- Amazon.co.jp ・本 (714ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488400064
作品紹介・あらすじ
本巻には、鬼才小栗虫太郎の創造した名探偵法水麟太郎ものの代表作、「後光殺人事件」「聖アレキセイ寺院の惨劇」「オフェリヤ殺し」そして無論のこと、わが国探偵小説中最大の奇書とも評される大長編『黒死館殺人事件』に、小栗探偵小説の出発点ともいうべき「完全犯罪」を加え、松野一夫画伯による初出時の挿絵を残らず収録した。
感想・レビュー・書評
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「完全犯罪」「後光殺人事件」「聖アレキセイ寺院の惨劇」「黒死館殺人事件」「オフェリヤ殺し」収録。
「黒死館殺人事件」を読むにあたって、短編で肩慣らししてからだと読みやすいかも、と思ったのですが。この短編もまた難敵。でも魅力的な要素が多いので、懸念したほどではなかったかも? ガチガチのトリックを理解するのには少々骨が折れましたけれど。
そして肝心の「黒死館殺人事件」。個人的には魅力的だと思うガジェットがてんこ盛りなので、案外と惹きこまれました。なるほどこれは読んでおくべき一作かも。
精神医学や魔術や心理学や、そして数々の詩作などの薀蓄が凄まじくって。正直なところを言うと、そのあたりの知識の下地がないので、かなり登場人物たちの思考にはついていけませんでした(苦笑)。あまりにもったいつけた台詞といい、何言ってんのこの人たち、という印象。でもそのリアリティの欠如のせいか、荘厳な舞台劇を見ているかのような雰囲気がありました。
結局、どれほどきちんと理解できたのかは心もとないのですが。「読んだ!」という充実感は充分です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『黒死館』目当て。なんとか年内に読み終わった!ですが、これほどのページ数を繰ったのに何言ってるか最初から最後までわからず、つらかったー!!!これは探偵小説の皮をかぶった魔導書です、趣味の本です( ;∀;)ドグラマグラなんかよりよっぽど精神に支障をきたすかと思ったよ???もう多分二度と読まない(笑)でも、こういう本が出版できた当時の日本ていいなぁとも思うのです…。(おっと…意味不明すぎて感想の書きようがないので話が違う方向へ…)子どもの頃に読んでたらトラウマレベルな味のある挿絵も好きです。
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黒死館が読みたくて。夥しい衒学趣味と聞き、読みにくいのかと思ったが、意外とそうでもなかった。むしろ私にはとても面白かった。「完全犯罪」等で肩慣らしができたのが良かったのかもしれない。以下、黒死館について。確かに物凄いペダントリーだが、それが異様な事件と相まって、独特の雰囲気を作り出している。法水の超人的な推理には、ただただ圧倒されるばかり。三大奇書に数えられるのも納得。これは、ミステリの辿り着いた一つの頂点ではないだろうか。しかし、咀嚼できたとは言い難いので、いつかもう一度読みたい。
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購入したのは、かなり以前ですね・・・・。
1993年くらい。
未成年の時に、原稿料で、全集を購入しました。
ノンフェクションなので、あまり面白く有りませんが
読みやすい作家です。
挿絵が収録されています。 -
研究者や実作家がメシのタネとして読む本。消費者としてならば、スルーして構わない作品だ。3大奇書とされるが、もはや賞味期限切れ。「戦力外」通告してよかろう。
ユダヤだのコーカサスだの、世界中の歴史や宗教などが紹介される。でも、現代で読むと、その博覧強記に驚く…とはならない。このペダントリックは、ほとんどがこけおどし。男塾のナントカ書房と同じだ。有機的にミステリと結び付いていない。トリックも、全然あざやかじゃない。
もちろん、ミステリとして読まないという手もある。複雑な暗号を残し、なおかつ警察の手をかいくぐって連続殺人をやってのける超犯人! それを放置しひたすら知識を披露するばかりの迷探偵。探偵が、実は事件の半分を作りだしている。ミステリを面白くしようとすると、こんなへんてこなことになるんだよ、と示すアンチミステリだ。
おどろおどろしい世界と衒学がミステリとして結び付き、驚愕の結論へ至るというエンタメならば、現代では例えば京極夏彦「魍魎の箱」があるわけで…。
本作は、読まないより読んだほうがいいけど、時間がない人にはオススメしない。 -
1933(昭和8)年から1935(昭和10)年にかけて発表された小栗虫太郎の初期探偵小説集。
小さめの活字がびっしりと並ぶ紙面が700ページに及び、平均的な文庫本2、3冊ほどの分量があり、そのうちやたら長い「黒死館殺人事件」(1934)が460ページくらいを占めている。小説の内容はどれも同じ態勢であるが、この大作がその方法論を極限まで実行していて「完全にイッちゃっている」。
「黒死館殺人事件」は夢野久作『ドグラ・マグラ』などと並んで「三大奇書」に数えられているようだが、奇書という言葉が「変な本」を指すのであれば、確かにこれはそうである。
ほぼ小説の体を成していない。どの登場人物の言動にも自然らしさが全く無く、現実にはあり得ない行動が次々と連続する。人物たちも生身の人間らしさを備えておらず、突飛な台詞をおしゃべりするだけの、ペーパー・マリオのようにペラッペラの存在に過ぎない。
目の前に失神している女性がいるのに、介抱しようともせず探偵法水麟太郎や刑事、検事らは延々とおしゃべりをしている。しかも探偵の推理というのが、事件現場の痕跡を説明するのに「内惑星軌道半径」を持ち出したり、こけおどしの雑学振り回しに満ち満ちているのだ。
作中何度かアメリカのクラシカルな推理小説家S. S. ヴァン・ダインの作品に言及され、作者はどうやら偏愛しているようで、私も中学生の頃に割と読んでいたが、その作品の特徴をなす探偵の衒学的な台詞は、そこではただ単に装飾的なものであった。それに対し、小栗虫太郎の衒学趣味は推理の内容そのものを支配していて、博学なのは結構だが、あまりにも馬鹿馬鹿しい牽強付会が過ぎて小説全編を無意味なおしゃべりの煩雑な塊にしている。しかも、探偵の推理をよく読むと論理的に不可であり、知的ですらない。
小栗虫太郎は書物を沢山読んで雑学的な知識を蓄えることにばかりかまけ、生身の人間には全く興味を持たずに生きたのだろう。ちょっとこの感じはアスペルガーっぽくもある。
いかなるリアリティも持たない馬鹿げた駄弁という点で、本作はレイモン・ルーセル辺りに比較されるだろう。しかし、そこまで純度が高くないので、あまり芸術的とは言えない、「変な人の落書き」くらいにしか思えなかった。
「変な本」を好きな人なら評価するかも知れないが、私には好ましく思えなかった。ペーパー・マリオたちに生命の兆しが無かったからだろう。 -
誰が言ったか日本三大奇書
「虚無への供物」「ドグラ・マグラ」と並び日本三大奇書に数えられている「黒死館殺人事件」所収のこの本。まぁ、分厚い。
先日、神奈川近代文学館で「新青年」の企画展を見に行ったきっかけで読み始めた本。今まで小栗虫太郎を読んだことなかった。
「虚無への供物」を20年くらい前に読んだとき、変な小説って思ったくらいだから、たぶん自分には合わないなぁ、と思いつつも読んだ。
しかしながら「黒死館」以外はそれなりにややこしい設定ではあるものの読めなくはない。人を殺すのに、わざわざそんな面倒くさい手段とるかいっ!っとツッコミながらも意外と好きな作風。舞台装置がなかなか良い感じ。
でも「黒死館」になるともうお手上げ。話の筋と関係ない蘊蓄の嵐で、途中で嫌になった。殺人事件の展開を追うぶんには、そんなにひねくれていないので、もう話の筋だけ追うことに切り替えて最後まで読んだ。
最後まで諦めずに読んだ自分を褒めてあげたい。そんな類いの本かな。
松岡正剛や荒俣宏にも引けをとらないくらい博学の人なら面白く読めると思う。 -
日本三大奇書の一つ、黒死館殺人事件含む5つ入りのお得な作品集。
どの作品もそうだがストーリーやトリックがどうとかよりは小栗虫太郎自身の知識というかトリビアを網羅したいだけのような物なのでかなり辛い。
推理、探偵小説の歴史にはこういう作品もあるという確認の為に読むか、本当に読む本が無い人や活字好きな人は手を出してみてもいいんじゃないすかね -
いま巷で、古本ではなく、新刊として読めるのは
先にあげた「黒死館殺人事件」と、このアンソロ
ジーぐらいではないかな。
私も、このアンソロジーにあうまで、小栗さんの
著書を読んだ事が無かったので、渋谷の本屋さん
で、見つけた時は嬉しかったです。
そうそう。巻末に書かれていたのか、どの本で知
ったのかは忘れてしまいましたが、小栗さんは、
常に作品に手を加えていて「黒死館殺人事件」だ
けでも、出版社によって、出版される時期によっ
話が変わっていたりするそうです。
そういう小説があるのも、面白いですね。