- Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488201128
作品紹介・あらすじ
まだ見ぬ人知を超えた存在と巡り合うため、二千年の歳月を生きる謎の男サイモン・アークの旅は続く。鐘が鳴り響く修道院で起きた中国人修道士殺害事件、北米の湖に出現し四人を殺めた大海蛇の怪異、かの切り裂きジャックが遺した秘宝のありかとその正体…。この世のむこう側を垣間見させる八つの妖しい事件から、鋭敏な推理力で真実を導き出すオカルト探偵の活躍、第四短編集。
感想・レビュー・書評
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自称悪魔を探して二千年、サイモン・アークもの訳者選集版
・悪魔の蹄跡
・黄泉の国の判事たち
・悪魔がやって来る時間
・ドラゴンに殺された女
・切り裂きジャックの秘宝
・一角獣の娘
・ロビン・フッドの幽霊
・死なないボクサー
確かに 作者ご本人の選集とは
なんとなく風味が違いますね。
雰囲気がこう…説明しがたい。
作者はギミック的に自信のあるものを選び、
訳者(読者)はストーリー性の強いものに惹かれる傾向でもあるんでしょうかというようなことを解説でいってたのでそうなんでしょう。 -
「切り裂きジャックの秘宝」が面白かった。宝探し物は個人的に好き。犯人探しの方は今ひとつだけど。「わたし」が出てこない「悪魔の蹄跡」、生い立ちに関わる「黄泉の国の判事たち」などはシリーズ中特異な一編。
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・エドワード・D・ ホック「サイモン・アークの事件簿」(創元推理文庫)はこれまでのとは違 ふ。もちろん、物語すべてはサイモンの謎解きである。違ふのはこれまではホックの自選短篇集であつたこと、つまり今回は自選ではないのである。「ホックは 短編集三巻分の作品しか選ばなかった」(307頁、木村仁良「“わたし”はだあれ?」)といふ。そこで「訳者厳選の作品集」(同前)の登場となつた。それ が本書である。「一九五〇年代から四編、七〇年代と八〇年代と九〇年代と二〇〇〇年代からそれぞれ一編ずつの、合計八編を」(同前)収める。幅があるので、語り手も最後は出版社退職の身である。それほど長く書き継がれてきた。しかし変はらぬのはサイモン・アークであつて……。
・本巻5作目「切り裂きジャックの秘宝」はよくある切り裂きジャックは何者かといふテーマにも通じる作品なのであらう。例の如くサイモンが語り手に誘ひの 連絡をする。これが始まりである。さうしてロンドンに飛び、切り裂きジャックの秘宝探しを始める。ポイントは切り裂きジャックの手記である。これが古本屋 に持ち込まれ、その真贋等を確かめるためにサイモンの登場となつたのであつた。持ち込んだのは若き女性、ジャックの血縁者であるらしい。これにジャックの連続殺人の謎と秘宝の在処が書かれてゐるといふ。結論から言つてしまへば、殺人は秘宝の在処を示す地図を得んがためになされたものであり、その地図は殺された娼婦の刺青としてあつたといふ。つまり、娼婦がその地図を渡すことを承知せねば殺してその刺青を剥ぐしかないのである。だから猟奇的な殺人を装ふことになつた。本当のジャックは「けちな泥棒で」(187頁)、「一度喧嘩をした相手の男をナイフで刺した」(同前)以外の暴力はふるつてゐないらしい。殺人 狂でも異常性愛者でもないのである。しかし、秘宝の地図のために娼婦を殺し、それを猟奇殺人に見せかけた、それが切り裂きジャック事件であるといふ。これ は物語であつて切り裂きジャック探求の書ではない。このジャック像、専門家から見ればをかしなところがあるに違ひない。しかし、個人的にはおもしろいと思 ふ。地図を4等分して4人の娼婦の刺青にするなどといふ発想、なかなかできるものではない。どうしてもそれがほしいといふことになれば殺さざるを得ないで あらう。そんな殺人の動機や猟奇殺人とせざるを得なかつた理由も、これで説明がつく。分かり易い。明快である。これが切り裂きジャック探求史の中でどのや うな位置を占めてゐるのか、これは興味あるところであるが、サイモンとは関係ない。物語はあくまでサイモンの名推理を楽しむことである。実はこの「秘宝」、その秘宝の在処を示す地図をいかに読み解くかといふ点が推理の中心である。ところが、サイモンはこれをいとも簡単に解いてしまふ。この作品、もしか したら彼の推理より切り裂きジャックの方に作者の関心があるのかもしれない。さうでなければあまりに簡単に解決しすぎる。安直な発想でありすぎると思ふ。 かういふのはこのシリーズでは、といふより、たぶんこのやうな推理を中心とする作品では珍しいものであらう。それでも切り裂きジャックであるがゆゑに、私 はこれをおもしろく読んだ。さういふ作品だと思へば、それはそれでおもしろいものである。それゆゑに、一日も早く、この続きで更に5が出ることを期待した い。さうなると、そこにはインターネットを縦横に駆使するサイモンがゐるのであらうか。本書でもその片鱗はうかがへるが……といふことは、いかに2000 歳であれ、サイモンも時代に合わせて変はつてゐるのであつた……。 -
2013/02/27読了
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オカルトな雰囲気とミステリのつぼを押さえた作品。
まだ、翻訳が続きそうなので楽しみ。