に向き合い、この事件を通じてそれぞれ向き合っていきます。
    本書の原題は“The life we bury(私たちが埋葬している人生)”、意訳するならば『私たちが忘れようとしている、見ないふりをしている人生』となるでしょうか。
    誰にでも忘れたいが、いつかは向かい合わなければならない過去というものがあると思います。そういったものに向き合う勇気を少し与えてくれるような、そんな通常のミステリーでは味わえない、ちょっとしたノスタルジーを感じることできる小説でした。

    本書の著者はミネソタ大学でジャーナリズムの学位、ハムライン大学で法学の学位を取り、25年間、刑事専門の弁護士として働いてきたという経歴の持ち主です。
    本書は、2015年バリー賞(ペーパーバック賞)を受賞した傑作です。著者は既に本書の他数冊を上梓しており、ジョー・タルバートのその後を描いた小説や、本書のラストで重要な役割を演じたマックス・ルパート刑事を主人公としたミステリーもあるということなので是非翻訳してもらいたいと思います。
    著者のアレン・エンケンス。今後、要チェックの作者さんになりました。

    • くるたんさん
      kazzu008さん♪こんばんは♪

      私もこの作品、良かったです。記憶に残るほどです(⁎˃ᴗ˂⁎)
      ジョーの無茶振りにハラハラもしたけれど、...
      kazzu008さん♪こんばんは♪

      私もこの作品、良かったです。記憶に残るほどです(⁎˃ᴗ˂⁎)
      ジョーの無茶振りにハラハラもしたけれど、とても魅力ある好青年でしたね。
      訳も美しく読みやすく、特にラストシーンが、最後の一文まで美しかったなと思いました。

      続編楽しみですね♪
      2019/07/26
    • kazzu008さん
      くるたんさん。こんにちは!
      コメントありがとうございます!くるたんさんのレビューが非常に良かったので読ませていただきました!
      この作品、...
      くるたんさん。こんにちは!
      コメントありがとうございます!くるたんさんのレビューが非常に良かったので読ませていただきました!
      この作品、ホントに面白かったです。
      確かにジョーの行動力には「もうちょっと考えてから動きなよ」ってツッコミ入れながらも応援してました(笑)。
      この作者さんも訳者さんもすごく良いですね。確かに文章が美しく、読んでいて心地よかったです。

      早く続編が翻訳されてほしいですね。楽しみです。
      2019/07/27
  • ミステリとは別の良さを味わえた一冊。

    大学生のジョーが介護施設で出会ったのは、仮釈放された末期がん患者のカール。カールの事件は冤罪なのではないか…疑問を抱き真相を探り始めるジョー。

    ゲスい人間も多数登場するが、とにかく主人公のジョーが好青年なのが良い。

    あまりにもたくさんのことをひとり抱え背負っているジョーの姿とカールの抱えているもの、最後の時を待つ姿から目が離せない。


    人の心の傷は、人との出逢い、言葉によってかさぶたのように傷をふさがれ、ゆっくり治癒していく…そんなことをじんわり感じさせられた。

    読後もゆっくり余韻の波が押し寄せる。

    単なるミステリでは終わらない、ミステリ以上の良さを味わえた作品だった。

  • すごい勢いで読んだ。
    主人公が心配で。

    半分はおじいさんの昔に迫っていく部分
    ここはすごくいい。
    主人公とお隣さん(のちの彼女)
    の関係性が少しずつ変わっていく
    よくできている。
    そして、そこに弟、母が関わってくる
    うまいなあ。

    後半。
    主人公が真犯人に追い詰められていく
    よくできている、んだと思う。
    しかし、怖いものがだめな私には、
    怖すぎた・・。
    なんかもうはらはらしちゃってだめなんだよね。
    作品がよいから怖いんだと思うが
    もう最後まですごい勢いで
    主人公が助かるかだけを考えて読んだ。


    「ギッブスの命を奪う権利など私にはなかった」
    カール言った。
    「アメリカに帰れば、彼には奥さんと
    ふたりの子供がいた。なのに私は彼を殺害
    したわけだ。・・以下略

    こういうところを読んで、
    第二次世界大戦のときに作られた
    日本の紙芝居には
    敵の姿をわざと描かないことによって
    相手にも家族や恋人がいるんだ
    ってことにまで
    思い至らせないようにしていたんだっけな
    なんてことを考えながら読んだ。
    というか、私はこういうことを
    考えながら読みたい人なのだろう。

    一方で
    小説家さんの講演会を聞いた後に読んだので
    ああ、人物の関わりがしっかり描けてるな、とか
    ここで、この人がしゃべるかあ、なるほど、とか
    逃げ出すところの描写がすごいな、とか
    雑念が入ってきて、完全にお話に入り込む
    ことができなかったが、
    それでも楽しく読めた。
    しかし怖いのでもう読めない・・。

  • ジョーはミネソタ大の学生。お金が無くて大変な生活をしている。母親は飲酒運転をするような人で、弟は自閉症。実家からは離れられた。大学の授業で伝記執筆という課題があるが、話を聞ける祖父母がいないので、老人ホームに行って誰かインタビューさせてもらえないかと頼んだ。すると紹介してくれたのは、30年前に14歳の少女を殺害したとして刑務所にいたのだが、末期がんなので釈放されてここに来たカール。話を聞くと、人を殺しそうな人とは思えない。裁判の資料を読んでいくうちに冤罪ではないかと思うようになり・・・

    これは良かった。良かった&面白かった。

    ジョーの母親や弟の件では、大変な生活を強いられる。母親がどこかに居なくなってしまって、忙しいのに弟の面倒みないといけなくなる。この家庭環境には同情する。

    アパートの隣に住む美人と仲良くなったりと青春小説っぽさもありつつ、ミステリーとしてもなかなか。

    もし、カールが真犯人ではないとすれば、誰なのか?という本筋も解決までのプロセスがすごく良かった。読みやすかったのは、訳文のおかげなのか、元の文章がいいのか、その両方なのか。

  • 文句無く素晴らしい。タイトルも秀逸。償いの雪がふるですよ。センスいい。

    ミステリーなんですが、ヒューマンドラマでもある。好い人たちとそれ以外の人たちの落差が激しい。また、登場人物がみんな可哀想な重い暗い過去があって気が滅入る。そしてお約束の殺人犯の家に単身乗り込む主人公。
    心に体力がある時に読むべき。

    最後はみんな幸せになって良かった。
    これが著者の1作目らしいので、次も読んでみたい。

  •  後悔のない人生なんてない。もう二度取り戻すことのできない失敗の記憶は誰にだってある。そしてそれは、時には、誰にも告げられぬ心の奥の真実である。魂の重荷として人生に付き纏う、影みたいな存在である。本書は、逆境としか見えない家族……アル中で性悪な母と、自閉症の弟、父はそもそも誰であるか知らない……から離れて、完全自立を目指す大学生のジョーが、学業の一端として取り組む課題を通しての、人生の激しい(激し過ぎる?)転機となる事件を、ジョー自身の眼を通して一人称で語る物語である。

     彼が取り組もうと決めた課題とは、老人ホームで末期癌に苦しむ少女殺しの犯罪者カールにインタビューし、彼の人生を纏めるというもの。しかし、ジョーは、何度か老人や彼の戦友に会ううちに、どうやら彼が無実で、30年前の少女殺人犯は別にいるらしいと思うようになる。もう一つの真犯人の存在は、ジョーの中で確信に変わってゆく。

     元囚人で、今は余命三ヶ月の老人カールは、ヴェトナムでは勇士であったが、戦後は何かの秘密を抱え、自分自身に対して過酷なものであった。カトリックでなければ、自殺をしていた人生、とカールは告白する。誰かに殺されても、死刑に処されても、自殺ではないので受け入れてしまおうと思う人生。そういう人生とは何だろうか? 

     己れのなかにも贖罪の魂を抱え込んで生きてきたジョーにとって、この件は学業の課題ではなく、己れの存在や生き方を問うまたとない機会でもあった。

     事件を再調査すべく、弁護士、刑事などの助けを借りつつ、ジョーは家族の問題も抱えてゆく。身勝手でエゴの強い母との軋轢、独りでは生きてゆけない弟への深い愛情、そして知り合ったばかりの女子大生とは調査の協力を頂く中で、恋愛感情が深まってゆく。

     若き大学性という純真をもって、泥濘のように黒ずんだ30年前の少女殺人という悪と暴力に立ち向かわせるこの独特な構図こそが、本書の優れたところだろう。

     一人称小説であり、深い人生小説でもあるのに、起承転結がはっきりした構成の豊かさ。元戦友がカールの過去を語るヴェトナムの戦場の回想シーンから、ジョーを見舞う執拗で急激なバイオレンス・シーンに至って、読者の心臓の音は高まるだろう。本書の背景にあるミネソタの大自然、そして冬の雪という季節が、それぞれのシーンに過酷な負担や寒さを容赦なく加えてゆく。ジョーの試練に追い打ちをかける痛み、震え。優れた展開に立ち止まることができなくなる事必至な、静と動綾なす物語の妙。

     全体はミステリ色でありながら、ほとんど冒険小説と言っていい。男の矜持。気位。そして人生の傷の深さと、再生へ向かう意志と友情。そうした人間的な深き業と逞しさとを含め、時にダイナミックに、時に静謐に描かれた、相当に奥行の感じられる物語である。最近、冒険小説の復権を思わせるこの手の小説が増えてきた。シンプルに喜ばしいことだ、とぼくは思う。

     本書の主人公ジョー・タルバート、本書登場の刑事マックス・ルパート、他、それぞれに、続く長編作品に再登場するようである。翻訳者の務台夏子氏は、この新しい作品たちも早く訳して日本の読者たちに読んで頂きたい、と後記でやや興奮気味に書いている。キャロル・オコンネルの翻訳だけでも実に重たいだろうが、読者としては今回本邦初登場のアレン・エスケンスも、是非どんどん翻訳をお願いしたいところである。

  • 推理小説というよりも、ヒューマンドラマのような内容で、人物の構成や描写がとても丁寧で、引き込まれました。

    大学の課題から、終身刑の余命いくばくの男性にインタビューすることにした主人公。そこから、ひょっとしたら無実なのではないか?という疑問から、ジャーナリストのように調べ始める。。

    学業とアルバイトと複雑な家庭環境。どれも直向きに向き合う主人公ジョーの姿には、応援してあげたくなります。

    クリミナルマインドのような内容でしたが、推理ものとしてもなかなか面白かったし、最後もスッキリハッピーな終わり方に、心が穏やかになりました。

  • 毒親の柵を持つ青年が余命僅かな元服役囚にインタビューってなのが判って、買って失敗した~と思ったが、、、



    珍しくに最後に素直に


    ε-(´∀`*)ホッ

  • 授業で身近な年長者の伝記を書くことになった大学生のジョーは、訪れた介護施設で、末期がん患者のカールを紹介される。カールは三十数年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、仮釈放され施設で最後の時を過ごしていた。カールは臨終の供述をしたいとインタビューに応じる。話を聴いてジョーは事件に疑問を抱き、真相を探り始めるが…。バリー賞など三冠の鮮烈なデビュー作!

    予想とは少々違う展開。でも読むペースは最後まで落ちなかった。
    「ガラスの動物園」。若いころに舞台を観たことを思い出した。出ていたのが誰かは覚えていないが。

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