遮断地区 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (526ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488187101

感想・レビュー・書評

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  • 実際にイギリスでよくある、道が袋小路状になった作りの、50-60年代の低所得者用住宅街。それだけでも充分に緊張と閉塞感があるのに、そこに小児性愛犯罪者が移されてきたことが漏れて憶測を呼び暴動が……という状況に、更に近所の別の地区で10歳の少女が行方不明(男の車に乗っていたことがわかっている)という事件が重なって、そこに巻き込まれて右往左往する人々を描いたもの。
    イギリスの小説らしく緊迫感はあるのだけど、感情移入できる登場人物もなく(途中から登場するヒーローのジミーくらいか?)、ドラマチックでもなく、でもジミーとその彼女のおかげで最後に一筋の救いがあり、そこは上手にまとめてる。
    性犯罪者と間違われた老人が人々に惨殺され、その後濡れ衣が晴れると花束が続々と置かれた、というところ、 「しかし彼が、子どもを慰みものにする畜生と思われていた二十四時間のあいだには、一本の花もそこに置かれることはなかったのである。」(508ページ) が、とても重い。私自身の反応も、たぶん同じかも。

  • 身寄りのない老人、シングルマザー、貧しい黒人。そんな人々がひしめき合って暮らす行政から忘れられた団地バシンデール。
    そこに児童性愛者が転入してきた。
    若い妊婦メラニーは子供達を守るためデモを行うが…。

    市井の人々の善意、悪意が折り重なってこじれていく事態。
    同時に起こった少女失踪事件と合わせて、視点と主人公が複数になるのだけど読みにくくはなかった。流れが切れるってこともなかったし。
    きちんとキャラクタを描いているので、最後のカタルシスもまずまず。
    サスペンス系の小説だと思うんだけど、団地にそれほど閉ざされた感を感じなかったので、主人公の一人であるジミーの成長ものとして読んだ。
    他のキャラクタや事件の丁寧な描写でジミーがより厚くなったようで、この作品のテーマの一つであろう『人はその行いで判断される』って言葉が重く響く。
    作者のこういう書き方好きだ。

  •  世評は高いのだが、あらすじを読んだだけではなかなか手が伸びず、500ページもの大著に尻込みをしていた一冊。結局ボリュームなど気にならず一気に読み終えたのだが、すんなり愉しめたとは言い難い。治安のもともと悪い団地に密かに越してきた性犯罪者に対する抗議から自警的な暴動に発展するまでの様が丹念に描かれるのかと思いきや意外に淡白で、地域の中の対立し合うグループも出てこず、描かれるのは家に閉じ籠った老人たちと野次馬的に集まる青少年ばかりで、殺気立つ臨場感も乏しく、警察が手を出せないほど混乱ぶりが伝わってこない。

     主人公の医師を監禁する親子のどちらが小児性愛者なのかでドラマを盛り上げるのかと思いきや、孤独な患者同士を救う「仲良し電話」を発案したとは思えないほど短絡的で思慮に欠けるソフィーの行動で自ら墓穴を掘ってしまい、共感がたちどころに失せた。そもそもどちらがそうかは巻頭の人物紹介でしっかりネタバレされてるのを後で知って、なんだかなと思ったが。

     もう一つの地区で起きる女児失踪事件も、本筋とは最終的に繋がらず、真相も曖昧なままで、結局暴動への不安を掻き立てる材料にしか過ぎなかった。

     ただ一番読後感を悪くしているのは、ソフィーもそうだが、最後に精神科医のボブが患者ともいうべき犯罪者に浴びせかける理性的とは言い難い言動で、当事者であれば医師も冷静さを失うことを作者が示したかったのかどうか判然としない。

  • なんか汚い。ずるいということではない。美しくないということだ。

  • 積読をやっと消化。期待しすぎたかな、。 。
    パトリシアコーンウェルを読んだときのどきどき感はなかった。

  • ウォルターズがデビュー作『氷の家』以来一貫して掲げる3つのテーマ。マイノリティに対する軽視と偏見、弱者に対する支配、そして家族のあり方。(あとがきより抜粋)想像を超える残忍な事件と登場人物の辛さや悲しみに読むのを途中でやめそうになるけれど結末が気になって結局一気読みしてしまう、それがウォルターズのミステリー。次は『破壊者』を読みます。

  • 私の評価基準
    ☆☆☆☆☆ 最高 すごくおもしろい ぜひおすすめ 保存版
    ☆☆☆☆ すごくおもしろい おすすめ 再読するかも
    ☆☆☆ おもしろい 気が向いたらどうぞ
    ☆☆ 普通 時間があれば
    ☆ つまらない もしくは趣味が合わない

    2015.8.8読了

    巻末にも書かれていた通り、今までのウォルターズとちょっと感じが違います。

    全然、謎解き感はありませんが、場面を切っていって、状況がどんどん変わっていくサスペンス感が楽しめました。少女の事件はあまり書かれなくても良いようなものですが、場面を切るのに有効なんでしょうかね。

    文章自体は、ウォルターズで、今までの感じを期待していたとしても充分楽しめました。

  • 身近に小児性愛者が住んでいるとわかったら?日本ではありえないだろうけど住民たちが抗議デモを起こすがだんだんエスカレートし暴徒と化す・・
    20年ぶり??ぐらいにこの作者の本を読んだのだけど、あれ?こんな感じだったっけミネットウォルターズ。
    昔のほうが好きだったのか、自分の好みが変わったのか。

  • 2014年このミス2位。閉鎖された区域での暴動とそれに関係した人々のミステリーというより物語。中盤まではかなり読みにくかったが、終盤は少し展開が早くなった。ただちょっと中途半端な気が。

  • コレ、パクって「ダイ・ハード」シリーズを作っちゃえばいいのに
    マクレーンの娘を看護婦にしちゃって

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