私家版 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488208028

作品紹介・あらすじ

友人ニコラ・ファブリの新作。それが彼をフランスの第一級作家に押し上げることを私は読み始めてすぐに確信した。以前の作品に比べ、テーマは新鮮で感動的、文体は力強く活力がみなぎっている。激しい憎悪の奔流に溺れながら、この小説の成功を復讐の成就のために利用しようと私は決意した。本が凶器となる犯罪。もちろん、物理的にではない。その存在こそが凶器となるのだ…。

感想・レビュー・書評

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  • フランス人作家ニコラがゴンクール賞を受賞。
    彼の作品を英訳してイギリスに紹介してきた出版社社長エドワードは、
    その小説に感服すると共に激しい憎悪を催し、
    ニコラに復讐するため、持参した三冊の本を彼の書棚に忍ばせたが、
    一冊だけは無名の作家の世に知られざる作品だった――。

    原題は書籍の印刷時、特装本などのために、
    所定の部数とは別枠で用意される「別刷り」の意だそうだが、
    スッキリした邦題がジャストフィット。
    何しろ犯人=語り手は、
    手間暇かけて「凶器」となる「本」をわざわざ拵えるのだから……。

    凶器といっても国●刊●会の函入り本のような、
    分厚くて堅い、殺傷能力の高い本を作ってブン殴ってやろうなんて(爆)
    ギャグみたいな話ではありません。
    積年の恨みを晴らすため、ありったけの奸智を総動員しようという、
    おじさんの嫉妬と苦悩が渦を巻く犯罪小説です。

    嫌いなら付き合わなければいいと思うのだが、
    腐れ縁を維持せざるを得なかったのは
    主人公エドワードの心の弱さ故、かな。
    あるいは、ニコラは高慢で、
    金持ちの息子であり色男であることを鼻に掛けた本当に嫌なヤツなんだけど、
    エドワードはそんな彼に男性としての自分の理想像を重ね合わせていたのかも。
    それでいて、昔彼に奪われた大切なものは戻ってこないけれど、その分、
    今、彼にとって最も大切なものを奪って報復してやろうと考えたワケだ。
    物凄く手の込んだ方法で……。

    でも、悪事に手を染めつつ、根はお人好しのエドワードが、
    計画の露見・頓挫を恐れて神経をすり減らしていくので、
    何となく応援したくなってしまう(笑)。
    で、電話や手紙が舞い込んで対応する度、
    それがエドワードを陥れる罠なのでは……と想像しながら
    ページを捲っていったのだけど、
    うひゃあ、まさかこんな結末とは!

    まあ、一番の驚きは、作者が専業作家ではなかったことですが。

    ところで、
    あまり話題にならなかった気がするけど、
    テレンス・スタンプ主演で映画化されていたそうなので、
    観てみたい。
    http://booklog.jp/item/1/B0009JCW1M

  • ジャン=ジャック・フィシュテル Jean‐Jacques Fiechter)の推理小説(1993)、榊原晃三訳。原題はTiré à part で《別刷り》、《抜き刷り》意。
     出版社社長のエドワード・ラムは作家ニコラ・ファブリの才能に嫉妬している。ニコラが自分の恋人ヤスミナに酷い仕打ちをしたことを知ったエドワードは、復讐を企てるが……。
     本を使って人を殺すという着想が新鮮。著者はローザンヌ大学の歴史学の教授で、本書が小説第一作。

  • 編集者が積年の恨み募る友人作家の新作を盗作に仕立て上げる、とい発想も、贋本製作のプロセスも面白かったけど。

    肝心の小説としての面白さがねえ・・・
    東野圭吾でも、もちょっとなんかくっついてるぞ。

    屈折しきって僻み根性丸出しの主人公がいい味ではありました。
    (↑こういうキャラクタが好き★)
    欲張らないでこれを楽しめばいいのかな。

  • ずいぶん前に『吉野朔実劇場』で紹介されていたので、大まかなストーリーは読む前から知っているのだけど、このたびあらためてじっくり読んでみた。

    エジプト・アレクサンドリアで青年期を過ごしたイギリス人とフランス人の二人の男。二人はそれぞれ、堅実な出版社の社長、放埓な性格の作家となる。イギリス人にはフランス人に対するアレクサンドリア時代からの「遺恨」があり…という、ざっくりいえば復讐譚。

    抑えた筆致で要所要所に確実に怨嗟の要素をばらまき、それに応じるべく積年の恨みと実行手順が蓄積され、「作家殺すにゃ刃物はいらぬ、アレとコレさえあればよい」とばかりに、証拠を残さず外堀を埋めていくさまがテンポよくページをめくらせる。WWIIが二人に及ぼしたもの、各地の荒廃による時代の断絶も復讐にはすべてプラスにはたらくように配置されているのもまた巧み。ニコラの取り巻きの様子やエドワードの習得したスキルを、ビブリオマニア的に楽しむこともできる。

    アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』のような長年の復讐譚の印象をずっと持っていたが、今読んでみると、名声の肥大についてはアンリ・トロワイヤ『仮面の商人』、偽物を抱えてしまった作家の人生の脆さは四元康祐『偽詩人の世にも奇妙な栄光』が近いように思う。それらがあざとくなく(エドワードの執拗さを「あざとい」と呼ぶ向きもあるだろうけど)、かといって単調でもないサスペンスとしてまとめられており、読み終わったとたんに「あー、面白かった!」と素直に思えた小説だった。この読後感が最近、なかなかなくて。

  •  最初に書かれている「しかし、われわれの憎しみはほとんど愛と見分けがたい」という引用文がぴったりだと感じた。主人公のエドワードは友人の作家ニコラを憎んでおり、とある事実を知ったことがきっかけで徹底的に復讐しているのだけど、エドワードの心の奥底にあるのは自分に対する自信の無さとニコラへの羨望で、良くも悪くもニコラに強く強く心惹かれており、それが先述した引用文と対応している気がする。後味の良い小説ではないけど、本を凶器とする展開と男同士の関係性の難しさ(女同士のそれとは一味違う気がした)が面白かった。

  • ある男の復讐譚。
    あらすじにある『本が凶器になる』というのはどういうことなのかと思っていたら、成る程、そういうことか……。
    ちょっと首を傾げる部分は確かにあるんだけど、鬱屈した主人公が復讐の仕込み(?)にのめり込む様子が面白く、さほど気にはならなかった。主人公が青春時代を過ごしたアレクサンドリアのエキゾチックな描写もいい。
    他の方のレビューを読むと、映画化されていたようだ。映像向きとは思えなかったのでビックリした。機会があれば見てみたい。

  • あまりのつまらなさに挫折

  • イイハナシダナー。とんでもなくハッピーエンドだな。解説にあるような、主人公の行動を善悪で議論するのはとんでもないお門違いなんじゃないだろうか? エドワード・ラムは自身の成長のために、自分を取り戻すために、ニコラ・ファブリという偉大な作家の影響を抜けなければならなかった。彼に惹かれているが、その一方でもう一人の自分は悲鳴を上げている。そんな状況だったのだろう。映画でよくわからなかったところも解説されてる。2001年出版だから最近の作品かと思ってたら原著は1993年で翻訳もハードカバー版が出てたらしい。

  • よく出来てます。
    ビブリオマニアにはたまらないのでは。

  • 2001年1月13日購入。
    2005年9月18日読了。

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