修道女フィデルマの洞察 (修道女フィデルマ短編集) (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ト 6-8)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488218140

感想・レビュー・書評

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  • 法廷弁護士(ドーリィー)、しかも最高位に次ぐ高い資格の持ち主、そして修道女である主人公フィデルマ。
    古代アイルランドを舞台にした、スーパーウーマンというべき彼女は、修道女という立場もあり、奢ることなく理知的に謎を解き明かす。

    本作のうち、決め台詞と言えるのは、「晩祷の毒人参」に登場するこの言葉。
    私には、あなたの罪に赦しを与えて差し上げることはできません。
    どなたか同情的な聴聞司祭様に告解を聴いておもらいになるよう、お奨めいたします。(287頁)

    本書は5編の短編からなる。
    特に面白いと感じたのは「毒殺への誘い」。
    全員(フィデルマも!)被疑者という展開。
    一人残らずネクトーン氏(被害者)に憎しみを持つ理由がある。
    もう一度言うが、フィデルマも、である!
    こんな困難からどうやって犯人を見つけ出すのか?

    そのなぞときと、それぞれの憎しみの原因を知るのが面白い。

  • ミステリ。短編集。
    前作に引き続き、どの作品も面白い。
    世界観的には「晩禱の毒人参」がベストか。非常に考えさせられる。
    ミステリ的には「まどろみの中の殺人」の設定が好み。
    長編も読んでみたい。

  • 【収録作品】毒殺への誘い Invitation to a Poisoning/まどろみの中の殺人 Murder in Repose/名馬の死 The Horse that Died for Shame/奇蹟ゆえの死 Murder by Miracle/晩禱の毒人参 Hemlock at Vespers 
     「奇蹟ゆえの死」と「晩禱の毒人参」に色濃く表れているフィデルマの価値観は、「キリスト教」一般のものではなく、地域性・時代性が強く感じられる。

  • まだ長編は手をつけていないシリーズだけど、短篇のこの完成度の高さなら、充分期待できる。動機がなかなか独特だ。

  • 修道女フィデルマ・シリーズの短編集第2弾。

    やはり短編は良いかも。
    さくさく話が進んでイライラしない。

    最初の「毒殺への誘い」が舞台設定といい、容疑者たちの人間模様といい、犯人といい、面白かった。
    また、いくつかの話でフィデルマが、冷静さや叡智だけでなく、優しさや懐の深さを出していて良かった。

  • 他の方の感想でたびたび「フィデルマは可愛げがない」という評価を読みますが、彼女が滅多に弱みや隙を見せなくて、設定が嫌みなくらいご立派だから、ということもあるのかもしれない。わたしも「なんて面白味のないヒロインだろう」と初めは思いましたが、シリーズを読み進めているうちに、優等生でお勉強はできるのに情緒は未熟、バリキャリだけど心の中は女の子というタイプに見えてきました。よくよく読むと、早起きがつとめの修道女なのに寝起きは悪いし、傲慢な奴にはすぐ腹を立てて言い返さずにいられないし、エイダルフに惹かれているのに素直じゃないし、聖職者の道を選び冷静な法律家ぶってても、プライベートはお姫様キャラな感じがします。まあ、作者には確かにひいきにされてるっぽいけどね。
    今回の短編集では法の倫理をとるか人の倫理をとるかで難しい選択を迫られます。

  • 紀元7世紀のアイルランド。法廷弁護士にして裁判官の資格を持つ美貌の修道女フィデルマが各地で事件を解き明かす短編集第2弾。
    今回はミステリとしては展開が読める作品が多かったが、フィデルマが法律家としての正義と宗教者あるいは人間としての正義の間で煩悶する展開もあり、そういう面では深いと思う。
    作者は「一般には知られていない古代アイルランドの社会をわかりやすく説明するためにこのシリーズを書き始めた」と語っているそうだが、合理的で男女同権な社会背景は確かにたいへん面白くて読みどころである。フィデルマを小娘と侮って尊大な態度をとる権力者が、彼女がアンルー(上位弁護士)の資格を持っている(かなり偉い)と知って凹むのは水戸黄門の印籠チック。もちろん権威だけではなく文武両道に秀でた彼女が、物的証拠と人間心理を手がかりに事件の真相を推理していくのも爽快である。ミステリ的に鬼面人を驚かすようなトリックがあるともっと嬉しいのだが、そこまで求めるのは贅沢か…
    長編は未読なので、そのうち読んでみたい。

  • 7世紀アイルランドの上位弁護士にして修道女であるフィデルマが、オーナー同士がいがみ合う競走馬と騎手、とある島に隠された聖遺物、山の上に建てられた修道院の秘密などにまつわって起こる殺人事件を解決していく。〈修道女フィデルマシリーズ〉の短篇集2作目。


    「叡智」の感想に書いた通り、このシリーズの第二の主役はブレホン法という古代アイルランド独自の法律そのものだと思うのだが、本書に収録されているフィデルマものの第1作目「まどろみの中の殺人」はまさに動機がブレホン法に拠っていて、この時代設定に必然性のある見事なミステリーだった。
    フィデルマのスーパーウーマンっぷりは今回もすさまじく、トゥリッド・スキアギッドという護身術の使い手で、過去に強姦魔に手酷い仕返しをしたと明かされたり、毒草の同定もお手の物である。一方で、いくらブレホン法が現代の目で見て先進的であっても、現実にはフィデルマが若い女性であるがゆえにナメられる場面がよく描かれる。最初はナメられていた奴が実はキレ者だった、は探偵物の定石だが、本シリーズはやはりここにフェミニズム的な視点も被さっているのだと思う。
    今回の収録作ではラストに置かれた「晩禱の毒人参」にて、〈告解〉と〈告白〉の違いや聴聞司祭の守秘義務などカトリック教会内でのルールに従って論理を展開し、真犯人を説得するフィデルマの姿が印象的。完璧超人で大正義のように見えるフィデルマだが、そんな彼女が所属する信仰の世界すら時には少し突き放してみせる筆致が苦い余韻を残す。

  • 個人的にとても好き。
    7世紀のアイルランドや、当時のキリスト教などといった舞台背景に詳しくないため、読みながら躓くことは多い。
    人名や地名も、馴染みがないので、頭に入りづらい。
    だが、フィデルマの真摯な姿勢と、論理的な物語の進め方は面白い。

  • 毒殺への誘い◆まどろみの中の殺人◆名馬の死◆奇蹟ゆえの死◆晩禱の毒人参

    原書名:HEMLOCK AT VESPERS AND OTHER STORIES FROM HEMLOCK AT VESPERS(Tremayne,Peter)

    著者:ピーター・トレメイン、1943イングランド・コヴェントリー出身、歴史家・小説家、ブライトン大学→ロンドン大学→イースト・ロンドン大学
    訳者:甲斐萬里江、英米文学者・翻訳家、早稲田大学大学院修了
    解説:川出正樹

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