悪魔はすぐそこに (創元推理文庫) (創元推理文庫 M テ 7-1)
- 東京創元社 (2007年9月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488240035
感想・レビュー・書評
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美男美女カップルと平凡カップルが出てくるわけで。その展開であれば、まぁ普通は美男美女の方がうまくいかないように話を進めるのが、無難なところ。とは言え途中の展開は、やっぱりみんなイケメンが良いのかよ!結局顔かよ!と思わせるところも多く、はうあーってなるんだけども、最終的にはやっぱり男は顔じゃないよねって事になり、でも女は顔だよね、って事になり、これの意味するところは女を顔で選んでからにケシカランという事になるのか、それともしょせん男は女の顔やら身体しか興味が無いのか、という話ともいえる。
というくらい推理小説にしては犯人が誰かとか概ねどうでも良いという展開なのである。そもそも容疑者の一部は名前ですら呼んでもらえずに、役職名で呼ばれてたりするので、明らかに差別されていて。
という訳でラブストーリーとしてとらえてみると、ヒロインの謎さ加減というか、ツンデレっぷりというか、そういうのがちょっと悪くない、という気がしてくるのだった。 -
これはもう反則すれすれ。でもよくできているのでOKです。クリスティの名作を思い出した。
目につくと読むことにしているディヴァイン。そんなにメジャーじゃないのは、シリーズ物を書かなかったせいもあるのかな。単発作品ばかりだから、順番を気にせず読んでいける良さもあるんだけど。どれを読んでも、謎と人間ドラマの配分が絶妙で、しかもどっちも面白い。どっちかに偏っちゃうと、よっぽどのレベルじゃないと満足しにくいが、ディヴァインには本当に職人的なうまさがあると思う。
本作を読み終わったら誰でも、もう一度読み返すだろう。再読してしみじみ「うーん、なるほど!」とうなってしまった。 -
大学を舞台に場所も登場人物も限定された中で起きた連続殺人事件。
ディヴァインの作品では毎回思うことですが、今作でもやはり巧いなぁと感じます。
大学の管理職という舞台裏のような場所を覗けたのも楽しかったです。
三人称多視点でのストーリーは多角的に事件を見せるだけでなく、登場人物達一人ひとりも深く掘り下げていびつな関係性を浮かび上がらせいき、ストーリーも非常に楽しめました。
優れたサスペンス小説と謎解きのパズル要素が見事に融合した素晴らしい作品だと思います。
謎解きとしてはシンプルですし派手なトリックやロジックがあるわけではないのですが、自信を持って犯人がわかった!とは読者に言わせないプロットの巧さがあります。
登場人物の印象が多視点により変わっていくと同時に、事件の犯人像も定まりません。
解説にもある通り、もう一度読めばまた違った視点を楽しめます。
嫌な奴だと思っていた人物も違う視点からだとなんとも愛おしく思え、そういった印象に翻弄される中に真犯人が巧みに隠されていました。
二人の女性の恋愛の行方も気になるところで、しかもこれがサイドストーリー的な箸休めでなく事件と複雑に絡み合っているのもおもしろいところです。この二人の女性は本当に魅力的でした。 -
舞台は1960年代のイギリス。
少年非行や女性の社会進出など急速に流動化する
この時代のイギリス社会が事件の背景にある。
ディヴァインのミステリーの特徴でもある
身内サークルの中で犯行が起こる。今回の舞台は大学の
キャンパス。(ディヴァイン自身の長年の職場でもあった)
三人称多視点の叙述スタイルにしてやられた感じ。
この作家は本当にテクニックがある。2度読むと深いと
解説にあったけれどその通りかも! -
ディヴァインの作品は、登場人物が魅力的なのが素晴らしいと思う。
もちろんミステリである以上ある種のコマではあるのだけど、それだけに終わらないものがある。
とてつもなく重要な登場人物が多いけど、それぞれがしっかり描かれているせいか全く気にならない。
事件自体の印象は地味ではあるけど、かなり込み入った状況。
三人称多視点で物語が進むので、スムーズに情報が集まってくる。
それにしてもこの仕掛けは凄いと思う。
巻末解説で法月さんも言ってるけど、再読するとさらに面白いと思う。 -
2022/12/28読了(再読)
ディヴァイン作品の事件は、本作のように大学内だったり、家庭内、ご近所内だったりと、狭いコミュニティ内で起きるので、密な人間関係が手掛かりにも目眩ましにもなるのが特色。10年以上ぶりの再読――犯人が判った状態で読んで、なるほど、ここの描写は違うふうに解釈するとこういうことか、という発見があった。 -
日本でいえば昭和30〜40年代頃の英国二流?大学内での連続殺人事件を、主に関係者たちの会話をもとにやはり複数の関係者たちがそれぞれの視点から推理していくという、なかなかに複雑な形式をとっている。巧みなミスリーディングと省略によって読み手が煙に巻かれていくところはクリスティーの後継者と言えるのだろう(クリスティーが賞賛したのも宜なるかな)。
解説で法月氏が書いている通り(この解説が実に力作!)読後にもう一度読み返したくなることは必至で、実にジワジワと味わい深い作風なのだが、出版日順に入手しづらくなっているのは今風の刺激が足りないせいだろうか…残念至極。 -
これは当たりだ!大体ミステリーって話の筋がどうなっているのかを知るだけの作業で、本当に必要でない情報に振り回され、疲労させられ、疲れるだけで、全然楽しくないというのが現実。これは、いいね。シンプル、無駄がないし、全体的にシニカルな表現が多くて好み。人物の書き分けもうまい。こう、なんだろう、純粋に、人の歪んだ心が引き起こす殺人事件っていいなあ。やっぱ皆人間だから完璧でないし、嫉妬に苦しめられたり、その場の衝動でやってしまった、というような、迷って苦しんで、っていうのがうまく表現されてた。
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割と犯人は早い段階でわかるけど、人間関係がちょっと面白くて良き英国ミステリという感じではある。