まるで天使のような (創元推理文庫)

制作 : 黒原 敏行 
  • 東京創元社
3.83
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本棚登録 : 219
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488247096

作品紹介・あらすじ

山中で交通手段を無くした青年クインは、〈塔〉と呼ばれる新興宗教の施設に助けを求めた。そこで彼は一人の修道女に頼まれ、オゴーマンという人物を捜すことになる。だが彼は五年前、謎の死を遂げていた。平凡で善良な男に何が起きたのか。なぜ外界と隔絶した修道女が彼を捜すのか。私立探偵小説と心理ミステリをかつてない手法で繋ぎ、著者の最高傑作と称される名品が新訳で復活。解説=我孫子武丸

感想・レビュー・書評

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  • まったくストーリーを知らず読みだす。そして見事その読み方が楽しかった。
    冒頭からの話の流れで、宗教集団内でのサイコ殺人事件かと思えば、田舎町の複雑な人間関係の中で起きた不正会計と事故死を巡るハードボイルト調になっていく。
    しかしラストで話が大きくうねり予想外の真相が現れる。これはフィニッシング・ストロークと言うらしいが、見事にやられた。こういう快感は久々。

    しかし、そこだけでなくそれまでの話の経過も十分面白い。良く練られているし、50年前に書かれた小説なのに全く古臭さが無い。会話もユーモラスでエッジが効いているし、テンポも良い。これは新訳というのもあるかもしれない。こんな面白い小説を今まで知らなかったとは。マーガレット・ミラーの名前は聞いていたけど、こんなに面白いのなら他の作品も読まないと。

  • 最後、予想通りにパズルのピースがはまってすっきり。
    そこに至るまでにきちんとした作りになっていて面白かった。さすがミラー。

  •  タイトルはいまひとつ意味不明だが中身はまずまずおもしろい。カジノですってんてんになった私立探偵クインが怪しげな山中の宗教団体に紛れ込み、そこの修道女の依頼で人探しをすることになるのだが、当の本人は事件に巻き込まれて行方不明だし、何やら同じ時期に銀行員の不正使い込み事件が起きていて、共通の関係者と接触するうちにどんどん深みにはまっていって...という話。登場人物や筋書きははわかりやすいのだが、何人か出てくる修道士が重要な役回りなのに出番が少なくて個性がいまいち把握しにいのが難点。読んでいくとああこういうことなんだろうなというところに落ち着くので、ラスト三行の驚愕の結末、という使い古された惹句にはだまされない。それよりも本作の魅力はクインと相手との軽妙な会話だろう。まるでひと昔前の探偵もののようなおかしみのあるやりとりだ。作品自体は確かに古いのだが、新訳ということなので、これは訳者が芸達者なのだろうな。前にも書いたけど翻訳物は作者とならんで訳者の力量が重要だ。一人称をぼく、おれ、わたし、わし、のどれにするかで全然印象が違う。昔の二流ハードボイルドを読んでいるかのような懐かしさ。なんといっても本書の魅力はそれに尽きる。

  • ミステリ

  • 確かに面白かったのだが、訳の古めかしさがかなり読みづらくしていた。ブクログ内の評価が高かったので読み続けられたが、そうでなければ投げたすところだった。新訳で読んだらもっと高評価になるかな。ラストがすばらしい。

  • CL 2017.5.11-5.18

  • ミラーとは思えないコミカルなノリと、クインのシニカルな言動に笑わされ一気読み。最後まで面白かった。もう少し掘り下げて欲しかったエピソードもちらほらあったが、後日談なんて書いたら余韻がぶち壊しになるだろう。

    肝心の謳い文句『最後の一撃』は、途中で気が付いてしまったので何ら衝撃がなく、まだページがあると思って捲ったら解説だったことの方が驚きだった。

  • ミラーはあまり得意ではなかったがこれは面白かった。数年前に謎の失踪を遂げた男を探す探偵物としても充分面白い。何故宗教団体の隔絶された地で暮らす女性が、無関係の男を捜すのか。失踪した男と横領で捕まった女の事件は関係があるのか。いくつもの謎が徐々に明らかになる過程が、ゾッとさせられる。登場人物の誰もが多面的でリアルな存在だ。長所だけ短所だけなんて人間はいないし、誰かの全てを心底理解できることは決してない。そんなことをしみじみ感じさせる話だ。

  • 生き生きした表現、巧みな心理描写、ミステリーの域を越えた終盤の迫力。そして噂のラストに度肝を抜かれた。

  • 面白くさくさく読めるのはやはり翻訳力だと思う。黒原敏行翻訳はワタシには当たり翻訳です。最後の衝撃はまぁまぁ衝撃でした。あの人が!? みたいな。ミステリーなので内容ははぶきます。

  • エンジンサマーの<しゃべる灯芯草>みたいな塔の人達のネーミングが気にはなったが、最後の一撃には脱帽です。

  • ラストの1,2ページが急展開だが、少々急すぎる気がして、ほんのもう少しだけ説明が欲しいと思った。しかし軽いノリの世俗的な主人公と謎の宗教団体という対象的な登場人物たちの絡みは面白く、飽きることなく最後まで一気に読めた。

  • 「ラスト1行の衝撃」と言うのにつられて、一気読み。主人公はちょっと軽くて自分に甘い感じのする私立探偵クイン。ネタバレになるので以下自粛・・・。でも、あそこはもうちょっと深く掘り下げて欲しかったなぁ。

  • 山中で交通手段を無くした主人公は、新興宗教に助けを求めるが、そこで一人の修道女にオゴーマンという人物を捜すよう依頼される。しかし、行きがかり上、調べてみると、彼は五年前に死亡しているという。
    その事実を修道女へ伝えるだけで依頼は完了するのだが、町の人に話を聞いていくと、その死が謎めいていた。
    平凡で善良な男の身に何が起こったのか。なぜ外界と隔絶した修道女が彼を捜すのか。
    主人公は関係者から話を集め、真相を探って行くのだが…。

    と、言うのが物語の粗筋です。

    この作家さんを今まで知らず、本屋で見かけて読んでみようと思ったのですが、そのきっかけとなったオビに書かれた言葉をここでは伏せておきます。

    この本の売りでもあるからオビに書かれているわけで、ここで伏せてもあまり意味はないかもしれません。でも、できればこれからこの本を読もうとしている人には、このオビを見ずに読んでほしいです。

    お話としては心理ミステリ、とでも言うのでしょうか。パズルめいたトリックというものはなく、あくまで関係者の話を集めてオゴーマンに起こったことを知るというものなんですが、気になる謎はチラホラと出てくるのものの切羽詰まった感じはなく、割とのんびりしています。また、何となく焦点を絞りにくく、起伏もあまりない話なので、普段小説を読まないという方にとっては少しダレたお話と映るかもしれません。

    ただ、終盤から解決にかけて一気にミステリが加速します。

    私はオビに書かれた言葉とこれに似た作品を過去に読んだことがあったので、衝撃を受けるほどではなかったのですが、それでも読了後暫く呆然としました。そして、読んでいる最中は曖昧に感じていた色々な証言が上手く収まった物語であることを知ったわけです。

    何も知らずに読み始め、読了後に感じる衝撃は、私が過去に読んだ似ている本で感じたものと同様なのだろうと想像してお薦めとしたいのだけど、それがなかったとしても、全てを知った上で読む二回目がこんなに面白い本も稀じゃないかな、なんて思います。

    ちょっとしたジレンマですね。

    オビに書いてあるPRを読まずに手に取ってほしいけど、そのPRがないと薦められない。おまけに解説にもあるとおり、お話自体も一見地味。

    難儀ですけど、小説を読むのが好きな方には是非真っ新でお薦めしたい。普段ミステリを読まない人の方が驚くかもね。

  • 図書館で借りたため帯がなかったので「最後の一撃」のことを知らず、読了直後にぼう然。幸せな衝撃でした。

  • 作者の罠の周到さに唖然。特に終盤の追い上げで見事に引っ掛かってしまった。378頁4行目とそれに続く台詞の秀逸さが光る。新興宗教の描写は思ったより少なかったものの、狭いコミュニティの息苦しさは伝わり十分満足。

  • 50年前の作品だが、あまり時代を感じさせないのは黒原氏訳による文が軽妙だからだろうか。特に会話の掛け合いは抜群のセンス。
    地の文もサクサクと読み進められる簡潔さと美しい詩的な表現がミックスされて読み心地よい。
    ミステリにさほど思い入れがある方ではないけれど面白かった。

  • 名作の新訳。山間で隠れるように暮らす宗教団体の女性と偶然の縁があって奇妙な言付けをされた男は、過去の失踪事件を再調査することに。遠景でカリフォルニアの広大さを鮮明に意識させ、乾いた空気が迫ってくるよう。著者の残酷な手つきに痺れる。

  • 最後の一撃だけではない。

    地味なトーン、さっぱりしない甚だハードボイルドらしくない主人公、それぞれに囚われるものを持つ女たち。読んでいる者も、いつしか蜘蛛の糸に絡めとられていく。

    やられました。

  • ラストが効いてんのは、そこまでの過程も完璧やからやな。

  • 2015/09/05読了

  • 新訳版。旧訳は『ミステリマガジン』に掲載された後に文庫化されたものの、長らく品切れであったようだ。
    巻末の解説にも書かれているが、確かに本作は地味だ。派手さは無いが堅実な作風と言えようか。
    但しこれが読み始めるとすこぶる面白い。細々とした謎が読者を飽きさせないし、それであのラストなのだから、何でこれが長らく品切れだったのか理解に苦しむぐらいw 『マーガレット・ミラーらしさ』みたいな部分が薄かったのが原因のひとつなのかなぁ……。

  • 山中で交通手段を無くした青年クインは、〈塔〉と呼ばれる新興宗教の施設に助けを求めた。そこで彼は一人の修道女に頼まれ、オゴーマンという人物を捜すことになる。だが彼は五年前、謎の死を遂げていた。平凡で善良な男に何が起きたのか。なぜ外界と隔絶した修道女が彼を捜すのか。私立探偵小説と心理ミステリをかつてない手法で繋ぎ、著者の最高傑作と称される名品が新訳で復活。解説=我孫子武丸

  • ミラー1962年発表作。

    辺境で自給自足の生活を送り、俗世間との接触を閉ざした新興宗教団体「天国の塔」。私立探偵クインは尼僧の一人から依頼を受け、オゴーマンという名の男の行方を調べるが、5年前の嵐の夜、川に転落したオゴーマンの車が発見され、たまたま拾ったヒッチハイカーに殺されたと伝えられていた。クインは関係者を当たるが、狂気染みた人物たちの織りなす愛憎が真相を闇深くへと潜り込ませていた。
    心理サスペンスを得意とするミラーの作風は本作では抑え気味で、シニカルな私立探偵クインの行動を中心にハードボイルド・タッチで謎解きが展開する。描写には、夫・ロス・マクドナルドの影響が少なからず垣間見ることが出来、微笑ましい。ただ、狂気の有り様を内面ばかりではなく、客観描写でゾッとさせる手法は熟練の極みで流石である。
    ラスト1ページで明らかとなる「衝撃の真相」は、中途に張り巡らされた伏線で弱めらてはいるが、悲劇的な情景としては充分効果的である。

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