- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488186050
作品紹介・あらすじ
文字のひとつひとつに色を感じる共感覚を持ち、写真家として大成功をおさめたゼバスティアン。だがある日、若い女性の誘拐・殺人容疑で逮捕されてしまう。捜査官に強要されて殺害を自供したゼバスティアンを弁護するため、敏腕弁護士ビーグラーが法廷に立つことになった。緊迫感に満ち満ちた裁判で暴き出される驚愕の真相とは。既刊累計300万部突破、本屋大賞「翻訳小説部門」受賞作家が「罪とは何か」を問いかけた恐るべき問題作、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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フェルディナント・フォン・シーラッハ『禁忌』創元推理文庫。
『コリーニ事件』に続く200ページ強の中編作品。『犯罪』『罪悪』のイメージが強いせいか『コリーニ事件』同様、読んでいて心に響くものが無く、無機的な単調さに物足りなさを感じた。もしかして、シーラッハの良さは短編にこそ生きるのではなかろうか。
主人公は文字に色を感じる共感覚を持つ写真家のゼバスティアンである。前半ではゼバスティアンの幼少期から写真家として成功を納めるまでが単調に描かれる。その後、ゼバスティアンが若い女性の誘拐と殺人の容疑で逮捕され、捜査官に強要され殺害を自供してしまう……そして、結末……詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文字のひとつひとつに色を感じる共感覚を持ち、写真家として大成功をおさめたゼバスティアン。だがある日、若い女性の誘拐・殺人容疑で逮捕されてしまう。捜査官に強要されて殺害を自供したゼバスティアンを弁護するため、敏腕弁護士ビーグラーが法廷に立つ。緊迫感に満ち満ちた裁判で暴き区出される驚愕の真相とは。『犯罪』の著者が「罪とは何か」を問いかけた恐るべき問題作!
被疑者の生い立ちをかなりのページを割いて書いているのはなぜなのだろうか。 -
文章を読んでいる最中に、あ、これ『テロ』の作者だったのか、と気付く。
奇矯な作品を世に出しては、有名になってゆく写真家ゼバスティアン。
前半は、彼の独特な感性を作るに至った少年期と、ゼバスティアンと適当な距離を保つことの可能な女性ソフィアとの出会いが語られる。
のだが。
ある時、唐突にゼバスティアンは殺人鬼と化し、まずは読者に「彼は殺人鬼か、否か」の採決を委ねられる。
ここから、後半、ゼバスティアンを弁護するよう依頼されたビーグラーの登場で、一気に話が面白くなってゆく。
私は先に『テロ』を読んでしまっているのだけど、この問いかけに思わず息をのむ。
「テロリストがベルリンに核爆弾を仕掛けたと考えてみてください。それも、あと一時間で爆発する。テロリストの身柄は確保しているが、爆弾の所在がわからない。わたしは決断に迫られます。犯人を拷問してでも、四百万人の人命を救うべきか、手をこまねいて、なにもしないでいるべきか?」
「人命を救うための拷問」は是が非か。
ビーグラー弁護士の舞台を、まずは読んでいただきたい。(もっとも、ゼバスティアンのケースと、テロリストのケースと、十歳の女の子が誘拐されたケースをひとまとめにして良いかは疑問だけど)
さらに、個人的には著者のあとがき「日本の読者のみなさんへ」も読むべき。
「日本の僧侶、良寛(一七五八ー一八三一)は死の床で、介抱する尼僧にこんな句を遺したといわれています。
うらを見せおもてを見せて散るもみぢ」
ドイツの作家さんから、良寛!?と、たまげた。
続き、読みたくなりませんか。
私は『犯罪』に戻っていきたいと思います。 -
日本語版に寄せられた「日本の読者のみなさんへ」による、著者のメッセージーの中のーうらを見せおもてを見せて散るもみぢ 良寛ーの俳句。善悪二元論で語られる宗教とは違い、全てを内包する仏教。散りながら、裏とおもてさえもどちらが裏でどちらがおもてなのか?作品の中で語られながら、この俳句では語り尽くせない人間の本質は、善悪さえも一体不ニの気がする。緑、赤、青と、全てが混じり合って、、、表紙の合成写真のように、、、。
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弁護士と刑事の法廷のやりとりが面白かった。理解できていない箇所も多々あって、シーラッハのコリー二事件も読んでみた方がいいのかもしれない。
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半分辺りまでひたすら一人の男の人生を読んでいく感じで、そこからは一気に最後までって感じでした。簡単に感想を書けないですが、素晴らしかったです(^^)
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貴族の家に生まれ、長じて写真家として成功した男が
誘拐殺人の罪で逮捕される。
若い娘からの助けを求めた電話、血痕や引き裂かれ捨てられた衣服など、
状況証拠はかなりあるが、死体は発見されず、
誰が誘拐されたのかも分からない。
取調べでは男は犯行を自白したが、被害者は誰で
死体はどこにあるのかについては口を閉ざす。
男の弁護士は、男の故郷を訪れ調査を行う・・・
といった流れの作品。
いちおうミステリと言えなくはないですが、
ほぼ純文学作品だと思います。
男の少年期から写真家として成功した後までを描く「緑」、
若い娘からの電話を発端に男が取り調べられるまでを描く、短い「赤」
弁護士による男の故郷への訪問と裁判を描く「青」
短いエピローグの「白」
の四章構成。
男は文字のひとつひとつに色を感じる共感覚の持ち主とされていますが、
この設定は「緑」の章の肉付け程度で、以降の章ではほとんど
意味がない設定になっています。
ところで、物語の終わりに、男が作った3Dアニメというものが出てきます。
このアニメを作るのに、
モデリングやらレンダリングやらコンポジットやらエンコードやらを、
男はコツコツと、いくつもの失敗を経ながら、時間をかけてやったのかと思うと、
なんとなく笑えてきます。 -
巻末にある著者と訳者の言葉を読めば、この作品の意図は、理解できると思います。素晴らしい作品だと思いました。しかし、苦しい読書でした。