- Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488247065
作品紹介・あらすじ
ヘレンは恐ろしくなって、台から電話を払い落とした。友人だというその女の声は、はじめ静かで、ほほえんでいた。だが、話すほどに悪意を剥き出しにし、最後にはこちらの死をほのめかす、予言めいた台詞を吐いたのだった。不安を断ち切れないヘレンは、亡父のもと相談役に助言を求めるが…。鬼才の名声を確立した名作、遂に登場。MWA最優秀長編賞に輝く衝撃のサスペンス。
感想・レビュー・書評
-
サイコミステリーの古典的名作ということで読んでみたがあまり楽しめずに読了。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私のミステリーのバイブル。これでミステリーにハマった作品。時代は移り、古めかしい表現はあるけど持てる側の人の心理、持てない側の願いとか、普遍的な欲望が描かれてて秀逸。結末はわかっていても読み返したい。
-
我が愛のマーガレットミラー。
「神経症サスペンスの祖」 の作品として恥じない、登場人物のキリキリ度がたまりません。
話としては。
主人公ヘレンは、父親から多額の遺産を受け継ぎ、ホテルのスイートに一人住まいしています。
ある日かかってきた1本の電話から物語が始まります。電話の相手は、最初は優しげだったのに、次第に悪意を帯び、「手足がちぎれ、血みどろになったあなたが水晶玉に映っている」 と予言し―――
人間がこんなにも 「毒」 になれるのか、とか、その「毒」としての純粋さとか強さとか、その部分のサスペンスと、いわゆる 「本格ミステリ」 としての部分のバランスが絶品の一品です。
これも、ラスト数ページ、気持ち良く叫べるなあ。
ワタシ、これ、ラスト数ページ読んでた時、「ぺ、ページ飛ばした?」 「あ、あれ? この本落丁?」 とか思いました。
そして読み返すと納得の丁寧な伏線の張り具合。
そして、文章もこれまた美しいです。イジワルで冷たくて、ちょっと寂しげなのがイイ! -
再読のハズなのに、また引っ掛かった…‼︎
え、イカレてるのはこの人だったの⁉︎
最後の最後まで騙されたよう〜 (≧∇≦)
一方的に描写されるエヴリン・メリックに「名もなき毒」の原田いずみを見てさえいたのに。 -
サイコサスペンスの先駆でもある1955年発表作。日常がじわりと狂気に浸食され、逃げ場無き闇へと変貌していく怖さ。心理描写に長けた女流作家ならではの筆致が冴える秀作だ。
父親の遺産を継いだヘレンは、30歳となった今もホテルに引きこもり、孤独な生活を送っていた。少女時代から劣等感の塊で、母親や弟とも反りが合わない。日々、鏡を見ては己の醜さを嘆いている。そんな或る日、旧友を名乗る女から電話があった。イーヴリン。記憶にない。女は、間もなくヘレンに不幸な出来事が起こると脅迫まがいに告げた。不安を覚えたヘレンは、父親が懇意にしていた投資事業家ブラックシアに相談を持ちかける。不可解に思いながらも不承不承引き受けたブラックシアは、イーヴリンの素性と行動を探り始めたが、男は徐々にヘレンに覆い被さる漆黒の闇へと引き摺り込まれていく。
地の文は簡潔だがミスディレクションを含み、さり気ない会話にも伏線が忍んでいる。テンポ良く読み進めるうちに、ミラーの仕掛けた罠に徐々に嵌まっていく訳だ。ミステリを読み慣れた読み手なら、中途でプロットの核心には勘付くだろうが、それでも真相が明かされる暗鬱なラストシーンには〝さむけ〟を覚えるだろう。そして、ファンであれば、もう一人の重要な作家へと思いを巡らせるだろう。ロス・マクドナルド。彼が創作する上で、妻のマーガレットから大きな刺激を得ていたことは間違いない。例えば、本作の筋書きを下敷きにして、狂言回しを努める探偵役の男を一人称一視点にし、硬質で含蓄に富むレトリックを用いて組み立て直せば、リュウ・アーチャー物の一篇が仕上がる。得てして残酷で悲劇的な結末を迎える作品を数多く著してきたミラー家の二人が、軸に据えていたものは、やはり共通するのだと確信した。 -
これはすごくおもしろかった
読後興奮して寝付けなくなったくらい
スリラーというのかな
予備知識なしで読んだほうがいいと思う
伏線もちゃんと張られてるしね -
書かれた時代を考えるととても斬新。
-
2016/10/12読了
-
東京創元社2016年復刊フェアの1冊。
スリリングなサイコサスペンス。今となっては、オチは割と早いうちから予想がついてしまうのだが、原書刊行当時はかなり斬新だったのでは?
古い作品を読み返して思うのが、『電話の呼び出し音に対する恐怖』というのはすっかり世の中から消えてしまったのだなぁ……ということ。今は発信者も解るし、面倒な相手は着信拒否で終了だもんねぇ。 -
杉江松恋さんが『読み出したら止まらない! 海外ミステリーマストリード100』(日経文芸文庫)の中で、「古本屋で探してでも読んでもらいたい作家たち」の筆頭に上がっていたマーガレット・ミラー。「何があっても読むべきマストリードの一人」なのに、2013年の時点では全作品が品切れ中であったが、その後、『悪意の糸』(創元推理文庫)の本邦初訳を皮切りに、代表作『まるで天使のような』も創元推理文庫で復刊され、『雪の墓標』(論創社)の本邦初訳と少しずつミラーの再評価の兆しが見られる中で、遂に本作の復刊である。
前置きが長くなったが、サイコ・サスペンスの元祖とも言われる本作は、ある男とある女の悲劇と言ってもいいのかもしれない。それぞれの悲劇の源は、今となっては珍しくない題材ではあるものの、決して古びてはおらず、ミラーの卓越した文章表現と、それを生かした翻訳によって、心打たれる作品となっている。