エアーズ家の没落<下> (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2010年9月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (392ページ) / ISBN・EAN: 9784488254087

みんなの感想まとめ

陰鬱な雰囲気が漂う中で、登場人物たちの意外なロマンスが展開される作品は、読者に深い考察を促します。タイトルからも予感される家族の没落は、単なる悲劇を超え、さまざまな解釈を生む要素を秘めています。原題『...

感想・レビュー・書評

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  • どこをどう受け取るかで、物語の見え方が変わってくる奥深い作品だった。

    上巻のレビューで「これはホラーなのか?それともサスペンスなのか?」と書いたけど、下巻を読んで、その答えは読む人によって違ってくると思った。

    他の方のレビューを読んでみると、自分とはまったく違う視点から物語を捉えている人もいて面白い。
    そうした受け取り方の幅こそが、この作品の魅力だと思う。

    私は、幽霊よりも人間の内面に強く恐怖を感じるので、上巻からうっすらと違和感を感じていた“ある人物”が鍵を握るサスペンスだと感じた。
    下巻に入ってからのあの人物の内面からじわじわ滲み出ていたものは、自分にとっては1番恐ろしかった。

    読者の想像力や読み方によって、この物語はホラーにもサスペンスにもなるし、“誰が”という見方までもが変わってくる。

    解説の「カレイドスコープをのぞくような物語」という言葉がまさにぴったりの作品。

    謎を解く探偵のような人物は登場しないので、すっきりとした結末を求める人にはオススメできません。

    少し長く感じるところもあったけど、不気味な館に没入し、じわじわと忍び寄る恐怖を味わう時間はとても楽しかった。

  • 結局、怪奇現象の原因は分からないまま。拍子抜けはしたけど、どうでもよくなるぐらい次々に起こる不幸に翻弄された。主人公が結婚しようと思ったのは館が好きやったからやんね、絶対!
    最後の一文で主人公が厄を招いたと思ったが、解説を読んで、原題に注目したら…そういうことか!

  •  陰鬱になってしまう。だってタイトルからしてエアーズ家は没落することは約束されているんだもの。
     出てくる登場人物たちが美男美女ではなく、世間的な意味でのラブロマンスではないのに、どんんどんロマンスになるのは……なんでしょうね。見事としか言えない。

     読み終えるのが怖かったー。はい。

  • ある意味まさかの展開。
    そのまま押し通して終わりとは。あっと驚くとまではいかないまでもなんらかの伏線だと思っていたのだが。
    ホラーはあんまり面白いと思える質でないので自分的には低評価。

    ストーリー的にも同じ文脈の繰り返しが多いし、行きつ戻りつで全体も間延びしてる感じがした。

    ■このミス2011海外7位

  • お屋敷に怪奇現象とくれば、これはもう大好物。

    どう読むかに関しては読者の手に委ねられているので、読後、「ねぇ、ねぇ、どう読んだ?」と聞いて回りたくなる。
    私はといえば・・・・




    おや、と気になる、突飛なというか異常ともいえるような行為があったので、上巻なかばからあたりをつけて読み進めていたため、ラストはああ、やっぱり・・・・・と納得。
    超常現象をまじえたサイコ・スリラーとして読んだ感じ。

    終盤で、登場人物のある決断に伴って件の人物の異常性が、これでもか、とあぶりだされてくるあたり、怖いのなんの。

    そう見定めて読むと、原題の The Little Stranger の Little がとてつもない怖ろしさで迫ってくる。
    とはいえ、もう一人のstrangerのほうも、手立てがあるしなぁ。

      The Little Stranger by Sarah Walters

  • 皆さんは、どう解釈されただろうか!?
    読む前は原題『The Little Stranger』が『エアーズ家の没落』とは、なんとも奥行のない邦題になったものだと思ったが、読了し、その理由がはっきりとわかった。「The Little Stranger」が一体何なのかすら、読者の解釈に委ねられており、訳しようがなかったのだ。
    かといって風呂敷を広げるだけ広げて投げっぱなしジャーマンにしているように作品では全くなく、作者の中では全てが綿密に構成されており、絶妙なバランスと巧みな手腕で成り立っていることがわかる。深読みさせるタイトルも、ヒントを与えるようで与えすぎない、作者からの目配せだ。

    本作をどう読んだか、誰かと語り合いたくてたまらない。サラ・ウォーターズを読むのは3作目だが、毎作品度肝をぬかせられる。

  • ホラーとしてもミステリとしても読める作品で解釈は読者に委ねられる。
    視点を変えて読み返したら違う楽しみ方が出来そう。
    謎解きを期待すると不完全燃焼。
    段々と「語り手」である主人公がおかしくなっていく様が不気味。
    ゴシック・ホラー作品をもっと読んでみたくなった。

  • 夢中になって読んだけれど、途中からファラデーの結婚に対する突っ走り方があまりに独りよがりで、館と家族に関する彼の証言が信用できなくなり、何が本当なのか最後までわからなかった!

    原題からするに、ベティがlittle strangerなんだろう。
    ベティが館で働き出したことをきっかけに、館の中で澱んでいた負のエネルギーのようなものが力を得ることになり、家族それぞれの前に、それぞれが無意識のうちに恐れを感じたり執着している対象の形になって現れたのかな。とすると、キャロラインが叫んだ「あなた」は最初スーザンのことかと思ったけど、実は彼女はファラデーの幻影を見ていたのかも。結婚に対して怖いくらい前のめりだったから、キャロラインが彼に恐怖を抱いていても不思議ではない(キャロラインは最後、終始理性的に見えたけど)。
    でも、この考えでは、なぜベティがそのきっかけになったかということの説明ができない。となるとやっぱりベティが全てを仕組んだということ?でもベティはあの家族をかなり慕っているように見えたのになあ。仕組む理由もよくわからない。うーん。
    (となるとやっぱり全てはファラデー?littleていうのは、取るに足らない庶民の彼の形容詞なのかしら??)


    解説には、嵐が丘と物語の骨格が似ているとの記載があって、この前たまたま嵐が丘を読んだばかりなので納得した。こうやって点と点がつながるのが楽しいよね。

  • 上巻はタイトル通り王道のゴシック小説でしたが、最後まで読むと印象が変わりますね。タイトル的に多くの方はそういうのを期待して読むんでしょうけど、一口にゴシックだ、と言える小説ではないかな?まーでもフツーに面白かったです。映画の方も見てみようかなと思いました。

  • 読み終わったとき、全ての文章が怖くなる。家に対してのストーカーやん。ファラデー医師の視点から語られているが、その全てが嘘くさい。キャロラインへの執念とかまんまストーカーすぎて怖い。

    雨に浸食され、装飾品は色あせ、火事で煤けた部屋、荒廃したハンドレッズ館だが、ファラデー医師には、6歳のころに母親に忍ばせてもらった黄金期のハンドレッズ館が見えているんだろうなーと思った。もう誰も寄りつくことのない朽ちた屋敷に恍惚として座っている彼の姿が怖すぎる。

    歴史ある名家だったから、ベティがいうようにいたずらをする幽霊はいたと思う。(仮病するきっかけになってた)ファラデーの無意識の下にあった、ハンドレッズ館、上流階級へのコンプレックスが悪い方へ増幅したんやろな。今思えば、エアーズ家におきた不幸の数々は、彼が不愉快を感じた場面でのことが多かったしな。ジリアンのときは、彼らの家族が屋敷に対して野蛮なふるまいをしたから。ロディに対しては、当主の器ではないと下したから。母親に対しては、キャロラインの相手にはふさわしくないと思ってたと言われたから。いつまでも昔を懐かしんで現実をみてないエアーズ家にいらついてた時もあったな。

  • 結局何だったのか。
    あの女中??

  • 図書館で。何作か読んだことのある作家さんですがコレは合わなかったな。
    没落、というタイトル通り旧家の没落なのですがそれよりも語り手である「私」が好きになれず苦労しました。一番家に固執していたのは「私」ではあるまいか?彼の取った行動はどれもこれもエアーズ家の為のようなそうでないような行為なのでこれをお為ごかしとか言うのかなあなんて思いました。
    羽振りの良かった一家がそんなつもりは無くても周囲を傷つけていくというのはそういうモノなのかな、などと思いました。

  • 若き領主、ロデリックのいなくなったハンドレッズ領主館はますます財政困難となり寂れていく。
    さらに、ロデリックがいなくなった事で収まるかと思われた奇怪な現象もますますひどくなっていく。
    一方、主人公であるファラデー医師はキャロラインに対する恋心を募らせ、キャロラインも一旦は彼を受け入れたかのように見えたが-。

    読み終えて色んな事を考えさせられる話でした。
    物語の筋だけを読めばどうって事ない話ですが、その奥に描かれているものが深い。
    多分、読む人によって様々な印象や感想をもつ話だと思います。

    私がこの本を読み終えて思ったのは、人間には個々にふさわしい「器」があるということ。
    その器以上のものを手に入れようとすると多分、色んなものが溢れ出してしまうのだと思う。
    それは人によって狂気だったり、幻想だったり・・・とにかく色んな形で表れるのだと思います。
    エアーズ家の人々にとってハンドレッズ領主館こそがそれであり、そこにあるのは過去の栄光とかプライドといったものだったのかも知れない。
    主人公にとっては少年の頃、この館に抱いた憧憬こそがそうだった。
    そして彼らはそれに呑み込まれてしまった-。

    ・・・と私はこんな見方をしましたが、この本のあとがきを読むと、そうか!そういう見方もあったか・・・と気づかされました。
    そう言われてみれば・・・と、ザザッと読み返して納得。
    多分、理知的な考え方をされる方は読んでいる内に何となく気づくのではないかな?と思いますが、先入観をもってしまうので、あとがきは先に読まれない方がいいと思います。

    この下巻では主人公の印象が上巻とは変わりました。
    上巻では親切で善良な人というイメージだったのが、下巻では所々に精神分裂症のような・・・不安定な精神状態を感じます。
    上巻を読み終えた時に書いたレポで、私だったら一度でも相手に拒否されたら二度とその人間には近づかないと書きましたが、彼がそうしない所にもこの物語の核があるように思います。

    物語の後半に出てくるメイド、ベティの健やかな様子が印象的でした。
    私も彼女のように地に足をつけて生きていきたい。
    ストーリーから漂う絶望と暗さだけでなく、私にとっては一条の光も感じる話でした。

  • 怖かった。登場人物たちの追い詰められていく心が迫ってきて、びくびくしながら読んだ。
    自らが意識しない妄執の、なんと恐ろしいことか。
    はっきりとした解答のないまま、すっと手を離されたような最後。

  • 結局なんなんか分からんねんな~

  • 下巻では主人公ファラデーと領主館の一人娘キャロラインの恋愛模様が描かれる中、相変わらず館は陰鬱な空気に満たされている。そして起こる悲劇。
    真面目で、理性的で、思慮深い主人公。
    それなのに、悲劇をますますこじらせ、ややこしくしているのは間違いなく彼であり、彼もまた狂気に蝕まれているのだとわかってくる。

    ハンドレッズ領主館って一体なんだったのだろうね、というはっきりした答えがないまま物語は終えたが、そういう作品であることを前もって知っていたのでさほどショックはなかった。

    が、しかし。

    下巻の末尾にある、三橋曉氏の解説にて一つの疑惑が述べられた時には、ドキリとしてしまった。この作品に一つの解答を導くとするならば、多分それ以外の答えはないのだろう、だがしかし、という感じ。
    確かに、原題の"The Little Stranger"の"Little"って何よ、と思いましたけどね。

  • 2009年ブッカー賞最終候補作。
    この館は生きている? 一家を滅ぼしたのは、狂気か、館の呪いか。
    第二次世界大戦後、イング ランド中部のウォリックシャー地方が舞台。 ファラデー少年は、憧れのハンドレッズ領主館に足を踏み入れ興奮していた。普段は優等生の少年が、こっそりと館の一部を持ち帰るほどに魅了された。それ以降、館とは疎遠な毎日の中、ファラデーは親の期待通りに医師となる。とはいっても、しがない町医者で、村人たちのささいな病を診療するのに日々追われていた。
    ハンドレッズ領主館への再訪は突然だった。代理でメイドの診察に行くことになったのだ。30年振りの領主館は、幼いころに見た栄華は見る影もなかったが、端々に残る魅力がファラデーの少年の心をくすぐる。だが、エアーズ家に奉公して間もないメイドのベティは、このお屋敷がおっかないと訴える。そして、館では不自然な出来事が多発するようになり、ジワジワと一家を蝕んでいく。

    http://www.geocities.jp/british_women_novelists/writers/Sarah_Waters.html

  • 素晴らしい。

  • 文庫の解説に、ジャンルを決めきれない作品と書かれていたけれど、少なくても推理文庫に入っているからと言って、推理やミステリの系譜と思うべきじゃない。
    謎はあるけれど、謎解きではない。
    また、読了にカタルシスは存在しない。
    はっきり言って、作者に振り回されただけ。
    つまらない内容なのに、最後まで読み通させるウォーターズの筆力にのみ敬意。

  • サラ・ウォーターズの新作の翻訳。

    時代から取り残されていこうとする家族や館に、次々と悲劇が襲いかかる。
    彼らは滅ぶしかない運命なのか?それとも誰かが、何かが彼らを滅ぼしているのか?

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