- Amazon.co.jp ・本 (717ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488183110
感想・レビュー・書評
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流石のセイヤーズの筆力。高等教育を受けた女性の抱える問題(結婚し家庭に入るべきか、仕事を続けるべきか。家庭と仕事のどちらを優先するべきか…。女性の幸せって何?)、女性特有の人間関係(同窓会の怖さったら!)、そして何より、女性が描く女性のリアルな恐ろしさ(笑)
ロマンス+ユーモアときどきミステリみたいな比重で、今回は徹底して「人」を描いており、それがそのままミステリの伏線へと繋がっているのはすごいですね。
ただ、ピーター卿とハリエットさんが丁々発止の議論をたたかわせるのが好きなので、そこがあまりないのが残念-。(かわりにロマンス成分多めなのでまぁいいか)
あ、バンター成分が少ないです。甥っ子のセント・ジョージ卿が良いキャラしてました。 -
2020年になって、創元推理文庫から『大忙しの蜜月旅行』が出たので、およそ20年間積ん読状態だった本作を読むことに。面白く読めるであろうとは思っていたが、何しろ700ページ強の大作、ずっと躊躇していたのでした。
登場人物が多くて、特に教官の皆さんの名前が最後までなかなか覚えられず、それも読むのに苦労した一因でしたが、面白くは読めました。ただ、私の拙い理解力と表現力では、なかなか感想を記すのが難しく…。
…と思っていたところ、『真田啓介ミステリ論集|古典探偵小説の愉しみⅡ:悪人たちの肖像』(荒蝦夷)によれば、1990年にCWA(英国推理作家協会)の会員投票により選出されたオール・タイム・ベスト作品の中で、本作はロマンチック・サスペンス部門の第1位だったそうです。なるほど、ロマンチック・サスペンスとは目から鱗。
(これについては、メアリー・スチュアート『霧の島のかがり火』(論創社)の真田さんの解説でも読めます。) -
久々に来た、この分厚くて文字たっぷり系!まぁなかなか読むのに根気がいるかなーと思いつつも意外とあっさり読んでしまった。
にしたってこういう昔の小説にありがちな引用の量ときたら!いちいち会話にシェイクスピアやら、聖書やら、あと良く分からん昔の偉い人やら、どんだけーってなって、はいはい、あなたよっぽどインテリなんやねって言いたくもなるというもの。まぁ何のウンチクもないない現代文学の無意味な会話にも辟易するのかもしれんけど、それにしても、ね。
まぁでもこうやって引用できるようになったらかっこええのかなー、なんて思ったりもした。恐らく誰も理解してくれんだろうけどもな。 -
絵にかいたような英国貴族のピーター卿が、40半ばになりちょっとくたびれてきて、よく似た若い甥っ子との対比もあって、人間的でより魅力的に見えた。
ロマンス部分も、キャラクターに愛着があるので楽しめました。
ハリエットが探偵役の話のほうが、饒舌なピーター卿を客観的に見られるので、読みやすい気がします。
カレッジのインテリ女性の集団は扱いづらく個性的でそれが逆に面白かった。 -
ハリエット・ヴェインは母校オクスフォードの学寮祭に出席した。その夜、中庭で汚らわしい落書きを拾い、次の日には嫌がらせの手紙を学衣の袖に見つける。過去の悪夢は懐かしい母校にまで追いかけてくるのか?
だが数ヶ月後、恩師から匿名の手紙や悪戯が学内で横行していると相談される。これらは自分への攻撃と同じものなのか。平和な学びの庭で一体何が起きているのか。ハリエットは調査のために母校に滞在することになった。
この一冊のテーマは愛だ。調査の中で、ハリエットは男女の愛というものを目の当たりにし、自分の気持ちを問い直すことになる。過去の悪夢を彼女は乗り越えることができるのか。 (2002-02-20)
付録 [ピーター・ウィムジイ卿小伝] -
ハリエットはオクスフォードの女子寮のOGでミステリ作家。ピーター卿はオクスフォードの卒業生で貴族探偵。ピーターはずっとハリエットに惚れて求婚している。なかなかうんと言わないハリエット。ラテン語が分かると2、3倍楽しい。やっといて良かったな、とおもいますよ。ミステリとしてももちろん秀逸だし、当時の女性の高等教育に対する社会的考えが垣間見える点も興味深い。
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ハリエットのこの頑なさにはピーター卿がだんだんかわいそうになってきますね(苦笑)ミステリとしてもフーダニットととして秀逸。ただし緻密すぎて読み手を選ぶかな…あと個人的にはピーター卿の甥セント・ジョージのご活躍(笑)がある意味卿との対比になってる気もしてそこも好きです。
何といっても犯人のラスト独白がすごい。女性の社会的位置の捉え方と、それによる盲目的なまでの、愛情と(犯人が)言うものは個人対個人である人間関係の消滅に思えます。それを下敷きとしたミステリである以上ピーターとハリエットが結ばれるストーリーとしてこれは理想的だと思います。