湿地 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 631
感想 : 71
  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488266035

作品紹介・あらすじ

北の湿地の建物で老人の死体が発見された。現場に残された謎のメッセージ。被害者の隠された過去。衝撃の犯人、肺腑をえぐる真相。いま最も注目される北欧の巨人の傑作、待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • アイスランドを舞台にしたミステリー。
    非常に渋く、興味深いミステリーだった。

    本書を読む前は、アイスランドと聞いても首都が「レイキャビク」ということくらいしか知らなかったが、この本を読んで非常に興味をそそられる国であることが分かった。

    人口は約35万人。国土は北海道と四国を足した程度の広さ。歴史的にノルウェーやデンマークの支配下に置かれていたが、1944年に共和国として独立。
    世界でも数少ない「軍隊」を持たない国の一つである。

    そんな小国でミステリーであるが、人間味あふれた物語で読み応えがあった。ミステリーというよりも
      上質な人間ドラマ
    として完成されている。
    次は『緑衣の女』を読んでみたい。

  • 読書友達がすすめてくれていたのだけどずっと読んでいなかった小説。

    ラストまで一気読み!おもしろかった!!
    もっと早くに読んでおけばよかった~

    アイスランド・レイキャヴィクのアパートで殺害された老人。そして残されていた奇妙なメッセージ。杜撰な手口から犯人はすぐに捕まると思われたのだが…
    明らかになる被害者の過去、そして事件の真相とは…

    読んでたら生々しいバイオレンスな表現に思わず顔をしかめてしまった
    いやもう、ホルベルクもサイアクな人間だけど
    ルーナルもサイアク!
    いやいや、でも日本でもこんな人いるよね。
    被害にあったのに「女が誘ったんだろ」って決めつける人
    あ~いやだいやだ。
    読んでたらなんかもう色々ムカムカしてきた~
    って、読者をここまでムカムカさせる著者の描写力…すごいわあ~

    って、なんかもう私の中では北欧といえば珈琲とミステリーというすり込みが…
    決して、北欧=おしゃれとかムーミンとかのイメージにならないかも
    なんせミレニアムシリーズがインパクト大だったし、
    この小説もなかなかインパクトあったし

    北欧ものといえば…
    スティーグ・ラーソンのミレニアムシリーズぐらいしか読んだことなかったのだけど
    北欧のミステリー小説ってじめじめした湿度があって好きだわ~
    アーナルデュル・インドリダソン、他のシリーズもぜひ読んでみたい!

  • 全編に陰鬱な陰を感じる重厚なミステリー。近年、次々と傑作ミステリーを輩出している北欧ミステリー界であるが、本作も噂に違わぬ傑作だった。確かにこの作家は只者ではない。

    アイスランドのレイキャヴィクのアパートで起きた独り暮らしの老人が被害者となった殺人事件。杜撰な典型的なアイスランドの殺人と思われたが…事件を捜査する警察犯罪捜査官のエーレンデュルは被害者の過去を遡り、予想を超える事件の真相に辿り着く。クラシカルなスタイルのミステリーと思いきや…

    そして、この重厚なミステリーをさらに味わい深いものにしているのは、作品の中に描かれる複数の家族の姿であろう。過去の事件に翻弄され、苦悩し続ける家族の姿と迷いや苦悩から脱却し、再生していく家族の姿が見事なスパイスとなっている。

  • 差し込むような、あるいは叫びたいような、もしくはそれを抑えるような苦しさ。
    当初、タイトルやイメージからテンポの遅い退屈な作品かもと覚悟していたけれど、そんな心配は無用だった。
    捜査の狙いを探るのもおもしろかった。
    この捜査はどこへ向かい何を求めているのか。
    作中にもそんなセリフがあって、自分の鈍さのせいだけではなかったとほっとする。
    どんどん知りたくなる。
    なるほど、そうつながるのか。

    他の作品も読みたくなって、さっそくほしいものリストに追加。
    それにしても覚えにくい名前だな(笑)

  • 「その国を知りたければ、その国のミステリ小説を読め」と誰かが言っていた(「あとがき」かな…)。

    “アイスランド”
    その国の正確な位置を知っている日本人はどれだけいるだろう。
    よく見る世界地図ではスカンジナビア半島とは遠く離れているように思えるが、北極点を中心とした地図を見ると、この島から南南東にあるイングランドとほぼ同距離で、東にノルウェーがあることが分かる。
    と、同時に「小さく」感じる。

    離婚した中年刑事と娘、昔ながらの捜査、性差別・蔑視とレイプ事件、麻薬中毒、これらは北欧と言わず欧米ミステリ小説にはよく見られるが、この物語ではさらに「血」が強調されている。
    「住民は遡れば皆どこかで血縁関係にある」という独特の風土が色濃いのだろう。
    なんだか横溝正史的で、日本人の何かに共鳴するところかも。

    物語はダイナミックな展開でスピード感もあるため、飽きることなく読める。
    そして、結末は悲しい、ひたすら悲しい……。

    「重い」と「悲しい」は、少し違うんだなぁ。

  • アイスランドのミステリー。
    主人公の刑事をはじめ、様々な親子関係が絡む。
    目を覆いたくなるような場面も多いけれど、時折描かれる愛情が光となって、読後感は悪くなかった。

  • 湿地特有のぬめりとした湿度とじっとり淀む空気感をまとった作品でした。
    古典的なアイスランドの殺人だと思われたが、一つ一つ同僚に文句を言われながら紐解いていけば、浮かび上がるのは過去の卑怯な事件。
    唯一の救いは主人公エーレンデュルの娘が薬物から手を洗おうという姿勢を見せた事かも知れない。そうとしか思えないほど犯人の過去は当人と家族に重い影を落とす。
    あえて言うならアイスランド人の名前は女性か男性かの判断が出来ないと思った。上質なミステリーだったので他の北欧ミステリーも読み進めていきたい。

  • フーダニットやハウダニットでないのは「湖の男」と同じで、強いて言うならホワイダニット。ルメートルの後だからというわけでもないが、地味な話。事件どうこうではなく、捜査の物理的なスケールが小さい。そこのところは、さすが人口30万人である。
    初期作品だからか風景描写も充実(おそらく作者の意識的な所業)し、ご当地ミステリ感は満点。未知なる国アイスランドに旅行に行きたくなること請け合いである。訳者あとがきにあった従来アイスランドでミステリが盛んでなかった理由の、「外国の映画や小説にあるような派手なカーチェイス」はともかく、「何人もが死ぬ連続殺人は30万人しかいないアイスランドでは現実的ではないから」というのには笑えた。まだ筆致が硬く、キャラクター紹介のしかたや、「現場に謎のメッセージが!」と言いつつそれの出しかたがダサすぎなのはご愛嬌。
    大傑作「湖の男」ではパラダイスに見えた男女平等アイスランドだが、本作では普通に胸くそ悪い国。古い作品だからなのか、これが現実だからなのか、本邦にも普通にいるクソ男のオンパレードで胸くそ悪いったらない。こうなると当地ならではの種々の描写も、なにやら陰気で貧乏たらしく見えてきてしまう。
    次作もDVと性犯罪の話らしく、手に取るのがためらわれる。作者(男性)はその実態を告発する意図でなまなましい描写を入れているらしいので、クズなのは作者ではなく現実のほうである。そんな中で「獲物」たる女として生きていかねばならない我々としては、たまったものではない。

    2019/1/5読了

  • アイスランドのミステリーです。
    ここに描かれているのは悲劇です。
    殺人を犯すにもそれなりの理由があるということ、
    人間として生きる苦悩が、
    アイスランドという国の特殊性を利用して
    表現されています。
    暗く悲惨な物語なのですが、
    グイグイと惹きこまれてしまうのは、
    文章の簡潔さにあるような気がします。
    余計なことは書かれていないのに、
    それでいてアイルランド社会の状況や、
    人物像がしっかり描かれています。
    アイスランドのような
    小さな国を舞台にしたミステリー小説は成立しないと
    いわれていたそうですが、
    その常識を覆したのが
    アーナルデュルだったそうです。
    しかも作品は世界中で翻訳され、
    数々の賞を受賞するベストセラーになりました。



    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
    http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • 空に淡い蓋をされているような…薄暗くて、湿気を帯びて、胸が詰まる。
    哀しくてやりきれない、始終そんな空気があった。
    なるほど作品全体から湿地を感じて、上手いものだなー、としみじみ感心。
    読んでいる間ずっと私の眉はハの字になっていたと思う。
    でもあまりの読み易さにページを繰る手は止まらず、遅読の私でもさっと読めた。
    読後感は穏やか。
    複雑なトリックや劇的な展開はないけど、事件背景に奥行きがあって面白かった。
    先に読んだ同作家の『緑衣の女』もやはり同じように味のある描き方で面白かったので、他にもこの作家の作品を読んでみたい。

    アイスランドというとビョーク、シガー・ロス、ムームといったミュージシャンのイメージが強いけども、そういえばこの作家もなんだか似通った雰囲気を醸し出しているなぁと感じた。お国柄もあるのかしら。

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