顔のない男: ピーター卿の事件簿2 (創元推理文庫 M セ 1-14)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488183141

感想・レビュー・書評

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  • 杉江松恋さんがウッドハウスの薫陶受けたとして筆頭に挙げていたピーター卿。愛されキャラぶり楽しくもっと読みたい。解説読むとより興味深い表題作と、何とピーターⅠとⅡ登場の『趣味の問題』が特に好き。他に実在事件の推理も面白い。

  • 「ジュリア・ウオリアス殺し」
    ミステリー殺人事件を探偵、裁判員、陪審委員等が検証するこの小説(ジュリア・ウオレス殺し)はノンフィクション事件であり、要は「犯人は夫で、本当に殺害したのか」という確たるアリバイが無いまま結審された裁判である。もし夫が殺害したのなら、その殺害の目的(金銭でも、争いでもない)に全く説明がなく問われ続けた事だった。 神のみぞ知る真実は本人の病死で葬られてしまった事件だ。

  • 作家というのは長編タイプと短編タイプという2種類に分かれるとよく云われる。勿論、どちらも得意―というかどちらも読ませる作品を書く―作家というのもいるが、セイヤーズに関して云えば、私は彼女は長編向きの作家だという結論を出す。
    だからといって本作に収められた作品が駄作というわけでは全然無く、寧ろ佳作ばかりだといっても過言ではない。特に作中に自作のクロスワードパズルを盛り込んだ「因業じじいの遺言」などは短編にするのが勿体無いくらいアイデアを積み込んでいる感じがする。また約30ページの作品の中に15人もの人物が登場する「白のクイーン」も仮装パーティという特殊な状況を活かした好品でアイデアが抜群である。
    しかし、それでもやはりセイヤーズは長編向きだと思う。たった1つの単純な事件に300ページ、そして『学寮祭の夜』に至っては700ページと膨大な原稿を費やすことにシリーズを読み始めた当初は無駄が多いのではないかと思っていたが『学寮祭の夜』まで読むに至り、これだけの原稿を費やして描く事件やそれに纏わる人間たちの機微がたまらなく面白く、物語のエッセンスとなっていることに気付かされた。
    短編では同じワンアイデアで勝負しているのだがそこら辺の小説部分が省略され、何か物足りない。私が「推理」小説ではなく推理「小説」をセイヤーズに求めているのが今回よくわかった次第である。

  • 殺人事件の他に、遺言状探しパズル、盗難、ピーター卿が三人、など、バラエティギフトのような短編集ですね。

  • ピーター・ウィムジイ卿の探偵もの短編集第二弾。

    「顔のない男」「因業じじいの遺言」「ジョーカーの使い道」「趣味の問題」「白のクイーン」「証拠に歯向かって」「歩く塔」と7短編のうち「歩く塔」以外はまあまあ、「歩く塔」もことさら探偵のピーター卿が登場しなくてもいいのではと思う。けれども、ゲームが幻影になってくる描写といい現代にも通じる短編。

    ファンなので残されている短編は読んでしまいたいという心境。ちなみに第三弾もあるそうだが、翻訳出版はされていないようだ。

    それにひきかえ「ジュリア・ウォレス殺し」は、セイヤーズが実際の犯罪事件の被告が冤罪か、犯人かを推理していく。「推定無罪」や横山秀夫の「半落ち」のようにおもしろい。ふーん、ミステリ創成期の時にもこういうこと、すでにあったんだ。

    そしてセイヤーズの「探偵小説論」、セイヤーズが古典的といえるのに、なお古典のポー、ドイルなどを論じているので楽しい。探偵ものの歴史が網羅され、ミステリの技法までも丁寧だ。

    ホームズものやクリスティーには厭きてしまったきらいがあるが、セイヤーズはしばらく目新しくて全長編を夢中に読んだものだ。

    セイヤーズ自身の生き方に興味引かれる作家でもある。19世紀末生まれ(1983~1957)20世紀初頭活躍にして(自立して働いて)、コピーライター、作家、未婚の母であるところもってして、今風ではあるではないか。

    そういう「めがね」があるせいか、妙に惹きつけられた作品群であった。ウイットとストーリーが面白いことは勿論である。

  • 様々な味のある短編がおさめられているが、一番面白いのは「探偵小説論」。セイヤースが探偵小説の歴史をひもときながら、彼女自身の探偵小説観が語られていて面白い。探偵小説に恋愛要素は持ち込まない方が良いとされている点も、ピーター卿とハリエットの関係を考えると興味深い。

  • ・顔のない男
    ピーター卿がシャーロック・ホームズばりに殺人事件の推理を新聞記事のみから行う。顔が傷だらけの死体というと身元を隠すための偽装や入れ替わりかと思うが、すぐに憎しみのためとされる。警察の捜査は常識的な範囲に終始するが、ピーター卿の推理は一見突拍子もないものだった。しかし、ピーター卿の推理のほうが事件の物的証拠に矛盾なく合うものだった。警察の推理どおりの結末を迎えるが、ピーター卿はあえて真相を明かさないのではないかという終り方だった。

    ・因業じじいの遺言
    クロスワードパズル好きの資産家が亡くなり、その遺産を手に入れるためピーター卿がクロスワードパズルを解く手伝いをする。鍵と回答が文学的、イギリス文化に根ざしたようなものなので読んでも理解できない。

    ・ジョーカーの使い道
    ピーター卿が恐喝者を罠にはめる。同じ恐喝者を追い詰めるハマースミスのうじ虫が思い起こされる。

    ・趣味の問題
    毒ガスの製法をめぐってヨーロッパ各国がしのぎを削る。イギリスに譲ることになり個人的な知り合いとしてピーター卿が指名されるが、顔を知らないため各国が偽物者を送り込む。そこで、ワインの目利きとして有名なピーター卿を見極めるためワインの試飲を行う。

    ・白のクイーン
    トランプやバックギャモンなどゲームにちなんだ扮装で行われた仮装舞踏会でおきる殺人事件。多くの登場人物の仮装と本名が入り乱れるため誰が誰だか見分けがつかなくなる。照明の色による見え方の違いを用いた錯覚をトリックに用いた犯罪だった。

    ・証拠に歯向かって
    火事の跡から焼けた死体が発見される。自殺と判断されかけるが、歯の治療から捜査に加わったピーター卿により真相が明らかになる。歯の治療後から死体を偽装した歯科医が犯人だった。タイトルがおもしろい。

    ・歩く塔
    チェスのルークと実際の塔とがリンクし夢の中で繋がる。そこに実際の殺人事件が絡み幻想的な雰囲気を作り出す。

    ・ジュリア・ウォレス殺し
    現実に起こった事件を考察する作品。完全でない証拠、証言等から実際に起きたことを推理する。推理作家としての顔が随所に出てくる。

    ・探偵小説論
    1928年に編まれたアンソロジーの序文。それ以前の探偵小説をまとめてある。

  • 短編集。バンターとウィムジイが仲良くしてくれてて良かった、良かった。

    ピーター卿以外に、実際に起きた犯罪に対する考察「ジュリア・ウォレス殺し」と、「探偵小説論」も収録されている。
    この探偵小説論、とても面白かった。内容が今読んでも色褪せた感じがしない。また読み返したい探偵小説の歴史評論です。

  • ピーター・ウィムジィ卿の短編集第2弾。セイヤーズは、短編より断然長編の方が面白い作家だと思った。謎よりキャラで読ませる作家だとも思った。

  •  ②
     この短編集を読んでた頃は、まだピーター卿にはまってなかったんだよね。なんか、古き良き時代の探偵小説?ぐらいの感覚で。やっぱり私はクイーンの方がいいわ、とかさ。

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