荊の城 (上) (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2004年4月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (434ページ) / ISBN・EAN: 9784488254032

作品紹介・あらすじ

【CWA(英国推理作家協会)最優秀歴史ミステリ長編賞(ヒストリカル・ダガー)受賞/パク・チャヌク監督作品、韓国映画『お嬢さん』原作】
19世紀半ばのロンドン。17歳になる孤児スウは、故買屋の一家とともに暮らしていた。そんな彼女に顔見知りの詐欺師がある計画を持ちかける。とある令嬢をたぶらかして結婚し、その財産をそっくり奪い取ろうというのだ。スウの役割は令嬢の新しい侍女。スウはためらいながらも、話にのることにするのだが……。『半身』のウォーターズ、待望の第2弾。

感想・レビュー・書評

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  • 19世紀半ばのロンドンの下町。17歳になる少女スウは掏摸を生業として、育ての親イッブス親方とサクスビー夫人、そして同居人のジョンとデインティらと暮らしていた。
    そんなスウたちの前に顔見知りの詐欺師〈紳士〉が現れ、ある計画を持ちかける。

    俗世間とは隔離した辺鄙な地に建つブライア城、そこで学者の伯父クリストファー・リリーと暮らす、世間知らずの令嬢モードを〈紳士〉がたぶらかして結婚し、彼女の莫大な財産を奪い取るというものだ。
    モードと伯父の暮らすブライア城は数人の使用人がいるのみで、訪ねてくる者も伯父の年老いた友人たちだけ。伯父は大きな書庫を持ち、ある分野の辞書の編纂をしていた。モードはその仕事を手伝いながら、彼の書物を友人らが訪ねてくるたびに朗読させられる。
    そこに〈紳士〉が伯父の仕事(蒐集した版画の装丁)を手伝う青年として城に入り込みモードに近づいていたのだ。〈紳士〉はスウに彼女の侍女となり、自分との仲が深まるようモードをそそのかす役割を与える。
    最初の頃はモードを「ねんねの鳩ぽっぽちゃん」と〈紳士〉のカモとして見ていたスウ。けれども外界から遮断された仄暗い城のなかで、モードと二人っきりの時間を過ごすうち少しずつ気持ちに変化が生じ、それはモードも同じで、二人は自然と親しくなっていく……

    舞台はヴィクトリア朝のロンドン。
    当時は圧倒的な男性優位社会。そのなかで女性たちはなすすべもなく男性の言いなりになって生きるしかなかった。
    モードもそうだ。奸悪な伯父から自由になろうとすれば、それはまた邪悪な〈紳士〉の言いなりになるしかない。

    私は『大学教授のように小説を読む方法』(著:トーマス・C・フォスター)も読んでいる途中なのだけれど、そこにはヴィクトリア朝の作家たちはあからさまに書けないこと、おもに性行為や性欲について、知恵をしぼり、かたちを変えて、作品のなかに禁じられた話題を忍び込ませたというくだりがある。そのかたちを変えたものの1つに「吸血鬼」があげられていた。

    吸血鬼はいつも美しい未婚の女性(19世紀のイングランド社会では、未婚の女性は処女を意味している)を狙う。処女の生き血を吸うと若返り、一方血を吸われた女性たちは自分も吸血鬼となって、つぎの犠牲者を探しはじめる。
    それは私の知っている吸血鬼像でもあるのだけれど、吸血鬼が意味するものはたんに読者を怖がらせるというだけではない。たとえばセックスに関係がありそうなこと、身体的な恥辱、不健全な性欲、たぶらかし、誘惑、危険などなどの意味合いを持っていることは、なんとなく窺えるだろう。
    吸血鬼伝説の本質は「堕落した時代遅れの価値観を体現する年長の人物と、若い娘──望ましくは処女。娘の若さ、活力、美徳などが強引に奪われる。年長の男は生命力を保つ。若い娘の死、または破滅。」(P47)だ。

    さらに著者は吸血鬼は実際に血を吸う行為だけでなく、たとえば利己主義、搾取、個人の自主性を踏みにじるなどの意味もあるのだという。
    そこでは吸血鬼は、吸血鬼の姿で現れずにふつうの人間として登場する。
    そう、人は牙とマントがなくても吸血鬼になれるというわけだ。

    話が逸れてしまったが、読みはじめは荊(茨)の城のなかで100年の眠りにつくお姫様、それがモードだと思っていたのだけど、上巻を読み終える頃には、私にとってモードは吸血鬼に血を吸われた娘に重なっていた。
    モードの周囲の男たち、伯父、〈紳士〉、伯父の友人らが、モードの若さや知性、感情、財産などを奪っていく。彼らが人間の姿を纏った吸血鬼にみえてしかたがない。
    そんな吸血鬼(あえてそう呼ぼう)たちの巣窟に太陽のように明るく生命力に溢れたスウが現れる。だからといってまだ物語の森を覆う濃い霧は晴れることなく、ますます深く立ち込める。森にはまだ陽は射さない。何も見えてこない。

    上巻にはスウの視点からの1部とモードの視点からの2部(の途中)までが収録されているのだけれど、1部のラストには驚愕する。久しぶりの感覚。雷に打たれたかのような衝撃。
    あぁ、これは……、サイコスリラーだ。

    韓国では『荊の城』の舞台設定をヴィクトリア朝から日本統治時代の朝鮮に変更して、映画『お嬢さん』として公開。〈成人指定〉で全世界で大ヒット。私もキム・ミニさんのお嬢さんとキム・テリさんの侍女スッキを観てみたい。

  • 上のみ読了。snsで好きな子が本棚に置いててタイトル見て気になって図書館で勢いで借りて、分厚さと中身をはっきり見てなかったからか文字がすごく詰められててわたしは少し得意では無さそうだったけど頑張って勢いで読みました。
    1章はスウ視点。2章はモード視点。
    最初はあまり乗り気では無かった本も何だかんだ読んで展開が気になってペラペラ読めた。
    スウの心情の変化はなぜだか心に来た。侍所と令嬢ではあるもののモードと仲良くなるうちに芽生える気持ち。モードは愛してなかったけど紳士に従われるままに従って、それを見てるモードは辛いだろうなあって。1章の最後の展開は意外だった。結構急だった。
    2章はモード。幼少期からのお話でだいぶ壮絶だった。というか、よく耐えれたなあ……と。
    リチャードが結構やばいことしてるし、スウと同じくモードは少しずつ心境が変化する。その中にある壮絶な状況。計画も。
    下巻も読みたいとこだけどなんか元々最初からギリ読めるか程度の気持ちで読んでたせいか飽きた。続きは気がのったら読みます…

  • 上巻読了。

    時は19世紀半ば。ロンドンの下町で掏摸を生業として暮らしていた少女・スウ。
    ある晩、知り合いの詐欺師〈紳士〉から、田舎の城に住む令嬢をたぶらかして巨額の財産を奪い取る計画を持ち掛けられます。
    その話に乗る事になったスウは、件の令嬢・モードの新しい侍女としてブライア城へ向かいますが・・・。

    第一部はスウの視点、第二部はモードの視点で物語は展開するのですが・・・いや、もう、第一部のラストが驚愕すぎて、思わず“お口あんぐり”になってしまいました。完全にやられましたね~。
    そして、第一部では見えなかった裏側が、モード視点の第二部で明かされていくのですが、その事情がそれはもう残酷かつ淫靡で、読んでいて酸欠になりそうなほどでした。
    スウやモードの心情の変化や心の揺れ動く様が手に取るように伝わってくるような、緻密な心理描写も見事ですね。
    さて、これからどのように展開するのか、先を読むのが楽しみなような怖いような複雑な気持ちで、下巻に進もうと思います。

  • 前作が好みではなく、今回のも読み進めることが難しいかなと思ったけど今回の作品はどんどん続きが気になって読めました
    2部作でスウとモード視点のお話
    1部終わりでえ!?と見事に驚かされました
    続きも楽しみ

  • すべてが終わった後に回想しているような描写がされている
    スウがお嬢様に添い寝するシーンの「睫毛が羽のように咽喉をなでる」て表現めちゃめちゃ良いな・・・
    初読なんですけど『お嬢さん』で大筋知ってるので実質2回目みたいなもんなので、これ初回と2回目で全然印象かわるだろうなってシーンばっかりでうわーうわ~おもしれ~~って読んでます(普段ミステリ小説を全然読まない人)
    変態という名の紳士が少女の涙だけを集めて作ったインクがほしいですなみたいなこと言い出すの最高に気持ち悪い

  • 映画『お嬢さん』が面白かったので原作も。映画は韓国と日本のちゃんぽんでしたが、原作の舞台はもちろんイギリス。小悪党一家の養われ子スーザン(スウ)が、詐欺師の<紳士>の策略で、莫大な遺産を持つモードお嬢様の侍女としてお城のような邸宅に潜入する。騙すために近づいたのに次第にモードお嬢様に惹かれてしまうスウ。ついに計画通りお嬢様と紳士は駆け落ちするが・・・。

    映画は場所こそ違えど基本設定と展開は原作にほぼ忠実だったので、すでにドンデン返しを知っていながら読み進めましたが、それでも十分ハラハラドキドキ、実はこのとき裏側では・・・という、映画の2回目を楽しむような感覚で読めました。上巻は、スウ視点の第一部で驚愕のラスト、そしてお嬢様視点の第二部の途中まで。

    余談ですが小説の原題は「FINGERSMITH(フィンガースミス)」=日本でいう「スリ」のこと。日本語タイトル「荊の城」は全く別ものだけど、作品のおもな舞台になるブライア城のブライア(brier)は茨のことらしく、童話の眠り姫=茨姫(Briar Rose)も彷彿とさせてこれは良い改題例かも。映画は韓国語の原題「아가씨(アガシ)」は邦題の「お嬢さん」と同じ意味。英語タイトルの「THE HANDMAIDEN」は真逆の「女中さん」つまりスウ=スッキのほうの立場のタイトルになってる感じなのかな?

  • 顔見知りの詐欺師「紳士」から、貴族令嬢であるモードを騙して結婚する計画の協力を求められたスウは、報酬に惹かれて引き受ける。19世紀半ばのイギリスの生活の描写が丁寧で、陰鬱な貴族の館の情景が目に浮かぶよう。スウと紳士が城館に入ってからは物語が動き出し、目が離せなくなりました。スウとモードの2人の間に友情とは言えない感情が芽生えてからの文章が、なまめかしく、色っぽい。そして、驚きの展開で……下巻に続く。

  • ペテン紳士と元掏摸の侍女とお嬢さま。
    この三人の間で陰謀が渦巻き、ふたりの揺れる感情が迷いを生む。

    一部と二部で視点が変わり、スウとモードのお互いの心境の変化が見れて良かった。
    愛ゆえに欺く決心って切ない。

    長いけどあっという間だったので下巻も期待。

  • 『半身』もそうだったけど、この人の作品は前ふりが長い。途中で盛大などんでん返しがありそうな気配に、それまでのじわじわとしか進まない展開を読者は辛抱強く待たなければいけない。その辛抱がつまりスリルであり、サスペンスであり、ミステリーなのだけれども。
    舞台は英国。ロンドンっ娘の気性がなんとも愛らしくて惹かれる。登場人物の誰もが一癖二癖ありそうで、一気に読んでしまう。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「この人の作品は前ふりが長い」
      その所為で評価が分かれますね。私は好きです。
      「この人の作品は前ふりが長い」
      その所為で評価が分かれますね。私は好きです。
      2012/08/28
  • 素晴らしい!の一言です。
    独特の文体には、多少慣れが必要ですが、後からそれほど気にならなくなります。この巻の最後は、久々「やられた!」と感じました。それが何かは、読んでからのお楽しみです。

  • 赤坂BW/ウオ/1

  • 2025/06/23-07/02

  • 看了BBC傳說中的名片Fingersmith實在太棒,決定來看原著。一般來說原著與影視作品畢竟因屬性不同常常會有若干脫節,然而讀了這部作品,卻令人驚嘆BBC忠於原著的程度,還有文學作品與影視各自的完成度之高,各有千秋,兩邊都是傑作,深深致敬。

    第一次讀這位作者的書,描寫的肌理實在細緻無比。書中所營造出的氣氛,跟使用的意象,還有心理與書中人物一舉一動,都是極具說服力的描寫,儘管許多情節都很超現實,但是文字功力實在太出色,讓人不禁就跟著故事中古城緩慢的步調,慢慢地細細地咀嚼著。本來想說,已經看過電視劇,讀內容應該很快,沒想到一本居然就花了兩週。而且更令人驚嘆的是,第一部與第二部其實是相同時間相同場景,分別透過蘇與莫德的角度來敘事,如果功力不好就會有重複的感覺,然而這第二部的新鮮感與細緻感又無比吸引人,莫德心中的暗潮洶湧與轉折,在同樣的場景中卻是全新的感受,充分發揮影像版無法詮釋到的文字天生的強項,也把文學本身存在的目的發揮得淋漓盡致。近年畢竟影視比較強勢,很多文學也不禁寫得很像漫畫或影像,但反而失去文字本身該有的優勢。我還是喜歡這種王道的作品,以文字本身的優勢(意象、想像、氛圍、比喻、用典、詞彙)決勝負,才是真正的文學。不過,這部作品更神奇的地方就是影片本身也是傑作。期待下卷。

    最後必須說,這個翻譯非常地流暢,也是作品讀起來很舒服的原因之一。

  • 小説ならではのドキドキがある……
    この本自体が秘密の読書会めいてますわね。

    そして、もしや、モードが秘密を打ち明けられたifの世界線が映画「お嬢さん」ってこと!?!?!?

  • 怒涛の展開にお手上げ
    物理的にお手上げした

  • 徹夜本
    1章の終わりでえ!?ってなってあとはずっと引き込まれました
    私が百合好きなのもあると思うけどおもろかったです

  • 19世紀半ばのロンドン、17歳になる少女スウは、下町でスリを生業として暮らしていた。そんな彼女に知り合いの詐欺師がある計画を持ち掛ける。とある令嬢をたぶらかして結婚し、その財産を奪い取るために協力してほしい、というもの。スウの役割は令嬢の侍女。(表紙裏のあらすじより)
    というわけで、恐る恐る令嬢のいるお城に入り込み、着々と計画を進めていく。
    この本は私のお気に入りに入っていた本で、約10年も前から入っていたもの。
    当時どういうわけで、リストアップしたのやらすっかり忘れていたのですが、整理をする前に読んでみようと思ったのです。
    あまり期待もせずに読んだのですが、登場人物も少なく大変読みやすく、古い時代の話にもかかわらず、情景がつかみやすく結構面白く読み終えました。
    さすがお気に入りに入れただけあるなぁ、なんて思いながら。
    そして最後の逆転劇!!思いもよらぬ方向に行きそうな展開。
    下巻に続く。

  • 3.88/983
    『【CWA(英国推理作家協会)最優秀歴史ミステリ長編賞(ヒストリカル・ダガー)受賞/パク・チャヌク監督作品、韓国映画『お嬢さん』原作】
    19世紀半ばのロンドン。17歳になる孤児スウは、故買屋の一家とともに暮らしていた。そんな彼女に顔見知りの詐欺師がある計画を持ちかける。とある令嬢をたぶらかして結婚し、その財産をそっくり奪い取ろうというのだ。スウの役割は令嬢の新しい侍女。スウはためらいながらも、話にのることにするのだが……。『半身』のウォーターズ、待望の第2弾。

    *第1位「このミステリーがすごい! 2005年版」海外編ベスト10
    *第1位『IN★POCKET』文庫翻訳ミステリーベスト10/総合部門・作家部門・評論家部門
    *第2位「週刊文春」2004年ミステリーベスト10/海外部門
    *第8位『ミステリが読みたい!2011年版』ゼロ年代ミステリベスト・ランキング海外篇』(「東京創元社」サイトより▽)
    https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488254032


    原書名:『Fingersmith』(2002年)
    著者:サラ・ウォーターズ (Sarah Waters)
    訳者:中村 有希
    出版社 ‏: ‎東京創元社
    文庫 ‏: ‎434ページ(上巻)
    ISBN : ‎9784488254032
    CWA賞(エリス・ピーターズ・ヒストリカル・ダガー賞)受賞

    メモ:
    死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」

  • 物語が始まった、感じがどこまで読み進めてもしない珍しい作品だと思った。

  • ■主人公は境遇がまったく違うふたりの女の子、スウとモード。
    ロンドンのしがない掏摸スウは超イケメンの詐欺師’紳士’から計画を持ち掛けられその話に乗ることにする。すなわち、郊外の城に匿われて育った世間知らずの令嬢をたぶらかし、その莫大な財産をごっそりいただこうというもの。
    一方のモードがその令嬢。両親はおらず、係累といえば城主で変態の伯父のみ。城からの脱出などかなうわけがなく、そこで虚しく老いさらばえることを観念して、ひとり絶望の中暮らしている。そこへ思いがけなく’紳士’から駈落ちの提案が。モードは不安を覚えつつも’紳士’の申し入れを受諾し、真夜中に城を後にして、小汚い教会で’紳士’と結婚の誓いをたてるのだが……。
    ■文庫本上下巻あわせて800ページ越えの3部構成。上述したのは第1部の概略だが、その最後に大どんでん返しが待っていていきなり唖然とする展開に。この作者らしい百合っぽい要素も添えられていて、真実と嘘、愛と裏切りが交錯する極上のミステリーに、いやがうえにも期待が高まる。
    ■そして第2部の最後ではさらなる大どんでん返しが!
    ……そもそもこの巨大な謀略をめぐらした黒幕はいったい誰なのか? そしてそれに巻きこまれたスウとモードのこれからの運命やいかに!?

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