メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
3.82
  • (172)
  • (393)
  • (248)
  • (27)
  • (8)
本棚登録 : 3157
感想 : 324
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488265090

作品紹介・あらすじ

自らの葬儀の手配をした当日、資産家の婦人が絞殺される。彼女は殺されることを知っていたのか? 作家のわたし、アンソニー・ホロヴィッツは、テレビ・ドラマの脚本執筆で知り合った元刑事のホーソーンから連絡を受ける。この奇妙な事件を捜査する自分を描かないかというのだ……。かくしてわたしは、きわめて有能だが偏屈な男と行動をともにすることに……。7冠制覇『カササギ殺人事件』に続く、ミステリの面白さ全開の傑作登場!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 作家アンソニー・ホロヴィッツが本人として登場し、ワトソンとなり、元刑事ホーソーンがホームズとして殺人事件を解決する作品である。今回初めて知ったが、ホロヴィッツは現実でもホントに有名脚本家らしい。いま正にスピルバーグの「タンタンの冒険2」のプロットを書き上げたという。あの「マンマミーア」の脚本も断ったという。‥‥こういう絶妙な「ウソ」を混ぜ合わせて「冒頭」が始まる。上手い!小説は実在の人間が何人も出てくるが(あの、スピルバーグに台詞さえ与えている!)、やはりどう考えても、これはフィクションなのである。こういう構造自体が既に「エンタメの真髄」なのではないかね?(←誰に向かって喋ってるんだ?)

    欧米翻訳ミステリを読むのは「アレックス」以来だから6年ぶり。翻訳探偵小説に至っては高校生以来◯十年ぶりという、海外ミステリ音痴が私である。「私はずっと、自分とは何か、日本人とは何かを知りたくて本を読んできた。日本人のこともわからないのに、どうして海外のそれも翻訳モノを読む余裕があるんだ?」というのが、私が海外ミステリを忌避してきた理由である(←ホントか?いや、ホントである)。ところがautumn522akiさんが鬼★5という激推しをしていて、つい「それなら、読んでやろーじゃねーか」と宣言してしまった(←誰に?)ので紐解いた。

    フツーにおもしれーじゃねーか。ちゃんと犯人探しの材料は出ているんだよな。むつかしーな。それでも、中盤で俺は犯人の目星をつけたんだぜ。そしたら、ホロヴィッツ先生も「誰が犯人か、わたしはわかったよ」(320p)と宣(のたま)った。話を聞くと、俺と全く同じ推理じゃねーか。ガッカリしたよ。推理小説のセオリーでは、中盤で相棒が目星をつけたら、それは間違いだということが確定したということだよな(←何故か、ここだけタメ口)。

    良かった、〆切が迫っていなくて‥‥。そこからは結局ノンストップで読了した。犯人‥‥ま、まぁそうだよね。なかなかやるじゃん、ホーソーン。

    グローバル世界の昨今、海外ものだからといって、他国の人間の憎悪、社会の機微が理解不能になるわけじゃない。むしろ、良質な翻訳ものは増えていると理解した。しかも、なんとなく懐かしい探偵小説に巡り合わせてもらった。こういう探偵小説なら、また読んでもいいかもね。

    • ひまわりめろんさん
      kuma0504さん
      おはようございます

      そうなんですよ!
      autumn522akiさんのレビューには心を動かせるだけでなく実際に行動させ...
      kuma0504さん
      おはようございます

      そうなんですよ!
      autumn522akiさんのレビューには心を動かせるだけでなく実際に行動させる熱さがありますよね
      どうしてか説明はてをきませんけど(できんのかーい!)
      自分もすごく参考にさせて頂いてる方の1人です

      これを機にkumaさんも海外ミステリの世界においで頂ければと思います
      外を知ることで内なるものにより光があたるということもあるんじゃないでしょうか?
      って海外ミステリファンを増やしたいだけの詭弁ですけどw
      2022/06/14
    • kuma0504さん
      ひまわりめろんさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。

      4月4週のブックリストで紹介したとき「ここまで煽られたら、読まなくちゃ」...
      ひまわりめろんさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。

      4月4週のブックリストで紹介したとき「ここまで煽られたら、読まなくちゃ」と「つい」書いてしまったので、禁断の欧米翻訳探偵小説を紐解いてしまいました。

      「外を知ることで内なるものにより光が当たる」
      そうなんですよね。わかってはいるんです。
      でも内なるものの目星もつかない段階では、エラリーとかホロヴィッツとかドイルとか、手を出すのが怖いのが正直なところ。その作家の8割ぐらい読まないとファンを公言しないというマイルールもあります。
      人生は短く、読みたい本はあまりにも多い。

      でもあんまり頑なになると嫌われるので(←誰に?)、また読むかも。
      2022/06/14
  • 鬼★5 エンターテイメント推理小説の完成形! 証拠や隠された伏線から犯人を捜せっ #メインテーマは殺人

    主人公である作家に元刑事から連絡がある。自身の携わっている殺人事件を本にしてほしいという依頼だ。癖のある元刑事に振り回されながらも、主人公は少しずつ捜査を進めていく。被害者の過去や人間関係が明らかになっていくとき、さらなる事件が発生してしまい…

    ミステリーを思いっきりエンターテイメントに振り切った傑作です。
    読者に犯人当てゲームの楽しさを伝えようと、いろんな仕掛けや演出が目白押し! 最高ですね。

    ストーリーの展開もめちゃくちゃ上手い、次々と場面が発展していくさまは、まさに海外ドラマを見ているようです。さすが本物の脚本家。
    脚本会議のシーンなんて最たるものですよ、なんですかこれw 読者を楽しませるやる気まんまんです。
    場面や人物描写、セリフ回しも丁寧で理解しやすくて、海外ミステリーでもサクサク読み進められました。

    そして元刑事のホーソーンですよ。この憎々しいキャラクターが極上!序盤中盤は良くわからない偏屈者で、何度もイライラしましたが、楽しみは最後まで取っておくものですね。

    謎解き要素についても、全然わかりませんでしたが、答えが提示されると、すべてが納得、ガッテン度がめっちゃ高いです。こんなにもたくさんヒントがちりばめられているのに、なぜ真相に気が付かなかったのだと… く、くやしい。

    既に次作は手元にあるので、いつ読んでやろうかと目論見中です。本格ミステリー好きには、最高のプレゼントを提供してくれる超傑作! おすすめです。

    • ひまわりめろんさん
      autumn522akiさん
      こんにちは!

      鬼★5!
      大当り濃厚ですなw
      (パチンコ・パチスロわかる人にだけ伝わる表現)

      また助手役のア...
      autumn522akiさん
      こんにちは!

      鬼★5!
      大当り濃厚ですなw
      (パチンコ・パチスロわかる人にだけ伝わる表現)

      また助手役のアンソニー・ホロヴィッツが王道の間抜けっぷりで良いですよね
      自虐レベル高しです
      自分自身をあそこまでピエロに描けるってきっと優しい人なんだと思います(具体的な根拠は希薄)
      2022/04/30
    • autumn522akiさん
      ひまわりめろんさん
      こんちわですっ

      大当たり確定ではなく濃厚ですねw

      たしかにホロヴィッツの抜けっぷりは可愛いですよね~
      そ...
      ひまわりめろんさん
      こんちわですっ

      大当たり確定ではなく濃厚ですねw

      たしかにホロヴィッツの抜けっぷりは可愛いですよね~
      そしてホーソーンは憎々しくも渋いイメージ。
      2022/04/30
  • いつも本屋に行って奇抜な表紙が気になってしょうがなかった。この著者はホームズシリーズの続編を書くことを許された凄いお方。読友さんもお薦め。自動車事故で双子の子どもの1人がなくなり、もう1人が障害児となる。その犯人は老婦人。この老婦人が自分の葬儀の手配をした日に殺された。また老婦人の子どもは有名な舞台俳優で、老婦人の葬儀の後に彼も殺される。怪しいのは双子の親、乳母、俳優仲間、弁護士など怪しい人が多数。ミスリードの連発。元刑事のホーソン、作家ホロヴィッツのコンビはポアロ・ヘイスティングズと同等に面白かった。

    • ポプラ並木(上下巻とも800ページ本に挑戦中)さん
      ゆうママさん、最近忙しくてなかなかコメント見ていなくて、こちらこそすみません。
      この本はミスリードの連発でホロヴィッツにやられました!でも...
      ゆうママさん、最近忙しくてなかなかコメント見ていなくて、こちらこそすみません。
      この本はミスリードの連発でホロヴィッツにやられました!でも楽しかったです。このシリーズは追っていきますよ!!
      今週、TV、マスコミが多数の記者会見をしますよ!なかなか取り上げてくれないかもしれないけど楽しみです。
      ではでは。
      2021/12/19
    • アールグレイさん
      記者会見!!!!
      フレー、フレー、
      ポ―プラさん!
      記者会見!!!!
      フレー、フレー、
      ポ―プラさん!
      2021/12/19
    • ポプラ並木(上下巻とも800ページ本に挑戦中)さん
      ゆうママさん、ありがとう!頑張りますよ。
      年末年始に読む本、いっぱい借りましたよ。
      ゆうママさんも決めたかな?
      お互い読書できるといい...
      ゆうママさん、ありがとう!頑張りますよ。
      年末年始に読む本、いっぱい借りましたよ。
      ゆうママさんも決めたかな?
      お互い読書できるといいね。
      2021/12/19
  • ミステリが読みたい!2020年大賞受賞。
    昨年の『カササギ殺人事件』に引き続き、手に取りましたが、これは文句なしの大賞だと思いました。

    自らの葬儀に手配をしたまさにその日に殺された資産家の老婦人。そして元刑事ホーソーンとともに事件を捜査し始める、ドラマ脚本家の「わたし」こと作者自身のアンソニー・ホロヴィッツがワトスン役を務めます。
    捜査中に第二の殺人が起こり、事件の果たしてどの人物が犯人かわかったところで、上手いっ!と思いました。
    アガサ・クリスティをやはり思い出しました。
    伏線の張り方も見事で、最後の解説の章ではうなることしきりでした。

    本編の続編The Sentence is Death、も来年刊行予定で、その続きも十作程ある予定だそうです。
    『カササギ殺人事件』の続編もあるそうです。
    古きよき時代のミステリーを彷彿とさせつつ、全然旧くない、このしてやられた感がまた味わえるのかと思うとものすごく楽しみです。

    • やまさん
      まことさん

      こんにちは。
      『蜻蛉の理 風烈廻り与力・青柳剣一郎』への、いいね!有難う御座います。
      小杉健治さんの本は、時代小説はよ...
      まことさん

      こんにちは。
      『蜻蛉の理 風烈廻り与力・青柳剣一郎』への、いいね!有難う御座います。
      小杉健治さんの本は、時代小説はよく読んでいますが、中には字が小さくて読めない本もあります。
      風烈廻り与力・青柳剣一郎は、2016.12.11に1巻目を、字が小さいですが最初なので無理して読みました。
      次は、何とか読める最小の字の大きさの12巻から読んで行きました。
      すごく面白いですよ。

      やま
      2019/12/08
    • くるたんさん
      まことさん♪
      こんばんは♪共読増えましたね♪
      文句なしの大賞に激しくうなずいちゃいました♪
      終盤はあー!そういうことか!!
      当たり前だけど、...
      まことさん♪
      こんばんは♪共読増えましたね♪
      文句なしの大賞に激しくうなずいちゃいました♪
      終盤はあー!そういうことか!!
      当たり前だけど、ちゃんと犯人いたんですよねぇ…(⁎˃ᴗ˂⁎)
      2019/12/08
    • まことさん
      やまさん♪こんばんは!
      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      ご自分の、得意な分野の本があるっていいですね(*^^*)
      私は、あち...
      やまさん♪こんばんは!
      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      ご自分の、得意な分野の本があるっていいですね(*^^*)
      私は、あちらこちら読んで、これというものがあまり、ありません。
      2019/12/08
  • やるな!東京創元社!!

    何をですって?!
    巻末の広告ですよ!
    カササギ殺人事件は当然として
    ミス・マープルにクロフツの名作『樽』、チェスタトンのブラウン神父シリーズときてガーター・ディクスンにもちろんのホームズシリーズ、そして最後に007です
    これすごくよく考えられたラインナップだと思いません?

    だってこんな「探偵小説」の傑作を読まされたらどうしたってクリスティーは読みたくなるじゃないですか!そこであえてのミス・マープル。ポワロの方はほっといても勝手に手に取るだろうという算段です
    そしてロンドンを舞台にした名作が続き。ちょっとだけ毛色の違う名作を配しつつ、本作を相当意識させるホームズとワトソン。
    締めは作中にも登場する007ロシアから愛をこめて

    そりゃあ買うよ、どれかは買うよ!

    もう本書『メインテーマは殺人』の解説みたいなラインナップだもん!
    (作品の中身には触れないという新しいタイプの感想)

    • NORAxxさん
      あぁ...めろんさん..社畜後の抜け殻状態の私に熱量のオアシスをありがとう、ありがとう( 人˘ω˘ )人人人人拝
      腹抱えてわろいました。元気...
      あぁ...めろんさん..社畜後の抜け殻状態の私に熱量のオアシスをありがとう、ありがとう( 人˘ω˘ )人人人人拝
      腹抱えてわろいました。元気100倍です。今ならどんな難事件の犯人でも推察出来そうです(言うのはタダのアレ)

      西村京太郎!!!!!もうメジャー大物過ぎて恐慄いて跪いちゃうもんでお恥ずかしながら読んだことないんですよね。読みます!!運命だ!!!!!!

      こちらこそいつもイイネありがとうございます。これからもひまわりめろんさんのレビュー楽しみにしてます///熱量を求めて....(含)こちらこそこれからもよろしくです!()
      2022/01/25
    • ひまわりめろんさん
      おはようございます!
      『名探偵なんか怖くない』はかなり古い本なんで見つけるのたいへんかもです
      手がかかるようであれば気にせずスルーしてくださ...
      おはようございます!
      『名探偵なんか怖くない』はかなり古い本なんで見つけるのたいへんかもです
      手がかかるようであれば気にせずスルーしてくださいね
      また当時から評価が二分されたパロディ(あっぱれ!とふざけるな!)なのでお気に召さなかったらごめんなさい
      ネタバレ満載で当時すでにごりごりの大作家だった西村京太郎先生だから(国内では)批判が抑え込まれたのかなと思っておりますw
      特にシリーズ3作目では割と刊行されたばっかり(だったはず)の『カーテン』(言わずと知れたポワロ最後の事件)のネタバレを別の出版社で出すという暴挙にでる無双っぷり
      先生の他の作品と比べてもかなり毛色の違うシリーズですのでご注意を!
      2022/01/25
    • NORAxxさん
      こんにちは^ ^
      極端に二分される評価を受ける作品はどちらに転んでも結果楽しめる傾向にあるのでとても興味が湧きます!!
      ちょっと頑張って探し...
      こんにちは^ ^
      極端に二分される評価を受ける作品はどちらに転んでも結果楽しめる傾向にあるのでとても興味が湧きます!!
      ちょっと頑張って探してみようかなと気合いだけは一丁前モードですᕙ( ˙-˙ )ᕗ

      名作だから良いでは無いかネタバレ暴挙は唐突に訪れる悲劇としてあるあるですが事前情報ありがたし...心構えておきますね 笑

      素敵な紹介をありがとうございます☆
      2022/01/25
  • 斬新な手法で読者をあっと言わせた『カササギ殺人事件』のアンソニー・ホロヴィッツが、今度は正攻法で読者に挑む、フェアな叙述による謎解き本格探偵小説。しかし、そこはホロヴィッツ。大胆な仕掛けがある。なんとホロヴィッツ自身がワトソン役となって作中に登場し、ホームズ役の探偵とともに事件を捜査し、身の危険を冒しつつ解決に導くというから愉快ではないか。

    ホームズ役をつとめるのは元ロンドン警視庁の腕利き刑事ダニエル・ホーソーン。過去に問題を起こして免職となったが、その腕を惜しむ元上司がいて、難事件となるとお呼びがかかる。警察の顧問(コンサルタント)として独自に捜査を行うというからまさにホームズそのもの。ただし、このホーソーン、口は悪いし、人付き合いも悪い。仲間内では鼻つまみ者で、妻とも離婚し、今は一人暮らしという、いささか剣呑な人格の持ち主だ。

    ホロヴィッツとの接点は『インジャスティス』というテレビ番組の脚本を担当した時、ホーソーンが警察のやり方を教える係として一緒に行動したことがある。そのときも、頑固で自分の意見に固執する融通の利かないやり方に閉口したホロヴィッツは、二度と組みたくないと思っていた相手。ところが、ある日、そのホーソーンから一度会って話がしたいと電話がかかってくる。その話というのが、今自分が関わっている事件が面白い。本にしないか、というものだった。

    しばらく会っていなかったはずなのに、会うやいなやホーソーンは作家の近況をすべて知っている口ぶり。不思議がる作家にホーソンがその推理を語って聞かせる。靴に砂が付着しているから別荘から帰ってきたばかり。ジーンズに犬の足跡がついているから犬を飼った。たぶんその犬は仔犬だ。靴ひもを噛んだ跡がある。と語り口がそのままホームズだ。はじめは断るつもりだった「わたし」も、ついつい話に乗せられて相棒役をつとめることになる。

    事件というのが、資産家の老婦人が自分の葬儀の契約のために葬儀社を訪問したその日の午後に殺される、という偶然にしては話がうますぎる事件。しかも、被害者の息子はハリウッドの人気俳優ときては話題性に事欠かない。しかし、夫人はその人柄ゆえ誰にも好かれていて殺される理由が見つからない。警察は物盗りの犯行とみるが、ホーソンの見るところ、これは泥沼案件。そうこうするうち、葬儀のためにアメリカから帰国した息子が殺される。母子二人が殺される理由は何か、という「ホワイダニット」のミステリ。

    実は十年前、夫人は眼鏡をかけるのを忘れて車を運転し、二人の少年をはねている。一人は死亡、もう一人は助かったものの脳に損傷を受けて障碍が残った。夫人は逮捕されたが裁判の結果無罪となった過去がある。殺される前、母が息子に送ったメールに「損傷(レスレイテッド)の子に会った、怖い」という文面が残っていたことと、脅迫状ともとれる手紙が残されていたことから、その子、もしくは親の犯行ではないか、と「わたし」は考える。

    本格探偵小説もいろいろあるが、ホロヴィッツはアガサ・クリスティがお好きなようだ。個人的にはクリスティは、好みではない。しかし、今回ホロヴィッツはフェアな叙述を心がけていて好印象。ただ、ホームズ物の新作を依頼されるほどの作家のはずなのに、実際の捜査に不慣れなためか、大事なところでホーソーンの注意をそらせたり、ミスディレクションを誘ったりする。これが効果的に用いられていて、容易に謎を解かせてくれない。

    面白い設定で、まず小説の第一章が置かれているのは当然のことながら、第二章は作家、脚本家としてのホロヴィッツの仕事について触れている。コナン・ドイル財団に依頼されて、ホームズの登場する探偵小説の新作『絹の家』を書きあげたばかりで、テレビ・ドラマ『刑事フォイル』の脚本の仕事も終わったところ、というのは事実。次の仕事にかかろうとしていた矢先、ホーソーンが現れた、というところから虚構となる。第一章は、その新作の初稿ということだ。

    「わたし」の仕事は、ワトソン役となってホーソーンに付き添って、現場に足を運び、目撃者や容疑者の話を聞き、メモを取り、事件解決後はそれを本に書いて出版するということだ。もちろん、読者が今手にしている本がその完成作、という設定。どこまでが本当でどこまでが虚構なのか、何やら番宣めいた、スピルバーグやピーター・ジャクソンと映画『タンタンの冒険』の続編を撮るという話まで出てくるが、どうやら本当にあった話らしく、驚いた。

    もちろん事件は虚構なのだが、その中に作家自身が関係する事実が混じるので事件がさも同じ頃に起きていたような錯覚が生じる。『カササギ殺人事件』でも、作中作が事件と絡み合っていたが、ホロヴィッツという作家は、こうした仕掛けがお気に入りのようだ。しかし、今回はホーソーンから、見たこと、聞いたこと以外は書いてはいけない、という縛りがかけられているので、読者は探偵たちとフェアな戦いができることは約束されている。

    現実に、手がかりは目立つように書かれている。ホーソーンが意味ありげに呟いてみせるのもヒントになる。ただし、頭のどこかには残るものの、最重要な手がかりが登場してくるまで、犯人を絞り込むことができない。前作でアナグラムを使用しているホロヴィッツのことだ。メールに残る「損傷(レスレイテッド)の子」というのが鍵なのだが<lacerated>で合っているだろうか。いつも思うことだが、こういう箇所は原文を記すくらいの配慮が欲しい。勘のいい読者なら、それで分かるかもしれないのだ。

    チェーン・スモーカーの探偵、ホーソーンという人物がよく描けている。個人的な話や世間並みの挨拶は一切抜き。一度口を閉じたら二度と開かない。ポリティカル・コレクトネスなど知ったことか。いつも単独で勝手な捜査をするため相棒がいない。裡に秘めた暴力性や同性愛者や小児性愛者に見せる憎悪、子どもに寄せるシンパシーからは、過去に何かある人物であることは伝わってくる。本人が考えた『ホーソーン登場』という題名からして、シリーズ物の第一作と考えられる。謎につつまれた探偵については、おいおい明らかになることだろう。次回作が楽しみなシリーズ物の誕生である。

    • goya626さん
      イギリスの推理小説らしい凝った物語のようで面白そうです。それにしても、ホームズとワトソンというのは永遠のテーマですね。
      イギリスの推理小説らしい凝った物語のようで面白そうです。それにしても、ホームズとワトソンというのは永遠のテーマですね。
      2019/11/20
    • abraxasさん
      goya626さん、こんばんは。
      作家自身がワトソン役として、ボケをかますところがいいです。またホームズ役がヤバ過ぎて、シリーズ化が楽しみ...
      goya626さん、こんばんは。
      作家自身がワトソン役として、ボケをかますところがいいです。またホームズ役がヤバ過ぎて、シリーズ化が楽しみですね。
      2019/11/20
    • abraxasさん
      goya626さん、こんばんは。
      作家自身がワトソン役として、ボケをかますところがいいです。またホームズ役がヤバ過ぎて、シリーズ化が楽しみ...
      goya626さん、こんばんは。
      作家自身がワトソン役として、ボケをかますところがいいです。またホームズ役がヤバ過ぎて、シリーズ化が楽しみですね。
      2019/11/20
  •  ホームズとワトソンを彷彿とさせるコンビによるミステリ。ホーソーンは本家のホームズよりも人嫌いの一匹狼の体であるが、今後、アンソニーとの関係はより親密になっていくのだろうか?ミステリの本筋とはズレるが気になるところ。10作程度のシリーズになるようなので楽しみ。
     さて、ミステリとしてであるが、文句なく面白い。それほど驚愕というレベルの謎解きではない。解決したあとに確かに「そうなんだぁ、なるほどね」と思えるように書かれているところが、むしろ凄い。そういう意味では、クリーンでフェアである。とはいっても、このミスディレクションは誰も見破れないのではないか。
     丁寧に関係者に話を着ていくスタイルは、クリスティーのポワロを連想させる。そして、そこで語られる話は虚実乱れ、かつ語られないことがある。この辺のさじ加減が上手い。また、そこかしこに埋め込まれた手がかり。数多くのものの中に埋没させずに、読者の記憶に引っかかるようにしてある手腕は、さすがの一言以外思いつかない。黄金時代のミステリの傑作にひけをとらない面白さである。次作の『その裁きは死』が楽しみである。

  • 何度も膝をポン!面白かった。

    資産家の老婦人が自らの葬儀を手配した六時間後に絞殺された。
    そしてお約束の次なる殺人事件。
    老婦人の過去が関係するのか、興味を惹かれるトピック、構成にじっくり最後までひきずりこまれた。

    一つ一つ謎に迫っていく過程は文句なしに胸が高まるし、偏屈個性的な相棒 ホーソーンに対して、コロコロ変わる英国の天気のように七変化する、させられるアンソニーの気持ちも面白い。

    全ての謎が解かれていく時間は唸る。あぁ、そういうことか!と、何度も膝をポンと打ちたくなった。

    「カササギ…」よりもコンパクトで万人受けしそうなミステリに拍手。

    • くるたんさん
      まことさん♪
      こちらにコメありがとうございます♪
      そうそう、正統派ミステリですよね♪
      絹の家、出てきましたね。
      この作品は実在する人物はもち...
      まことさん♪
      こちらにコメありがとうございます♪
      そうそう、正統派ミステリですよね♪
      絹の家、出てきましたね。
      この作品は実在する人物はもちろん作家さんのお仕事も垣間見れて面白かったですね♪

      本と鍵の季節、検事の信義、良いですね♪♪
      ゆっくり楽しんでくださいね(*≧∀≦*)
      2019/12/08
    • まことさん
      くるたんさん♪
      スティーブン・スピルバーグも出てきましたね(*^^*)
      くるたんさん♪
      スティーブン・スピルバーグも出てきましたね(*^^*)
      2019/12/08
    • くるたんさん
      まことさん♪そうそう!そのシーン、じっくり読んだ記憶が(*≧∀≦*)
      まことさん♪そうそう!そのシーン、じっくり読んだ記憶が(*≧∀≦*)
      2019/12/08
  • 筆者自身=作家・アンソニー・ホロヴィッツが、元刑事のホーソーンとともに殺人事件に取り組むミステリ。
    ホーソーンが、ホームズばりの鋭い推理を見せるシーンが、たのしかった。

    ごく自然に提示された情報が、すべてを明らかにしていく。
    読者にすべての情報が明らかにされている、フェアなミステリ。

    リアリティを出すためか、実在する固有名詞がたくさん登場。
    スピルバーグが仕事相手として登場したのには、「許可を取ったのかな?」と驚く。

    続編が出て、すでにシリーズ化が決定している作品だそう。

    『このミステリーがすごい! 2020年版』海外編第1位。

    視力が悪いのに眼鏡をせず、6m先も見えない状態で車を運転しても、イギリスでは法律違反にならないというのが、驚き。

  • 『カササギ殺人事件』(東京創元社)で味わった「やられた…!」感が恋しくなって、同じ著者の書いた本書をチョイス。
    今回も大満足の読後感でした!

    本書の語り手は、なんと著者であるアンソニー・ホロヴィッツご本人。
    そしてこの本は、切れ者であり曲者でもある元刑事から「おれの本を書いてほしい」と頼まれた著者が書き始めたものなのです。
    この元刑事・ホーソーンの依頼を断れなかった著者は取材という名目で現実の殺人事件の捜査に同行することに…

    今回も"推理小説"という素材を、読者が驚くような方法と味付けで調理して、最大限に活かしている感じ。
    作家であるホロヴィッツの存在によって、事件の進行とともに物語が書かれていく過程をのぞけるのが新鮮なのです。
    それに、アクの強いホーソーンのキャラクター、不可解な事件、チームワークがよいとは言えない2人組の動向などなど、気になって仕方ないことが散りばめられていて読者をまったく飽きさせません。

    本作はシリーズの第1作目で、これから10作ほど刊行される予定とのこと。これは楽しみ!
    まずはすでに刊行済みの2作目が翻訳されるのを首を長くして待つことにします。

全324件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1955年生まれ。イギリスの作家、脚本家。世界で1900万部の人気を誇る「アレックス・ライダー」シリーズや、コナン・ドイル財団公認のシャーロック・ホームズ・パスティーシュ『絹の家』『モリアーティ』を執筆するなど、多数の著書がある一方、「刑事フォイル」など脚本家として数多くのテレビ・ドラマ作品を手がける。18年『カササギ殺人事件』は年末ミステリランキング4冠を達成。

「2019年 『007 逆襲のトリガー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アンソニー・ホロヴィッツの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
今村 昌弘
米澤穂信
劉 慈欣
知念 実希人
アンソニー・ホロ...
辻村 深月
今村 昌弘
森見登美彦
伊坂 幸太郎
スチュアートター...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×