- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488299026
感想・レビュー・書評
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「霧の中」
リチャード・ハーディング・デイヴィス(1901年)
▷▷▷とある夜。一流社交クラブ〈グリル〉につどった互いに面識のない四人の会員たち。そのうちのひとりである政治家は、これから議会で演説を行おうとしていたのだが、そのことを知った残りの三人はその演説を阻止すべく、即興のミステリー譚を順番に政治家に語って聞かせその足止めをはかろうとする。
▶▶▶三章構成で一章に一話ずつ即興のミステリーが語られる。それらは最後にひとつの大きなお話となる。政治家の動向もあいまって二重仕掛けでスリリング。
「クリームタルトを持った若者の話」
R.L.スティーヴンスン(1878年)
▷▷▷冒険心に富むボヘミア王子フロリゼルとその従僕ジェラルディン。彼らは今宵も身を窶し、草莽の間に危険を探し求める。
▶▶▶結局”クリームタルト”自体は関係がない。
「セルノグラツの狼」
サキ(1913年)
▷▷▷古城といにしえの一族にまつわる不可思議な言い伝え。ある夜、それがついに現実のものとなる。
▶▶▶簡潔にして雰囲気たっぷり。
「四角い卵」
サキ(1924年)
▷▷▷ニワトリが四角い卵を産めるようになったあかつきには……。
▶▶▶”わたし”、”養鶏家の男”、”男の叔母”の三者がつくる正三角形。”戦場の食堂”、”塹壕の泥”も効いている。
「スウィドラー氏のとんぼ返り」
アンブローズ・ビアス(1874年)
▷▷▷刑場の露と消えようとしている友の命を救うため、やっと交付された恩赦状を握りしめ、男はひた走る。必ず間にあってくれるものと信じて。
▶▶▶ぼくのような方向音痴でもこれは、ない。
「創作衝動」
サマセット・モーム(1926年)
▷▷▷なみいる批評家たちを唸らせ、”当代随一”の名をほしいままにするのが閨秀作家ミセス・アルバート・フォレスターそのひとだ。しかしその夫というのは芸術などにはなんの関心も持たないただの凡人。自宅で開かれるサロンでミセス・アルバート・フォレスターは夫をかばい、引き立てようとするのだが、彼女の取り巻き連中はそんな夫に白い目を向け、陰では露骨に笑いものにするばかり。しかしある日、家庭内に一変事が出来する。
▶▶▶ある人物の真の姿が明らかになり事態が急転直下する。いかにもモームらしい。
「アザニア島事件」
イーヴリン・ウォー(1932年)
▷▷▷アザニア島にて。独身男子たちの関心の的だった令嬢プルネラ・ブルックスが原住民の山賊に誘拐され、高額の身代金が要求されてきた。
▶▶▶”ケニアの債権者から逃げてきたうさん臭い男”といういびつなピースが最後にピッタリ収まる。
「エミリーへの薔薇」
ウィリアム・フォークナー(1930年)
▷▷▷孤独の中で生き、孤独の中で死んでいったミス・エミリー・グリアスン。彼女が死ぬやいなや、詮索好きな「われわれ町のものたち」は彼女の家に押し入り、彼女の秘密を暴き立てようとする。
▶▶▶このひと(ウィリアム・フォークナー)のは、謎というより狂気だ。
「さらばニューヨーク」
コーネル・ウォーリッチ(1937年)
▷▷▷犯罪者カップルの道行き。疑心暗鬼に苛まれながら、人目を避けて逃げまどう日々。
▶▶▶この作家(ウォーリッチ/アイリッシュ)独特の軽さだけはどうにも好きになれないなぁ。
「笑顔がいっぱい」
リング・ラードナー(1928年)
▷▷▷人気者の気のいい警察官が交通整理中、スピード狂の美女と知りあいすぐに意気投合する。
▶▶▶「若くて天真爛漫な女の子が主人公の男の心をとりこにするのだが突然その子が事故かなんかで死んじゃう系」のお話。
「ブッチの子守歌」
デイモン・ラニアン(1930年)
▷▷▷赤ん坊をかかえたまま金庫破りをするハメになった強盗たちの奮闘を描く。
▶▶▶「幸運の女神はより大胆な者に微笑みかける」というが、こいつらあまり調子に乗らないほうがいい。
「ナツメグの味」
ジョン・コリア(1941年)
▷▷▷新入りの研究員がふたりの先輩研究員を自宅に招待してもてなす。
▶▶▶善意に満ちた先輩研究員の設定がいい。それと”ジョージアフリップ”という奇特なカクテルを持ってくるのも。(ぼくはまだ飲んだことがない。)詳細をみるコメント0件をすべて表示