- Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488190064
作品紹介・あらすじ
1889年、ロンドン警視庁に殺人捜査課が設置された。年間数千件発生する殺人事件に挑む刑事はわずか12人──。ヴィクトリア朝の闇と刑事たちの光を活写する、傑作警察小説。
感想・レビュー・書評
-
19世紀末のロンドンを舞台に、警官達の奮闘を描きます。
時代色たっぷりで面白く読めました。
1889年、切り裂きジャックの事件がどうやら迷宮入りに終わり、街には恐怖が漂っている時期。
警察の権威は地に落ちています。
とはいえ、そもそも警察官の数は少なく、殺人課は発足したばかり。増え続ける犯罪に対して、12人しかいない刑事の負担が増える一方という過酷な状況なのでした。
ウォルター・ディ警部補は抜擢されて殺人捜査課へ赴任してきます。
犯罪が少ない田舎町から越してきて、若い妻クレアも慣れないロンドン暮らしに。
クレアは良家の出で、本来は高嶺の花。ディのほかにない人柄を見抜いて結婚したのです。
そんなとき、警官が殺される事件が起きます。
平行して進む出来事が絡み合い、入り組んだ人間関係がどう解き明かされるかわからない、緊迫した三日間に。
ウェールズ出身のネヴィル・ハマースミス巡査は、煙突掃除の少年が死んだ事件をほっておけず、その家の前を見張ります。
おそらくは事故なのですが‥そんな危険なところで働かせた雇い主や通報しなかった家の人間を簡単に許せなかったのです。
不眠不休で頑張る根っからの警官、このハマースミスがすごくいいんですよ!
キングスリー博士は、法医学検査官。
といっても、まだ正式には警察にその役職はなく、見ていられずに買って出ているのです。
変人だけど熱心な博士。娘を助手にしています。
上巻では、まだ話がどっちへ転ぶかわからないところも。
群像劇という感じで、いちおうの主人公らしい人物も主人公とまで呼べないような‥
濃厚な雰囲気で、所々でぐっと熱がこもった描写があり、引き込まれました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
切り裂きジャックの恐怖が未だ残るロンドン。
創設された刑事課で生まれたばかりの『刑事』たちの捜査を描く。
『最初の刑事』を読んでおいて○。
基礎知識が頭に入っていたのであれこれ補完しながら読み進められる。
緊迫の下巻へいざ。 -
1889年のロンドン。事件を解決するため奔走する警察官の人物像、
時代背景、街の様子が丁寧に描かれている。
意識してスピード感が出過ぎるのを抑えている気がする。
ストーリー展開が自然で無理が無い。 -
2012年発表
原題:The Yard -
切り裂きジャックの恐怖が残るヴィクトリア朝ロンドン、さらなる悪がはびこる予感。
いやぁなかなか雰囲気があった。
サブストーリーてんこもり、まとまりがなく読みにくかったが、これはこれで努力の賜物ということで。 -
ニューヨークに初めて刑事という存在が出来た、黎明期が舞台。少年誘拐事件/煙突清掃の子の死体/そして仲間である刑事が殺される、という複数の事件が絡み合って行く。犯人と思われる人物は匿名で描写され続ける。
「ゴッサムの神々」でもそうだったが、この時代のNYの描写は不潔で騒々しい故に痛々しい。(時代ミステリである以上当然なのだが) -
名前通りの警察小説、といっても時代は19世紀のスコットランド・ヤード。鉄道はあるもののロンドン市内の移動はすべて馬車。そんな時代錯誤のようでいながら刑事たちの活躍はおもしろく古くささをちっとも感じない。そういえばホームズ譚だってこんな時代の話なのに今読んだって十分おもしろい。それと同じだ。長編の割には登場人物が限られているので読みやすい。それでいて、ちょっとした端役と思える人物が実は重大な関わりを持っていたりと意外性もある。いくつかの事件が重なり合っていると思いきやそれぞれが微妙に重なっていて、最後には一挙に解決する。犯人たちがお人よしすぎてすべて自爆してしまう都合のよさと言ってしまえばそれまでだけど、それぞれの人が納まるべきところへ納まる結末はすこぶる読後感がよい。そして何よりディ警部補、ハマースミス巡査、キングスリー博士の活躍がすばらしい。この続編があるというのだからぜひ読まねばならないな。