湿地 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 493
レビュー : 53
  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488266035

作品紹介・あらすじ

北の湿地の建物で老人の死体が発見された。現場に残された謎のメッセージ。被害者の隠された過去。衝撃の犯人、肺腑をえぐる真相。いま最も注目される北欧の巨人の傑作、待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 全編に陰鬱な陰を感じる重厚なミステリー。近年、次々と傑作ミステリーを輩出している北欧ミステリー界であるが、本作も噂に違わぬ傑作だった。確かにこの作家は只者ではない。

    アイスランドのレイキャヴィクのアパートで起きた独り暮らしの老人が被害者となった殺人事件。杜撰な典型的なアイスランドの殺人と思われたが…事件を捜査する警察犯罪捜査官のエーレンデュルは被害者の過去を遡り、予想を超える事件の真相に辿り着く。クラシカルなスタイルのミステリーと思いきや…

    そして、この重厚なミステリーをさらに味わい深いものにしているのは、作品の中に描かれる複数の家族の姿であろう。過去の事件に翻弄され、苦悩し続ける家族の姿と迷いや苦悩から脱却し、再生していく家族の姿が見事なスパイスとなっている。

  • 差し込むような、あるいは叫びたいような、もしくはそれを抑えるような苦しさ。
    当初、タイトルやイメージからテンポの遅い退屈な作品かもと覚悟していたけれど、そんな心配は無用だった。
    捜査の狙いを探るのもおもしろかった。
    この捜査はどこへ向かい何を求めているのか。
    作中にもそんなセリフがあって、自分の鈍さのせいだけではなかったとほっとする。
    どんどん知りたくなる。
    なるほど、そうつながるのか。

    他の作品も読みたくなって、さっそくほしいものリストに追加。
    それにしても覚えにくい名前だな(笑)

  • アイスランドのミステリー。
    主人公の刑事をはじめ、様々な親子関係が絡む。
    目を覆いたくなるような場面も多いけれど、時折描かれる愛情が光となって、読後感は悪くなかった。

  • 湿地特有のぬめりとした湿度とじっとり淀む空気感をまとった作品でした。
    古典的なアイスランドの殺人だと思われたが、一つ一つ同僚に文句を言われながら紐解いていけば、浮かび上がるのは過去の卑怯な事件。
    唯一の救いは主人公エーレンデュルの娘が薬物から手を洗おうという姿勢を見せた事かも知れない。そうとしか思えないほど犯人の過去は当人と家族に重い影を落とす。
    あえて言うならアイスランド人の名前は女性か男性かの判断が出来ないと思った。上質なミステリーだったので他の北欧ミステリーも読み進めていきたい。

  • フーダニットやハウダニットでないのは「湖の男」と同じで、強いて言うならホワイダニット。ルメートルの後だからというわけでもないが、地味な話。事件どうこうではなく、捜査の物理的なスケールが小さい。そこのところは、さすが人口30万人である。
    初期作品だからか風景描写も充実(おそらく作者の意識的な所業)し、ご当地ミステリ感は満点。未知なる国アイスランドに旅行に行きたくなること請け合いである。訳者あとがきにあった従来アイスランドでミステリが盛んでなかった理由の、「外国の映画や小説にあるような派手なカーチェイス」はともかく、「何人もが死ぬ連続殺人は30万人しかいないアイスランドでは現実的ではないから」というのには笑えた。まだ筆致が硬く、キャラクター紹介のしかたや、「現場に謎のメッセージが!」と言いつつそれの出しかたがダサすぎなのはご愛嬌。
    大傑作「湖の男」ではパラダイスに見えた男女平等アイスランドだが、本作では普通に胸くそ悪い国。古い作品だからなのか、これが現実だからなのか、本邦にも普通にいるクソ男のオンパレードで胸くそ悪いったらない。こうなると当地ならではの種々の描写も、なにやら陰気で貧乏たらしく見えてきてしまう。
    次作もDVと性犯罪の話らしく、手に取るのがためらわれる。作者(男性)はその実態を告発する意図でなまなましい描写を入れているらしいので、クズなのは作者ではなく現実のほうである。そんな中で「獲物」たる女として生きていかねばならない我々としては、たまったものではない。

    2019/1/5読了

  • アイスランドのミステリーです。
    ここに描かれているのは悲劇です。
    殺人を犯すにもそれなりの理由があるということ、
    人間として生きる苦悩が、
    アイスランドという国の特殊性を利用して
    表現されています。
    暗く悲惨な物語なのですが、
    グイグイと惹きこまれてしまうのは、
    文章の簡潔さにあるような気がします。
    余計なことは書かれていないのに、
    それでいてアイルランド社会の状況や、
    人物像がしっかり描かれています。
    アイスランドのような
    小さな国を舞台にしたミステリー小説は成立しないと
    いわれていたそうですが、
    その常識を覆したのが
    アーナルデュルだったそうです。
    しかも作品は世界中で翻訳され、
    数々の賞を受賞するベストセラーになりました。



    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
    http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • 空に淡い蓋をされているような…薄暗くて、湿気を帯びて、胸が詰まる。
    哀しくてやりきれない、始終そんな空気があった。
    なるほど作品全体から湿地を感じて、上手いものだなー、としみじみ感心。
    読んでいる間ずっと私の眉はハの字になっていたと思う。
    でもあまりの読み易さにページを繰る手は止まらず、遅読の私でもさっと読めた。
    読後感は穏やか。
    複雑なトリックや劇的な展開はないけど、事件背景に奥行きがあって面白かった。
    先に読んだ同作家の『緑衣の女』もやはり同じように味のある描き方で面白かったので、他にもこの作家の作品を読んでみたい。

    アイスランドというとビョーク、シガー・ロス、ムームといったミュージシャンのイメージが強いけども、そういえばこの作家もなんだか似通った雰囲気を醸し出しているなぁと感じた。お国柄もあるのかしら。

  • 【あらすじ】
    湿地帯にあるアパートで殺されたホルベルク。ホルベルクの部屋からウイドルの墓の写真を見つける。ウイドルはコルブルンの娘で、4歳の時に脳腫瘍で亡くなっている。
    ホルベルクは昔、エットリデとグレータルの3人組でコルブルンをレイプした。現在エットリデは服役中、グレータルは失踪していた。レイプ事件とグレータルの失踪はルーナルという刑事が担当していた。
    ウイドルの墓を掘り返すと脳がなく、脳は遺伝子研究所に保管されていた。
    ホルベルクの自宅の床を剥がすとグレータルの白骨が見つかる。ルーナルはレイプ事件を隠蔽した。ルーナルに弱みを握られた3人は、汚れ仕事をすることになる。連絡係として選ばれたグレータルが増長し、他の2人に疎まれて殺害された。
    ホルベルクはコルブルンの他にもう1人、オルンの母もレイプしていた。オルンは娘のコーラが遺伝子の病気で亡くなった原因を調査するために、遺伝子研究所に入社した。神経線維腫症は女性が発症する病気だった。
    オルンの娘が亡くなった理由は、保因者であったホルベルクにあったと分かり、ホルベルクを殺害した。オルンはウイドルの遺体を墓に戻し、銃で自殺した。

  • 卑劣な男が起こした事件 親子を考えさせられる
    「なぜ人間には目があるのか」
    「泣くことができるように」

  • アーナルデュル・インドリダソンはアイスランドの作家で北欧ミステリを牽引する一人だ。エーレンデュル警部シリーズは15作品のうち4作品が翻訳されており、今のところ外れなし。ロシア文学同様、登場人物の名前に馴染みがなく覚えるのに難儀する。取り敢えず名前は声に出して読むことをお勧めしよう。
    https://sessendo.blogspot.com/2019/08/blog-post_17.html

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アーナルデュル・インドリダソンの作品

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