仏陀の鏡への道 (創元推理文庫 M ウ 7-2)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (563ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488288020

感想・レビュー・書評

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  • ありゃりゃ

    前作『ストリート・キッズ』を大絶賛した私ですがこりゃあいただけない
    どうしちゃったの?という感じ

    グレアム父さんとの軽妙なやり取りが魅力だったのに今作はそもそもグレアムがほとんど出てきません
    えーそんなぁ…
    そして全体にやり過ぎ感が、てかケアリーってこんな子だったっけ?作者はケアリーをフィリップ・マーロウに育てようとしてる?

    うーん次読むとすれば『犬の力』シリーズの『ザ・カルテル』のほうかな〜

    • 土瓶さん
      やはり、そうなりますよね~。
      なぜか最初だけだったんです。これ。
      残念(/_;)
      やはり、そうなりますよね~。
      なぜか最初だけだったんです。これ。
      残念(/_;)
      2022/06/19
    • ひまわりめろんさん
      土瓶さん
      こんちは

      前作が凄い良かったぶんがっかり感が凄いです
      3作目の土瓶評も著しくないようですので自分はここまでかな
      土瓶さん
      こんちは

      前作が凄い良かったぶんがっかり感が凄いです
      3作目の土瓶評も著しくないようですので自分はここまでかな
      2022/06/19
  • この痛快さはどこから来るのだろう。国家のイデオロギーや指導者の大局観などとは一切無縁。一人の青年の美しい女性に寄せるひたむきな愛が、成就されることもなく、そうとしか有り得なかった結果を引き出す爽快ともいえる空しさにあるのかもしれない。生粋のストリート・キッズが、大自然の要害に徒手空拳、よれよれのからだで挑む、向こう見ず極まりない冒険の成り行きが、なまじい世間を知った年寄りにはただ切なく眩しいのだ。

    はじめてドン・ウィンズロウを読んだのは『フランキー・マシーンの冬』だった。作品や作家が好きになるのに理屈はいらない。肌合いというか肌理というか、何かがぴたりとはまったのだ。その次に読んだのが『ボビーZの気怠く優雅な人生』。これも気に入った。それから『犬の力』にはじまるメキシコ麻薬戦争の内幕を綴った実録小説風のシリーズを通して読んだ。

    ただ、生来ひよわなたちで、いくらよく書けていても、あまりに暴力的な小説は苦手。ミステリは楽しい思いで読みたい、というのが勝手な本音。そんなとき、新作の『壊れた世界の者たちよ』に出会った。中篇集ということもあってか、出会った頃のウィンズロウの持ち味を思い出した。軽く洒落のめしたテイストだ。所収の一篇に、念願の英文学の教授になったニール・ケアリーが顔を出していた。はじめまして、ニール。

    シリーズ物を読む時の常で、第一話の『ストリート・キッズ』から読みはじめた。頼れる親のいない少年が、親代わりになるジョー・グレアムに出会い、探偵術を教わり、やがて「朋友会」という組織の一員となり、人探しの下請け仕事を命じられる話は、まるでディケンズの『オリヴァー・ツイスト』。しかし、本作を読むと、『ストリート・キッズ』は序曲に過ぎなかったという気になる。それほどまでにスケール感がアップしている。

    何しろ舞台は、雨のヨークシャーに始まり、花のサンフランシスコ、それから香港は九龍寨城(ウォールド・シティ)の魔窟、そして四川省の成都、最後は峨眉山の頂上へと至るのだ。仕事は姑娘に懸想して任地から失踪した米人の肥料研究者の目を覚まし、会社に戻るよう説得するだけのはずだった。ところが、ミイラ取りがミイラになり、李藍(リ・ラン)という中国人女性に一目惚れしてしまったのが運のつき。彼女を魔の手から救い出そうと単身、香港に飛んだのがまちがいのはじまりだった。

    朋友会に仕事を依頼したのはCIAで、表立って動けない組織の猟犬となって、相手を駆り立てるのがニールの務めだった。ところが、何が何やら分からないままに命までねらわれた青年は、危険なことには近づかないというジョーの言いつけを忘れ、いくつもの思惑がからまり合った陰謀の網の中に飛び込んでしまったから、もういけない。九龍城の迷路の中に封じ込められ、自由を奪われ、阿片浸けにされては、グレアムたちにも手の施し様がなくなる。

    ヒッピー文化も下り坂のサンフランシスコでの追いかけっこが第一部。香港の彌敦道(ネイザンロード)、ヴィクトリア・ピークといった観光名所でCIAのシムズや三合会や十四Kといった台湾、香港の組員たちとの命のやりとりを経て、九龍寨城に置き去りにされるまでが第二部。阿片浸けで正体を失った本人の知らぬ間に、舞台は第三部、中国の中西部、料理で有名な四川省に移る。李蘭の手で魔窟から救い出されたニールは中毒から回復するため療養生活を送っている。

    巻き込まれ型ヒーローというのがある。自分はその気がないのに、いつの間にか事件の渦中にいるタイプの主人公を指すが、ニール・ケアリーがまさにそれだ。二十四歳という若さでは、いくら人間観察に長けていても、自分自身を統御できない。窮地に陥ったとき、ニールは、ジョー・グレアムの名を呼ぶ。するとどこからか救いの手が差し伸べられるのだが、今度ばかりは場所が悪い。いくら方々に顔がきいても、中国にはおいそれと手出しができない。

    毛沢東による「大躍進」が、官僚の欺瞞を産み、人民は飢えた。中国の米びつと言われる四川省でも事は同じ。鄧小平の意を汲む省共産党書記、暁昔陽(シャオ・シーヤン)は、毛路線とは一線を画し、農地の私有化を進め、生産量を上げようと、娘の李蘭を使って化学肥料の研究者ロバートを秘かにアメリカから四川省に迎えようとしていた。中央に知れたら反革命の汚名を着せられ、処分を覚悟の行為だ。準備が整うまで、二人が香港に身を隠していたところにニールが現れ、CIAやら三合会、それに朋友会まで騒ぎ出し、計画が危うくなる。

    自分の近くにいる党中央のスパイの目をそらし、計画を成就しようとする暁昔陽、それを阻止しようとする省共産党書記補佐、彭(ポン)、中国の二重スパイであることを隠すためニールや李蘭、ロバートを消したいCIAのシムズ、三者三様の想いが峨眉山という景勝地を舞台に闘いを繰り広げる。ニールとしては、ロバートの真意を確かめ、本人が望むなら自由にさせたい。ただし、そのロバートが隠れているのが標高三千メートル級の聖地峨眉山となると、高所恐怖症のニールにとっては苦行でしかない。

    どこで、仕入れたのか知らないが、中国人民の苦難の歴史に対する理解、楽山大仏はじめ、中国の名所旧跡、そして何より、四川省という土地に広がる田畑、人々の様子など、見てきたように描き出すのがまるで映画。余談ながら、ニールの通訳を務める紹伍(ショー・ウー)との罵倒語のやりとりが楽しい。「決まり金玉(ファック・イエス)」は、ルビ振りで分かるが、あとの「くされちんこ」や「いかれぽこちん」の原文は何だったのか? 東江一紀の名訳が快調だ。 

    本好きは、ニールが大の活字中毒で、どこに行っても本屋とあれば中をのぞかなくては気が済まず、成都の本屋で自分の研究対象であるトバイアス・スモレット作『ロデリック・ランダム』と紹伍の愛する『ハックルベリー・フィンの冒険』を手に入れるところでニンマリ。その『ハックルベリー・フィンの冒険』が、最後に重要な役割を果たすところなど、ビブリオ・ミステリ・ファンには涙なくして読めない。そう、全篇これ軽いノリで語られるこの小説。時々鼻の奥がツーンとさせられる。世界はクソみたいなものだが、それを変えるのは、真っすぐな若者の行動でしかない。いつまでも読み継がれたい青春純情探偵小説である。

  • ニール・ケアリーシリーズ第2弾。前回の事件後、ニールはそこに留まり、隠遁生活を送っていた。静かで安穏とした暮らし。7ヶ月間そのような暮らしを送っていたところに、探偵業の師であり、第2の父でもあるグレアムがやってくる。そろそろ現場復帰するころだと。今の暮らしを気に入っていたニールだったが大学への復学、簡単な任務であることをちらつかされ結局は受けてしまう。

    任務はアグリテック社に勤める研究員、ペンドルトン博士を国に連れ戻すこと。彼が研究するのは肥料。それを使えば生産量が大幅にアップすることが期待される。その技術を持った博士が中国人の彼女リ・ランと一緒に中国に行こうとしている。彼の居場所も把握しているとのこと。

    簡単そうな任務に見えたが、調べてみるとアグリテック社は架空の会社、任務中に狙撃されるわで二人を取り逃してしまう...。ニールの知らないところで別の勢力が動いている可能性が出てくる。上は「もういい、手を引いてこのことは忘れろ」と命令するが困ったことにニールはリ・ランに恋をしてしまい彼女に危険を伝えるために自分も危険な行動に出る。ニールは二人を捕まえることができるのか...。

    今作は探偵っぽさの描写は少なく、ニールの動機も恋、上の命令を無視して突っ走ったりして「おいおい、全然プロフェッショナルじゃないなぁ」という気持ちで読んでいたのだけど、物語の重厚さ、各登場人物の背景などがびっしり書き込まれていて超充実。

    今は無き九龍城砦が出てきたり、四川省の峨眉山が出てきたりロケ地の描写も充実。自分も行ってみたいという気持ちを焚き付けられる(そんな気持ちで行けるような場所ではなさそうだが)

    僕自身歴史の授業は苦手で本を読むようになってから、物語として捉えるなら楽しめるようになったのだけど、今回の話の中で中国の文明大革命を物語として読んでみたものの何故その当時の人々がそのような方向に流されていったのかは結局うまく掴めなかった。その国で生まれて育ってみないとわからないものもあるんだろうなぁと。

    そして痛い表現も多かったのでとてつもなくハラハラした。読んだ後の満足感は半端なかったです。おすすめです。

  • ニール・ケアリー第二弾。
    前作ほどではない。少し残念。
    三作目はどうしようかなー。

    • ひまわりめろんさん
      土瓶さん
      こんにちは

      読みましたよ

      ほぼ同じ感想じゃないですか!w
      土瓶さん
      こんにちは

      読みましたよ

      ほぼ同じ感想じゃないですか!w
      2022/06/19
  • 舞台は前作「ストリートキッズ」終了より、隠遁生活中のニールにグレアムが現れ「やあ父さん」から、新たな物語が始まる。
    一体どうしちまった!ニール。
    前半はメロメロで、いいところがまるでない…と、思わせといて、グイグイと引き寄せ、押し寄せ、目が離せない。
    中国四千年と文革の爪痕、重い空気の中、ジワジワと調子を取り戻したかのように、ニールらしい粘りゴシが出てくると、俄然その他登場人物も魅力的に光出す。
    ラストシーンでの青年通訳の「決まり金玉!」が、なんて爽やかなこと…。

    しかし、毎回ヒロインに恋して成就できないなんて、「フーテンの寅さん」的探偵さんですこと。

  • 二作目にしてこの、ニール・ケアリーシリーズの勘どころというか、面白がり方をつかんでしまった。
    というのは、プロローグの二ールの後付け言い訳から始まり、内容の濃さにもかかわらずちょっと情けない二ールの心の揺れ動きの描き方が絶妙なこと。
    とはいえ、この編は文化大革命、それにまつわるプロパガンダが結構重い。
    九龍や蛾眉山の画像つい、検索してみてしまい一緒になって絶望の淵に追い詰められたり、またまた感情移入してしまう一冊なのでした。
    でも最後の部分は正直、泣かされたよ…

  • 1作目があまりに良かったので迷わず手に取った 2作目…だったのですが。
    ニール・ケアリーのシリーズで高評価と云う事ですが、自分もどちらかと云えば ちょっとストップしたくなったかな…。これが3作目か4作目だったら違ったかも知れません。1作目のようなグレアムやレヴァインとのプロとしての遣り取りが面白かったのに、ニールの一方的とも云ってよい感情による行動で自分も周囲も振り回して、ドタスタしている間に大団円…と云う塩梅。物足りないというか…。もう少し、ニール・ケアリーの才能を知った上で、彼の弱さを垣間見たかったかなと。
    香港や中国の描写は秀逸としか言いようがありません!何より、食べ物の描写が素晴らしい(笑)お腹すいたなあ…

  • ニール・ケアリーもので周囲で一番評価が高いのがこの作品。
    自分はシリーズのなかでは一番苦手なんだよなぁ。
    あまりにも周りと自分の評価が違うので、初めて再読してみた。

    面白くなくはないし、きちんとウィンズロウなんだけど、ニールが香港に辿り着いたあたりから辛くなってくる。
    何でだろうなぁと首を捻りつつ、ページを捲る。
    中国史を詳しく説明するために語り口が凡庸になってしまっているせいなのか?
    ニールがとにかく受身でいるためなのか?
    グレアムとの絡みが少ないせいなのか?
    全部が少しずつなのか?
    分からん…。

    再読してもそれほど評価は変わらなかったと言うことで。

  •  ストリート・キッズの続編。前作はいまひとつピンとこなかったので、これを読むのは久しぶり。相変わらずのドタバタぶりだが、今回はまた輪をかけている。食糧増産につながる成長促進剤の開発研究者が中国人画家と恋に落ち、香港から中国本土に渡ってというのは表向きで、人口増対策をかかえる中国政府やら関連する反体制勢力、スパイ、ギャング、はてはCIAなどがからんでしっちゃかめっちゃかの展開となる。なんでそこにニールが首を突っ込むのかという理由もまたやれやれだが、先の見えない思わぬストーリー展開も、そんなことあるかいみたいなご都合主義的で、峨眉山での結末もそれなりに意外性はあるものの、無理やり落とし前付けましたとしか思えない。堅いこと言わないでアハハと読めるお気楽な人向けだね、これは。

  • 一九七七年三月。ヨークシャーの荒れ野に隠栖していたニールの元に仕事が持ち込まれた。鶏糞から強力な成長促進エキスを作り出した有能な生化学者が、一人の姑娘に心を奪われ、新製品完成を前に長期休暇を決め込んだらしい。香港、そして大陸へ。文化大革命の余燼さめやらぬ中国で、探偵ニールが見たものとは。
    原題:The trail to Buddha's mirror
    (1992年)

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著者プロフィール

ニューヨークをはじめとする全米各地やロンドンで私立探偵として働き、法律事務所や保険会社のコンサルタントとして15年以上の経験を持つ。

「2016年 『ザ・カルテル 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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