女郎蜘蛛 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488147099

作品紹介・あらすじ

ふと知り合った脚本家志望の娘がピーターのアパートメントで首を吊っていた。不貞を疑われ、ついには殺人の容疑者になって人生最大の危機に陥るピーター。パズルシリーズ続編。

感想・レビュー・書評

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  • 献本でいただいた1冊。
    なんとなく『絡新婦の理』を思い出しながら。

    主人公はアラフォー、社会的に成功している演劇プロデューサー。
    奥さんは有名な女優で結婚生活も順調に過ごしています。

    そんな中、奥さんがちょっとした旅行に出かけることに。
    淋しさを感じながらも、ある種の解放感に包まれる主人公。

    いや、わかります、その気持ち。

    で、友人夫妻のパーティに誘われて参加するのですが、、
    そこで一人の女性、、というより“女の子”と出会います。

    作家志望の20歳、特段の性的な魅力を感じることもなく、
    壁の花になっていた彼女と軽い雑談とファストフードをご馳走。

    本来であればそこで終わりになる、そんな、
    どうということのない出会いのはずだったのですが、、

    一見世間知らずな、でも世間ズレしてなさそうな純朴さ、
    恋というより、娘への保護欲を刺激されるような、そんな女の子。

    根拠のない夢であふれた彼女の想いを昇華するのに、
    少しくらいは手伝ってあげたいとの、半分は自己満足でもあろう父性。

    ええ、わかります、その気持ち、わかりますとも。

    ですが、それすらも計算されていとしたら、どうでしょうか。

    周到に張り巡らされた、見えない“意図”、
    気づかないうちに、自分の人生を破壊していく強烈な“毒”。

    それこそ、蜘蛛が巣にかかった獲物をじわりじわりと、
    自分の手元に“糸”を手繰り寄せ、捕食するかのような。

    そんな“蜘蛛の巣”の全貌が見えた時、ゾッとしました。
    “女性はいくつであっても怖いな”と、ひと言でいえば。

    仕事も安定していて、経済的にも余裕がある、
    後進を育てることも意識し始める、そんな世代。

    そんな時に、ちょっと父性を刺激されるような、
    そんな“若い子”が目の前にあらわれたら、どうでしょうか。

    火遊びまでは行かなけれど、ちょっとした愉しみ、
    でもそんな綻びが、火遊び以上の破壊力をもった毒として、、

    本作は1952年の作品で、過去にも発表されているとのこと。
    それが今回、新訳との形で50年ぶりに復活したそうです。

    でも古さを感じさせない内容で、アラフォーの男性、
    ちょっとした“刺激”を求めている方は是非、自戒も込めて。

    男性はいくつになっても馬鹿だなぁ、、可愛いけど、
    そして女性はいくつであっても怖いなぁ、、なんて。

    こんな風に感じてしまう辺り、年を取ったなと思いましたが。。

    そしてラスト、スズメバチ vs 女郎蜘蛛の戦いは、
    これまたなんともゾッとする話で、、二重の意味でやられました。

    自分の知らない所で“嘘”を塗り固められて、
    気づいたら疎外している、、そう考えると他人事でもなく。

    今後関わり合いになるコトが無ければ、いいんですけどね、、
    抑止力としてのセーフティは、常に考えておく必要があるなと。

    そんなことを現実での自分とも照らし合わせながら、、
    材料がそれなりにあるので一安心もしていたり、なんて。

    ん、しばらくは手元に置いておこうと思います。。

  • アイリスが病床の母を見舞うために旅立ったその日、ピーターは階下の友人夫婦の開いたパーティで作家を目指す二十歳の娘と知り合う。
    しかしそれがピーターのとんでもない災難の始まりだった。

    一気読みの面白さ。タイトルそのままに張り巡らされた蜘蛛の糸。もがくほどに絡む恐ろしさと目くらましのように張られた伏線。お見事! クェンティンのパズルシリーズ大好き!

  •  3幕仕立ての芝居を観ているかのような、洗練されたオトナのための(?)都会派ミステリ。

     第1幕は、ブロードウェイの売れっ子演劇プロデューサーと作家志望の垢抜けない少女との出会い。少女の突然の謎めいた死をきっかけに追われる身となった男が、真相を求めて都会を孤独にさまよう第2幕。登場人物全員がひとつの部屋に勢揃いし、驚くべき真相が明かされるエピローグ。

    巧妙に張り巡らされた見えない糸に絡み取られてゆく男たち。したたかな女たち。ウーマンリブの到来を予告する1952年型の《恋愛小説》でもある。

  •  原題はBlack Widowなのだよね。黒後家蜘蛛。
     邦題を黒後家蜘蛛にしなかったのは「黒後家蜘蛛の会」と混同されるのを避けたのかしら。ヘンリーいいよねヘンリー。

     あっという間に事件が起きて、あれよあれよという間に追い詰められて、全くもって救いが見いだせない展開である。主人公は女郎蜘蛛に捕まる訳なんだけれども、そういう意味では……黒後家蜘蛛より女郎蜘蛛の方が意図が伝わりやすい気もする。

     読み終えてしみじみと「女郎蜘蛛怖い」という感想を抱くしか無い。

  • じわじわじわじわ浮かび上がってくるしたたかさと計算とそれから生まれる悪意が、一人称であるからこそ怖くて読ませる部類のミステリ。
    伏線はお作法通りにきちんと張られて いるので、だいたいの筋は読めた!と思ったところで、しかし更にひっくり返してくれたところも素晴らしい。属性は違えども女は怖い、という二段オチなのですね。いやもう怖い。…そして男は(ひとによっては女も)馬鹿なのですね(~_~;)…

  • メスに貪り喰われるオスは、メス蜘蛛の習性どおりに餌食になる哀れな運命にある・・・。ミステリ-界の技巧派【P・クエンティン】による本作は、身に覚えのない罪で警察に追われる男を描いたサスペンスフルな犯罪ドラマの秀作です。〝オス蜘蛛はメスを殺さない、蠅も蜘蛛を殺さない、女郎蜘蛛を殺すには天敵が必要になる、その天敵とはスズメバチだった!〟喧騒のニューヨークを舞台に、被疑者自らが真犯人割り出しに奔走する緊迫のミステリ-です。

  • タイトルに惹かれて読み始めたが、畳み掛ける展開が面白かった。犯人に一番遠い人物が犯人というオチだが、納得感があった。
    だって彼女は女優だから。
    よく練られた作品。

  • 60周年記念新訳。演劇プロデューサーと女優の妻という華やかな世界で、まるで舞台のように事件が次々と展開していくのが面白くて一気読みだった。ロッティの迷惑な態度は最初から鼻についていたので、この結末には誰もが納得したことだろう。ナニーの本性を明かすアンに辿り着く過程がちょっと安易に感じたが、まあ舞台仕立なのでよいかと思った。

  • 今作はサスペンス色が強かった印象。アクの強いキャラクターが動き回るのが好きなので、ちょっとその点では今回好みではなかったかな。ぐいぐい読ませてくれるのでそこは楽しめました。(ただ、ちょっと求めてたのと違ったんだなー。サスペンスあんまり好みじゃないせいかな…)

  • これはやばいな!最初の5ページから面白くて、最後までずっと面白い!すごい!松本清張とか好きなら読むといいです!

    解説より、「パトリック・クェンティンに対しては、名探偵による凝った謎解きミステリから、徐々に人間の心理に根ざしたサスペンスへと軸足を移していった作家という見方が定説」で、コンビ作家で、そのうちの片方、ウィーラーさんという方がミステリ超好きなんだそうです。他のも探して読んでみたい。

    ちなblack widowは黒後家蜘蛛というらしいですが、wikiの黒後家蜘蛛の項より「アメリカ合衆国では、1950年から1959年にかけて、このクモに咬まれたことによる63人の死者を出したことが報告されている[30]。」。『black widow』原著は1952年。
    ほほー、という感じですが、とはいえ日本だと女郎蜘蛛のほうがイメージ湧きやすいですね。

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著者プロフィール

Patrick Quentin

「2010年 『悪魔パズル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

パトリック・クェンティンの作品

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