短編ミステリの二百年1 (創元推理文庫)

制作 : 小森 収  深町 眞理子ほか 
  • 東京創元社
3.83
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本棚登録 : 86
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488299026

作品紹介・あらすじ

江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集』刊行から五十余年。創元推理文庫が21世紀の世に問う、新たなる一大アンソロジー。三世紀、およそ二百年にわたる短編ミステリの歴史を彩る名作傑作を、書評家の小森収が選出、全6巻に集成する。第1巻にはモームやフォークナーなどの文豪、サキやビアスといった短編の名手、ウールリッチやコリアなど新聞・雑誌で活躍した俊才による珠玉の12編を、すべて新訳で収録し、編者の評論とともに贈る。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸川乱歩の『世界推理短編傑作集』を知らないのだけど、こういう丁寧なアンソロジーにはきっと出会いがあると思って、購入。

    どのお話もハズレなく、しかも新訳だそう。
    次巻は来年みたいだけど、間違いなく買うだろな。

    面白かったのは、サキ「セルノグラツの狼」「四角い卵」かな。
    どちらも、ものすごく短いのに、オチできれいに話を回収するところが良い。
    四角い卵、、、あったとしても食欲そそらんな。

    お恥ずかしながら、唯一この巻で作品に触れたことのあるサマセット・モームからは「創作衝動」。
    ミセス・アルバート・フォレスターが高尚な詩集から俗な探偵小説に転向するまでの話なのだが、パッとしない夫が出し抜くエンディングにスカッとする。

    デイモン・ラニアン「ブッチの歌」も、金庫を開けて強盗をするために、ブッチという男が子連れで渋々参加するのだが、このジュニアがストーリーに緊張感を持たせていて、面白い。

    じっくり読めて、良かった。

  • 名アンソロジー『世界推理短編傑作集』に採られなかった短編や、新たに発表された短編を、二百年の歴史を踏まえて集成された傑作選。全6巻の内のこれが第1巻。
    名作傑作の類は全5巻の『世界推理・・・』にキッチリ網羅されているので、おこぼれの様な作品が並ぶのかと危惧したが、いやいやこれも面白かった。『悪魔の辞典』で有名なビアス氏の創作は初めて読んだが、やっぱり毒のある話だったな(^-^)。
    この第1巻は19世紀の作品もあり、まだミステリというより奇譚が多かった。巻が進めば更に面白くなりそうだ。

  • たとえば大学の文学部、週1コマの講義をとらなくてはならないとしたら、私は他の色々をのけて、間違いなくこれを選択するだろう。

    「短編ミステリの二百年」

    なんと面白そうではないか!

    ミステリが著されて200年の間に、犯罪はどう描かれてきたのか、探偵はどう変化していったのか、トリックはどのように進化してきたのか、そのようなことが詳しく説かれるにちがいない。
    楽しみだなあとワクワクして受けた講義はしかし、まったく違っているのだった。

    ウィルキー・コリンズ、エラリイ・クイーン、ヴァン・ダイン、ドロシー・L ・セイヤーズ、『黄金の十二』、エドガー・アラン・ポオ、『盗まれた手紙』、デイヴィッド・C・クック、『悪夢』 、ディケンズ、チェーホフ、etc.etc.etc....

    教壇に立った先生がとうとうと語るその講義に、探偵もトリックも出てきやしない。
    数多の著者名作品名が息をつく間もなく次々と押し寄せて、それによって、なにやら説かれているようなのだが、なんだかさっぱりわからない。
    どこをどうノートにとっていいか、つまり要点はなんなのか、ピンともツンともこないので、ただただ呆然と話を浴びているしかないのだ。

    そうした間に思うのは、
    なるほどあの12編のミステリは、この授業を受けるために、「最少限」読んでおくべきテキストだったのだということ。
    これなら『近代文学における新戯作派の消長』『ドイツ文学における"Deutschland"観の変化』のほうが、よほど理解できて面白かっただろうこと。
    しまった、あっちの講義を選択しておくべきだったと、ひどく後悔したにちがいない。

    「みなさんご存じのところでしょう」(382頁)
    「みなさん、ご承知のとおりです」(384頁)

    先生はそうおっしゃるが、私ときたらまったくご存じでもなく、よってご承知もままならない。
    周りの受講生はともかく、私はその「みなさん」には含まれないのだろうと、こっそり辺りを見回しながら、自嘲とも苦笑ともいえる笑いを浮かべるしかないのだ。

    しかし、幸いなことに、これは大学の講義ではなく、ノートをとる必要もなく、試験があるはずもない。
    今それをすべて理解する必要もないのだ。
    講義をそのまま文字にしたように書かれたこれは、いずれ理解が及ぶその時まで置いておけばいい。
    自分にとってふさわしい時に、また読み返せばいいのである。
    この1冊全体のおよそ3分の1を、その「講義」が占めているのだが、その前にあるのは、12編の珠玉のミステリーである。

    『霧の中』 リチャード・ハーディング・デイヴィス
    『クリームタルトを持った若者の話』 R・L・スティーヴンスン
    『セルノグラツの狼』 サキ
    『四角い卵』 サキ
    『スウィドラー氏のとんぼ返り』 アンブローズ・ビアス
    『創作衝動』 サマセット・モーム
    『アザニア島事件』 イーヴリン・ウォー
    『エミリーへの薔薇』 ウィリアム・フォークナー
    『さらばニューヨーク』 コーネル・ウールリッチ
    『笑顔がいっぱい』 リング・ラードナー
    『ブッチの子守歌』 デイモン・ラニアン
    『ナツメグの味』 ジョン・コリア

    感謝すべきは、読後の味わいが実に様々なことだ。
    すっきりするもの、笑ってしまうもの、
    呆気にとられるもの、苦笑するもの、
    そして、ナツメグの味。

    おかげで飽きることなく、常に新しい気持ちで読み進むことができる。
    そして、これは、読者によって様々な好みが生まれる理由ともなる。
    私が1番と挙げる一編は、誰かと同じかしれない、違うかもしれない。
    私が今一つと感じたそれは、誰かと同じかもしれない、誰かの一押しかもしれない。

    だからこそ、読んだ人はそれを語りたくなるらしく、この本の書評やレビューには、どれが好きだとか気に入ったとかいう熱い文言が、よく書かれている。
    読後にそれらを読んでまわるのも、楽しみのひとつである。

    そして、私は、それらの中に「みなさん」の中の人たちを見つけては、すごいなあと、ただただ感心するばかりなのだ。

  • 2019/11/07読了

  • 東京創元社から、新しいミステリアンソロジーが刊行開始。
    収録作も素晴らしいのだが(目次でイヴリン・ウォーの名前を発見した時は衝撃だった)、驚いたのは巻末解説のボリュームだった。ページの1/3近い分量を占めている。アンソロジーが完結したら、解説だけで1冊にして欲しいぐらいだ……。

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