わらの女【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488140281

作品紹介・あらすじ

大資産家の妻を目指して、知性と打算の見事な結晶の手紙を送ったドイツ人女性ヒルデガルト。手紙が功を奏してカンヌに呼ばれた彼女は、資産家の妻の座を前に秘書の男から、ある申し出を受ける。そこには、思いも寄らぬ企みが隠されていた。これ以上ないほど精緻に仕組まれた完全犯罪小説。これからこの一冊に出会う皆さんは幸せです。素晴らしい楽しみが待っています。ミステリ史上に燦然と輝くフランス発の傑作ミステリを新訳で。

感想・レビュー・書評

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  • 1954年に執筆されたということで、古典としての普遍的な良さも感じつつ、ミステリーとしてだけでなく、人間ドラマとしても、良くできた作品だと思いました。

    皮肉にも、主人公「ヒルデ」の人生は、本人が望んでいたようなストーリーに展開していき、これを教訓として反映させるには、あまりにも遅すぎた感があるとも思ったが、私的には複雑な心境もある。

    これは小説だから、後から冷静に再読すれば、確かに突飛な事態で夢のような出来事だと認識できたかもしれないが、気付かなかった場合も充分にあると思う。
    これに関しては、犯罪者側の、人の心理状態につけこむ巧みさも感じられ、正直、寒気を覚えた。

    また、ヒルデの終盤の展開について、丁寧な内面の描写や、戦時下のドイツの事情も合わさりながら、上記のこともあって、自らの人生であるかのように入り込んでしまった。

    「どんな出来事も、それを体験した個人にとっての真実があるだけで、普遍的な真実などありはしない。」
    の一文に、考えさせられ、人生、先はどうなるか分からないなあと感じるのは、色々な状況があることを、改めて思い知った。

  • 一気読み まあ細かいことは気にせずに

  • 半世紀ほども前の作品ですが翻訳が新しくなっているそうで、読み易くテンポの良い会話を楽しく読むことが出来ました。
    それにしても主人公・ヒルデには同情を禁じえません。確かに彼女も褒められたものではありませんが、私だって騙されるよ…

  • ★4.5
    始まりは新聞の求縁広告、「当方大資産家、良縁求む」。今では考えられない設定だけれど、本書が執筆された1954年当時の文化が知れて面白く読めた。が、ヒルデが担わされる役どころも、黒幕の本当の狙いも、かなり序盤から分かってしまう。それでも、ヒルデが絶体絶命のピンチから大逆転を見せてくれるだろう、とページを繰る手の進むこと進むこと。そんな中、迎えたラストの絶望感たるや!ただ、見事なまでに完成されたラストで、これ以上のラストはないと思える。会話のテンポが小気味好く、流れるような文章も魅力的。新訳に感謝。

  • だいたいどういう結末になるかは予想がつく
    救いのない結末だがおもしろかった

  •  偶然にも生まれる前の小説を続けざまに読んでいる。こちらはピエール・ルメートルの訳者・橘明美による新訳がこのたび登場。古い作品ほど、新鮮に見えてくるこの感覚は何なのだろう?

     1960年代にフレンチ・ノワールが日本の劇場を席巻したのも、下地としてこのように優れた原作があったからなのだろう。少年の頃に劇場や白黒テレビで触れたそれらの映画を、大人になって改めて映画、小説などでノワール三昧の一時期を送ったものだ。本書はノワールでありながら、それだけではない。言わばノワール・プラス・アルファな作品なのである。ノワールの特徴である「救いなき結末」を描き切るのか? という行き止まり感に加え、見事に構成される完全犯罪の機微をも小説の題材としている故である。

     ページを開いた瞬間から、読者はヒルデガルト・メーナーというヒロインの視点で、救い亡き現実からの脱出願望にとことん付き合うことになる。ぱっとしない日常から脱出するために、大富豪の妻の座を夢見て、新聞の求縁広告を日々探す女性の視点で。知的に。微に入り細を穿って。

     とある広告主をヒルデガルトは捕捉する。相手も乗ってくる。しかし面談にこぎつけたはずの相手は、当の大富豪本人ではなく、結婚候補者を見極めるタスクを背負った秘書であった。二枚目で紳士然としたアントン・コルフである。

     様々な事情を、知らされてゆく。大富豪の扱いづらい性格。秘書の真の目論見。罠をしかける側なのか仕掛けられる側なのか、見極めのつけにくい複雑なコンゲームが展開する舞台は、大富豪の乗る航海中の豪華客船。

     地中海から大西洋へ彼らの野望を乗せて船は進む。そしてニューヨークへの上陸。大富豪の夢のような屋敷に足を踏み入れるヒルデガルト。その直後のあまりに思いがけぬ急展開。運命に翻弄されるヒロイン。謎にさらに謎が重なる。罠にさらに罠が重なる。それぞれの運命が転がる。警察の介入。追及者たち。

     現代でも十分に通用するであろう、見事な仕掛けだらけのプロット。全編を貫くヒルデガルトとアントンの野望と絶望。この物語はどこへ行き着くのか? 救済は? 命は? 

     日常に転がるちょっとした欲望から、こんなにも遠いところまで連れてゆかれるストーリーテリングを含めて、まさに時代を超えてきた名編と言えるスリラーが本作である。

     この作品は、ジーナ・ロロブリジータとショーン・コネリーが主演で映画化されている。ぼく自身は、ずっとこの二人の役者をイメージして読んでゆくことができた。誂えたようにぴったりの役柄であったと思う。フレンチ・ミステリのある意味、完成形ともいうべき本作に、是非触れて頂きたい。

  • 新訳。
    『わらの女(藁の女)』と言えば、名作と名高いフランス発のサスペンス。新訳になったことで、より現代的になった。また、新訳では、『わらの女』である主人公に、より、親しみやすく、感情移入しやすい訳文になっている。結果、『ラストの衝撃』という意味では、旧訳の方がインパクトがあったが、新訳では『イヤミス』的な後味の悪さが増していて、これはこれで好みだった。

  • 創元推理文庫創刊60周年記念 名作ミステリ新訳プロジェクトの一冊 1954年刊行の新訳

    最初から最後まで、考え抜き、舞台で踊る人を選定し、シナリオ通りに動かす。
    時間と手間をかけて特殊な状況を作り、その中で行われた完全犯罪。

    その構成を楽しみましょう。

  • 名作と名高い『わらの女』である。
    読むべきと思ってはいたが、長らく機会に恵まれず・・・・・・新訳による出版で、ついに読むことができた。

    さすが名作! 面白い!

    しかし残念! さすがに古いと思う。

    『沼の王の娘』 カレン・ディオンヌ著
    『そしてミランダを殺す』 ピーター・スワンソン著
    『完璧な家』 B・Aパリス著
    『プリティ・ガールズ』 カリン・スローター著
    『警官の街』 カリン・スローター著 etc.etc.etc..

    最近読んだものをざっと挙げると上記のようになる。
    これらと比べると、なんとも辛いものがあった。

    無理はないのだ。

    作者カトリーヌ・アルレーの生まれは1924年。
    『わらの女』出版は1954年。

    同じ1924年に生まれたマーロン・ブランドは、1954年にヒットした映画『波止場』で、アカデミー主演男優賞を穫る(受賞は翌55年)。

    同じ年にヒットしたのは、オードリー・ヘップバーンの代表作のひとつ『麗しのサブリナ』。

    いっぽうフランスでは『フレンチ・カンカン』が作られた。なんとカラーである。
    シャンソン歌手エディット・ピアフも出演して、短いながらも歌を披露している。

    同年、彼女が歌ったのは『かわいそうなジャン』。
    タイトルイメージに反して、曲調は明るい。

    1954年。
    映画は白黒からカラーへの過渡期、
    音楽はSPからLPレコードへの過渡期、
    ならばこの”古さ”も仕方がないのだろう。

    古いからつまらないのかというと、
    けしてそんなことはない。
    上に挙げた映画や音楽がそうでないのと同じだ。

    なにより、私はものも言わずに読んでいたのだ。
    「私はヒルデ、ヒルデは私」
    主人公と一体になり、のめり込んで読んでいた。

    『わらの女』が名作なのは間違いない。

    古き良き名作、銀幕のスタアを観劇する心地で読むのをおすすめする。

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