七人のおば (創元推理文庫) (創元推理文庫 164-4)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488164041

作品紹介・あらすじ

被害者捜し、探偵捜し、と一作ごとに新機軸を出して読者を魅了した才媛パット・マガーの長編代表作。戦後「怖るべき娘達」のタイトルで紹介され、女史の名を一躍高めた記念すべき作品。友人からの手紙で故郷のおばが殺されたことを知った主人公が夫の協力を得て、過去の思い出の中から犯人と被害者を捜そうとする。安楽椅子探偵ものの傑作である。

感想・レビュー・書評

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  • 読みたかった本。予想裏切らず面白かった!七人のおばのうち「誰が夫を殺したのか」を手紙から推測する。大好きな安楽椅子探偵物である上、サリーとピーター夫婦がおば達の会話や立ち振る舞いを回想するのだがその描き方がクリスティー並にお見事。

  • 出産を控えたサリーとピーター夫婦の元に、友人から、サリーのおばが夫を殺して自殺したことを知らせる手紙が届く。ところがサリーには7人のおばがいるにもかかわらず、手紙にはかんじんの名前が書いていなかった。
    悶々とするサリーに対しピーターは、7人のおばの性格や結婚生活について自分に話してくれたら、自殺したおばを当ててあげようと約束する。

    1940年代のアメリカが舞台である。今なら電話でもメールでもすぐに情報が伝えられるが、この当時はしかるべきところに確認しないと正確な情報は得られなかったのだろう。

    それにしても、7人のおばの個性的なこと。
    髪をひっ詰めて教師の職に就く「オールド・ミス」のテッシー。わがまま放題に育てた二人の子をさらにべったりと甘やかすアグネス。精神的に不安定なイーディス。潔癖症のモリー。人のものに手を出さずにはいられない、男好きのするドリス。ぜいたくがやめられないジュディ。そして、世間体を重視し、妹たちの意向を無視して結婚を強いる長女のクララ。

    彼女たちのことが少しずつわかってくるにつれ、誰が夫を殺しても不思議ではなくなってくるところがこの小説の面白いところである。
    結末はなんだかかわいそうなのだが、語り手を担う若い夫婦のほほえましさが後味を少し良くしてくれる。

    パット・マガーは、『不条理な殺人』に続き2冊目だが、クリスティーとは違った面白さがあり、はまりそう。

    • 111108さん
      b-matatabiさん、こんばんは。

      この作品、パット・マガーの持ち味なのか、1940年代という時代のせいか、素朴で若々しい感じと裏腹に...
      b-matatabiさん、こんばんは。

      この作品、パット・マガーの持ち味なのか、1940年代という時代のせいか、素朴で若々しい感じと裏腹に今では許されないような容赦ない非情さが合わさって私には忘れられない作品です。
      b-matatabiさんの読まれた『不条理な殺人』も積読中です(心の中で)♪
      2023/11/25
    • b-matatabiさん
      111108さん、こんにちは。
      1940年代といえば、クリスティーが名作を次々と産み出していたときですよね。
      パット・マガ-はクリスティーよ...
      111108さん、こんにちは。
      1940年代といえば、クリスティーが名作を次々と産み出していたときですよね。
      パット・マガ-はクリスティーよりも女性が奔放で動きがあるように思いますが、これはアメリカの自由な気風なのか、作者の違いなのか。
      どちらも私にはとても面白かったです。
      111108さんのレビューでパット・マガ-を知りました。すてきなレビューありがとうございました。
      2023/11/25
  •  ミステリーガイド本で知って、気になっていたもの。一九四七年、イギリスに住むサリーのもとへ、アメリカに住む七人のおばのうち誰かが夫を殺したという知らせが舞い込む。誰なのかはわからない。サリーの夫ピーターは、「おばさんたちのことを話してくれ、誰が殺人者なのか僕があててみせる」という。安楽椅子探偵ものとして紹介されていた。
     姪が話すおばたちの性格や結婚生活の様子から犯人当てなんて、さすがに無理があるのでは…いったいどうやって推理が成立するのだろう、という興味で読んだのだが、見事にピーターの推理は当たっていたし、どうしてそういう結論に至ったのかについても納得。言われてみればその通り、違和感あったといえばあった、というところにカギがあり、悔しいけどさすがっす。
     しかしピーターには悪いけれど、その名探偵ぶりもかすむほどおばさんたちのエピソードが面白い(愉快という意味ではない)。ここまでこじれるかというほどこじれまくりの人間関係がもはや喜劇。いやまぎれもなく悲劇なのだが、誰が悪いとも言い切れないと思ってしまうくらい、各人の性格や心理描写が巧み。例えばある意味諸悪の根源と言えなくもない強権的な最年長者クララおばさんも、ばっさばっさと家庭の問題をさばいていく迷いのなさは圧倒的で、尊敬すら覚えてしまう。またある意味最大の問題児と言えなくもない男性関係の派手なドリスも、やり口は奔放だが愛に関しては主義一貫しており、その正直さが眩しいとすら感じるほどである。
     象徴的な風景描写だとか、時代背景や社会情勢についての語りだとかはほぼなく、家庭の問題だけ、ひたすら七人姉妹の結婚だけ(細雪?!←違)にフォーカスしたサリーの話を聞けば聞くほど、七人のおばの誰もが夫を殺しそうだし、伝聞誤りで夫がおばを殺していても驚かないなと思う。だからこそサリーも、少なくとも六人の無実を確信したくて夫を頼ったわけで、事実確認のために一晩待つこともできないくらい、思い詰めていたのだ。ミステリーとしての趣向と内容とのマッチぶりもすばらしい。

    • 111108さん
      これ大好きです♪「細雪」感!あるある!
      そして安楽椅子探偵としての完成度、とっても高いですよね!
      これ大好きです♪「細雪」感!あるある!
      そして安楽椅子探偵としての完成度、とっても高いですよね!
      2024/02/27
    • akikobbさん
      111108さんもわりと最近読まれてましたよね。気になってました!
      「細雪」感、同意していただけますか!良かった、怒られちゃうかと思いました...
      111108さんもわりと最近読まれてましたよね。気になってました!
      「細雪」感、同意していただけますか!良かった、怒られちゃうかと思いました笑
      ドロドロなのにあまり暗くないのが不思議です。みんな我を通しているからですかね。
      2024/02/27
  • なかなか面白かった。本当は星5つでもいいのですが、結末前に犯人と筋書きがわかってしまったので、驚き感が減じた故です。(笑)
    明確なネタばれはしていないつもりですが、予見を与えるといけないので、未読の方はあまりコレを読まないように。
    おばがおじを殺し自殺したという手紙を受け取ったが肝心のおばの名前が記されていない!おばは七人いるというのに!
    というわけで、一夜物語の回想により誰だかを突き止める試みが始まった。ベッドディティクティブ方式のミステリー。
    最初は一族の名前を覚えるのに家系図をみながら難儀しましたが、全員個性的なその一族の回想物語がまた面白く、ぐいぐい引き込まれてしまいました。これがミステリーのお膳立てでなかったら、単なる昼ドラ風のドロドロとした愛憎劇なのだが、それほど重くないので、実はこれだけでも意外と楽しめたかも。(笑)
    そして、本書は何より構成が優れている。この方式そのものがある意味最大のトリックで、全体像を把握しようとすると逆に見えなくなる設定になっていると思われ、あくまでも本流を見失わないことが自力解決のコツですね。(笑)実は、本書半ばである出来事があって、アレ?と思うのですが、その後、全体のなかに紛れ込む仕掛けがしてあって、それでも結末章の直前にヒントが提示されるので、この時点で自己満足感が味わえると良いですね。(笑)というか、本書の自分の体験談ですが。(笑)
    クララの人物設定はもう少しキツめでも良いように思いました。(笑)

  • パット・マガー 。
    大好きです。
    昔よく読みました。
    キャラクターがいいんですよね。

  • 1947年の作品。それでも新鮮に感じました。きっと、犯人と被害者の見当をつけるという手法が面白かったからだと思います。
    結婚して渡英したサリーの許に、おばが夫を毒殺して自殺したことを知らせる友人からの手紙が届きます。ところが彼女には七人のおばがいるのに、手紙には肝心の名前が記されていません。サリーと夫のピーターは、おばたちと暮らした七年間を回想しながら、犯人と被害者の見当をつけようと試みます。
    とにかく、この家の次から次へと持ち上がる問題がホームドラマを観ているようで目が離せません。これって殺人事件が起こったミステリだよねってことをついつい忘れてしまいそうになります。
    あの時にこうしていたら、あの時に戻れたら、この家族は別の結末を迎えられたでしょうに。過去のほんの小さな綻び(いやいや運命の別れ道というべきか)がとんでもなく悲惨な未来へと繋がっていきます。

  • とある本にお勧めと書いてあり、何となく気になっていて、
    いつものBBの本屋さんで見掛けたので買ってみました。

    主人公サリーは結婚を機にイギリスに渡った。

    幸せな新婚生活を送っていたある日、
    故郷ニューヨークの友人から
    サリーのおばがおじを殺し、その後自殺した、
    と手紙で知らされる。

    ただ、サリーには7人のおばがあり、
    その手紙にはどのおばかの記述が無い為、
    サリーは夫ピーターに
    おばたちと暮した日々の思い出を聞いてもらいながら
    「犯人」がだれなのかを推理するが…

    サリーは15歳の時、事故で両親を亡くし、
    サリーの母親の姉の家に引き取られる。

    そこで結婚までの7年間をたくさんのおばたちと
    過ごすことになるのだが…

    とにかくどのおば同士も仲が良いとは言えなくて、
    出し抜こうとしたり、嫌なことを言ったり、
    終わりの方は配偶者も交えて怒鳴りあいも多くて、
    時折頭が痛くなってしまったけれど、

    それぞれ個性際立つキャラクターが面白く、
    楽しめた。

    こんな環境で育ったサリーの良い子っぷりが
    なんだか信じられず、
    これに関するどんでん返しがあるのではないか?
    と、ずっと警戒。
    (これが徒労に終わったかどうかは秘密)

    とにかく体裁を保つためならなんでもする
    長姉のクララおばがいやで憎くて
    イライラしっぱなしよ、本当に!

    アイラ・レヴィンさんの名作「死の接吻」のときにも、
    とにかく人の意にそわないことを強行すると
    碌なことが無いどころじゃあない、
    大変なことが起こると言ったでしょうに!

    身勝手でわがままなアグネスと
    金遣いの荒い気取り屋ジュディは嫌い、

    クララはもっと大嫌い、

    モリーは好きと嫌い半々くらい、

    ドリスは苦手でずるいと思うけれど、
    なんとも言えない時もある。

    真面目でかたくなに素直になれないテッシーと
    辛い環境でアルコール依存症になってしまったイーディスには
    同情しちゃうの、だってさ、可哀想じゃない?

    って、誰を好きか嫌いかで性格診断が出来そう!

  • 50年以上前の作品だが、非常に新しい。

    七人のおばとその夫の中から犯人と被害者を推理する変格推理小説、ということなのだが、ミステリーを読んでいるということは忘れさせられる。
    最初に家系図を見たときはギョッとしたが、一人一人の個性がとても強く、読んでいて誰が誰だか分からなくなることもない。
    回想シーンは完全にドタバタホームコメディー状態で、これはこれでとても面白い。

    そして本来肝であるはずの犯人特定はというと、まず発覚したのが先月であって、殺人自体が先月にあったわけではない、というのは完全に盲点だった。
    それに加え、テッシーが真っ先にドリスとジョージの関係を疑った不自然さ、子を持ったバートが姿を消してしまう不自然さなどが根拠となっている。

    もちろん根拠が弱いのは否めないが、でも考えてみると意外とそうでもないのかもしれない。
    先月の状態で、夫を殺して得をする人物というのはほとんどいないのだ。
    そういう風に考えていくと、この答えも強ち突飛なものではないと思えてくる。農場を閉めた理由、道路が農場の中を突っ切るのを阻止しようとした理由にも納得がいくわけだし。
    ロジック以外の観点からのフーダニットというのは自分の中では新鮮だった。
    一人一人の性格、人物像がしっかりと作り上げられているからこそできる推理とも言える。


  • 「おばが夫を殺した」

    という手紙が、サリーの元へ。

    一口に「おば」と言っても
    彼女には おばが七人。

    いったい どのおばがー?

    実家のあるアメリカへの
    急ぎ 旅支度を進めながら

    夫と 二人

    幼少時代を共に過ごした
    おばたちの記憶を頼りに

    いったい 誰が
    殺人事件を起こしたのかを
    推理するという

    安楽椅子探偵モノ。

    もう 大好きで
    何度も読み返している作品です。

    推理そのものの面白さは
    もちろんですが

    七人のおばたちの気性や価値観の違いが
    しっかりと 描写されていて。

    "おば"は "おば"でも

    恋愛に依存する人
    お金と贅沢を愛する人
    父親の寵愛を一身に受ける人
    仲のいい人 険悪な関係の人

    様々なおばが 入り乱れていて

    何十年にも渡る
    一族の愛憎のストーリーを

    サリーという
    血族でありながら
    第三者的な視点を持った女性の
    一人称で見事に語り切っています。

    血縁関係って 切るに切れない
    部分もあるので

    余計にこじれるのでしょうね。

    厄介なものですよねー。

  • 個性的な7人の女性達。どこかにいそう…。かなり昔に書かれたはずなのに、現代に通じる書き振り。人間の性質なんてものはそうそう変わるものではないのね。素晴らしい人物描写。
    安楽椅子探偵ものだが、推理はあっさり。それより、次々暴かれれる女達の秘密、心理が面白い。

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著者プロフィール

"パット・マガー
本名パトリシア・マガー。
アメリカ、ネブラスカ州フォールズ・シティー生まれ。
ネブラスカ大学を卒業後、コロンビア大学でジャーナリズムを専攻。
アメリカ道路施設協会の広報室長、建築雑誌の副編集長を務める。
1946年「被害者を捜せ!」で、推理作家としてデビュー。
1950年、カソリック・プレス・アソシエーション賞受賞。52年には、エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン賞を受賞している。
"

「2018年 『死の実況放送をお茶の間へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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