コリーニ事件 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 158
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488186043

作品紹介・あらすじ

新米弁護士のライネンは、ある殺人犯の国選弁護人になった。だが、その男に殺されたのはライネンの親友の祖父だったと判明する。知らずに引き受けたとはいえ、自分の祖父同然に思っていた人を殺した男を弁護しなければならない――。苦悩するライネンと、被害者遺族の依頼で裁判に臨む辣腕弁護士マッティンガーが法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。そこで明かされた事件の驚くべき背景とは。刑事事件弁護士の著者が描く圧巻の法廷劇、待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 以前の職場でお世話になったS先生は、刑法の研究者で現役の弁護士。囲碁とジャズをこよなく愛し、時おり絵筆も握られる、文人とお呼びするにふさわしい方です。仕事で研究室にお邪魔したときも、趣味の話で盛り上がることがしばしば。今は数年に一度お会いするくらいですが、フェイスブックを楽しく読ませていただいています。

    本書は、先生がFBで推薦されていたドイツのリーガルミステリー。
    作者のシーラッハは著名な刑事弁護士。短い文章をテンポよくつなぎ、結末まで一気に読ませます。

    ベルリンの高級ホテルの一室で、高名な老人が命を奪われます。容疑者として逮捕されたのは、イタリア人の元職人コリーニ。
    国選弁護に指名された新米弁護士ライネンは、被害者が幼馴染ヨハナの祖父であることを知り、個人の感情と職業的使命感の板挟みになりつつも弁護を決意します。状況からコリーニの犯罪は決定的。にもかかわらず動機について硬く口を閉ざすコリーニ。被害者遺族側には辣腕弁護士マッティンガーがつく圧倒的に不利な状況の中、ライネンは真相を追います。

    背景には第二次大戦時の出来事がからみ、ドイツ刑法学の権威ドレーアーが大きな鍵を握っています。物語は裁判を縦糸に、ヨハナとの葛藤を横糸に展開します。ミステリーとしても一級品で出版後たちまちベストセラーになりました。また、本作がきっかけでドイツ政府が調査委員会をもうけるなど、実際に社会を動かす結果となりました。シーラッハ自身、祖父が戦争に関与していて、過去の戦争とどう向き合うのか問う側面もあり、多面的な読み方ができます。

    S先生とは、ある規制を巡って長時間議論させていただきました。守るべき法益は何か、安易に規制を持ち出していないか。趣味の話と打って変わって、学者としての厳しい問題意識を教えていただいたのが懐かしい思い出です。久しぶりに一献傾けながら、お話をお伺いしたいものです。

  • ヨーロッパの負の遺産がこんな風に現れるとは。冗長なところが全くなく、一気に読了、これは面白い。

  • 200ページぐらいの本なのだが…日本では、こんな本は書けないんじゃ無いかと思うかな。
    無益な戦争、ナチス時代を背景にした悲劇。そして法律の落度…歴史に翻弄される人々…中々難しい本だと思う。

    小説には、内面的な描写はあるけど、なんだろう著者の描写は、読者側が読んで想像するような書き方が、とても印象的だったので、深読みしてしまった…嫌いじゃないし、著者が何となく答えを教えてる、ちっとな文章と中々良かった!

    読んだ事の無いタイプの本。外国作品は、登場人物ごちゃごちゃになるので、あんまり読まないが、この作品は数人だけで読みやすくて良い。

    気になったら読んでみてください!

  • 新米弁護士のライネンは、ある殺人犯の国選弁護人になった。だが、その男に殺されたのはライネンの親友の祖父だったと判明する。知らずに引き受けたとはいえ、自分の祖父同然に思っていた人を殺した男を弁護しなければならない――。苦悩するライネンと、被害者遺族の依頼で裁判に臨む辣腕弁護士マッティンガーが法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。そこで明かされた事件の驚くべき背景とは。

    映画が公開されるのか、最近コマーシャルをよく目にするので、読んでみた。中編とも言える長さだが、重い。

  • 映画が先か原作が先かいつも悩むところではあるけれど
    フェルディナント・フォン・シーラッハの世界は昔から好きなので
    原作を先に読んでみた。
    いつもどおり一筋縄では解決しない事件。
    戦争犯罪・愛憎・過去・現在、そして法律が込み入った世界を作り出していく。
    そして作者の視線は常に弱者に温かい。
    読了して映画はもういいかな?と思ったが訳者のあとがきを読んで思い直した。
    事件の背後にあるドイツの歴史をまったく知らない私は小説の細かい伏線が読めていなかった。あとがきを参考に映像でさらに奥深い世界を体験してみたい。

  • 主人公・ライネンは、弁護士になってやっと42日。
    初めて殺人犯の国選弁護人になったが、容疑者、いや、犯人は犯行を認めるものの、動機を明かさない。
    犯行に至るまでのどんな背景が事件にはあったのか、そして、なぜ犯人は動機を明かそうとしないのか。

    何を書いてもネタバレにかすってしまうので、感想を書くのが難しいなあ。
    これから読もうと思う人は、この先を読まないでね。


    いまだにドイツに影を落とし続けているのが、ナチス時代に行った数々の非道。
    犯人であるコリーニがなぜ殺人を犯さなければならなかったのか。
    それもまた、現在に残るナチスの影のせい。
    ナチの生き残りが作った戦後ドイツの法律が、ナチの犯罪をなかったことにする。

    余談だが、この小説の出版がきっかけで、ドイツはナチの過去再検討委員会を立ち上げたという。
    小説が政治を動かしたのだ。

    閑話休題。
    犯人は結局最後まで多くを語ることはなかった。
    作者としては、その存在が、訴えたいことのすべてだったのかもしれない。

    そもそもなぜイタリア人の犯人は、ドイツに暮らし続けたのか。
    ずっと癒えない傷を忘れないためにそうしていたのか。

    犯人の心のうちにあったものは、恨みだったのだろうか、それとも今は亡い人たちを慕い続ける思いだったのだろうか。
    生涯独身を貫いた犯人は、愛する人を持つことはなかったのだろうか。
    自分自身を生きることはできたのだろうか。

    多くの疑問が頭の中をぐるぐる回るけれど、簡単に答えを出すことではないとも思う。

    「わたし、すべてを背負っていかないといけないのかしら?」
    「きみはきみにふさわしく生きればいいのさ」

    それほど長い作品ではないのに、ずっしりと重い読後感が残された。

  • 国選弁護人を引き受けた事件の被害者は親友の祖父だった―。それだけでも十分ドラマ性があるのに、後半の思わぬ展開に、読み終わって呆然としてしまった。語り口も淡々としていてそんなに長い小説でもないのに、じわじわ迫ってくる筆致がすごい。この小説がドイツの政治を動かしてしまったということのもうなずける。
    そして小説で政治が動いてしまうドイツという国もすごい。そのことは日本でもよく問題になるけど、責任の取り方というかそれに対する責任の捉え方が、本当に全然違うんだよなぁ…

  • フェルディナンド・フォン・シーラッハの長編作品を初めて拝読した。

    この小説は彼の「懺悔」だ。祖父が元ナチスの高官であるシーラッハが抱えていたものを、私たちは計り知ることは出来ない。

    その「苦悩」がこれを書かせたのではないか。作中の主人公コリー二と同様彼も、先の大戦を根強く引きずっていた。

    彼の短編作品と比べると、若干の「キレのなさ」を感じさせつつも、コリー二の動機が明るみになるにつれ増してくる、スリルは極上。

    やはりこの著者は、ただ者ではない。

  • 「テロ」があまりにも名著だったためこちらも読みました。なるほど小説としては荒削り感は否めないものの、「テロ」にも通じる法律の是非を問うメインテーマの壮大さと深い理解とは流石というほかはない。良い作品でした。

  • 鳥肌が立つ。
    この小説を読み私が体感したものの一つ。
    ドイツの法廷劇であり、筆者の淡々とした語り口が、読者とほどよい距離感が保たれており、ページを進めずにはいられない。そして、扱うテーマがとてつもなく奥深く過去の暗い歴史へといざなわれる。読者は自らこの重みを受け止め、対処せざるを得えない。物語の登場人物と、語り手の距離感がそうさせるのだと思う。
    この重厚なテーマをこのページ数で語ることが、著者のすごいところ。ドイツの戦争との向き合い方について、我が国でも参考にするべきことがあるかもしれない。

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