蛇、もっとも禍し 下 (創元推理文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488218133

作品紹介・あらすじ

女子修道院でのフィデルマの調査は困難をきわめた。高慢な修道院長に、敵意に満ちた修道女たち。修道院が建つ地の地方代官と修道院長は、兄妹なのにもかかわらず憎み合っている。さらに地方代官のもとには、修道院長の元の夫や、フィデルマの兄であるモアン王と対立している族長の息子らが滞在していた。複雑に入り乱れる人々の感情と思惑。そんな中、第二の殺人が……。七世紀アイルランドを舞台にした好評シリーズ、長編第3弾。訳者あとがき=甲斐萬里江/解説=田中芳樹

感想・レビュー・書評

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  • フィデルマのシリーズでは地位がある強烈に傲慢な女性(男性の場合もあるけど女性が多い)がよく出てきますが、今回も凄まじいです。首都からも遠い田舎の修道院のため、フィデルマの権威もなかなか通じない。無知なので、どれだけ無礼な事をしているかもわからないという。

    出てくる人物の描写がほんとにうまくて面白い。嘘やごまかしの曲者だらけ。

    ストーリーの中で宗教的な行事や、決まり事、独特な法律など、さらっと解説されてるので、わかりやすい。

    史実とも絶妙にリンクさせてるのもさすがです。

    ミステリーというより時代劇に近い感じで、面白いですよ。

  • 横溝正史ばりの、おどろおどろしい展開。
    いつの時代も、どんな場所でも、一番おそろしいのは、人間の欲望なのだなぁ、と。
    7世紀アイルランドの女子修道院内で、首を切られ井戸に吊るされた若い女性の死体がみつかる。
    その後も修道女が、同じく首を切られた惨殺体で発見される・・・
    いづれも、その身体には古代異教儀式が施されている・・・その意味は?
    謎の無人船、高慢な修道女たち、あやしい修道士に領主、図書室の年代記、宝探しや謀反や・・・・もうもりだくさん。
    たくさんの事柄を、フィデルマがひとつひとつ拾い集めて繋ぎ合わせてゆき、答えが導き出される。
    大変おもしろかったです。
    上下巻とも、注釈に結構頁を割いているので、これがまたおもしろい。
    フィデルマ・シリーズ、長編が他にもあるそうなので、楽しみです♪

  • いつになく人間味溢れたフィデルマがそこにいます。

    毎回思うのですが、事実が少しずつ集まり、やがて犯人をあぶり出していく様は、鳥肌が立ちますね。読者も彼女とともに情報を得ているのだから、ルールに則った本格派に入るのではないでしょうか。

    フィデルマ本編最後の言葉、誰しも言ってみたい、言われてみたい言葉ですよね。

  • 図書館で。
    色々複雑に入り組んだ人間関係の中の殺人事件。
    読み終わって、なるほど彼女はだから院長に対してへりくだっていたのね、とも思いましたが、あの男がそれほどモテモテってのがなんか解せない。作中、3人の女性と結婚したり交際してるってことでしょ?不思議だなぁ。

    解説にフィデルマさんがあまり好きになれないとあってまったくもって同感だな、と思いました。血筋の確かな王女様だし、きちんとした資格を持ったドーリィ(でしたっけ)というのはわかるのですが、出会う人間すべてに自分を敬ってしかるべき、という態度をとるのはちょっとどうかな、と思う。へりくだってへつらえとは言わないけど、特に女性に対して高圧的な気がするなぁ。前に読んだ女性の族長に対してもだけど、特に年の若い要職についている女性に対して辺りが強い気がする。まぁ実際偉いんですけどね(笑)

  • ロス・アラハーでの事件(『幼き子らよ、わがもとへ』)の後、ドゥーン・ボイーの女子修道院に呼ばれ、船で彼の地へ向かったフィデルマ。その途中、無人で漂流する船に遭遇し、そこでエイダルフに贈った祈祷書を発見する。彼の身を案じつつ、到着した"三つの泉の鮭"修道院で彼女を待っていたのは、身体中が傷だらけで頭部を切断された身元不明の遺体だった。ブレホンを要請しておいて捜査に非協力的な修道院長を訝しみながら、この土地に隠された秘密をフィデルマが暴く。〈修道女フィデルマシリーズ〉邦訳長篇第3作(原書4作目)。


    キリスト教の上陸によって地下へ潜った古代宗教の秘密結社と埋蔵金伝説という後半の展開がアツすぎるのに、前半の女同士のいがみ合いパートが冗長!そして地下の隠れ家とか、年代記に残るいわくつきの伝説とかのワクワク要素を出すわりに、そこに幻想味が宿らない筆致なのが残念。フィデルマが論理的思考の持ち主なのはわかるけど、語り手はもうちょっと読者サービスしてくれてもいいでしょそこは。
    『幼き子らよ〜』の直後の話なので、途中までエイダルフは不在。代わりにロスというとても頼りがいのある船長キャラがでてくる。フィデルマに対する気遣いもできて、族長や教会関係者よりずっとまともなんだよなぁ。エイダルフと再会してすぐ軽口を交わす辺りも良いのだが、『幼き子らよ〜』で酷い死に方をしたカースのことも一度くらい思い出してくれんか?と思ってしまう(笑)。

  • シリーズ長編第3弾。
    相も変わらずのフィデルマの知恵の冴え。
    陰謀と欲と愛憎うずまく場所での活躍に胸がすくのもいつも通りだけど、この後の作品を先に読んだせいか、インパクトにはちょっと欠けた感。
    ほかの作品が更にハイレベルだもんね。

    犯人は意外というほどではなかったが、それでもいろんな人間模様がとても濃く、フィデルマの最後の謎解き場面では、ううむ、さすがと唸るのみ。
    その時代の香りまで漂ってくるような筆致もひっくるめて、ほんとに好きなシリーズだ。

  • 上巻は謎だらけでしたが、それが下巻で当時のアイルランドの古の宗教や勢力争いをからめて、解き明かされていくのが面白かったです。
    いつもはフィデルマの高慢さが鼻につくところがありましたが、今回はフィデルマ以上に高慢なドレイガン院長がいたおかげで、それが幾分やわらいでいたのもよかったです。(^^;

  • (上巻より続く)

    それにしても、
    いくら男女が共に修道院に暮らし、
    結婚して子供を作ることもある時代だったとはいえ、
    相変わらず、親子関係や夫婦関係がドロドロしている。

    でも、楽しく読めたのは、
    久しぶりにエイダルフが登場して、
    無事再会できたからだと思う。
    今後のふたりの展開が楽しみ。

  • 今回はすっきり終わるというよりも、やっと解決した…!という印象。色々入り乱れてたなあ。フィデルマ、お疲れ様です。

  • もう、解説の田中芳樹氏のおっしゃることに尽きると思いますね、我が意を得たりです。そうなんだよ、作者が地の文でまでフィデルマの美点を書き連ねたりするからいけないんだよね。ほんと好きになれないものこの娘。それなら読むな、というところですが修道院やケルト等々は大好物なので我慢してきたわけです。最初に訳された蜘蛛の巣は割とフィデルマの嫌なところが気にならなかったんですが、シリーズ当初の長編二作くらいがほんとにダメでした。今作は蜘蛛の巣の直前作ということで、作者さんも大分わかってこられたということなんでしょうか、登場人物たちが色々な意味で魅力的でなかなか読み応えがありました。エイダルフ氏の登場も少なかったしね!

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