青雷の光る秋 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (455ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488245085

作品紹介・あらすじ

嵐の直撃で交通が途絶したフェア島で殺人が発生。故郷である島に偶然帰っていたペレス警部の捜査が始まる。現代英国ミステリの至宝〈シェトランド四重奏〉堂々の最終章。

感想・レビュー・書評

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  • このシリーズがこんな風に終わるとは思っていなかった。衝撃的。ペレス警部の故郷フェア島で起きる殺人事件。ペレスの寡黙だが知りたがりの思考パターン、サンディの成長、フランとの恋愛など隅々まで楽しかったけどもう終わって悲しい。

  • シェトランド四重奏完結編。

    今作はシェトランド本島ではなく、ペレスの故郷フェア島での物語。
    3作目を数年前に読んでいるので、前回読んだ2作目からペレスと恋人フランの関係がぐっと進んでおり、結婚を前提とした両親との顔見せの装い。

    フェア島のフィールドセンターはバードウォッチングシーズン真っ盛りだが、生憎の荒天でほとんどの宿泊客は足止めを恐れて帰っていった。
    僅かに残った宿泊客とセンター職員、名ばかりセンター長のモーリス、実権を牛耳るモーリスの妻で世間からの注目も高い鳥類学の研究者アンジェラ、料理人のジェーン達でペレスとフランの婚約祝いパーティを開催。
    翌日発見されるアンジェラの死体で物語が動き出す。

    他の島民も居るには居るが、状況的に犯人はセンターに滞在していた人の中に居る。
    嵐のせいで本島から捜査の応援は呼べないが、逆に犯人も島から出ていくことはできない。
    ペレスは、フランや父の助けも借りながら単身現場検証や事情聴取を進める。
    いわば準孤島クローズドサークルの状況。
    そしてやはり起きる次なる殺人。

    相変わらず事件自体の奇抜さや展開の意外性、起伏があるわけではない、どちらかというと乏しいのになぜかページが進む不思議。
    たぶん、決してキレキレとまではいかなくも、そのじっくりと考え独自のペースを貫き通すペレスの思考回路が自分にとって心地よいのだろう。

    今作で一番目を見張ったのは、これまでずっと半人前に見ていた部下サンディにプライベートな問題に関する助言を求めたところ。
    しかもそのコメントをかなり素直に受け止めている。
    こういうフラットな心持ちが何とも好きなのである。

    からの、じわじわと展開しつつのまさかの結末。
    いやー、ここでそういう結末になるのは予想だにしていなかった。
    いろいろ解せない伏線回収もあるのだが、全部持っていかれた。
    色んな意味で、あとがきの酒井さん言うように今一度、この四重奏を最初からまとめて振り返ってみたくなった。
    というか逆に、こうして途切れ途切れではなく、最初から読んでいかないと楽しみ切れないなぁとも。

    なんか久しぶりにシリーズものを読み切ったなと思ったら、あれ、あれあれ~、あとがきによると次の邦訳作『水の葬送』もペレス刑事ものなの!?
    そもそも通り名からして本作で完結だと思っていたし、この結末から展開されるネクストシーズンってどんなんなのよ。

    • fukayanegiさん
      111108さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      なんと。
      自分も今作を読み終わるまで、『水の葬送』が続編だなんて思ってもい...
      111108さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      なんと。
      自分も今作を読み終わるまで、『水の葬送』が続編だなんて思ってもいなかったので、驚きましたが、ここまでの内容を知った上で敢えて言うならやはり四重奏を読んでから読むべきだと思いますよー。

      が、それしかないのでは悩みどころですね。
      一作単品でも楽しめるのは間違いないですけど。
      いや、でもなぁ。
      ほんと悩ましい状況だ。
      2023/07/09
    • 111108さん
      fukayanegiさん、お返事ありがとうございます。

      やっぱり順番大事ですよね!さっきちょっと検索したら『水の葬送』の後も続編出てるよう...
      fukayanegiさん、お返事ありがとうございます。

      やっぱり順番大事ですよね!さっきちょっと検索したら『水の葬送』の後も続編出てるようなので、これはやっぱり最初から読まないとですね。
      今回のは読まずに返却して『大鴉の啼く冬』からリクエストしようと思います。ありがとうございます♪
      2023/07/09
    • fukayanegiさん
      111108さん

      そうなんですよ、続きを考えてもやっぱり最初から読んだ方が絶対いいです!!
      ちょっとおあずけになっちゃいますけど、ナイス選...
      111108さん

      そうなんですよ、続きを考えてもやっぱり最初から読んだ方が絶対いいです!!
      ちょっとおあずけになっちゃいますけど、ナイス選択です!
      2023/07/09
  • ああ…終わってしまった。。
    物語の結末はわかっていた。
    そんな雰囲気が早い段階から漂っていたもの。

    それはさておき、今回は閉ざされた空間で起こった殺人事件で、ペレスが容疑者たちと対峙してじっくりと捜査を進めていく様は、読みごたえがあり興味深かった。
    時にじっくり過ぎて、フランじゃないけど
    ちょっとジリジリしてしまったけど。
    でも嫌いじゃない、そんなペレス。

    この作者の作品は、ほんとにどれも淡々としていて、
    先が気になりどんどん読めるというタイプの物語ではないんだけど、読み終えると不思議と次の作品も読みたくなる、スルメ的なおもしろさがある。

    • 111108さん
      ちぃさん
      確かに「スルメ的なおもしろさ」ですよね!
      『水の葬送』からのシリーズも待ってますよ♪
      ちぃさん
      確かに「スルメ的なおもしろさ」ですよね!
      『水の葬送』からのシリーズも待ってますよ♪
      2024/01/06
    • ちぃさん
      はい。さっそく図書館に予約を入れました!
      「哀惜」と、どっちが早く読めるでしょう。
      こちらは最新作ですよね?楽しみです。
      はい。さっそく図書館に予約を入れました!
      「哀惜」と、どっちが早く読めるでしょう。
      こちらは最新作ですよね?楽しみです。
      2024/01/06
  • アン・クリーヴスのシェトランド四重奏シリーズの第4弾。第一部完。10年越しに、ほぼ一年かけてこのシリーズ4冊を読み通すことができた。

    最後は秋。
    ペレス刑事が第1作の「大鴉の啼く冬」で出会ったフランと婚約することになり、その里帰りとして故郷のフェア島に戻る。嵐で交通網が麻痺した中、死体が発見される。仲間の応援も期待できず、いつも以上に孤軍奮闘するペレス刑事だが。。。

    なんというか、シリーズものでこれをやるのかという衝撃(今年2回目)。
    ミステリとしては、核となるのは非常にシンプルなことで。だけど色々な要素が混ざり合って複雑なように見える。終盤まで決定打がなく、犯人がわからないのもシリーズの特徴か。終盤の灯台の明滅が、あたかも雷のような情景で非常に良かった。


    〜第一部読了記念にまとめ(ネタバレあり)〜

    ○冬
    なんといっても、アップ・ヘリー・アーの宴に合わせて容疑者候補が一人ずつ姿を現す終盤が、4部作で一番印象的。

    ○夏
    暗くならない夜の様に、全体的にどこか調子の外れた雰囲気。地味な事件なのに息苦しいというか。ラストは4部作で一番切ない。

    ○春
    毎回意外な犯人だけど、秋は特に驚いた。事件なのか事故なのか。4部作で一番地味な事件。だと思うけど、本当に意外な犯人。

    ○秋
    もう本当に。続く4部作の存在を知らなかったら呆然としているかも。4部作で一番登場人物が嫌な感じ。

  • 小さな島の描写だけで、保守的で寒々とした情景が浮かび上がる。バードウォッチャーが集まる自然の楽園。嵐で孤立した島で起きた連続殺人事件。ペレス警部が指揮を執るのだが、、、
    悲惨な終わり方が辛かった。

  • シェトランド四重奏の4作目。
    これで完結となります。

    ジミー・ペレス警部は婚約者のフラン・ハンターを連れて、故郷のフェア島へ。
    天候不順で、孤立した島への着陸も大揺れとなり、その後は島に閉じ込められてしまう。
    両親とフランは互いに気に入るが、船長の父と古風な母と、シェトランド諸島生まれでもない画家のフランとでは、生活の仕方には相当な違いがあることは否めない。

    島のフィールドセンターは、バードウォッチャーが世界中からやってくる場所で、住民が何かと集まる中心ともなっていた。
    所長の妻アンジェラは、テレビにも出る有名な自然科学者。

    ペレスとフランの婚約披露パーティの直後、事件が起こる。
    シェトランド本島との交通が途絶したため、単身捜査にあたるペレス。
    フランはだんだん、暇をもてあまし、滞在する人々に関わっていくことに。

    フィールドセンターの滞在客に渦巻く~さまざまな人間模様。
    アンジェラとは不仲の義理の娘。
    有能な料理人のジェーン。
    新種発見に張り切るバードウォッチャー。
    育ちはよさそうだが得体の知れないところのある若者。
    一筋縄ではいかない人生を描くのが得意な作者だけに、読み応えのある内容になっています。
    刑事にしては優しすぎる共感力の高いペレス、そんな彼へのフランの思い。
    この筆致がいいんですよねえ。
    意外な結末に仰天し、登場人物同様に呆然としましたが。
    1作目からを振り返ると、そうなのかと‥
    風が吹きすさぶような厳しい自然の中で生きる、忍耐強く激しさを秘めた人々。
    作者の気合と描写力で、全体としてのまとまりは感じました。

  •  シェトランド四重奏の最終章。あっと驚く悲しい結末に茫然。この展開は想定外だ。まあ幕を引くというのはこういうことなんだろうけれど。4作目はシェトランド本島の南に浮かぶフェア島が舞台。端から端まで歩いて行けるほどの小さい島だ。いうまでもなくペレス警部の生まれ故郷で両親が今も住んでいる。許婚者のフランを連れてお披露目に帰省したペレスを待ち受けていたかのように、渡り鳥の研究者やバードウォッチング客が集まる島のビジターセンターで殺人事件が起こる。センターに滞在しているいわくありげな面々の誰かが犯人であり、簡単にわかりそうなものだが、悪天で往来を隔絶されていてペレス以外の専門捜査官がいないため、捜査は難航する。しかもさらに事件が続く。鳥愛好家たちといっても社会の縮図というわけで、事件の方はさもありなんという結末なのだが、四重奏の結末はそれを越えたところにあってびっくりというわけだ。

  • シェトランド4部作の最終章
    クローズドサークルの中での狂気、だれが犯人なのか?
    なぜ被害者の装飾が行われたのか?

    深まる謎、戦慄の連続に寝不足気味。

    そせてまさかの・・・

    女性らしい文体に心惹かれ魅力的な登場人物に感情移入し、美しい自然描写にうっとりしながら読み進めていたのですが。

    まさしく『カタストロフィ』

  • シェトランド四重奏の最終章。
    あまりに悲しい終わり方。ジミー・ペレス刑事が可哀想でした。
    でも、あとがき読んで、もの静かなこの刑事の新シリーズがあると知り
    翻訳が出るのを楽しみにしています。
    幸せになってほしいなあ。

  • そうかあ、「本の雑誌」で矢口誠さんが「衝撃」と書いていたのはそっち方面(ドラマとして)のことだったのか。私はてっきりこっち方面(ミステリとして)だと思い込んでて、正直ちょっと肩すかし。

    でも「シェトランド四重奏」してとてもよくまとまっていて、再読に耐える上質の作品ばかりだと思う。四部作の中ではやはり「大鴉の啼く冬」がいちばんいいかな。シェトランドの荒涼たる冬の雰囲気が素晴らしい。シリーズとしてはまだ続くようなので楽しみだ。

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