日本探偵小説全集〈2〉江戸川乱歩集 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
4.04
  • (43)
  • (33)
  • (38)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 332
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (782ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488400026

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 江戸川乱歩と言われると、小学校の図書館にあった少年探偵団シリーズを思い浮かべる。想像力の逞しかった時分のことだから、藤田新策氏のあの表紙絵を怖がりながらも読む手が止められなかったことを覚えている。

    しかし、これまで少年探偵団シリーズ以外の怪奇小説や幻想小説には触れてこなかった。そのため、収録されている『陰獣』や『パノラマ島奇談』などの怪奇的な性格の小説群は新鮮な気持ちで読むことができた。特に『人間椅子』は、題からは想像していた内容とはかなり違う話で、また登場人物の語り口に常人ならざるものを感じて引き込まれた。

    個人的には、幻想的でありながら狂気さは薄く、それでいてストーリーや描写を楽しむことのできる『押絵と旅する男』と先行作品への敬愛とそれに終わらない独創性が持ち込まれている『二銭銅貨』が気に入った。特に前者は二次元の女の子に夢中になりその絵の中に入りたがる男が出てきて、1929年に書かれたものとは思えない普遍性に感心した。

    また、巻末の付録に掲載されている著者本人の自作についての詳細なコメントや年譜などから、人となりをうかがい知ることができ、より作品を楽しむことができた。

  • 江戸川乱歩の長編・短編合わせて12編収録されている作品集。

    名前だけは知っているけど…という名作たちをいろいろと読むことができたので個人的にはかなり満足した作品集です。

    印象的なのは『心理試験』いわゆる心理トリックを使ったものは時々納得のいかないものがあるのですが、この作品はストンと腑に落ちました。一点集中で完全犯罪を崩す明智小五郎の推理がお見事!

    『屋根裏の散歩者』は事件そのものはオマージュ作品を先に読んでいたので、明智がどのように犯人を追いつめるかより、犯人が天井から他人の生活をのぞき見する生活に徐々にはまっていく様子が面白く読めました。

    『人間椅子』もこの場合は椅子に入り込むことになる男の熱っぽい語り口が気持ち悪いなあ、と思いつつもどこかでこれって本当に楽しくて気持ちいいのかも…と思わされる不思議な感覚が残ります。かなりの変態チックな話ではあるんですけど(苦笑)

    『パノラマ島奇談』は独創的な島の描写が圧巻! 映像化されたとするならどんなものになるんだろう、と考えるのもまた楽しかったです。

    『芋虫』も描写力もさることながら、もはや異形と化してしまった兵士を介護する女の屈折した感情が妙に生々しくて印象的。

    ページ数の多さに少しビビりますが、有名どころが結構入っているのでおススメです。これだけの作品が詰まっている以上☆5にせざるを得ない、という気がしないでもない(笑)

  • 【二銭銅貨】暗号ミステリ。面白かったけど、最後の一捻りは若干ズルい気が。
    【心理試験】倒叙、追い詰められかたが緩いんだけども、他にはない感じで好きでした。
    【屋根裏の散歩者】まさに癖という作品で、魅了されました。
    【人間椅子】癖なんてものじゃなかった笑、ミステリじゃなくても、どうやっても傑作に入る作品でした。
    【鏡地獄】エッシャーの写像球体を持つ手を思い浮かべました。好奇心と恐怖がないまぜになった感覚を受けました。
    【パノラマ島奇談】兎に角ずっと不思議な印象。修飾が多くて結構読むの苦労しました。
    【陰獣】セルフパロディが大変面白かった。終わり方も何だか不穏な気配をまとい良かったです。挿絵がお得すぎる。
    【芋虫】これはそんなに響かなかったな。
    【押絵と旅する男】切り取られた空間に生きているような押絵、たったこれだけで異様さ、幻想さが醸し出されていました。
    【目羅博士】鏡の魅惑を最大限に引き出してた。
    【化人幻戯】面白かった!晩年の作品で時代背景が近寄ってきたお陰で読みやすく、一方で結末が分かりやすい王道な仕掛けでした(もちろん乱歩が書いた時代ならいいよ、今これがあるとわかりやすいなって考えてしまう)。
    【堀越捜査一課長殿】成り代わりではなく、ゼロから人を作り上げた点は意外で、良かった。

    やはり日本探偵小説全集のシリーズはお得だなと実感しました。乱歩集に関しては、想像よりもミステリの度合いが低かったことや、場所やフィルターを通して世界を歪めてみることが乱歩の特徴なのだなと知れてよかった。あと自分、もしくはモチーフとなる人物を出すことも多いが、それがどこか自虐的な癖のように感じられた。

  • 怪しくも美しい作品集でした。

    『二銭銅貨』
    巧みな大泥棒と、二銭銅貨のつながりとは…
    有名な作品のためトリックは知ってしまっていたのですが、引き込まれる文章で、江戸川乱歩が好きになりました。

    『心理試験』
    蕗屋(ふきや)清一郎の綿密に考えられた殺人が、明智小五郎の心理試験により暴かれるという話です。頭が切れる二人の裏のかき合いがおもしろかったです。

    『屋根裏の散歩者』
    何をやって見ても面白くない郷田三郎が興味を覚えたのが「犯罪」でした。
    押入れで寝ているうちに天井板がはずれると気付いた三郎は、「屋根裏の散歩」をはじめ、他人の秘密を隙見します。そうして、天井の節穴から毒薬を垂らして、遠藤を殺害することを考えます。
    変態的で、犯罪嗜好癖ともいうべき病気を持っていて、その犯罪の中でも殺人罪に最も魅力を感じた三郎という人間に、興味を惹かれました。

    『人間椅子』
    醜い容貌の椅子職人が、自分の作った椅子の中へはいり、その椅子に座る人の肌に触れることで恋をします。そして、書斎の椅子によく座る、閨秀作家である夫人を愛します。
    その告白に恐怖を感じ、ゾッとしました。

    『鏡地獄』
    レンズ狂の彼は、ついに鏡のガラス玉の中にはいって、発狂してしまいます。怪奇と幻想の世界でした。

    『パノラマ島奇談』
    人見広介は自分と瓜二つの菰田源三郎が死んだことを知り、自分が源三郎の身変りを勤めて墓場から蘇生したように見せます。そして、莫大な財産を手に入れ、沖の島に理想郷を建設します。
    「恐怖に色づけされたとき、美が一層深みを増す」「夢幻世界の美」(p230)が描かれていました。

    『陰獣』
    「犯罪ばかりに興味を持ち、たとえ推理的な探偵小説を書くにしても、犯人の残虐な心理を思うさま描かないでは満足しないような作家(p293)」大江春泥(本名平田一郎)から小山田静子あてに、復讐を誓ったというおどかしの手紙が届きます。そして大江春泥の復讐として、静子の夫小山田六郎が殺されてしまいます。
    「常に並々ならぬ猜疑心、秘密癖、残虐性をもって満たされ(p314)」異様の鬼気がつきまとう小説を書き、厭人病である大江春泥とは、一体何者なのでしょうか。小山田六郎は残虐を行う変態性慾者なのでしょうか。
    探偵小説家である私(寒川)は見事な推理をしたかに思えました。しかし、直接の懺悔を聞かないうちにその者が自殺してしまうと、こうも恐ろしい疑惑が深まるのだと気付かされ、恐ろしくなりました。本当の陰獣は誰だったのでしょう。

    『芋虫』
    戦争で両手両足はほとんど根もとから切断され、視覚と触覚のほかの五官をことごとく失ってしまった須永中尉と、その妻時子の物語です。夫をほんとうの生きた屍にしてしまいたいという時子の残虐性も、須永中尉の恐怖の世界も、想像するだけで恐ろしいです。

    『押絵と旅する男』
    私は人物が生きている「奇妙」な押絵を老人に見せてもらいます。それは、押絵の娘お七に恋こがれたあまり押絵になってしまったという老人の兄でした。

    『目羅博士』
    まねの恐ろしさと月光の妖術が生んだ殺人の、あやしき物語でした。

    『化人幻戯』
    大貴族大河原氏の寵を得ていた姫田と村越、そして村越の友人が殺されます。
    「探偵趣味と手品趣味の感化を受け、あのおびただしい蔵書を耽読した人でなくては考え出せないような稚気に満ちていた(p692)」トリックに騙されました。「極愛するが故に相手を殺す(p703)」という動機も思い付かず、“異常な性格”を持つ犯人を恐ろしく感じました。

    『堀越捜査一課長殿』
    全警視庁の力をもってしても隙を発見することのできなかった「完全犯罪」をなしとげた人から、堀越課長に手紙が届きます。犯罪者と、その秘密を分け合った人間がこの世を去れば、犯罪は『無』に帰するのですが、“人間は自分の秘密を、完全に消滅させることを好まず、誰か一人にだけは伝えておきたいという願望を持つものなのでしょうか。(p756)”

  • 初期の名作「二銭銅貨」から戦後の「化人幻戯」あたりまでを収録。
    作者をトリックに使った前代未聞な傑作「陰獣」はイラストがついており、こちらも印象的。

  • 収録されているは、以下12作。「二銭銅貨」「心理試験」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「鏡地獄」「パノラマ島奇談」「陰獣」「芋虫」「押絵と旅する男」「目羅博士」「化人幻戯」「堀越捜査一課長殿」。

    デビューしたて、大正時代の名作から、戦後の長篇まで満遍なく読ませてくれるお得な一冊だった。どれを読んでも、面白い。「人間椅子」「芋虫」から受けたインパクトは再読だったにもかかわらず、まったく衰えなかった。

    乱歩は谷崎潤一郎「金色の死」を読んだときのことを回想しているけれど、初期の作品にはとくにダークな部分で通ずるところがある。陰翳礼讃の精神だ。萩原朔太郎に賛辞を寄せられたと、付録の自作解説で言及されている。納得である。

    個人的には、「目羅博士」が最も鮮烈だった。第9巻『横溝正史集』も最高級のエンターテイメントだったけれど、この「江戸川乱歩集」の方が凝っていて好き。何というか、科学実験で初めて体験する純粋な驚きで満ちているから。

  • 末尾の作者自らによる作品の註がかなり客観的に評していて感心する

  • 屋根裏の散歩者のみ読了。
    小学4年だったかな。先生がわら半紙に刷ったそれを読ませてくれたとき怖くて怖くて。
    反面その世界に引き込まれ何度も読み返した。部屋に寝転がって天井が見えると思い出してはまた読んだ。
    果てはそのわら半紙刷りの「屋根裏の散歩者」は宝物となり単行本のサイズに自分でカットしノリで貼り合わせ本の形にし何年も大切にしていたのを思い出す。
    でもずっと「屋根裏の訪問者」だと思ってて…今回検索してタイトルが違う!!!って衝撃を受けました(笑)

  • 9/13 読了。

  • 乱歩のどれを読んでて何を読んでないのか収集つかなくなってきた…ちょっと整理しないと…

全30件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

江戸川乱歩(えどがわ らんぽ)
1894年10月21日 - 1965年7月28日
日本を代表する小説家・推理作家。三重県生まれ。ペンネームの江戸川乱歩は、小説家エドガー・アラン・ポーに由来。早稲田大学で経済学を学びながらポーやドイルを読む。様々な職業を経験した後、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和22年、探偵作家クラブ結成、初代会長に就任。昭和29年、乱歩賞を制定。昭和32年から雑誌「宝石」の編集に携わる。昭和38年、日本推理作家協会が認可され理事長に就任した。代表作に『D坂の殺人事件』、『陰獣』、『孤島の鬼』、『怪人二十面相』、『幻影城』、『探偵小説四十年』など。少年探偵団シリーズは絶大な人気を博した。

江戸川乱歩の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印

日本探偵小説全集〈2〉江戸川乱歩集 (創元推理文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×