誰かが嘘をついている (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 212
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488280079

作品紹介・あらすじ

放課後のベイビュー高校で、5人の生徒がルール違反の罰で理科室に招集された。だが、そのなかの一人サイモンが突然苦しみだし、病院搬送後に死亡する。死因はアレルギーのアナフィラキシーショックで、警察は事件性があるとみなす。ほかの生徒は全員が彼のアレルギーを知っていたうえ、彼に秘密を握られていた。男女4人の生徒がそれぞれ一人称で順繰りに事件について語っていくが......。誰が何を隠しているのか? 必読の現代本格ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 創元推理文庫のブランドで、“必読の現代本格ミステリ!”という惹句がある以上、コレは!と期待して読むのは当然だが、この小説は本格ミステリではない。確かに犯人探しの側面はあるし、創元推理文庫にも入っているエラリー・クイーンの某作と似た趣向も垣間見えるから、そこを本格ミステリ的!と捉えることは可能。だが、あまりに無能でろくに手掛かりも検証しない警察の描かれ方はサスペンスを高めることに寄与していても、本格ミステリとしては完全にアウト。『誰かが嘘をついている』(原題『ONE OF US IS LYING』)というタイトルもアンフェアぎりぎり。

    むしろこの作品は敢えてジャンル分けするなら、殺人の容疑者と目される男女4人の高校生の視点が順繰りにリレー形式で切り替わっていく点も含めて、サスペンスフルなYA小説というのが正しいように思う。いかにもYA小説らしく、甘酸っぱい恋愛も大きな要素を占めているし。

    創元推理文庫の海外作品でYA作品、もしくは青春ミステリとは意外な気もするが、例えば自分は未読ながらバリー・ライガの『さよなら、シリアルキラー』シリーズ3部作があった。現代のアメリカの高校生にとって、ミステリの要素を取り入れて青春の苦悩を描くスタイルは広く支持されているのだろう。本書も〈ニューヨーク・タイムズ〉のYAベストセラーリストに49週連続でランクインしたそうだが、分けてもNetflix発の『13の理由』に代表される配信オリジナルドラマの世界においては、こうしたジャンルの作品が人気を確立しているのではなかろうか?

    ちなみに本書にもNetflixで映画を観るシーンが登場する。もしかしたらアメリカの高校生にとっては、映画館で映画を観る以上に、互いの離れた家に居ながらにして、スマホを片手に一緒にNetflixで映画を観る方がリアルなのかもしれない。日本の読者にとっては作中で彼らが観ている映画が『ザ・リング』だったり、『バトル・ロワイアル』だったりするのが不思議な感じだけれど。

    そのNetflixを始め、tumblr、twitterなど、本書には現代的なデジタルアイテムが色々登場するが、iPod nanoが出て来たのには、いささか面食らった。もはや販売が終了しているアイテムではないか。ところが日付と曜日の関係を追っていくと、この物語の年代設定はどうやら2012年であることが分かるから、そんなところに作者の抜かりはないのだ。

    これがデビュー作らしい作者のカレン・M・マクマナスという女性の手腕はなかなか巧みで、容疑者と目される4人の高校生のキャラクターを見事に書き分け、彼らの不安や葛藤や成長を描いている。語り手の名前と日付と時間を記して章を進める構成は、ドキュメンタリー的な効果があり、まるで彼らの脳内日記を読んでいるかのよう。ただし、せっかく日付を書いているのに、その日付をまたいでサラッと違う日になっている箇所が何箇所かあり、読者を混乱に招くのはいただけない。それがトリックとつながっているならまだしも、そうではないから、そこは修正してしかるべきだろう。

    それにしても、死亡したサイモンが立ち上げたという学内のゴシップをイニシャルトークで晒すアプリや、SNSに取り囲まれた現代の高校生は、何と息苦しい世界で暮らしていることだろう? 学業優秀な秀才のブロンウィン、野球部のエースでイケメンのクーパー、美人でイケてる集団に属しているアディ、札付きの不良で保護観察中のネイト、と4人の主人公は、各々に課されたペルソナと本当の自分との乖離に苦しんでいる。なーんてところにMGMTの「キッズ」が流れたりするのもご愛嬌。

    結局彼らはサイモンに握られた秘密を暴露された途端にたちまちスクールカーストの上位から失墜し、信頼していた友人や親からも、まるで魔女狩りのように叩かれる。アメリカの高校でもここまで同調圧力が強いとは少々驚きだが、読んでいてヒリヒリするような地獄に置かれた彼ら4人は、次第に互いを助け合うようになり、思わぬところから救いの手を差し伸べる者も現れる。若い彼らが人間としてありうべき姿に悩むさまはYA小説の王道だろう。

    ミステリ的などんでん返しは終盤に用意されているが、実のところそれは、その意外性に感嘆するという類のものではない。自分の理想像と現実の自分との落差に悩んでいたのは4人だけではなかった、という事実が突き付けられるのだが、人はそれを青春の蹉跌と呼ぶのかもしれない。…などと書くと何やら古めかしいが、TVシリーズを観ている感覚に近い読書体験だから、アメリカの青春ドラマが好きな人は読むべき。

  • 店頭で見掛けて気になったので購入。表4のあらすじ以外の前情報は無かったが、非常に面白かった。
    謎解きとしての『事件のオチ』は、『まぁ、そうだろうな』といったところで、特段大きな驚きは無いのだが、本書の魅力はここではないと思う。
    SNSに翻弄される主人公4人(この辺りが時代だなぁと思う)と、それぞれの葛藤や、家族など、人間ドラマとして非常に完成度が高い。主人公4人は本当にアメリカのドラマに登場しそうな、悪い言い方をすれば『類型的』なキャラクターなのだが、本書の場合はそのことが逆に魅力になっているのではないか(この場合、よくある学園ものミステリのように、パッとしないタイプを主人公に据えると、このストーリーは成立しなくなりそう。もっと違う話になるだろう)。
    次回作にも大いに期待。

  • 企画に当選し、ゲラ版を読みました。
    読み始めると、本当にあっという間だった。
    本を手にしていないときも物語に使っている感じ。

    先ず翻訳が良いのだろう。高校を舞台にしたミステリらしく、小気味良いテンポで読みやすかった。
    次に何とも言ってもキャラクター。誰が殺人を犯したのか?色んな秘密を握っているらしいことも序盤で分かり、明らかになっていく過程で、どんどん彼ら彼女らを好きになっていく、どうにか殺人を犯していませんようにと願いながら。

    ラストの真相は、もしかしたらミステリとしての強度は弱いかも知れないが、それを越えてくるほど、良い物語だったので、是非幅広い人に読んで欲しい一作でした。

  • 青春ミステリー
    松戸の本屋で絶賛されてたので買ってみた

    語りが登場人物なので読みやすい
    おおおもしろかった…!
    スクールカーストとかかわいい恋とか微笑ましい

  • 及第点のミステリにして、傑作青春小説。
    完全無欠の優等生、斜に構えた不良、超高校級ピッチャー、「お人形みたいな」ブロンドの美少女。類型的なキャラクターたちが、交互に語り手を務めるうちに、唯一無二の魅力を放ち始める。迷い、悩み、もがきながら、少しずつ己の殻を破り、周りにそびえる障害物を乗り越えていく。
    しょっぱなから波瀾万丈だが、ラストは健全なハッピーエンドで、読後感が良いのもいい。青春小説はこうでなくては。

    2019/10/20〜10/24読了

  • 放課後の理科室に身に覚えのないルール違反の罪で集められた、5人の高校生。その中の一人が突苦しみ出し死んだ。死んだ生徒は、学生達の秘密を暴露するサイトを立ち上げて運営していた。誰が殺したのか…。集められたもの達の中に犯人はいるのか、違うのか。一人ひとり順番に一人称で語られ、彼らの性格、生活、そして秘密が明らかになっていく。

  • 少々長いが面白い。特に人物描写が優れている。はじめは外人の人名に慣れないが、特徴をつかめると話しにのめり込めるようになる。
    事件の真相については、多少賛否両論あるかも。

  • アメリカの高校を舞台にして起こる殺人事件。
    校則に反した罰として呼び出された生徒5人、成績優秀なブロウィン、メジャーリーグ入りも夢ではないピッチャーのクーパー、お洒落な学校のプリンセス アディ、ヤクの売人もしていると噂される不良少年のネイト、そして生徒のゴシップを暴くサイトの管理人サイモン。
    5人は一つの教室に集まったが、水道の水を飲んだサイモンが急に発作を起こし死んでしまう。彼はピーナツアレルギーで、コップに注がれた水にはピーナツオイルが含まれていたのだ。
    サイモンが水を飲んだのは全くの偶然だが、誰かが彼を殺すために仕組んだのだ。4人の高校生は最有力容疑者として疑われる。
    そんな時、死んだサイモンが運営していたゴシップサイトを何者かが更新し、隠されていた4人のゴシップが公開される…この中の誰かがこのゴシップが暴かれることを恐れてサイモンを殺したのか?

    アメリカのヤングアダルト青春推理小説。話は容疑者となる4人それぞれの視点で順に入れ替わりながら進んでいく。
    アメリカの学校での、スポーツ選手を目指す子どもの家庭が極端にまで結束して子どもを管理するところや、相手を見つけて参加するパーティーを巡っての女子生徒同士の妬み、大学合格に向けての厳しいプロセス、親がアルコールや薬物依存の家庭の問題など、それぞれ典型的なアメリカの高校生が登場し、それぞれが持つ悩みや葛藤が事件の推移とともに明らかになっていくくだりがうまい。
    犯人は、決して意外という訳ではないが、単なる犯人探しで終わらない話になっているので、十分面白い。

  •  舞台は現代アメリカの高校。
     放課後に教師に呼ばれ反省文を書かされた5人。うち一人が死亡する。彼はインターネットで同じ高校の生徒たちの秘密を記事にしていた。そして同じ場所にいた4人も秘密を知られていたことが発覚し、警察に事情を聞かれる。生徒たちのからも距離を置かれる4人は、身の潔白を証明するために、誰が嘘をついているのかを調べ始める。

     出てくるみんなに秘密があり、嘘がある。そして魅力的で癖もある。
     章ごとに語り手を変える群像劇で、事件を機にまわりからの視線の変化に緊張したり、強がったりと、とにかく面白い。何を書いてもネタバレになりそうで、形ばかりしか書けないけど、すごい面白い。

  • ★4.0
    メインとなる4人のキャラクターが立っていて、ブロンウィンもネイトもクーパーもアディも、全員のことが大好きになった!そして、徐々に明かされていく4人の秘密。犯罪から性的な事柄まで、17歳を取り巻く環境は残酷で悩ましい。が、それでも17歳が輝いていたと思えるのは、気の置けない友人や恋人の存在が大いにある。そんな甘酸っぱい青春と殺人事件、加熱する報道とSNSの脅威、その匙加減が全くもって絶妙。さらに、物語を4人の視点に固定したのも物語に没入できた所以。ただ、4人が魅力的な分、事件の真相が少し残念かも。

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