見知らぬ人 (創元推理文庫 M ク 28-1)

  • 東京創元社
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感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488170035

作品紹介・あらすじ

これは伝説的作家の短編の見立て殺人なのか? ――イギリスの中等学校タルガース校の旧館は、かつてヴィクトリア朝時代の作家ホランドの邸宅だった。クレアは同校の教師をしながら、ホランドの研究をしている。ある日、クレアの同僚が自宅で殺害されてしまう。遺体のそばには“地獄はからだ”と書かれたメモが残されていたが、それはホランドの幻想怪奇短編「見知らぬ人」に繰り返し出てくるフレーズだった……。作中作が事件を解く鍵となる、2021年海外ミステリ最高の注目作! 英国推理作家協会(CWA)賞受賞作家が満を持して発表し、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長編賞受賞へと至った傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 作中作のゴシック小説がthe怪談という感じなのでずっとその雰囲気かと思ったら違った。英語教師とその10代の娘、部長刑事という女3人の視点で語られる事件と日常生活も面白くて続編を読みたくなった。「地獄はからだHell is empty」のキーワードも効いてる。

  • 海外ミステリーとイギリスの文化歴史にどっぷり浸れる良作! 犯人が忍び寄る描写に慄けっ #見知らぬ人

    イギリスの中等学校で英語教師をしている主人公は、かつての作家の文学を研究をしていた。そんな日常の中、同僚である教師が殺害されしまい、主人公にも嫌疑がかけられる。刑事は解決に奔走するがさらなる殺人が発生。研究していた文学作品に見立てられた殺害方法だった…

    いやー重厚な作品でした。これぞ海外ミステリーですね。

    序盤はイギリスの歴史、情景、趣をたっぷり感じさせてくれる描写が進み、中盤からやっと徐々に事件が動き始める。中終盤の犬のくだりあたりから、ぐいぐい事件が動いてきます。そして真相がちらちら顔を見せ始める感じが超怖いっ

    犯人と動機はなかなか強烈なもので、正直与えられた情報だけでは見抜くのは、ちと厳しい。ただ真相は魂に響く内容なので、ミステリーとしても予想以上の出来でした。

    なんといっても本作の良さは、国内ミステリーでは感じることができない荘厳さ。
    海外ミステリー独特の表現だったり、読み手の知識不足によって若干読みづらいのは否めないが、決してつまらないわけではない。いや、むしろ海外の文化に触れられるので楽しいです。これを感じるためだけでも、読む価値があります。ただ読みごたえは、覚悟してください。

    続編もあるようですので、翻訳されたらチャレンジしたいと思います! おすすめですっ

  • 伝説的作家ホランドの書斎を残した旧館があるタルガース校。クレアは英語教師の傍ら、ホランドを研究していた。そんなある日、クレアの同僚が殺害されてしまう。現場には「地獄はからだ」という謎のメモが残されていた。それはホランドの短編『見知らぬ人』に登場する文章で──。

    刑事ハービンダー・カーシリーズの第一弾。ぼくは二作目『窓辺の愛書家』から手に取り、この作品へと逆にたどった形になった。どちらからでも独立して読める上に、味わいもかなり異なるので読んでよかった。

    この作品は、主人公のクレア、その娘ジョージア、刑事ハービンダーの三視点を切り替えながら進んでいく。ザッピングするポイントには作中作である『見知らぬ人』が少しずつ挿入され、二つの物語が並行して緊張感を増していく構成が上手い。現在の殺人事件に加え、作家ホランドにまつわる謎、その見立てが連なっていく。分厚いことに不安を覚えつつも、謎を追っていたら500ページ弱をあっさり読み終わっていた(笑)

    クレア視点では、自分の関係者が次々に殺されていくミステリの一面が語られる。さらには、日記を何者かに読まれていて、知らない内にデスノートならぬデス日記になっているというホラー&サスペンスにも仕上がっている(日記ってそんなに持ち歩くの?!とはツッコミたい)。ジョージアはパッと見は今時の女の子だが、裏では創作や怪しげな儀式にのめり込んでいるという二面性がゴシックホラーの色を添える。ロマンス要素も絡めつつ、二人が隠している秘密が明らかになっていく展開がスリリング。

    二人のサポート役であり、事件を捜査する女刑事ハービンダーも魅力的。最初はクレアを嫌っていて、それを隠さないところに笑った。マイナスから信頼関係が構築されていくのが面白い。クレアたちの飼い犬ハーバートが癒し。物語においてとても存在感があって素敵だった。

    家族であっても、その人間の物語はその人だけのものであり、自分以外は見知らぬ人なのだ。しかし、秘密はいつか明かされる時が来る。その瞬間だけ、火花のように人同士は深くつながり合って、見知らぬ人が忘れられぬ人へと変わるのかもしれない。


    p.66
    「“友情はゆっくりと熟す果実”」ハミルトンは言う。「これはアリストテレスのことばですね。調べたんです」
    「あんまり気持ちのいいイメージではありませんよね。果実は最後には枯れるか傷むかですから」

    p.325
    「日記は人の考えを教えてくれるものじゃない。考えていると思うことが書いてあるの」

  • 【第153回】間室道子の本棚 『見知らぬ人』エリー・グリフィス/創元推理文庫 | 特集・記事 | 代官山 T-SITE | 蔦屋書店を中核とした生活提案型商業施設
    https://store.tsite.jp/daikanyama/blog/humanities/21608-1236030804.html

    Welcome | Elly Griffiths
    https://ellygriffiths.co.uk/

    見知らぬ人 - エリー・グリフィス/上條ひろみ 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488170035?mailmag

    • goya626さん
      新しいので、図書館にはないだろうなあ。
      新しいので、図書館にはないだろうなあ。
      2021/07/28
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      goya626さん
      全然違う話なのですが、講談社文芸第三出版部が「さあ、どんでん返しだ。」と言うTAKE FREEの冊子(224P 8名収...
      goya626さん
      全然違う話なのですが、講談社文芸第三出版部が「さあ、どんでん返しだ。」と言うTAKE FREEの冊子(224P 8名収録)を出している。書店さんで貰ってきてください。
      猫は土曜にパラパラと読んでみようかと、、、
      2021/07/29
    • goya626さん
      おお!
      おお!
      2021/07/29
  • イギリスの学園で起こる事件。
    文学作品に絡んだ重厚なムードと繊細な描写が魅力的な作品です。

    クレアは地方の中等学校の英語教師として赴任してきた。
    もともと文学の研究課題としていたR・M・ホランドの邸宅が校舎となっている学校で、今は放課後の成人向けのクラスでホランドについての講座も持っています。
    旧館にはホランドの書斎がそのまま残されているのだった。
    そしてそこで、ホランドの作品「見知らぬ人」を思わせるような事件が‥

    離婚してロンドンを離れたくなり、娘を連れて移り住んできたクレア。
    以前からずっと日記をつける習慣があり、その日記の内容と、クレアの視点、娘のジョージー、女性刑事のハービンダー・カーの視点が交錯します。
    その構成の妙に、興味が惹きつけられ、一読した後すぐに最初から読み直しました。

    架空の作家であるホランドの意味深な作品と生涯の謎。
    クレアはどんな人なのか?
    日記には夫への未練は全く書かれず、どうも夫はあまり思いやりがないタイプなのだろうと推察できます。
    一番気になっているのは娘の進路。難しい年頃なので、強く勧めるわけにもいかないのだ。
    自分の外見や服についての描写がなく、コンプレックスはなさそう。今は恋愛に興味はないが、同僚に一方的に恋されたりもしたので、普通に美人なのか?

    ハービンダーが捜査のためにクレアに会った時に、最初にいきなり反感を抱く。
    これはインド系で小柄なハービンダーが色々なコンプレックスを抱えているため。後ですぐ気が変わるのだが。
    クレアは長身でショートヘア、モデルのような印象的な美人、そうだったのか~自分のスタイルが決まっているのと重要な関心は文学にあるため服には悩まないらしい。
    ハービンダーは30代で独身、親の家に住み、恋人もいない。そのことをかなり気にしているのだった。
    インド系のインテリ家庭はそんな感じあるのかしら。他の小説でも似た設定を見かけます。

    ミステリとしては、この書き方で犯人はわからないかと。
    ヒロイン同様、目くらましされたまま、意外な結末へ。
    他の部分に引き込まれて読み応え十分、面白く読みました。

  • イングランド、ウェスト・サセックスの中等学校タルガース校で英語教員として働くクレア。
    中間休みの期間に自身の研究対象、R・M・ホランドの『見知らぬ人』を題材に大人向けの創作クラスを開催している折、同じ英語科の同僚であり親友のエラの死の悲報が届く。
    死体の傍らには『見知らぬ人』のキラーワード”地獄はからだ”のメモが。

    R・M・ホランドは架空の作家。
    『見知らぬ人』はいわゆる作中作。
    その不気味な作中作を効果的に章間に挟みつつ、クレア、娘のジョージー、事件の捜査担当でタルガース校出身の警察官ハービンダーの3人の視点で語られていく物語。

    事件自体は複雑性や怪奇性は少なく、どちらかというと単純なものだが、キラーワードの使い方、3人の視点の絶妙な時間軸のオーバーラップ、時に挟まれるクレアの日記など、進行がとにかく巧みで引きつけられる。

    作品としての完成度が高く、小説として大いに楽しめる一冊。

  • ビクトリア朝のイギリス文学に興味があるのならば、この作品を楽しめると、私は読み終えたときに思いましたねぇ。

    いやぁ、楽しかったです。

    ビクトリア朝の作家ホランドが書いた『見知らぬ人』の物語のように、彼の伝記を執筆中の英語教師のクリスの周りで殺人事件が起こり始める。

    それは一見、見立て殺人のようなのだが……。

    作品の中に出てくる『テンペスト』等からの引用は、この辺りが大好きな読み手を喜ばせるでしょうし、私もものすごく楽しかった!

    日本ではこの作品はお披露目とのこと、続き、お待ちしております!

  • ここ最近でこれほど読み進めれなかったのは久しぶりだった。

    まず、登場人物がかなり多くて把握するのが大変。その上に、視点がコロコロ変わるので噛み砕くのが難しかった。
    200ページくらいまで説明が続き、覚えきれない。

    半分程で少し展開が変わってきたが、先を読む気力がもうなくなってしまった。断念。

  • ちょっと難しかったけど面白かった!
    犯人は当てられなかった…悔しい笑
    海外の作品は名前とかも馴染みがなくて私には向かないのか…
    話の内容は面白いのだけど、名前が覚えられない(致命的笑)

  • この犯人は見抜けないとうたい文句にありMWA賞受賞作とあるから期待してしまいましたが残念でした。
    犯人の隠す方法は物語りに殆ど登場させなければ良いでしょう、そうすれば読者は気づかない、気づきにくいでしょう、その際重要なのが動機です、その動機の描写が巧妙、絶妙だと予想外で引き込まれていきますが本作品は動機が残念であり各キャラクターとの交わり方も無く枠外から犯人も持って来た印象しか残りませんでした、また語り中の描写がうるさいほどあり鬱陶しい位です。描写が多いから人物像はイメージできますが、意識が人物形成に偏り過ぎてしまい物語りのスピード感は失われていわゆる、ダラダラ読になる典型的な作品とあたしは感じてしまった。

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